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「あんたが気に入った。これからオレと付き合え。」

他の男と歩いてた真琴を見た瞬間どうしても抱きたくて真琴の腕を掴んでそう言ってた。

普段から抱きたいと思った相手とは殆んどがそのままホテルのベッドに直行だった。
まあそう言う相手にしかそんな事を言ってなかったのかもしれないが…
1回限りが出来なさそうな普通の女にはそんな事は思わなかったし言わなかった。

なのに真琴にはオレの読みが外れたのか即答で断られた。

まあ他の男とデート中じゃそんなもんか?
って言ってもなんとも不釣合いな相手だな…なんて思った。

自分の連れの女がいきなりこんな失礼な事言われてもオレに食って掛かってくることもしないで
逆に男の方が全開にオレにビクついてる始末。

こんな男の何処が良くて一緒にいるんだか…何でだかそれがオレを余計にムキにさせた。

どう見たってこんな男といるよりオレに抱かれた方が数万倍も良いだろうが。

それなのにいきなりオレに手刀の廻し蹴りだ。
こんな女初めてだった。

オレは一瞬で気分が高まって道端で真琴相手にヤル気満々だった。
真琴だってヤル気満々だったはず…

でも一緒だった男が逃げたのがわかると真琴までサッサと逃げ出した。
冗談じゃ無い!こんな面白い女逃がすか!

走って逃げる真琴を追いかけた。


その後も真琴に近付いては迫ってからかって追い詰めて…
まだ肌寒い季節に公園の池にハマらせて…体良くオレに部屋に連れて来る事に成功した。

気の強い真琴は早々オレに抱かれ様としないからここは真琴を力でねじ伏せて…
案の定そうなったらあっさりと真琴の抵抗は無くなった。

空手をやってるせいか真琴の身体は引き締まってて…でも女らしさは十分な身体だった。

あまりの男の経験の無さに驚いたがヤッてみれば身体の相性は抜群に良かった。

最初の目的も果たしたしもう真琴とはオサラばだと思ってたのに…
どうしてあんなにも真琴の事が頭から離れなかったのか…

オレに係わるとロクな事が無いのは自覚してたから自分から真琴を距離を取った。
なのにオレの気持ちとは裏腹に真琴の距離は狭まっていく…


気が強くて…気が短くて…天邪鬼で…その上腕っ節が強くて…真っ直ぐで…

なのに本当は少女みたいな願望があって自分を守ってくれる男を待ってたんだよな…

自分よりも強い男……自分を腕力で上回る男…そしてそんな男に支えられたいと思ってた…



「なんだよ?」
「ううん…」

結果的に出来ちゃった結婚だったオレ達…
真琴の妊娠は予定外なものだったが何でだかオレは結構早い時期から
子供が出来ても構わないと思ってた。

真琴の奴はオレがそんな風に思ってるなんてこれっぽっちもわかってなかったから
子供が出来た時自分1人で産んで育てようとしてた…

そんなにオレは血も涙も無い奴だと思われてたのかと呆れるやらガッカリやら…
流石にちょっとカチンと来たのは確かで…だから最初はワザと堕ろせと言った…

言った瞬間の真琴の顔と涙を見た時真琴が1人で育てるなんて
意地張ってるだけだって直ぐにわかった…ったく素直じゃねぇ…

オレに迷惑を書けない為だってのはわかってたけどな……

でもって早急に籍を入れてめでたく夫婦になったわけだが…
自分ではそれなりの覚悟はしてたつもりだが…
どうやら思った以上にオレは育児と言うものが似合わないらしい…

他人から見ると!



濯匡と知り合って…最初はあたしの身体目当てだと思ったから…
実際そうだったんだけど…

だから出会った時の印象は最悪だった。

目の前に現れる度にからかわれて…好きでもないのにあたしに絡んで…

でも…濯匡の強さは本物で…今まで…(中学校の頃からだけど…)
男になんて負けたことの無かったあたしの実力がいとも簡単にねじ伏せられて…

だから…きっと…あたしは出会ってすぐに濯匡に参っちゃってたんだと思う…

なのに…他所の女とは相変わらずだったし…あたしを変な事件に巻き込むし…
人をその気にさせては離れるし…

とにかくあたしの事を散々掻き回してくれた…

でも…本当の濯匡はとっても優しくて…友達思いで…ただちょっと不器用なだけ…

あたしの事を腕力でも精神力でも受け止められる男だってわかったから…
あたしは濯匡を選んで…掴まえて…離さないって決めた。

あたしや自分の友達関係以外にはあまりそんな優しさを見せない濯匡…

そんな濯匡が今目の前で…あのお気に入りの窓際のソファに座りながら
生まれてもう少しで4ヶ月になろうとしてる自分の息子に哺乳瓶でミルクを飲ませてるなんて…

きっと他の人が見たら卒倒ものでしょうね…
特に香奈ちゃんが見たらなんて言うか…手に取るようにわかるんですけど…

それに正臣さんや柊夜さんが見たらどう思うのかいつも不思議に思う…
濯匡が匠を抱っこしてるのは見てると思うけど…

「けふっ…」

しかも授乳の後のゲップまでさせる姿なんて…お宝物かも…

でも…濯匡が赤ちゃんを抱いてる姿もあたしは結構気に入ってて…
我が旦那ながら見惚れちゃうのよね…

「さっきから何人の事ぼーっと見てんだよ。」
「え!?あ…ううん…」

「惚れ直したか?」

「 !! 」

濯匡が匠を片手で抱っこしながらソファから立ち上がって空いてる片手で
目の前に立ってたあたしの腰に腕を廻して抱き寄せる。

「ち…違うわよ!」
「ふ〜ん…そのわりにはウットリとした目で見てたぞ?」

そう言ってニヤリと笑うからこっちはそんな濯匡を目の前で見てドキリとなる。



「アン…」

あの後…早々に匠を寝かし付けて濯匡はあたしをベッドに押し倒した。

「ンン…」

さっきからしつこいくらいに濯匡はあたしの胸を攻め続ける。
両方の手の平で押し上げる様に揉まれながら胸の先の片方は濯匡の指が…
もう片方は濯匡の舌で攻め上げられる。

「ハァ…濯…匡…も…やだ……」
「こんなに胸揉んでんのに何でミルクが出ないんだかな…」
「ハァ…ハァ…え…?」
「ちゅう…」
「はうっ!」

胸の先を変な吸い加減で吸われて身体がビクンと跳ねる。

「仕方…ないじゃない……止まっちゃった…んだも……ンン…」

今度は舌の先で舐められる…

匠が生まれて2ヶ月くらいは母乳が出てたんだけど…
日に日に量が少なくなって…その後はあっという間に止まっちゃって…

「まあ…だからオレにも匠にミルク飲ませられんだけどな…」
「ハァ…ハァ……」
「ん?」
「ホント……濯匡ってば……」
「オレが何だ…真琴?」
「んあっ……」

言いながら…濯匡がゆっくりとあたしを押し上げる…

「あっ……ああ……」

匠を産んだのに…この圧迫感は変わらなくて…

「濯……匡……」

濯匡の首と背中に腕を絡ませて自分の方に引き寄せると濯匡の身体が密着して…
触れ合う肌と肌の温度と感触が気持ちいい…

あたしは濯匡に抱かれるのが好き…

「真琴…お前…戻り良すぎ……」
「そんな…こと…言っても……あっ…」
「真琴……」

濯匡があたしの上で揺れながらあたしの名前を呼ぶ…

「な…に…」

だからあたしも一緒に揺れながら返事をする…

「さっきの続き……オレがなんだって?」
「…ンア……あんっ……あ…だか…ら…」

何度も何度も押し上げられて段々話すのも億劫になってくる…

「……その…ギャップが……たまんない……」
「そうかよ……惚れ直したか?」
「惚れ…直すなんて……あ…」
「?」

「ずっと……惚れ続けてるの……」

自分でも良くもそんなセリフが言えたもんだと思ったけど…
あたしはそれほどまでに幸せだったんだと思う…

毎日が充実してて…何事も無く過ぎていって…

だから…そんなセリフも恥ずかしくも無く言えちゃうんだろうな……

そんなあたしの言葉に濯匡はクスリと笑ってあたしの唇に深い深い…
それでいて甘くて情熱的なキスをしてくれた…




「あ…今度の土曜日オレ仕事でいないからな。」
「え?」

散々濯匡に攻められ…ううん…愛された後のベッドの中…
お互い裸のまま…あたしは濯匡の腕枕でクッタリとしてた…

「仕事って?」
「柊夜絡み。」
「柊夜さん絡みって…まさか女性絡みじゃないでしょうね?」
「んなわけあるか。真琴と付き合いだしてからそう言う類の仕事は断ってる…
っつーかアイツもオレにそんな仕事は廻さなくなったし…」
「………」

濯匡は父親の真守さんと一緒に探偵みたいな仕事をしてる…詳しい事は未だに良くわからない…
テレビみたいに迷い猫探しや浮気調査なんて濯匡はしないけど元刑事だった真守さん絡みで
たまに危ない仕事も係わってたみたい…今もそうなのか…あたしは追求したりしないけど…
知り合った頃から濯匡はそんな事してた…
他には友達の柊夜さん絡みの仕事…中には知り合いの女の人のベッドの相手まで頼んでたみたいで…
まったく!あたしも濯匡と知り合った頃…
そんな相手の女の人の部屋で濯匡と鉢合わせした事があった…
あの時は結構なショックを受けた気がする…

別に付き合ってたわけでも抱かれた後でもなかったのに…

流石に結婚してからはそう言う女の人の相手やヤバそうな仕事は避けてくれてるらしいけど…
濯匡の事だからわからない…

でも…土曜日って言ったら…

「なんだ?」

あたしがじっと濯匡を見上げてたらそんなあたしの視線に気付いたみたい。

「ううん……危ない事じゃないよね?」
「ああ…ちょっと荷物を届けるだけだ。」
「じゃあ1日なんて掛からないでしょ?」
「ちょっと遠いんだ…それに相手の都合で時間まで指定されてる。」
「……どんな荷物?」
「守秘義務!言えない。」
「………まあ…いいけどさ…」
「心配すんな。オレだってわかってる。ちゅっ!」
「……ん…」


そう言って軽く触れるだけのキスをあたしの唇にしてくれた…

確かに…心配もあったけど…違う…そうじゃないんだよ…濯匡…