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「…あ…や…キツ…イ…」

濯匡の肩をギュッと握り締めた…
目は瞑ったまま濯匡の身体にうなだれる様に寄り掛かって浅い息を繰り返してる…

酔ってるせいなのか…頭はぼーっとしてるし…クラクラするし目は潤むし…

濯匡と初めて最初からこんな体勢でしてる…

着てたシャツはあっという間に脱がされて床の上にある…
膝に座ってたあたしは自分から濯匡を受け入れた…でも…

「それはこっちのセリフだっつーの…」

相変わらず真琴の中はキツイ…絞まってるって言うのか?やっぱ鍛えてる女は違うのか?
なんてどうでもいい事を考えてた…

真琴の浅く早い息がオレの首筋に掛かってくすぐったい…

「真琴…まだだ…」
「あン…無理……うっ………」

腰に廻した腕で真琴の身体を優しく押した…

「濯…匡……」

オレの名前を呼びながらオレの頭を抱き抱えるから思いきり真琴の胸の谷間に顔が埋もれた……
だから吸い付いて舐めた…

「ひゃっ……くすぐったい……ン……あっ…あっ…うっく…」

濯匡がゆっくりと動き出す…ものすごい圧迫感で息が詰まった……

「はっ…はっ…はっ…ああっ!!」

でも……ホント…いつも…濯匡に抱かれると……

「あ…キモチ…イイ………」

「!!!」

そう呟くと真琴から思いきり舌を絡ませるキスをしてきた……




「あ…あ…あ…」


真琴がシーツをギュッと握りしめてオレが押し上げるのを耐えてる…

酔ってるせいなのか今日の事を忘れる為なのか……今までで一番…激しい……


「濯…匡……」

今日何度目かのオレの名前…一体何度目だ…

「真琴…」

オレの身体に真琴の腕と足が絡み付く……

何度も何度も舌を絡めたキスをお互い繰り返して…オレは思いきり真琴を攻めあげた。




「………ん…」

しっとりと汗ばんだ真琴がオレの腕の中で気持ち良さげに眠ってる……

「何だかな……」

確か真琴を抱くには条件があったはず…こんなに簡単に条件曲げていいのか?

「まあいいか……もう1回やっとくかな…」

オレは眠ってる真琴を覗き込んでそんな気分になる…
体勢を変えて真琴の足の間に滑り込んだ。

「真琴…」
「………ん…」
「もう少し根性見せろよ。」
「……え…?………うん……あ…え……なに?」
「ちゃんと目覚ませ…」
「……ん…?」

濯匡が何か言ってる……何?眠くて酔ってて良くわかんない……
って……片足を担がれて腰が浮いた……

「……ンッ!!!あっっっ!ちょっ…と…濯匡!!」

濯匡の体重を感じながらジワジワとあたしの身体の奥へ奥へと入って来る………

「ばっ…ンア……」

嫌でも目が覚めた!



強引に覚まされた眠気はあれから散々攻められたてまた深い眠りに落とされた……




「………」

明け方にベッドから抜け出してソファでタバコを吸った……
オレはこの場所から眺める外の景色が気に入ってる…
今はうっすらと明けかかってる朝の空だ……

「……今更無かった事になんて出来ねぇよな……失敗した……」

最初に真琴に声を掛けた時は1回相手をさせて終わるつもりだった…
それが本格的に抵抗されて興味が湧いて…気付いたら巻き込んでた……

今回は取り返しのつかない事にはならなかったが…次はわからない……
自分ではそんな危ない事をしてるとは思わないが気付くとそう言う羽目になってる。

正臣達が言うにはオレは 『 トラブルメーカー 』 だそうだ…
至って普通だと思うんだが……



アイツから…離れてくれると助かるんだがな……




「ふあ……」

寝不足だ……何とか職場では欠伸を我慢した…
今朝はあたしが朝食を作った…別に褒められたりしたわけじゃないけど…
何だか新婚さんみたいで……変なドキドキが……


「菅谷さん。お電話です。」
「え?あ…はい。」

あたしに電話なんて…誰だろ?

「もしもしお電話代わりました。菅谷ですが?」

『お仕事中ごめんなさい。柊夜です。』

「………?え?柊夜さん!?」



「あ!菅谷さん!」
「!!」

オープンカフェのちょっと奥の席で柊夜さんが手を振った。
教えてもいないのにお店に電話…どうやって調べたかは聞く気にもならなかった…
この人も濯匡と同じ様な人なんだった…


「昨夜の今日で大変だったでしょ?」
「え?あ…はあ…まあ……」

濯匡の所に泊まったから寝不足とは言えない……

「その分じゃ昨夜は濯匡の所にお泊りかな?」
「えっっ!?あ…いえ…その…」

何でこんなにしどろもどろなの?あたし?
だって何だか浮気したのを男の彼女に追求されてるみたいで……
心臓がバクバク言ってるし…

「やっぱり2人はそう言う関係なんですね。」
「あ…でも…恋人ではないですから…それは本当です。はい…」

「じゃあ身体だけの関係?」

「!!」

本当はそんな関係嫌だけど…

「しかも貴女の方が濯匡から離れられない?」
「そっ…そんな事…!!!」
「なら話しが早いです。もう濯匡とは関わらないで下さい。」
「はい?」
「その方が2人のためです。」
にっこりと微笑まれた…
「それは…どう言う…?」
「今回の件で分ったと思いますがこのまま濯匡と関わりを持つとあなたにも迷惑が掛かるからです。」
「…………」

その言い方は…ハッキリと…キッパリと…何かを決意した言い方だと思った。

「僕はもう濯匡にあんな思いは2度とさせたくないから…」
「あんな?」
「正臣から聞いたでしょ?高校の時の話…」
「あ…はい…」

確か濯匡の知り合いの女の子が濯匡のせいで事件に巻き込まれたって言う…

「確かに大事には至らなかったけど…あの時濯匡自身もちょっと精神的に
ダメージ受けてた時だったから…2重に辛かったと思うんです…
僕はそれを知ってるから……正臣達は濯匡に彼女をなんて言ってますけど…
僕はそんな事賛成していない…別に今は特定の女性を作らなくても濯匡なら
上手くやっていけるし…結婚だって絶対しなくちゃいけないわけじゃ無い…
まあもっと歳をとって落ち着いてからでも良いと思うし…」

「…………何でそんな事ワザワザあたしに?」

「…今の貴女は濯匡に近付きすぎてるからです。それは非常に良い状態ではない。
貴女にとっても…濯匡にとっても…ですから身体だけの関係で終わるなら構わないのですが…
それに今の様に頻繁に会うのは止めた方がいいと思います。」

「…………」

「濯匡は自分でも気付かないうちにトラブルを引き寄せる。そう言う性分なのか…わかりませんが…
だから僕は少しでもそんな要因を濯匡の周りから排除したいんです。
でも…もし…濯匡の事が好きで好きで忘れられないと言うのなら…」

「言うなら?」
「それなりの覚悟で濯匡と向き合って下さい。
そして自分の身に起こる事全て……濯匡のせいにしないで欲しい…」
「………」

「濯匡もそうですが僕は相手の女性にはいつもそうお願いしています…
身体だけの関係と割り切っていただけるのなら僕は何も言いませんけど。」

「…………」

真剣な柊夜さんの言葉だった…

きっと彼は高校の時の濯匡を知ってるから…
一緒にその時の事件を体験してるからそんな事を言うんだ…

真剣に濯匡の事を心配してる…多分…相手の事も…


相手の女性が傷付くと言う事は……濯匡も傷付く事と同じだから……


『 濯匡は優しいんだよ… 』

正臣さんのそんな言葉が思い出された…




柊夜さんとそんな話をしてから2日後…

「菅谷さん。ちょっと…」
「?…はい…」

手の空いた時間にお店の店長に呼ばれた。
店長は今で言う 『 オネエ 』 系の方…でも腕は一流だ。
お年は…内緒らしい…


「今日お店のポストにこんなのが入ってたんだけど…」
「?」

何とも気まずい態度であたしに何かを渡す…手渡されたのは白い封筒…何だろう?

「 !!! 」

中から出て来たのは…数枚の写真で…写ってるのはあたしと…濯匡で…
撮られてる場所はホテルの入り口で…今まさに入ろうとしてる瞬間の写真!!

あの…連れ去れた時に入ったホテルだ…

「………なんで?」
「まあ別に不倫とか浮気ってわけじゃ無いから……
でもこんな写真が此処に送られて来るって事自体が問題で…
誰かに恨まれてるのかもしれないでしょ?」
「恨まれてる?」
「じゃなきゃ嫌がらせか…ストーカー?」
「ストーカー??」
「菅谷さんじゃなくても相手の殿方の方とか…」
「…………」
「素敵な殿方ですものね ♪ そんな相手の1人や2人いてもおかしくないでしょ?」
「そ…そうですかね……」
「まあ…今の所お店も実害は無いわけだし…私の胸の中に収めとくけど…
今後相手の出方によってはちょっと考えなきゃいけないと思って…一応お客様商売だし……」

「……あ……はい…ご迷惑お掛けしてスミマセンでした……」

遠まわしにお店に迷惑が掛かるようなら辞めてもらうってって事よね……


あたしは深々と頭を下げた…頭を下げながらこれは絶対濯匡絡みだと確信した!!!!

あの男…いい加減な気持ちで女と付き合うからこんなしっぺ返しが来るのよぉーーーっっ!!!

問い詰めてやる!!

と心に固く決意して拳を握り締めた!!!