Shiina&Syunya 02
* 楠 惇哉(kusunoki syunya)超人気俳優。(と言う設定です。)サイトの方で 『意地っ張りな彼女』 と言うお話の主人公
由貴 : 惇哉の恋人で今は奥さん 『結婚式編 108・109話に慎二登場。』*
そんな撮影があって…オレの結婚式も無事に済んだ後…
新婚旅行で由貴に着させる水着を選びに再び 『 TAKERU 』 を訪れた。
いつもの様に別室の応接室に通されて色々カタログやら実物を見せてもらって
1着に決めた。
「いつ行かれるんですか?」
「まだちょっと先かな…やっとドラマの撮影が終わったから…」
「相変わらずお忙しそうですね…」
「まあね…でも忙しい事を喜ばないとね…」
「そうですね…」
「あの2人も元気?」
「え?ああ…祐輔と椎凪さんですか?ええ…元気にしてますよ。」
「ホントたまにしか仕事しないんだね…」
「はい…」
それでも慎二君は嬉しそうに笑ってた…
「橘さん!すいません…ちょっと…」
オフィスの方から女の子のスタッフが慎二君に声を掛ける…
ちょっと緊急そうな…慌ててるっぽい。
「はい?あ…惇哉さんちょっとすみません…」
「ああ…じゃあここで。今日はありがとう。」
「いえ…こちらこそ…じゃあまた…」
「ああ…また…」
慎二君と別れて廊下をエレベーターに向かって歩いて行くと廊下の端で声がした。
それは男と女の声で…明らかに女の方が嫌がってる声だ。
「?」
ちょっとした廊下の影に男の後ろ姿が見えた。
「いいじゃん ♪ ちょっとお茶するくらい…」
「あ…あの…こ…困ります…オレ…行きません…」
オレ?なに?男同士?
ちょっと好奇心で覗いてみた。
男は背中だったけど相手はオレの方を向いてた。
もうとんでもなく困った顔で…青褪めてて…今にも泣き出しそうな顔だ。
「…………」
そんな困った顔を見た瞬間…何だ?この助けてあげたくなる感じは…
どこか…オレの神経を刺激する…確かに可愛いと言える子かもしれないけど…
その…下心からとかの感覚じゃない気持ち…
「そんな怖がんないでよ…優しくするって…な?」
「あ…やだ……!!」
考えるより先に身体が動いてた。
「ちょっとあんたやめなよ。この子が相当嫌がってるのわかんないの?」
1人で慎二さんの所に訪ねて来たらエレベーターの前で男の人に捕まった。
たまにここで見掛ける人で…何度か声を掛けられてたけどいつも慎二さんが一緒にいたから…
でも今日は迫られて廊下の端に押し込まれた。
どうしよう…怖くて…身体が震える…やだ…オレに触らないで…椎凪……どうしよう…
「ちょっとあんたやめなよ。この子が相当嫌がってるのわかんないの?」
「 !! 」
誰?彼とオレの間に誰かが割って入ってくれた…
見上げたら椎凪と同じ位の背かな…広い背中だった…
「何?あ…お前楠…」
「は?あんたに名前呼び捨てにされる覚えないけど?」
「……なんでこんな所にあんたがいるんだよ。」
「そんな事どうでも良いだろ…嫌がってるって言ってるんだよ。」
「…………」
「何?あんたもその子狙っての?」
「はあ?」
何言ってんだか…コイツ…
「まあ…確かに興味湧くもんな…その子…なあ?耀君 ♪ 」
「ようくん?」
あれ?どこかで…聞いた名前……
「惇哉さん!?」
「あ…」
「慎二さん!!」
用が済んだのか慎二君が廊下を走って来る。
「耀君……って…陣野さん…またあなた耀君に…
いい加減にして下さいって言いましたよね?」
「うるせーな…ちょっと話してただけだろ…」
「本当にいい加減にして頂かないと此処に出入り禁止にしますよ…」
「 ? 」
なんだか…いつもの慎二君と雰囲気と違う?
「何だよ…いいのか?そんな事言って?俺ここの専属モデルだぞ…」
「だからなんです?まさかあなた1人で 『 TAKERU 』 がもってるとでも思ってるんですか?」
「なっ…なんだと…」
「僕は何度もあなたにお願いしましたよね?耀君は僕の大切な友人だから
チョッカイ出すのは止めて下さいって…」
「何だよ話し掛けるのもダメなのかよ?」
「あなたは…それ以上の事を耀君に望んでるでしょ…わからないと思ってるんですか?」
「だったら何だよ…俺をどうにかするってか?ああ?」
「して…欲しいんですか?」
「は?」
「お望みとあらばしてもいいですよ…
僕あなたみたいなタイプ大っ嫌いなんで…そんなの平気です。くすっ…」
そう言っていつもの同じ笑顔を相手に向ける…
でもいつもとは全く違う慎二君の瞳……
「じゃあお疲れ様でした陣野さん。他所でお仕事頑張って下さいね。」
「なっ…」
「僕仕事に思いっきり私情挟みますから ♪ さようなら…神野さん。」
「……くっ…」
陣野と言う男は何も言わずに上がって来たエレベーターに乗って立ち去った。
「まったく…耀君大丈夫だった?何か変な事されなかった?」
「うん…大丈夫……この人が助けて……ああっ!!楠惇哉さんっ!?」
「え?」
「耀君今頃気付いたの?」
「…だって…後ろ姿だったし……訳わかんなかったし…」
「もう耀君ってば…惇哉さんありがとうございました。助かりました…」
「いや…オレは別に…ただ困ってたみたいだったから…」
「前からあの人にはチョッカイ出されてたんですよ…何度言っても言う事聞いてくれなくて…」
「でも…本当に大丈夫なの?慎二さん…勝手にクビにして…」
「え?ああ…後で所属事務所からお詫びの電話が入りますよ。
彼ここの仕事無くなったら事務所としても痛手でしょうから。」
「慎二君も結構厳しい所あるんだね…」
そう…あんな慎二君初めて見た…
「やだな…僕だってやる時にはやりますよ。まあ今日はまだまだ序の口ですけどね ♪ 」
「へ…へぇ…そうなんだ…」
「あ…あの…本当にありがとうございました…オレ…あのままだったらあの人に何されてたか…」
そう言った 「 ようくん 」 と言う目の前にいる子は…どう見ても…
「オレ?」
「え?」
「ああ…耀君は正真正銘の女の子ですよ。」
「そ…そうだよね…」
だって…しっかりと…胸が…あるもんな…
「耀君自分の事「オレ」って言うんで皆 「 ようくん 」 って呼ぶんです。
ニックネームだと思って頂ければ…」
「そ…そうなんだ…そう言えばこの前 「 しいな 」 さんが言ってた…」
そう確か会話の間に 「 ようくん 」 って言ってたよな?
「そっか…この前椎凪と一緒に仕事したんだっけ?」
「あの時は耀君とのデート右京さんに潰れたってイジケまくってましたからね…」
「もう…椎凪は…」
「?」
「耀君椎凪さんの恋人…ああ…婚約者です。」
「え?そうなの?」
「僕からもお礼を言います…惇哉さんありがとうございました。」
「ホント見た目は女の子なのにオレって言ってたからちょっとビックリしたよ。」
「へえ…」
次の日…オレは久々のオフで由貴と2人夜のデートを楽しんでた。
どこかで夕食でもとブラブラしながら歩いてた…
「ねえ…」
「ん?」
「 『TAKERU』 に何しに行ったの?」
「………え!?」
「何でそんなに驚くのよ?」
「え…いや…別に…」
そうだ…由貴の水着を買ったのはまだ由貴には内緒だった…
新婚旅行に行く直前に渡すつもりが…ヤベ…
「ねえ?なんで?」
「いや…それは……」
「何よ!私に言えない事なの?」
「いや…そう言うわけじゃ…」
なんて言おうか…そんな事を考えてたら…
「あれぇ?もしかしてコイツ楠惇哉じゃね?」
「えー?あ!ホントだよ〜何?と言う事は彼女がお相手?なあ?」
「 !! 」
ガラの悪い野郎が3人…
まだそんな遅い時間でもないのに…何でこんな奴等がウロウロしてんだ?
この辺りは比較的こう言う奴等は出くわしたりしないのに…
「…………」
「惇哉さん……」
由貴を背中に隠してオレは黙ってた…
最近は絡まれる事なんて無かったのに…厄介な奴等に掴まった…
「ホントにイチャイチャしてんだな?良いよなぁ〜女なんてやりたい放題だろ?」
「そんな事ない…」
「ウソだろ〜芸能界なんてよりどりみどりだろ?」
「じゃあそうなんじゃない…オレはそんな事無かったけどね…」
「なあ彼女!もうちょっと顔見せろよ…サービス悪りぃぞ〜ファンサービスしろよ。」
「 !! 」
そう言って由貴に向かって手を伸ばして来た。
その手を自分の身体で遮る。
「人の女に手出すな…触るな!!」
こいつらの前で由貴の名前を出すのも嫌だった。
「ああ?」
「何?ファンに向かってソレ失礼じゃん?」
「ファンなんかじゃ無いだろ…」
「惇哉さん…ダメよ…暴力は…」
由貴が震える声でオレに呟く。
それはわかってる…でもこの状況で逃げるのは結構難しい…
「警察に電話…」
「ああ?俺達が何かしたのか!!ネエちゃん!!」
「!!」
大きな声で脅されて由貴がビクンと震えてオレの背中にしがみ付いた。
相手は3人……ちょっとヤバイ状況か…最悪由貴だけでも逃がして…
「君達〜 ♪ 何してんの?」
「 !!! 」
そんな状況にとんでもなく軽いノリの声と一緒にオレ達の間に誰かが飛び込んで来た。
「…………」
背はオレと同じ位…髪は短めで手を後に組んで後ろ姿でもわかる…
何だか楽しそうだ。
顔は見えない…でも笑ってるらしい…
「ああ?!何だテメェはっ!?」
「ただの通りすがり ♪ いい加減にしとけば?みっともないから ♪ 」
「調子にのんじゃね……」
ゴ ッ !
鈍い音がして真正面にいた男がよろめいた。
「ああ…ごめん…当たっちゃった?ちょっと手を上げただけなんだけど…?」
「テメェ!!」
「次は足…上げてみようか?」
ド コ ッ !!
言ったと同時に左側にいた男の顔面に左足の回し蹴りが叩き込まれる。
「がっ!!」
「う〜ん…オレ足長いから ♪ 離れてた方がいいかも ♪ 大丈夫?」
蹲ってる男にコレッぽっちも心配してない声で話し掛ける。
「この野郎…いい加減にしやがれ…調子にのんじゃ…」
「まだやる?ん?じゃあ署の方でゆっくり話し聞こうか?」
「 !! 」
相手の連中の視線が男の持ってるものに釘付けになる。
あれって…警察手帳?
「公務執行妨害とか適当な理由で引っ張れるけど?3人一緒に行こうか?」
「惇哉さん…警察の人…?」
「らしい…」
コソコソと由貴とそんな話をする…由貴は一目でわかるほどホッとしてる…
「……う…うるせえぇ…誰が行くかよ!オイ!」
そう言うと仲間を連れてオレ達の前から離れて行く。
「それが賢明 ♪ じゃあね〜 ♪ 」
「どうも…助かりました。」
「売れっ子さんは大変だね ♪ デートもままならないなんてさ ♪ 」
そう言って振り返った相手はオレと同じくらいの年齢の男だった。
「本当にありがとうございました。」
由貴が深々と頭を下げる。
「いいえ…昨日耀くんを助けて頂いたからそのお礼 ♪ 」
「え?」
「こんばんは。」
「は?」
じぃ〜〜〜〜っと相手の顔を覗き込んだ。
「やだな…そんなに見つめられると照れるんだけど?」
「…………ああっ!!しいなさん!?」
髪も短くて瞳の色も違かったから直ぐにわからなかった…
「え?」
オレがいきなり大声で叫んだから由貴がビックリしてる。
「この前一緒に仕事した人…」
「そうなの…」
「しいなさん刑事だったんだ…」
「それは内緒でね ♪ 」
そう言って人差し指でしぃ〜ってやるとウィンクされた…
「ああ…そっか……」
「じゃあ気をつけて。」
「あ…どうも……」
そう言うと彼はニッコリ笑って歩き出した。
偶然通りかかったのか?
しばらく見てるとちょっと先のビルの前で誰かと待ち合わせだったらしい…
きっとあの 「ようくん」 と言う彼女か?
「由貴…ちょっと…」
「惇哉さん?」
何となく気になって2人のあとをつけた。
やっぱり彼女だ…2人で手を繋いで楽しそうに歩いてる…
「お!」
歩きながらしいなさんが彼女にそっと触れるだけのキスをした。
周りなんてお構いなしの…
された彼女は怒る風でもなく…ニッコリと嬉しそうに笑ってる…
「あ…」
そしてそのまま…今度は彼女の方からしいなさんにキスをした…
その後…2人は幸せそうに笑って…人混みの中に消えて行った……
なんとなく…ホンワカした気分と羨ましい気分がオレの中に残る……
「惇哉さん?どうしたの?」
引っ張られる様に歩いてた由貴がオレが急に止まったもんだから
不思議そうな顔でオレを見上げてる…
「由貴……チュッ ♪ 」
「 !!! 」
あの2人に感化されたのか周りも気にせず由貴にキスをした…
由貴は一体どうするだろう……
バ チ ン っ !!!
と思い切り腕を叩かれた!
由貴は役者のオレに気を使ってくれて顔は殴ったしない。
「……っ痛って!!」
「ちょっ!!!いきなり何するのよ!!!しかもこんな公衆の面前で!!!」
思い切り怒られた!
そうだ…由貴はこういう性格だった……ちょっとでも期待したオレがバカだった……
その後はしばらくの間お説教……せっかくのデートが…
それからちょっとしてあの3人で撮ったポスターが 『 TAKERU 』 のビルの壁に大きく飾られた。