出会い編 02
「クスクス…」
「あ!惇哉君想い出し笑いしてる!」
「え?…ああ…ちょっと最近面白い事があって。」
「えーなに?」
「内緒!オレ1人の愉しみだからさ。」
「チェ!つまんなの!」
撮影のメンバーで飲みに来てるお店でオレは満知子さんの娘の
『 由貴 』 と言う女の事を想い出して1人笑ってた。
あの後何度かバッタリと会った時もちょっとからかったら面白い反応で
時々掛ける電話の会話もこれまた面白い反応で…オレを愉しませてくれる。
何だろう?男に免疫が無いのか?
確かに男に縁の無さそうな女だもんな…男を寄せ付けないオーラ出てるし…
「飲んでる?楠君!」
そう言ってオレよりちょっと年上の女優が隣に座る。
「飲んでますよ。」
「未成年じゃ無いよね?」
「ちゃんとハタチ越えてますからご心配なく。」
「そのわりにはいい飲みっぷり!いけるクチじゃない!」
「結構抵抗無く飲めましたね…」
お酒が飲める様になってまだ日が浅いのに飲んでもあんまり顔に出なかった。
自分でもビックリで…まあ…たま〜に記憶無い時あるけど…本当にたまにだ。
「ん?何?」
酔ってほんのりピンク色の頬に染まってる彼女を見てたら気付かれた。
「いや…酔ってる女の人って色っぽいなぁ…って思って。」
「あらぁいやだ!口説いてもだめよぉ〜あたし旦那いるんだから ♪ 旦那一筋なの ♪ 」
「はは…残念!なぁんてオレ人妻には手を出しませんから。人の彼女にもですけど。」
「え?そうなの?」
「あ!何?その意外って顔は?」
「いやぁ〜楠君ならどんな相手もイチコロなのにーって思ってさ。
ちょっと甘い顔と声で迫れば旦那持ちだろうと彼氏いようとなびいちゃいそうだけどね。」
「でもなびかないんでしょ?旦那さん一筋って言ってたじゃん?」
「まあ10回に1回くらいはフラフラしちゃうかも…楠くんなら。」
「そりゃどうも…」
甘い顔と声か……ふむ…
初めて彼からの電話があってからもう大分経つ…
あれから電話の掛かってくる回数が何気に増えてきてる気がする…
ワザと出ないと何度も何度も掛かって来て…出れば出たで変な事言われてからかわれる!!
もう!!一体何の??あの男はっ!!!
「あ!」
最近会ってなかったのに偶然帰りのエレベーターでバッタリ会ってしまった。
時間は夜の8時過ぎ…何でこんな時間に……
「今帰り?」
「そうだけど…」
「まさかデート?」
「違いますっ!!って何よ!その 『 まさか 』 って!言い方が失礼よ!」
「だって恋してる様には見えないもん。」
「余計なお世話よ!!」
2人で下りて来たエレベーターに乗り込んだ。
出来れば次のエレベーターに乗りたい気分だけど…
前1度そうしたら次に来たエレベーターにも彼が乗ってた。
扉が開いた途端にっこりと満面の笑顔で迎えられて…
タップリと嫌味を言われた事があるからそれから止めた。
「由貴!」
「 は? 」
エレベーターを下りてサッサと廊下を歩き出した私に向かって…
彼が初めて私の名前を呼んだ。
「今何て?」
「由貴!」
「何で呼び捨てなの?」
「何で?呼びやすいから。」
「あのね!私はあなたより年上なのよ!ちゃんと敬いなさいよ!!」
「年上?同い年だろ?満知子さん言ってたもん。」
「あなた5月でしょ?私3月だから!!!」
「たかだか2ヶ月じゃん!それに今は同じ歳だし。」
「2ヶ月でも学年は私の方が上でしょ?あなたが小6の時私は中学生だし
あなたが中3の時私は高校1年生だったのよ!先輩でしょ?」
「成人したらそんなの関係ないね。それにオレ由貴と同じ学校じゃ無いから先輩でもない。
ってかオレの誕生日知ってるんだ?すっげー ♪ あんなにオレの事色々文句言ってるくせに。」
「!!」
言いながら顔を覗き込まれた!
「イチイチ近寄ら無いでよ!別に好きで憶えた訳じゃないですから!
母に教え込まれて仕方なくですからっ!!自惚れないで!」
「じゃあオレのスリーサイズも知ってるの?」
「は?」
「身長体重も?出身校も?デビュー作品も?今までの出演作品も?」
「……!!!」
知ってるのが何とも言えなくて…思わず視線を逸らした…
「へー…知ってるんだ…それはそれは…」
「…だから…仕方なく…で…」
「嬉しいなぁ…由貴…」
「!!」
顎を彼の指先でクイッと持ち上げられた!!
「じゃあオレのファースト・キスの歳も知ってるんだ…」
「!!!」
彼の顔が目の前にあって……今にも唇がくっ付きそうに近い…
「…っぷ!!」
「?」
「由貴ってば顔真っ赤!!」
「なっ!!」
そう言いながら彼が私から離れた……でもまだ笑ってる!!
「由貴って初心!」
カ ッ チ ーーーーーー ン ッッ !!!!
「最っっっ低ーーーーーーっっ!!!」
バ チ ン ッ !!!
「痛っ……てっ!!!」
思いっ切り彼の頭を掌で横殴りしてやったっ!!
顔を叩かれなかっただけでも有り難いと思いなさいよっ!!
「人をからかうのもいい加減にしてっ!!私はあなたのオモチャじゃ無いのよっ!!
失礼にもほどがあるでしょっっ!!フンッ!!!!」
「由貴!」
自分の部屋に帰ろうとする由貴の腕を掴んだ。
「何するのよっ!今度はチカン?」
「確かに由貴はオレのオモチャじゃ無い…」
「………」
あ…何だか嫌な予感がする…
「でも…」
「でも何よ?」
更に嫌な予感がする…
「由貴はオレの世話係なんだよな?」
「 !!!! 」
「な?」
そう言ってにっこりと微笑まれた…!!