Shiina&Syunya 01







* 楠 惇哉(kusunoki syunya)超人気俳優。(と言う設定です。)サイトの方で 『意地っ張りな彼女』 と言うお話の主人公
   由貴 : 惇哉の恋人で今は奥さん 『結婚式編 108・109話に慎二登場。』
   右京 : 椎凪の恋人の義理の父親。耀溺愛の世間知らずのお坊ちゃま。草g家ご当主様。*




「あ!惇哉さんおはようございます。」


ここは大手ブランド 『 TAKERU 』 の本社ビル内にあるスタジオ。

衣装を整えて彼がスタジオに入って来た。

今日はポスター撮影で若手俳優の中でも人気のある 『楠 惇哉』 君を起用した。
彼とは今回で2度目の仕事。

仕事以外でも彼は 『 TAKERU 』 の大事なお客様でもある。

先日も結婚指輪をうちで決めてもらってお買い上げして頂いたばかり。

「もうすぐお式ですね…おめでとうございます。」
「ありがとう。もう待ち遠しいんだよね〜由貴は結構そ知らぬ顔なんだけどさ…」
「そうなんですか?顔に出さないだけじゃないですか?」
「どうかな…怪しいんだよね…」
「ふふ…色々大変ですね…」
「今回はオレの要望聞き入れてくれてありがとう。」
「いえ…いつかやってみたいとは思っていたので…
こちらとしても話題性抜群なので嬉しい限りです。」

そう言って慎二君がニッコリと笑う。

以前オレと由貴の結婚指輪を買った時この 『 TAKERU 』 の専属のモデルで
プロフィールもプライベートも全部謎と言うモデルと一緒に仕事がしたいって言ったら
その後事務所にオファーが来た。

オレは何の迷いもなくOK!

それからしばらくして今日に至ったと言うわけで…
今日その謎のモデル2人とご対面出来るって言うわけ。

ただ1つの条件は2人の事は他言無用で外部に一切洩らさないって事。
それだけが念をおされ撮影機材は一切持ち込み禁止。

だからオレの携帯も慎二君に預けてあってマネージャーも今日は事務所待機だ。

撮影のスタッフも専属のカメラマンに最小限のスタッフ。


「まあ…惇哉さんだから大丈夫だと思いますけど…あまり気にしないで下さいね…」

「え?」

「いえ…今日の2人の事です…」
「ああ…そんなに気難しい相手なの?」
「いえ……そんな事は…ああ…1人はちょっと素っ気無い態度かも知れませんが
あまり気にしないで下さい。」
「前もそんな事言ってたよね?」
「あまりにもマイペースなんで…悪気はありませんから…」
「わかった。何だかドキドキするな…」
「そんな…普通ですよ。」

ガチャリ! と音がしてスタジオの入口のドアが開く…

「何でそう言う事言うかな?祐輔は!!」
「お前があまりにも鬱陶しいからだ!離れろ!バカ椎凪!」

「…………」

「もーーーーー!!祐輔はホント性格悪い!!」
「お前に言われたかねーな!」

「祐輔!椎凪さん!!」
「ん?」

祐輔と2人モメながら歩いてたら慎二君がちょっと怒った声でオレ達の名前を呼んだ。

見ればオレ達と同じスーツ姿の男が一人…
ちょっと呆れた様なビックリした様な顔でオレ達を見てた。

その顔は…

「あ!『 楠 惇哉 』 だ!」

そんなに芸能界に詳しくないオレでも知ってる…
街中に彼のポスターもあるし…たまに見るテレビでもチラホラ見かけるし…

「どうも…初めまして…」

「もう椎凪さん呼び捨てなんて失礼ですよ!」
「ああ…ごめん…そっか!今日彼と一緒に撮るんだ!」
「前もって言ってたでしょ!もう聞いてないんだから…」
「聞いてたけど忘れてた。はは…」
「…………」

「えっと…こちら 『 楠 惇哉 』 さん。
でこっちが… 『 祐輔 』 でこっちが 『 椎凪 』 さんです。」

「……フン…」

『ゆうすけ』 と紹介された彼は肩よりちょっと長めな金髪の髪にきっと
カラーコンタクトだと思うけどルビー色の瞳…背は180ちょいあるオレより低い…

ただ…何て言ったらいいんだろう…

男のクセに何とも線が細いって言うか…女っぽいと言うのか…いや…違う…
なんて言うんだ…この感じ…

「何だ?何か言いたい事でもあんのか?」

何気に長い間見てたらしい…視線が合った彼が不機嫌そうにそう言った…

「いや…」

一瞬にして戦闘態勢でやる気満々なのが伝わってくる…
これってレンジがいたらあっという間に1戦始まるタイプか?

そういや目つき悪っ!

「もう祐輔はそうやって直ぐに喧嘩売らない!」

慎二君が間に割って入る。

「祐輔は意地悪だからな〜オレの事慰めてもくれない。」
「誰がテメエなんか慰めるか!右京に直接文句言え!」
「出来ればそうしてるって!!出来ないから祐輔に泣きついたんだろ!!」
「それがウゼェんだよ…」
「またウザイって言った!!」

「…………」

そんなゴネた事を言い続けてる 『 しいな 』 と言う男は…

背は目線がオレと同じって事は180はあるって事…
さっきの彼よりはちょっと短めの茶色い髪にやっぱりカラーコンタクトで瞳はブルーだ…

「また何かあったんですか?」

「あったかじゃないよ!慎二君からも右京君に言ってよ!
今日この後耀くんとデートするはずだったのに 『 撮影じゃいつ終わるかわからないだろうから
今日は僕が耀と一緒に過ごす。 』 とか言っちゃって大学に耀くん迎えに来て自分の所に
連れてちゃったんだから!!右京君ヒドイだろ?」

「右京さん言ってましたよ。最近耀君に会って無いって…だからでしょ?」

「自業自得じゃねーか…」

ボソッと祐輔がそんな事を言う…

「2人して右京君の味方?」
「はいはい…もうどんどん遅くなりますから!サッサとして下さい!」
「何だよーーー慎二君も冷たいんだからさー!!イジケてやるっ!!」
「仕事はちゃんとして下さいよね!椎凪さん!!」
「……ちぇ…はいはい…わかりましたよ〜いいよ!
終わったら祐輔の所で耀くん帰って来るの待ってるから。」
「だ ・ れ ・ が テメェなんか部屋に入れるかっ!!ふざけんな!」
「引っ付いて離れないから無理だから!」
「殴ってでも部屋に入れねぇ!」
「殴られてでも部屋に入る!!」

「…………」

「あ…惇哉さんすみません…騒がしくて…」
「いや…仲が良いんだね…あの2人…」
「ああ…そうですね…仲が良いって言うか…椎凪さんが祐輔に甘えてるんですよ…」
「甘える…ねえ…」

確かに煙たがってる彼に彼がじゃれ付いてる様に見える…

「椎凪さんも婚約中って言ってもいいのかな…」
「へえ…彼女がいるんだ。」
「ええ…でも父親がなかなか認めてくれなくて…今日も椎凪さんが仕事だって言うのを
わかっててワザとデート邪魔されたみたいですし…」
「ふーん…」

オレは由貴との事を親には反対されなかったから…
もしお互いの親に反対されたら…オレと由貴はどうしてたんだろう…

なんてフト思った…


「さあ2人とも仕事集中してやって下さいね。ダラダラされるの僕嫌いですから。」


慎二君の声が凛としたものに変わる…

慎二君は普段あんなに好青年で優しい感じなのに…いざ仕事となると途端に厳しくなる。
まあそうじゃないとこの会社であの若さで役職なんて持てやしないだろう…



スタジオ内にBGMが流れ出す…

人数が少ないせいかザワザワとした室内の雰囲気も心地良いざわめきになってる…

さて…いつもの演技の仕事とは多少違うけど…こう言う仕事も悪くない…
いつもは視線を合わせないカメラのレンズに向かって視線を送ると言うのも
新鮮でワクワクする…

あの2人は一体どんな感じで仕事をするんだろう…

最初はあの気短な男… 『 ゆうすけ 』 の撮影が始まった。

まずは1人1人で撮って…後は3人で撮る段取り…

「祐輔!ちょっとの間だからちゃんとやってよ!」
「いつもちゃんとやってやってるだろーが!…ったく…」

「もう…文句ばっかりなんだから…」

撮影が始まると慎二君がオレ達の方に戻って来る。

「何?彼やる気無いの?」
「いえ…始まればちゃんとやってくれるんですけど…
本当はこの仕事やりたくないもんですから…態度悪いんですよね…」

「オレは楽しくやってるよ ♪ 慎二君 ♪ 」

ニッコリ笑顔だ…ホント楽しそうだよ…

「はいはい…椎凪さんは本当なら裸でも撮って欲しいくらいですもんね。」
「やれって言うならやるけど?」
「今回は結構です!」
「そう?残念…」
「何?オールヌードOKなの?」

男でも結構躊躇する奴もいるんだけど…

「オレ裸大〜〜好きなの ♪ あの開放感が堪らなくて ♪ 」
「ただの変態の露出狂なだけですけどね。椎凪さんの場合!」
「なっ!失礼な!慎二君!!」
「そんなんだから右京さんに結婚許してもらえないんですよ。」
「そんなの関係無いじゃん!慎二君がそうやって右京君と一緒になって言うもんだから
右京君も調子に乗るんだよ。」
「今度右京さんに会ったら椎凪さんが右京さんは調子にノッてるって言ってたって言っときます。」
「余計な事言わなくていいからっ!!」
「余計な事ですか?だってそう言いたかったんじゃないんですか?」
「言葉のアヤだよ!そう言って皆してオレをイジメて楽しいのかね!!」
「約2名は楽しいみたいですよ。クスッ…」
「いつか2人ともシメてやる!」
「出来ない事は言わない方がいいですよ。」
「出来……るよ!」

いや…きっと出来なさそうだな…
今のこの態度…完璧ビビッてる気がするけど…

「……………」



それからしばらくして慎二君が黙って撮影の様子を見てる…
瞳が潤んで…なんとなく微笑んでる様に見えるのは気のせいか?

「相変わらず祐輔は男のクセに色っぽいよね〜線が細いって言うか…」

「そうですね…だからこそあの瞳が映えるんですよ…
本当ならあのコンタクトも外したいくらいです…」

慎二君が残念そうにそんな事を呟いた。

「でも…今のままでも十分引き立ってますけどね…」

「…………」

こんな慎二君見た事なかったから…

「祐輔は慎二君のお気に入りだから…」

そんな事を 『 しいな 』 と言う人がオレの耳にそっと囁く。

「お気に入り?」
「そう…その言葉のままだよ…だから大切にするし全てをかけて守ろうとする…」
「 ? 」
「君も守りたいものあるでしょ?公開プロポーズ…思い出した。」
「え?ああ……どうも…」
「いいな〜羨ましいよ…あんな堂々とカメラの前でプロポーズなんて…
しかも即答でOKだもんね…ああ…本当羨ましい……」
「彼女の親に…反対されてるとか?」
「ああ…あれはね!反対じゃなんだ…」
「え?」

「ただの嫌がらせ…オレに嫁に出す気なんてサラサラ無いんだ…右京君は…」

「へ…ぇ…」

「ヒドイと思うだろ?横暴だよね?」

ガシッ!と両肩を掴まれて訴えられた…

「は…はあ……それは…大変な事で……じゃ…じゃあ出来ちゃった婚って言うのは?」

今の世の中それなら渋々でも親はOKしてくれるだろ?

「ダメだよ!」
「え?」

掴まれた肩に彼の指が食い込む。

「そんな事したら一生何言われるかわかったもんじゃないっ!!
グチグチネチネチ…どれだけ言われ続けるかっ!!」

「じゃ…じゃあ地道に説得するしか…」

「…………はぁ〜〜〜やっぱりそれしかないか……」

そう言ってガックリとうな垂れる…

「そ…そんな落ち込まないで…きっといつかわかってくれますよ…」
「そうかな…」
「多分…」
「そうだね…オレ頑張るよ。オレもテレビで公開プロポーズでもしようかな…
そしたら嫌でも認めてくれるかな?」

「そうなったら婚約破棄じゃないですか?
白紙に戻されてきっと耀君家から出してもらえないですよ。」

「ええ〜そこまで横暴?」

「…………」

今… 「 ようくん 」 って言ったか?オレの聞き間違い?

「椎凪さんの番ですよ。準備して下さい!」
「え?あれ?祐輔の終わったの?」
「はい。」
「あ…本当だ…」

見れば祐輔が設けてある休憩場所でちゃっかりとコーヒー飲もうとしてる。

「じゃあ椎凪さんお願いしますね! 『 あっち 』 でお願いしますよ!」
「OK!」

そう言って片手を挙げながら彼がセットの方に歩いて行く…

「彼ってモデルなの?」
「いいえ…祐輔も椎凪さんも違います。でも…2人とも普通の人とはちょっと違うんで…
それでお願いしてるんです…年に数回ですけどね…」
「ふーん…」

『 あっち 』 って…どう言う意味なんだか…

「ちょっと待ってね……」

カメラの前に立った彼がそう言って静かに目を閉じる…

どのくらい経ったんだろう…20秒くらいか?

「………ハァ」

「あ……」

一息洩らして起こした顔は…さっきまでとは比べモノにならないくらの…
負のオーラまとった彼がいた…

ホンの一瞬で…役者でもない彼に可能なのか…

オレも役に入り込む時は精神統一して気持ちを切り替えるけど…

気持ちを切り替えるとは違う……そう人が入れ替わった様な…そんな感じがした…


「……いいよ……」







「はあ〜久々に有意義な仕事が出来た気がします…」

慎二君が感無量で浸りきってる…

「そう言ってもらえと嬉しいけど…」


撮影も終わって 『 TAKERU 』 のビルの最上階の慎二君部屋でコーヒータイムだ。


「はいどーぞ。」

「ああ…すいません椎凪さん。」
「どういたしまして。オレも飲みたかったから。」

男4人ソファに座ってホッと一息…

「ん!美味い…」

「ホント?良かった〜楠君のお口に合って光栄だな。」
「お前の特技はエロイ事とコーヒー淹れる事だけだからな…」
「え?」
「ヒドイな祐輔!そんな事無いって!料理だって特技だろ。」
「エロさの前に霞んで消える…」
「あのね…」
「もう惇哉さんが呆れて見てますよ!」
「慎二君!どうみても祐輔が言いすぎなんだろ!」
「………」

祐輔は何事も無かった様にコーヒーを飲んでる…まったく!



どうやらこの3人は知り合いらしい…だからモデルも引き受けてるのか?

色々聞きたい事はあったけど詮索しない事が約束だから…

でも…久しぶりに仕事の後にこんなゆっくりしたかな……