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「ん!」

夜の繁華街を知り合いと飲み屋に向かって歩いてた。
オレは黒沢濯匡(kurosawa takusu)25歳。仕事は色々。
いつも自由気ままな生活で時々女の所に行ったりと…

なんて自己紹介してたら目の前からカップルが一組。
男はどうでもいいが女の方はなかなかの顔と身体。

やりたい!!

だからすれ違い様に女の腕を掴んで引き止めた。

「…なっ!!」
「へえ…」

近くで見たらますますイイ女だった。

「何するんですか!離して!」

しかも気が強い。

「あんたが気に入った。これからオレと付き合え。」
「は?冗談は止めて!行きましょう山岡さん。」
「彼氏はここでサヨナラだ。なあ?」

そう言いながら男の顔を覗き込んだ。
気の弱そうな男で既にビビってる。

「やめて!行きましょう!」
「だから行かせねぇって…」

掴んでた腕を引っ張った…その瞬間!!

「!!!」

ビシュッ!!と空気が裂けた音がしてオレの左の頬を何かが掠めた。
思わず女の腕を離した。

「チッ…外した……」

「は?」

そんなセリフを吐いたのが今までオレが腕を掴んでた女だったから自分の耳を疑った。

「行きましょう。山岡さん。」
「ハッ!待てよ!お前…」

また女に手を伸ばすと振り向き様に廻し蹴りが襲って来た!
それを片手で止めた。

「!!!」

女が驚いた顔してオレを見る。

「悪ぃな…この位どってこと無いんで ♪ 」
「あらそう?」

「!!」

軸の足でジャンプして反対の足で蹴り入れられた!
腕でとっさにガードしたが勢いでよろめいた。

「…チッ!!」
「あらこの位どって事無いんでしょ?」

勝ち誇った様な顔された!!腹立つっっ!!

「ああ…来いよ!」

道端で女相手に大立ち回りだ!

「濯匡行くぞ!」
一緒にいた奴等が呆れ顔でオレを呼ぶ。
「いいから先に行け!この女にお仕置きすんだよ。」
「……まったく…彼女!先にコイツに謝った方がいいよ。しつこいから!」
「誰が謝るもんですかっっ!!」

お互いやる気満々だ!そんな会話の間もお互い睨み合ってた。

「でも彼女!連れの彼氏逃げちゃったけど?」

「えっっ!?」

今頃気付いたらしい…辺りをキョロキョロ見回してる。

「あーもーまた逃げられたっっ!!」

「!!!」
キッ!っと睨まれた。
「また逃げられたってそんなに男に逃げられてんの?お前。」
「!!うるさい!!今日はアンタのせいでしょっ!!」
ビシッと指さされた。
「あー?自分の男の見る目の無さをオレのせいにすんなっっ!」
「べー最悪っっ!!」

オレに舌を見せてそいつは歩き出した。


「待て!!まだ終わってねーんだよ!」
「しつこいっっ!!」
急に走り出した!
「だから待てって!」

逃がすかっっ!!

「おい!濯匡!!」

仲間に呼ばれたがオレは振り向かずに女を追いかけた。



「本当しつこいな…」

大分走ったのにまだ追いかけて来る。
きっとこのままじゃ追い付かれる…
仕方ない…あたしは走るのを止めて立ち止まって振り向いた。
やり合うつもりで人気の無い公園で…

「一体あたしと何がしたいわけ?」

ほんの少し遅れでアイツが公園に入って来る。

「は?何?………H!」

「!!!バカっっ!!誰がハイそうですか!なんて言うと思ってんのよ!!
じっくり考えたそんな答え聞きたくも無いわよ!この変態!!」
「?なんで?正直に答えてやったんだろうが!」
「その性根叩き直してあげるわよ!」
「直せるかな?」
「本気出すもの…」
「ヘエ……」

お互いファイティングボーズだが…どうやら相手の女は何か拳法らしい…空手か?
まあオレも自己流で色んなモノが習得されてるから負ける気はしない。

返り討ちにしてくれる!!そんでそのままホテル直行だっっ!オレが勝つんだから当然の権利!


「あら?真琴ちゃん?」

「!!!」

お互いタイミングを見計らってたら公園の入口から女の声で呼ばれた。
女の方が…だから一時休戦になった。

「高梨さん…」

「高梨?」
それにこの声って…

「こんな暗い公園で何してるの?今夜デートだって言ってなかったかしら?」

近づいて来て顔を確認すると…やっぱり…
「それが…その……」
「あら?黒沢クン?」
「………」
「どうして2人が?」
「高梨さんこの男の事知ってるんですか?」
「ええ…まあ…」

「縁を切られた方がいいですよ!こんな最低男!」

「あらどうしたの?」

「初対面のあたしにイヤラシイ事言ってコイツのせいで山岡さんには逃げられるし…
デートぶち壊されたんですっっ!!」

思いきり人の事指指すな!!

「あんな情けねぇ男選ぶからだ。自分の男を見る目の無さを反省しろっっ!」

「黒沢クン…相変わらずね…」
「オレはコイツとしたいと思ったからそう言ったまでだ。
ガキじゃあるまいし素直にオレについてくりゃいいんだよ!ゴネやがって…」
「だからそれって犯罪だって!」
「ああ?何でだ?お互い合意の上だろうが!」
「どこがよっっ!あたしがいつ合意したって?」

「暗い公園に誘い込んだだろ?それって誘ってる以外なんの意味がある?」

「!!…だからぁ!!」

「はいはい…合意して無いって言うのは分かりましたから。
黒沢クン真守さんが探してましたよ。」
「ああ?何で?オレは用なんかねぇ!」
「お金渡したいって言ってましたよ。直接じゃないと渡さないって。
早く来ないと酒代に代わるって言ってましたけど?」
「あの野郎…何度踏み倒せば気が済むんだ…今度こそ殺すっ!!!」
ワナワナと握り拳を震わせてる…そんなにムカつく相手なのか??
「おい!」
「!!何よ……んぐっ!!」

返事が終わらないうちに顎をガシッと掴まれてブチュッ!!っと強引にキスされたっっ!!!

「あら…」

「………!!!!!」

ちょっ……冗談じゃ…
慌てて手の甲で唇を拭いた。

「今度ゆっくり相手してやる。待ってろ!!」

そう言ってサッサと公園から出て行った。

「誰が待ってるかって言うの……もう…」

「ああ見えても彼結構頼もしいのよ。」
「そりゃ腕っ節は強そうですけど…性格は最悪ですよ。」
「…くすっ…そうね…自由気ままな人だから…」
「何してる人なんですか?」
「そうねぇ…本業は探偵みたいなモノかしら?」
「探偵?」
「色々動いてるらしいんだけど詳細は不明。女の人に手が早くて…でもモテるのよ。」
「は?」
「ふふ…でも…エライ人に目を付けられちゃったわね…真琴ちゃん…」
「怖い事言わないで下さいよ…もう会いたくないですから!!」
「彼…必ずあなたの事探し出すわよ。」
「絶対アイツにあたしの事話したらダメですよ!」
「私が話さなくても同じよ。彼そう言うの得意分野だから。」

「ええ〜〜〜…」

あたしは思い切り不貞腐れた声を出した。