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あの濯匡との写真がお店に送られて来てから2日経った…

本当はその日にでも濯匡の所に追求に行こうかとも思ったけど
柊夜さんの言葉や濯匡の顔やら…色んなものが浮かんで何だか行きずらい…

その後あたしにも別に何がと言うわけでもないし…
確かに独身の1人身のあたしと濯匡の写真で何をどうこうしようが無いのも確かで…

一体何のつもりなんだろ?


「やっぱ濯匡の事が好きな相手よね…で?あたしに濯匡に近付くなって事かしら?
でもこの写真はどんな意味があるんだろう?う〜ん…いつも監視されてるって事?」

そりゃいつも誰かがあたしの事見てるなんてちょっと気持ち悪いけど…
もう少し様子を見ようと思って濯匡には言ってないんだよね…

それに…何だかいくら用件があるからって…自分から濯匡に連絡するのも
ちょっと気に入らないというか…意地があるというか…

散々あんなコトしてるんだから今更なんだけど…

考えてみるとアイツからあたしに会いに来たなんて最初にお店に来たあの時と
初めてアイツと関係を持った日だけなんだよね…

その後は何か用件があってあたしの前に現れただけ…
柊夜さんの言う通りあたしから何も連絡しなければアイツはあたしに会いに来たりしない…

「……はぁ…何であんな男と係わっちゃったんだろう…」

なんて今更な事を言ってる。
だって…あたしを力で捩伏せる男なんて初めてで…
多分アイツは物質的にはあたしを守れる男だと思う…精神的には分からないけど…
それにあたしはアイツとは身体の相性も良いんじゃないかと思うけど…濯匡はどう思ってるか…

ってこれじゃああたしがアイツに参ってるって事!?


「…………」

そんな所が何だか悔しい所で…素直になれない…

「ああ!もう素直って何!?」

そんな事を仕事帰りで歩きながらブツブツと呟いてた。

「真琴さん!」

「え?」

誰かがあたしを呼んだ。
接客業がら人の声とか覚えるのは得意で…でもこの声に聞き覚えは無い…
警戒しながら振り向くと…

「こんばんは。」
「あ…こ…こんばんは…?」
「僕の事やっぱり覚えて無いですか?」
「??」

誰?
見た目はちょっと良いトコのお坊ちゃんって感じ…
パーマのかかった短めな髪に…カジュアルなスーツ…

「ちょっと変な言い掛かりつけると…」

最近少々神経過敏!仕方ないと言えば仕方ないと思う。

「やだな…そんな邪険にしないで下さいよ。僕は 『 スタセーラ 』 の 『暢』です。」
「ノボル…さん?」

柊夜さんのお店の?こんな人いたっけ?
って言ってもあのお店に行ったのあの時だけだし…

「あの晩お店のNO5までがお2人をおもてなしして…僕はまだ入りたてで…」
「ああ…」
「同じフロアにはいたんですけど他のお客様のお相手してました…」
「そうなんだ…」
と言う事はあの時お店にはいたんだ。
「で?あたしに何か?」
「あ…いえ…失礼だとは思ったんですけど…
あの日貴女をお見かけしてお近付きになりたいと思いまして…」
「はい?」
「いえ…決して仕事絡みと言う訳ではなくて…1人の男して貴女に興味がありまして。」
「はあ……」

って…それはどう言う意味なんだろう??

「もし宜しければ今晩僕と付き合ってもらえませんか?」
「………はあ????」
「あ!付き合うといってもお酒を一緒に飲みませんか?と言う事なんですけど?」
「お酒…ですか?」
「はい。あの時貴女はとても楽しそうに飲んでらっしゃってたから…
一緒に飲んだら楽しいかなぁ…と思いまして。」

「………あ…あの…」

「はい?」

「これって……デートのお誘いって事ですか?」

「!!……はい。お嫌でなかったらですが。」

今まで…こんな風に誘われた事なんて…無かったかもっっ!!!

ホストの仕事抜きで?ホントに??
まあ話半分って所かしらね…だって…やっぱり相手はホストだもの…


あたしはそう思いながら…
写真の事や濯匡の事もあって1人で飲むよりはと思って彼のお誘いを受ける事にした。

それに柊夜さんのお店の人と言うのも誘いを受けた理由の1つ。

その辺でナンパされたんだったら即お断りだったけどね。





「で!初デートの時に相手の目の前で引ったくりを蹴り倒しちゃったのよね…」

「へえ…真琴さんって勇ましいんですね。」
「男勝りって言いたいんでしょ?」
「あ…もしかしてちょっと酔ってます?」
「ちょっとよ!ちょっと!!ちょっと酔ってる…かも…」

だって流石一流ホストクラブのホスト?洒落たお店知ってるわお酒飲ませるの上手いわ…

それにやっぱりタイミングが悪かった?


「……あれ?」

なんだろ…クラッと来た…このくらいの量で…?

「大丈夫ですか?」
「え?あ…うん…そんなに飲んで無いのに…何だか酔ったみたい…ごめんなさい…もう帰るわ…」
「じゃあ僕送ります。」

「ううん…大丈……夫…」

何でだか……記憶はここで途切れてた。




「ん……」

眩しくて目が覚めた。

「ん?ここ…」

自分の部屋じゃ無いのはすぐわかった…自分のベッドじゃないのも…

「え?なに?…っつ!」

飛び起きたら何気に頭が痛い。

「あれ?あたし…昨夜…?」

ダメだ…記憶が…?

「おはようございます。」

ビ ク ン !!

え?おはよう…ございます?男の声?でも…この声は…

「……………」

声の方に恐る恐る視線を向けるとちょうどあたしに背を向けてジャケットを着る所だった。

「!!!暢…さん…?」
「先に行きますね。支払いは済ませておきますのでゆっくりしていって下さい。」

「支払い?………ハッ!!」

今更ながら自分が裸なのに気が付いたっっ!!

「!!!」

ちょっ…ウソでしょ?だってあたし何も記憶無いわよ!?

「真琴さん…」
「は…はい!!」

もうあたしは自分でも驚く程に身体がビクン!と跳ねた!!

「お互い大人ですから…昨夜の事は一晩限りの事と言うことで…」

「…………」

あたしは真っ青で言葉も無い。

「でもこれをキッカケにお付き合い始めるって言うのも構いませんけどね…」

ちょっ…うっすらと笑ってない?これをキッカケ?覚えてないのにですか?

「その時は連絡下さい。でも…」
「でも?」
「昨夜の真琴さん…積極的で激しくて…素敵でした…」

ゴ ー ー ー ン !!! うそっっ!!

「は…はげ…しい…?!」
「……では…」

そう言って静かにドアを閉めて彼は出て行った。



「……ウソでしょ…」

確かに…裸だ…下着も着けてない…
でも今までこんな事無かった…お酒に呑まれるなんて!!

……した事を…覚えて無いなんて…そんな事…

「って…数えるくらいしか…してないけど…」

でも本当に…したのかしら?身体があんまりいつもと変わらないし…
まあちゃんと避妊してくれたならそんなに身体に残らないか?
もしかして終わった後シャワー浴びたのかも…ああ…わかんないっっ!!

自分で自分が情けない…

「ん?アッ!!!」

膝を抱えてたあたしの胸元の掛け布団がはだけて…胸があらわになった…その胸元に…

ハッキリとキスマークが付いてた!!!



「ん?」

夜中に携帯が鳴った。
オレはちょっと前に帰ったばかりでシャワーを浴びて出て来た所だった。
基本オレはとりあえず携帯には出る様にしてる。

「メール?」

しかも真琴からだ。

「アイツオレのアドレス知ってたか?」

確か正臣は携帯の番号しか教えてないはず…

「写真付き?」

不思議に思いながらメールを開く…


「 !!! 」


そこには…ベッドに仰向けに横になる上半身裸の真琴の唇を…

男の指がなぞる写真が映し出されてた。