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「チッ…つけられてるか…」
「え?」

店を出てすぐに車1台に男が3人ついてくる…
ったく最初から知ってりゃそれなりに警戒してたものを…荷物なんて言いやがるから…

「ちょっと走れるか?」

苑子の耳元にそう囁いた。

「うん…」
「ダメそうなら言え。これで腹の子に何かあったら目も当てられねぇ。」
「……うん…」
「心配すんな。ちゃんと送り届けてやるから。」
「……ありがとう…濯匡…ごめんね。」
「何が?これ仕事だから。」
「ううん…他の男のものになって…」
「は?」

思わずガクッとなった。

「ウソよ。あたしなんて相手にしてないのわかってたもん。」
「こんな時に余裕だな。」
「そのくらい強くなきゃここでは生きて行けないわよ。」
「そうだな…」

何となく…この女なら大丈夫か?なんて頭に過ぎる…しっかりした母親になりそうだ。

なんて余裕こいてたら追いつかれた。
相手もここで逃がすわけにもいかねぇってか?
ここでこいつら撒かなきゃこの先がやり難い。

見た目普通のサラリーマン風…スーツも着てるがそれなりの雰囲気を出してる。
ったく…苑子を守りながらちとキツイか?ってそんな事いってる場合じゃ…

「!!」

目の前の見慣れた姿に一瞬目を疑う。
しかも一目見てそいつが誤解して怒りまくってるのが手に取る様にわかるのが笑える。
ホント素直な女…でも今この状況で天の助けかとも思える。

なんていいタイミング ♪

「真琴!」
「ちょっと…濯…」
「こいつ守れ。」
「え!?は?何??」
「愛してるぞ。真琴 ♪ 」

出会い頭にいきなり今まで濯匡が肩に腕を廻して守る様にしてた彼女を押し付けられた。
守れ??って何??

それにいきなりこんな公衆のど真ん中で 「愛してる」 なんて…なに?一体どうしたの??

聞きたい濯匡はこんな人通りの多い中であたしに背を向けて今来た方向に向かって立ってる。
それに何でだかもう戦闘モード??なに?何なの??説明してよーーーーっっ!!!

そんなあたしの疑問も次の彼女の言葉で理解した。

「この子は颯汰さんとあたしの子供よっ!あんた達の好きにはさせないんだから!!」

そう言って自分のお腹を守る様に手で押さえた。

濯匡の仕事に妊婦にそれを追いかけて来てる悪者らしき奴等に…
それだけでこの場の事情を理解した。

濯匡があたしに彼女を守れと言った。
それは濯匡があたしを信用してるって事…だからその信頼に応えましょう!ダーリン ♪

「女を捕まえろ。」

そう言う声と一緒に濯匡の横をすり抜けた男が1人あたし達に向かってくる。
何?女だと思って甘く見てると痛い目見るんだからね!

「ぐあっ!!」

彼女に伸ばされた男の腕を下から払いのけて顔面に足蹴りを叩き込んでやった。
今日は偶然にもパンツ姿だったから心置きなく足技を使える ♪
油断してた相手はあたしの蹴りを思い切り顔面に受けて横にすっ飛ぶ。

「な…」

「あなた…」

「か弱い女に…しかも妊婦に乱暴な事するなんて許さないわよ!!」

驚いたかこの野郎!!
彼女を自分の背中に隠してあたしも戦闘態勢に入る。

子供の頃から習ってる空手が濯匡と出会うまではいつも恋愛にはネックになってた…
だって自分でも知らないうちにいつもそれで恋愛に失敗する…

でも濯匡は違ってた…


「!!」

傍に停まってた車の運転席と助手席からまた男が2人降りて来た。

「真琴!」

濯匡が2人を相手にしながらあたしを振り返る。
車から降りた1人があたし達の方にやって来た。

「大丈夫!」

もう1人は濯匡の方に…3対1…濯匡の方こそ大丈夫なの?

「あっ!」

って!そんな心配しながら相手の攻撃をよけたらその勢いで
ケーキの袋を持ってた手に相手の拳の先が当たって紙袋が飛んだ。
べシャリ!と道路に紙袋が叩きつけられる。

「きやああああああああ!!!!」

ケーキが……結婚記念日の大事なケーキがぁぁぁぁ!!!
絶対崩れた!確実に崩れた!!そうに決まってる!!!

だから落とさない様に足技で闘ってたのに……

「あ・ん・た・ぁ〜〜〜」

ギロリと相手を睨んだ。
許さんっっ!!!

そんなのを一部始終見てたソイツはニヤリと笑う。

「ネエちゃんは引っ込んでな。」

ぶっちーーーーーんっっ!!!!
なんですってぇ〜〜〜〜!!ふざけんなぁーーーーーっっ!!

「ほ〜〜〜じゃあそのお姉様が可愛がってあげるわよ。」

上等よっ!!!一児の母をナメるんじゃないわよっ!!
これでも産後の運動で毎日練習は欠かさずしてたんだからっ!!

両手も使える様になってあたしの戦闘力もUPしてるんだから。
ジリジリと相手との距離を縮めていく…

「それはオレが妬けるから止めてくれ。」

ド カ ッッ !!

「ぐはっ!!!」

そんな濯匡の声がしたかと思ったら男の後ろから濯匡の回し蹴りが
男の脇腹に決まって横のガードレールに思い切り身体を叩きつけられた。
そしてそのままその場に倒れて男は動かなくなった。

「他所の男と仲良くしなくていい。」

濯匡がそう言いながらあたしと彼女の方に振り向いた。

「濯匡!」
「!!」

あたしは正面に立つ濯匡の顔面に向かって拳を叩き込んだ。
濯匡はホンのチョット頭を横にそらしてあたしの繰り出した拳をよける。

「ぎゃっ!!!」

そんな濯匡のすぐ後ろでゴキン!!と鈍い音がして襲って来た男の1人が
ハナから血を出してうずくまる。
そんな男の後頭部に濯匡が手刀を叩き込んで黙らせた。

「腕が鈍ったのか?コイツ真琴が相手した奴だろ?」
「あら…一児の母になって仏心が出ちゃったかしら?」
「…………」
「大丈夫か苑子?」

言葉も無く佇んでる苑子に声を掛けたら身体がビクッとなった。

「え…あ…うん…大丈夫…ちょっとビックリしただけ…」
「身体も大丈夫?」
「え?あ…うん……あなた…?」
「え?あ…あたし?あたしは…」
「オレの嫁。」

そりゃそうなんですけど…もうちょっと言い方があるでしょうよ!なんて思った。

「え?濯匡の?この人が?」
「オレの嫁の条件は自分の身は自分で守れる奴だからな。」
「そ…そうなんだ…どうりで強いわけだ…流石濯匡の相手?」
「んー…それって褒められてるのかしらね…?」

ちょっと微妙な様な……

「オイ!ゆっくりもしてられない。今のうちに行くぞ。」

気付けば結構な人だかりになってた。
まあ…あれだけ大立ち回りすれば目立つしもしかして誰かが通報したかもしれない。

『 ドラマの撮影でした〜 ♪ 』

って言って誤魔化せないかしら?

「真琴。」
「ん?」
「オレ行くけど大丈夫か?」
「うん…詳しい事は帰ってから聞くからね!その2人無事に安全な場所に連れて行ってあげてよ。」
「!」

あたしがそう言うと彼女がお腹にそっと手を当てる。
そうよね…そうやってまだ小さな自分の子供を感じるのよね…

本当ならこのまま警察に保護を求めた方がいいのかもしれないけど…
警察だって男女の仲の事まで面倒は見てくれないだろうし
少しでも早く安全な場所に移動した方が良いに決まってる…
濯匡はその為に彼女と一緒にいるのよね……って勝手な想像だけど…

これが違ってたら……タダじゃおかないわよ!濯匡!じっくりと説明してもらうんだから!!

「!!」

濯匡達が行こうとした時…すぐ横の道路にキキッ!!っと言う急ブレーキの音と共に
また別の高級車が停まってドアが開いた。

「チッ!」
「え?新手?」

ちょっとちょっと!!どれだけしつこいのよ!って一体誰の子供なの?