由貴ヤキモチ編 03





『由貴姉?』

「智匱君?」

あれから数日後…
もうすぐ夕飯と言う時間に私の携帯に電話が掛かって来た。

『あのさ…今日ダンナいる?』
「え?惇哉さん?」
「ん?」
「あ!」

人が電話に出てる間にしっかりとおかずを摘み食いしてた!

『由貴姉?』
「あ…ううん…帰ってるけど?」
『じゃあ後で行ってもいい?』
「構わないけど…今来れるなら一緒に夕飯食べましょうよ。」
『ちょっと待って………杏華もいるんだけど…いい?』
「え?別に…構わないわよ…」
『わかった…なるべく早く行く。』
「じゃあまた後で…」


智匱君とはあれからそんなに変わった事は無い…
マネージャーさんも復帰したから智匱君とは時々事務所で会うくらいだし…
お父さんとも別に特別に会ったりはしていない…

ちゃんと智匱君のお母さんにも話をした…
流石に驚いたみたいだけど自分と結婚する前にお父さんが離婚してたのも知ってたし…
智匱君と同じ様に浮気したわけでも隠し子と言う訳ではないから…と言ってくれたらしい…

お父さんが言ってた通りとても前向きな人で惇哉さんのサイン1枚で丸く収まった。

うちのお母さんはと言うとあまり良い返事はしなかった…
でも私の父親である事は事実だし…智匱君が異母姉弟と言う事も事実だから…
これからどう接するかは私に任せるとは言ってくれた…
でも自分は係わるつもりは無いって言ってた…

でも 『 惇哉クンに実害が及ぶ様なら容赦しないから! 』 なんて怖い事言ってたな…

相変わらずお母さんは惇哉さん贔屓……仕方ないけど…
智匱君が同じ俳優やってるから余計にそう思うのかも…

「何?智匱?」
「うん…今から来るって。何だか惇哉さんいるか確かめてたから…
惇哉さんに用事があるんじゃないかしら?」
「オレに?何だろう…」
「鳥越さんも一緒に来るって。」
「ふーん…」
「あっ!!もう惇哉さん!!摘み食いしないで!」
今も1口パクリとやった!
「だってお腹空いた…」
「もう少し待って!」
「え?なんで?」
「智匱君達が来るからでしょ!一緒に食べるからおかずが減っちゃう!」
「え〜〜〜ああ!じゃあこっち摘んでる ♪ 」
「え?あ!」

キッチンの壁に追い詰められて無理矢理キスされた!

「惇哉さん!?」
「だってお腹空いたから…由貴の事摘む ♪ 」
「だからって…あっ…うぅ〜〜〜!!ちょっ…んんっ!!」

キスから逃げ様と顔を逸らしても直ぐに捕まってまたキスをされる…
いつの間にか抱きしめられて…服も乱されて…
惇哉さんの唇が広げられた服の間から私の身体を啄ばんでいく…

それから玄関のチャイムが鳴るまでキス攻めの身体中のお触りに耐え続けた…


「いらっしゃい……」
「急に悪い…ん?どうしたの?」
「え?ううん…何でもないわよ…」
「またあんたか?」
「は?何その濡れ衣?」

もう…惇哉さんってばウソばっかり…はあ…

「いらっしゃい杏華ちゃん ♪ 」

相変わらず挨拶は杏華ちゃんのみ…もう2人共いつもそんなで…
いい加減普通に接すれば良いのに……

「…………あ…」

「ん?」
「?」

さっきから鳥越さんの様子がちょっと変?
何だかモジモジしてて…興奮気味で…?

「 楠さーーーーんっっ!!!! 」

「  「  「  !!!!  」  」  」

そこにいた彼女以外の全員が驚いた!

鳥越さんがいきなり惇哉さんに飛びついて抱きついたから!!

「え?」

「楠さーん!!」
「な…何?どうしたの?杏華ちゃん?」
「あ…あ…あの…あの……」
「落ち着いて…」

そう言って惇哉さんが鳥越さんの頭に手を置く…
鳥越さんは惇哉さんに抱きついたまま潤んだ瞳で見上げてる…


チクン……


「?」


今……何?


「あ…あの…映画の…オ…オーディション……なんですけど…」
「ああ…結果出たの?」
「はい!でも……ダメでした…」
「!!………そっか…」
「あ!で…でも…」
「ん?」

「今回の映画では使えないけど次の考えてる映画で出てもらうから
スケジュール空けときなさいって!そう言ってくれたんです!!」

「へえーー凄いじゃん!それって映画出演決定って事だよね?」

「そ…そうですよね?そう受け取って良いんですよね???」

「当たり前だろ?あの人冗談言う人じゃ無いし約束は必ず守る人だから
きっと次の映画で使ってもらえるよ!はは…良かったね!杏華ちゃん!!」

「ありがとうございま…すぅ……こ…これも…く…楠さんの…お…お蔭…ふえ…」

「何言ってんの?全部杏華ちゃんの実力だろ?それに努力した結果じゃん ♪ 」
「は……はい……」
「おめでとう。」
「あ…ありが……ありがとうご…ざいますぅ〜〜〜〜わぁーーーん!!」
「はは…良かったね。」

オレはオレの胸で泣きじゃくる杏華ちゃんをぎゅっと抱きしめてあげ………ハッ!!!!

「…………」 「…………」

由貴と智匱が無言でオレと杏華ちゃんをじっと見つめてた………

「うっ!!あ…い…いや…コ…コレは!!その…由貴?」


目の前でこれって…いい訳が…でも逆にやましく無いってわかってもらえてる??




「ご…ごめんなさい…私…嬉しくてつい…」

ダイニングテーブルに座って鳥越さんが真っ赤になって俯いてる…

「そりゃ嬉しいよね。初の映画出演が決定したんだからさ。な?」

そう言いながら同意を求めるつもりでドキドキしながら由貴に振った…

「そうよ。おめでとう…鳥越さん。」

ホッ…良かった……怒って無さそう…

「何で俺には黙ってるんだよ!」
「だってやっぱり楠さんに一番最初に報告するのが当たり前でしょう?
オーディションの話をしてくれたの楠さんなんだから!」
「だからってなんで抱きついて大泣きなんだよ!!」
「あ…あれは嬉しくて…つい……」
「…………」
「お前じゃ頼りにならないってさ!」
「は!?」
「惇哉さん!!とにかく食べましょう…お腹空いてるでしょ?
それから食べ終わったらケーキ買ってお祝いしましょうよ。ね?」
「賛成〜〜〜 ♪ じゃあ後で買いに行ってこうよう由貴 ♪ 」
「ええ…」
「あ!そんないいですよ…これ以上ご迷惑掛けられませんから…」
「何言ってんの!折角なんだから皆でお祝いしようよ。」
「じゃ…じゃあ私が買って来ますから…」
「祝ってもらう本人が買って来てどうすんの?」
「そうよ…今日はお祝いって事で惇哉さんの奢りだから気にしないで!
お店で一番高いケーキにしてもらうから。」

「え?」

由貴……もしかして本当は怒ってる??

「由貴?」
「ん?」

ニッコリ笑顔で振り向いたけど……

「………いや…」


今は…聞けそうもない……