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* 今回軽いR15のお話が後半にあります。ご注意を…



「由貴から給湯室に誘ってくれるなんて嬉しいなぁ〜 ♪ 」

「はぁ?」

「………」

スンゲェ怒ってるんですけど………

有無も言わさず由貴にオレのマネージャーをやる事を社長命令で言われた後
笑ってたオレを見て一発でオレの差し金だと気付かれて…

オレに文句を言おうと社長室を出た後に由貴に給湯室に連れ込まれた。


「私があれだけマネージャーやらないって言ったのに…何で社長にあんな事言う…!!」

文句言ってる途中で惇哉さんが触れるだけのキスをした。

「惇…!!」

惇哉さんの手の平がそっと私の頬に触れて指先が軽く私の顔をちょっとだけ上に上げる…

「あ……」

腰に廻された腕で引き寄せられて…グンっと惇哉さんに近付いた…

「由貴…」
「なっ…何よ…」
「オレは嬉しいんだけどな…」
「私は…」
「由貴も嬉しいよな?」
「………嬉しくなんて無い……」
「なんで?ちゅっ ♪ 」
「…んっ…もう…ズルイ…」
「どこが?」
「そうやって……キスで誤魔化す…」

「お願いします…オレのマネージャー…やって ♪ 」

「………だって…」

「だって?」

「また…ラブシーンあるじゃない……」

「由貴……」

そう…今回も相手の女優とラブシーンがある…

「芝居だよ…仕事…」
「そうだけど…」
「じゃあ由貴が不安にならない様にたあくさん愛してあげる…由貴…」
「ちょっ…ここどこだと……」

「由貴と一緒なら何処だって構わない…」

「あ……」


何だか結局文句も言い切らないうちに誤魔化された気がする…

今更どうにかなるなんて思ってもなかったし…

どうせゴネても最後はきっとあの決めゼリフを言われて

私は何も言えなくなっちゃうから…


『 オレが言ってる…由貴… 』 って…


「ちょっ…ダメだってば……」

「少しだけ……由貴の機嫌が直るまで……ん〜 ♪ 」

「や……」

耳朶から首筋に惇哉さんの唇と舌が優しく触れる…

「わか…わかった…から…!!」
「え?もう機嫌直ったの?なんだ…つなんないな…」

むぎゅ〜〜〜〜〜ううううっっ!!!

「いててててて……由貴痛いです…」

由貴がオレの両耳を思い切り引っ張る。
顔はいつも避けてくれるけどそれでも結構痛かったりする…

由貴ってば加減してくれないから…

「ちょっとは反省した?」
「何に?」
「…………へえ…」
「え〜やだな…由貴ってば…」
由貴の瞳が相当怒ってるんですけど…
「帰ったらゆっくり話し合いましょうか?」
「え〜〜〜」

オレ…今日何時間のお説教コースなんだろう………



「大丈夫ですか?」
「へ〜〜〜ホント漫画みたいだな…」

仕事が終わった後惇哉さんと2人三鷹さんのお見舞いに来た。
惇哉さんがギブスを嵌めて足を吊るしてる三鷹さんを見て変な納得をしてる。

ドスッ!

「イテッ!」

「惇哉さん!」

もういつも一言多いんだから!
いつもの如く惇哉さんの脇腹を肘で小突く。

「いつもすみません…由貴さん…」
「仕方ないですよ…事故に巻き込まれちゃたんですから…
命に別状が無かっただけ良かったじゃないですか…」
「はい…車の間に足が挟まっちゃって…車3台の玉突きで…」
「他は平気なのか?」
「はい…鞭打ちも無くて…足だけです。」
「これから何度か手術も?」
「はい…金具入れて…良くなったらまた取る手術もして…」
「災難ね…ゆっくり休んで下さいね…」
「すいません…また映画撮影にかぶっちゃって…」
「つくづくお前は映画に縁が無いよな。」
「はは…」
「まあその間由貴がやってくれるから引継ぎちゃんとしろよ。」
「はい…でもまた北館監督ですから…由貴さん1度経験してるし…雰囲気は同じですよ。」
「はい…」
「それに惇哉君1人でも大丈夫なくらいだから…惇哉君こう見えてもしっかりしてるし…」
「ガキじゃ無いっての!何年この仕事してると思ってるんだよ。」
「そうですね…それにもうご夫婦ですし…やり易いんじゃないんですか?」

「そんな事…」

「無いです。」「やり易いに決まってるだろ。」

「え?」

「 ! 」

オレは由貴に視線を向けた。

「…………」

由貴はオレの方を向いてない…

「由貴…そうなの?」
「だって…何だか恥ずかしいじゃない…夫婦でなんて…」
「由貴……」



「…………」

お互い風呂にも入ってパジャマに着替えた由貴がリビングに入って来た。

「由貴…」
「ん?」
「ちょっと…」
「なに?」

ソファに座って由貴を呼ぶ。

「…………」
「そんな顔するなよ…くすっ…」

由貴をオレの足の間に座らせて後ろから抱きしめた。
由貴の肩にオレの顎を乗せて密着する…由貴は嫌がらなかった…

「だって…勝手に決めちゃうんだから…」
「そんなにイヤ?」
「………そりゃ…楽しかったけど…大変だったのも事実で…でも…」
「オレは…由貴に傍にいて欲しい…それだけ…ごめん…オレ我が侭で…」
「……どうしたの?そんな素直に謝るなんて…」
「いや…少しでも由貴が納得してくれたらな…と思ってさ。」
「………仕方ないわよ…確かに他にやれる人いないし…
そんな余裕うちの事務所無いものね…」
「社長命令だし?」
「そうさせたのは惇哉さんでしょ!」
「いや〜社長が誰にさせようか悩んでたから…ちょっと助言を…」
「もう……」

「だから由貴好きだ…」

「どう言う意味?」
「なんだかんだ言ってオレの言う事聞いてくれる…」
「別に惇哉さんの言う事聞いたわけじゃありませんから!仕事としてやるの!」
「相変わらず意地っ張りだし…」
「何よ!」
「素直にオレの為って言ってくれればいいのに…」
「言いませんから!」
「まったく…あのタヒチの甘〜い夜の由貴はどこに行っちゃったんだ…はぁ〜〜」
「なっ…何よ…そんなにガッカリしなくてもいいでしょ…」
「本当はさ…」
「?」

「由貴にはあんな可愛い部分もあるんだよ…素直でさ…」

「…………」

「もう一度…見せて…由貴…」

そっと耳元に囁いた…

「…やっ………む…無理…」

由貴の身体がピクン!跳ねた…可愛いな…

「由貴……」
「そんな…ところなんて…無いから…無理!!」
「ある……」
「ない…や……」

いつの間にかパジャマのボタンが途中まで外されて肩からスルリと落とされた…
キャミソールの肩紐も惇哉さんの指先で肩から落とされる…

「由貴……」
「…ん……アン…」

後ろから惇哉さんの両手がそっと私の胸を包んで優しく指を動かす…
首筋と耳に惇哉さんの息が掛かって…啄ばむ様なキスをされる…

「由貴……」
「あっ……」

ソファで抱かれるなんて…久しぶりだった……

勝手にマネージャーをやる事を決めた惇哉さんは少しは気にしてるみたいで…
これでも私に気を使ってるつもりなんだと思うけど……

もっと他に方法はなかったのかしら…?

なんて思う…

「うっ………あっ!んああっ!!!」

狭いソファの上で無理な態勢で身体を押さえつけられながら
惇哉さんが私に入ってくる……

それでもいつもより優しく抱いてくれて…
一応その気持ちだけは受け取っておくから……

「……惇哉…さん……」
「由貴………」
「そんなに…私に傍にいて…欲しいの?」
「ああ……いつもオレの…傍にいて……由貴……」
「それじゃ…ンッ…仕事に…ならないじゃ…ない……」
「大丈夫…オレを誰だと思ってるの… 『 楠 惇哉 』 だぞ…」
「説得力……無い……」
「そうかな?」
「んあっ!!!……も……」

急に押し上げるから…大きくのけ反った…
そんな身体を惇哉さんが押さえ込んでさらに押し上げるから…
私はギュッと目を瞑って惇哉さんの背中にしがみ付いた…

本当に……自分勝手なんだから……


次の日は途中だった事務の仕事で私は朝から事務所に出勤して…

更に次の日から映画の撮影が始まって…


そして2度目の惇哉さんのマネージャーとしての仕事が始まった……