07





「おい!」

「………う…ん」

肩を揺すられた。

「起きろ!二度寝すんな!」
「…う〜ん……眠い…」

アイツの父親が帰った後あたしはアイツが何か用事を済ませてる間にウトウトと眠ったらしい…
だってゆうべ散々アイツの相手をして朝も攻められて…眠くなるのも仕方ない。

「朝メシ食いに行くぞ!起きろ!」
「…う…ん…もうちょっと……」

あたしは裸で寝てる事なんてすっかり忘れてて…何だか結構大胆な格好をしてたらしい…
裸の胸がアイツに丸見えだったのも気持ち良く眠ってたあたしはまったく気付かず……

「………」

ギシリとベッドが軋んだ。




「はっ…はっ…はっ…は…あ……」

も…この男は…!!

「ちょっ…なん…で…」
「誘ったのはそっちだ。」

誘ってなんかないわよっっ!眠ってたのにどうやって誘うのよ!!

って言う文句を言えないくらいに攻められて心の中でそんなセリフを叫んでた。

こんなに…するものなの?普通一晩だけとかじゃないの?他の人ってこうなの?
なんて疑問を抱きながらアイツに押し上げられる身体はずっと上下に揺れ続けてる……

ああ…でも…気持ちいい……今までの相手では感じなかったけど…

コイツに…濯匡に抱かれると何でこんなに気持ちいいんだろ…

激しいし息苦しいし身体キツイのに……気持ちいいんだよね……
特に訳が分からなくなるくらい攻められると身体が弾けて開放される感覚がたまらない……

だから濯匡を逃がさない様に無意識にギュッとしがみついちゃう…

そこは濯匡の首だったり背中だったり腰だったり…足まで一緒に絡めちゃう時もあって…
そうすると濯匡は必ずあたしに噛み付く様なキスをしてくれる……

濯匡の身体があたしに密着する度にサラサラな肌の感触と程よい体温が余計気持ちいい。


「っと…!」
「あっ!」

濯匡があたしの身体を抱きかかえてクルリと反転した。
勿論あたしと繋がったまま…

「ちょっ…無理だって…」

あたしは焦って濯匡を見下ろした。

「根性見せろよ。」
「ええ……!!」
「辛い練習も頑張ったんだろ?それを思い出せ。」
「はあ?空手の練習の事言ってるの?」
「ああ。それよりは楽だろ?」
「そんなのと比べるな…ンアッ!!!」

腰を両手で押さえ付けられて下から押し上げられた!やだ…すっごい…奥まで…って…

「うあっ!!ああ!!やあっ!!」

ビクンと大きくのけ反った。

「あ…あ…あ…」

ガクンと今度は両手を濯匡の胸について俯いた。
そしたら濯匡と目が合った…

「…………」

なんかバツが悪い……

「お前1度もオレ勝ててねーぞ。」
「…なっ!!」

カチンと来たっっ!!何よっっ!!その勝ち誇った顔はっっ!!ムカつく!

「だから…こんな事で勝ったって……嬉しくもないから…」
「勝てない言い訳か…」
「違うって…ヒャ!!」

下から胸を鷲掴みされて揉まれまくった!

「…い…や!!」
「嫌なはず無いだろう…なあ…真琴……」

「…濯…匡……」

あたしはそのまま俯いて……

初めてあたしから……濯匡にキスをした……





「いらっしゃい ♪ 」

結局モーニングがランチになってしまった………

「………」

あの後あたしは恥ずかしいくらい乱れて…
と言うか結局濯匡に言いように抱かれて……
しばらく動けなかったから……だからもうぐったりで……

「あ!黒沢さんまた違う女の人連れて来た!」

「は?」
あたしはそんなお店の女の子の言葉に反応してアイツを睨んだ。

「香奈ちゃん余計な事言わない!」

カウンターの中から店長さんがメッって顔で彼女を見つめた。
あたしと同年代くらいかな?でもそのメッって顔は逆に相手を虜にしちゃいそうな
なんとも爽やかな顔だった……

「だって…」

女の子も怒られて嬉しそうだし…

「濯匡何食べるの?」
「任せる。」
「そちらは?」
「え?あ…えっと……」

「正臣を落とすのは大変だぞ。」

「え?」

彼に見とれてたらアイツがそんな事を言った。

「あ…あたしは…べ…別に…」

その言い方はあたしをからかうみたいな言い方で…
何よ…あたしが他の男に見とれても怒らないんだ…

「じゃあAランチで…」
「はい。」
またまたニッコリと微笑まれた!


「あんたがこんな洒落た店知ってるなんて意外。」
「は?」

だって煉瓦作りのモダンな内装で窓からはポカポカと日差しが入って来てる。
程よい数の観葉植物の緑が映えて…文学少女が読書でもしていそうな…
だからコイツには不向きだと思ったから…

「濯匡とは高校からの付き合いなんです。」

ランチのスープを運んで来た彼がまたまたニッコリと微笑んで教えてくれた。

「やっぱり…」
「何だ?やっぱりって?」
「あんた個人じゃこんな素敵なお店知ってるわけ無いもんね!
あんたにはキャバクラがお似合いだわ。お色気ムンムンの女の子はべらせてさ!」
「はべらす程モテる男だと言いたいわけか?」
「誰がっっ!!」
「でも此処に女の人連れて来るなんて珍しいね濯匡…」
「そうか?」
「そうですねぇ〜外では良く女の方とご一緒なのはお見掛けしますけど?」

軽蔑の眼差しだわ……

「何だ?オレと歩きたいのか?」
「え?いいの?」

は?嫌ってるんじゃないの?

「後5年経って胸が10cm大きくなったらな。1度くらい抱いてやってもいいぞ。」

「んぎゃあああ!!やらしい!黒沢さんっっ!」

「………」

この男は……いたいけな女の子にそんなワイセツなセリフ吐くなっっ!
多分高校生?くらいかな?

「濯匡セクハラしないでよ。」
「もうあんたのせいでここのお店の雰囲気台なしよ!おバカ!!」

「!!!」

正臣さんと言う人がキョトンとした顔であたし達を見た。ん?

「良いから早く食え。体力消耗してんだろ?」
「え?また朝まで?」

ってちょっと女子高生!!露骨に……

「ベッドで裸の女が寝てたらするだろ普通。」
「あんたはっっ!!少しはあたしに気を使えっっ!!このKY男っっ!!」

赤の他人に何でそんな事まで知られなくちゃいけないのよ!!
ビシュっとアイツの脳天に空手チョップを振り落とした!

「!!!」
「照れる歳か。」

簡単によけられてそんな事言われたっっ!

「よけるなっっ!!」
「普通よけるだろ。」
「くすっ…楽しそうだね濯匡。」

出来上がった料理を運びながら彼がアイツに笑いかける。

「別に…」

「………」

お店ではアイツと話すと言うより彼の友達の正臣さんやアルバイトの香奈ちゃんと話してた。




「………」

お店を出て大きな通りに向かって歩いてる…
アイツはあたしのちょっと前を…あたしはアイツの後ろ姿を何気に眺めてた…
もう…お別れか…そうだよね…もう一緒にいる理由が無いもん…


「オレこっち。」
「え?あ…うん…」

いきなりアイツが振り返ってあっさりそう言った…そうだよね……それが正解……

「………!?」

急に目の前が暗く…

「チュッ!」

ドキンと胸が鳴った。
アイツが触れるだけのキスをしたから…

「じゃあな。」
「……うん…」

な…何よ…今のキスは一体何なのよ……

別れの…キス…?さよならのキス?……最後の…キス?

それとも……

「紛らわしい真似しないでよね…」

あたしは何故か後ろ髪を引かれる気分でアイツとは反対の方角に歩き出した。



ほんの十数メートル歩いた所で行く手を阻む様に男が2人あたしの前に立った。

「何ですか?」

一見して普通の人じゃ無いのがわかる…怪しい雰囲気をかもし出してるし…
1人はスキンヘッドだし……2人共いかにもって言う服装だし…あげればキリがない。

「お嬢さんアイツの…黒沢の女?」
「違いますけど。」
「嘘つくなよ?ついさっきアイツとイチャイチャ公衆の面前でキスしてたじゃねーか!」
「やだ!見てたの?やらしいわね!!」
「はあ?」
「キスはしたけど恋人じゃ無いですから。アイツは女と見れば見境無いらしいですし…
あなた達の方が良くご存知なんじゃないんですか?あたしは知り合って数日ですから。」
「ほう…じゃあなおさら怪しいな。」
「は?」
「黒沢はそうそう自分から遊ぶ女に余計な手は出さないらしいからな…
そいつが別れ際に別れのキスするなんておかしいだろ?」

その顔で別れのキスなんて言わないでよ…寒気と笑いが……

「言い掛かりつけないで!どいて下さい!」
「そうはいかねぇな…あんたにはちょっと付き合ってもらう。」
「嫌です!」
「ああ!?いいから来いっつーんだよ!」

カチンと来てまさに相手の顔面に一発叩き込もうとした時…

「ウチの嫁に汚い手で触らんで欲しいな。」

「!!!」

「テメェ…」

振り向くとアイツの父親が立ってた……でも…嫁って何?

「さっさと行け!じゃないと警察呼ぶぞ。」
「……チッ行くぞ!」

意外にもあっさり引き下がった。



「お礼を申し上げた方が宜しいんでしょうか?」

ワザとらしくそんな言い方をした。

「いやいや朝いいモノ見せてもらったお礼だから。」
「!!!」

キッっと睨んでやった!

「はは…別に見ようと思って見たわけじゃ無い。」
「………」

怪しいのよね。

「でもあの調子じゃまた来そうだな。」
「誰なんですか?あいつ等?」
「え?ああ…君には話してもいいか……」

アイツの父親の話しだとアイツの知り合いから依頼された仕事絡みで
相手に逮捕者と結構な損失を出したとかでアイツが逆恨みで狙われてるって…


「依頼主には手が出せない腹いせに濯匡を狙ってるらしいんだが…
お門違いなんだけど相手も収まりが着かないんだろうな。」
「警察に言った方が良いんじゃ…」
「濯匡がそんな事すると思うかい?」
「はあ…」

しないだろうな…

「まあ濯匡の彼女じゃ無いならこのまま知らん顔してればいい。」
「ってあなたあたしの事あいつ等に『嫁』って言っちゃってるんですけど!!」

自分が言った事忘れてんの?

「え?ああ…つい…悪い悪い!」
「…………」

この親父はっっ…!!

「まあいずれ決着は着くと思うけどアイツと…濯匡と付き合うならこんなトラブルは
日常茶飯事だからその覚悟が無いなら濯匡とは離れた方がいい…」

「え?」

「自分の身が大事ならね。」

「………キャッ!!ちょっと!!」

すれ違い様にお尻を撫でられた!!

「流石濯匡の部屋にお泊りしただけの事はある。ナイスバディ ♪ 」

…こ…コイツはぁ!!ムカッ!!エロ親父がっっ!!!

「待て!!このエロ親父っっ!!」

何事も無かった様にスタスタと歩いて行くあいつの父親を後ろから追い駆けた。
一発殴る為に!!

「え?あ!!ちょっとタンマ!!」

それに気付いてアイツの父親が逃げる…誰が逃がすモンですかっ!!!



色んな事に頭に来て……

思わずアイツの父親に八つ当たりをしてしまった…