02

    * 亨のお話なので当然なんですが…BL要素あります。 *




「俺は無力だ…」

大分酔った樹が半ベソで僕に言った。
一度転勤になって僕の所から出て行った樹がまた転勤になって
僕の所に居候してる…
ある日家に 帰ったら樹がチャカリ居座ってた。
最初に居候された時も勝手に上がり込んでたからこれで二度目。
刑事のクセに前科者だ。
叩き出す気も無くてそのまま 一緒に暮らしてる。
そんな樹が落ち込んで帰って来た…お酒を片手に。

呑むから付き合えと言われて付き合っているが…何だかおかしな事になってる…
樹の話を纏めると仕事で何かあったらしい…ぐずぐずと言い出した。
どうやら事件の関係者が親の死に目に会えなかったとかで
責任を感じてるらしい…まったく…

「別に樹のせいじゃないだろ?
それにそこまで責任感じる事でも無いじゃないか…刑事だからってさ…」
呆れて言った。
「刑事としてなんかでは無いぞ!! 真鍋!一人の人間として悲しいんだ!」
泣き喚かれた…
「ああ…そう…わかったから泣くの止めなよ…欝陶しいよ…お酒がまずくなる…」
更にグダグダ グズグズと煩い。
勝手にやってくれ。
僕はほっといてお酒を飲んでた。

「もー…しっかり歩きなよ。あれ位のお酒で…」
「んーー……」
「ほら!樹!」
結局酔い潰れて僕が肩を貸して寝室まで連れて行った。
普段呑んでもこんな風になった事は無いから今日は余程落ち込んでたのか?
「まったく…重い。」
僕より背は低いけど大人の男が自分一人で歩けないとなると
結構苦労してベッドに運んだ。
乱暴に仰向けに樹をベッドに寝かせて一応最後まで 片腕は掴んだまま
多少気を使ってあげた。

「 ん? 」

最後まで伸びてた樹の腕が起こそうとしてた僕の首を掴んで
そのまま引き寄せられた。
「ちょっと…」
ベッドに両手を着くと樹の身体が僕の腕と腕の間にある。
「樹?」
「真…鍋…」
寝言みたいに僕の名前を呼んだ。
「自分が何してるか分かってる?樹?」
一応声を掛けた…でも返事は無し…樹は僕にしがみついたままだ。
「目覚ましなよ!樹!」
片手で樹の肩を掴んで揺すった…
その瞬間それを合図みたいに樹が更に僕にしがみついて
唇を僕の唇に近づけて来た…

「!!」

避ける間も無く… と言うか避ける気も無かったんだけど
当然の事ながら僕達はキスをした。
…キスなんか毎日してる。
と言っても触れるだけの軽い挨拶のキスだ。
慶彦がワザと僕の家での挨拶はキスだなんて樹に言うもんだから
真に受けてそんな事になった。
それは慶彦と僕との間だけの事なのに…
だから樹が舌を絡ませて 来た時ちょっと意外だった…
「んっ…ン…」
絡ませながら樹が声を漏らす…
考えてみたら樹とこう言うキスは初めてだったと気が付いた。
へぇ…こんなキスするんだ…受けながらちょっと関心。
まさか初めてって事無いよね?でも女と付き合ったなんて聞いた事無いし
あるって方がピンと来なくて 想像出来ない…
なんてアレコレ頭の中で考えを巡らせていると体重を掛けられて押し倒された。

「うーーん…」

思わず唸った。
自分としては なんとも微妙な状況だ…
取りあえず抵抗しないでいると樹が僕の首筋に潜り込んで来た。
くすぐったい感触と柔らかくて暖かい感触…
不快では無いけど…僕を抱く気 なのか?
「樹…本気?」
もう一度声を掛けた。
女の代わりなんて真っ平だったしそもそも男同士で大丈夫なのか疑問だった。
「…ん…」
曖昧な返事を しながら僕の服を捲り上げた…まぁ別に構わないけど…何だか今ひとつ気分が…

 「ん?!」

 樹の動きが 止まった。
 「樹?」
 身体を起こして覗き込むと
 僕の上に乗りながら
 コテンと眠ってる樹が見えた。

 「 なっ…!寝てる? 」
 あー!カチンと来た。
 信じられない。
 ここまでしといて寝るか?普通…


ムカッとしながら寝てる樹の顔を片手で持ち上げた。
樹は眠ったまま…マヌケな 寝顔だ…お酒のせいでほんのり顔が赤い。
そんな樹の顔をまじまじと見てしまった。
…寝顔なんていつも見てるのに…

「最後まで責任取れっての!」

僕は寝てる樹に向かって文句を言った。
今度は樹をベッドに仰向けに寝かせて着ていた浴衣の前を左右に広げた。
テキパキと脱がして行く。
…別に樹としたかった訳じゃない…人を誘っといて勝手に寝るなんて失礼にも程がある。
しっかりお仕置きさせてもらう。

「…ふぁ…ン…」

舌を絡ませた途端樹が声を漏らした。
今度は僕から樹に濃厚なキスをした…そのまま首筋に沿って舌を滑らせていく。
「…真…鍋?」
樹が目を覚ました らしい。
「目さめたの?樹。」
それでも僕は樹に舌を這わせる事を止めなかった…今は鎖骨を滑って胸を攻めてる。

「何を…している?」

寝ぼけたような声ででも抵抗は僅かだ。
と言っても両手はしっかりと僕が押さえ込んでるけどね。

「君の続きをしてるんだよ。」
取りあえず答えて あげた。
「俺の…続き…?あ…」
樹の身体がピクンとなった。
「覚えて無い?僕を抱こうとしたんだよ。」
軽く歯を立てた…
「ンア…俺…が…真鍋を…か?」
「そうだよ。でも僕抱かれるより抱く方がいい。」
「…は…あ…」

樹がのけ反って眉を寄せる…なかなかそそられる 顔だった。


「止めとく?樹。」

「………」

暫く沈黙。どっちなんだ?
「…今日は…したい気分だ…」
「そう?」
樹の胸元で 目が合った。
僕が見上げて樹が頭だけ持ち上げて僕を見たから。
「ああ…」
そう頷いて目を閉じた。

酔った勢いなのか…酔ってるからなのか…
僕には樹がどんな気持ちで頷いたのか分からないけど…

潤んだ瞳はしっかりと僕を見つめてた…

「ん…あっ…ンクッ…」

なんともまぁ可愛いらしい 声を出す。
普段の話し方からは想像出来ない声だ。
それに僕にずっとしがみ付いてる。

「ハァ…ハァ…真鍋…」
「なに?」
「大丈夫…だろうか… 俺は…男とは…初めてだぞ…」
弾んだ息の合間に樹が不安そうに聞いて来た。
そうだった…樹初めてだった。
「大丈夫だろ?ちゃんと僕の相手してるじゃ ないか。」
言いながら何の言葉も掛けず樹を突き上げた。

「…ひっ…アッ!!…アッ…」

僕は奥へ奥へと樹を攻めて行く…

「うあっ……あっ…」

樹が更にしがみついて僕の背中に思いっきり爪を立てた。

…久しぶりだったせいか…
     相手が樹だったからか…

二人ともの めり込んで…
   気付いたら夜が明けかけていた…


「 …うおー……」
下半身が軋む…ベッドからずり落ちる様に這い出た。
今日が休みで 良かった…これでは歩けないぞ…

「おはよう…真鍋。」
「ああ…おはよう。樹。」

お互い何事も無かった様におはようのキスをした。
…の筈なんだが樹はダイニングテーブルにうっつぷしてる。
「みな…こうなのか?」
顔はテーブルに着いたま呟いた。
「ケースバイケース。」
コーヒーを飲みながら素っ気なく言った。
「…そうか…」

覚えてたんだ…酔ってて覚えてないかと思ってたのに。
慶彦は酔い潰すと覚えて無かったな…
まああんだけ痛きゃ嫌でも思い出すか…そんなに激しくした憶えは無いんだが…
一応初めてだって言うから気を使ったつもりなんだけど…ね…

「樹って童貞?」
何となく聞いた。
「…!!何故そんな事を聞く?」
相変わらず頭はテーブルの上だ。
「いや…ただ女と付き合った事あるとは思え 無かったからさ。遊びでなんてもっと無いだろ?」
「それなりの経験はしているぞ…男とは真鍋が…初めてだが…」
最後はゴニョゴニョと口ごもった。
「何今更照れてんの?いい加減僕の顔見たら?」
さっきのキスといいまったく僕と目を合わせない。
「…今はまだ…いい…今真鍋と目が合ったら俺は… 恥ずかしくて逃げるかもしれん…」
「腰痛くて動けないクセに?」
「………痛い所を突くな…真鍋…」
「ふーん…」
僕は薄笑いを浮かべながら 樹の後ろに立って両手を広げてテーブルに着いた。
樹がビクリとせずにギクリとなった。おもしろい。
「樹…逃げてごらんよ。」
囁きながら耳たぶを 甘噛みして舌を耳の中に捩込んだ。
「ウヒッ!」
樹が変な声を上げてテーブルに顔を着けたまま両手がビクリとなってもがいてる。
更におもしろい。

身体を重ね合って…なのにこんなにも以前のままで気分も軽い。
ベタベタとされたらどうしようかと思ってたけどやっぱり樹は猫みたいに気ままで…
なのに可愛くて からかい甲斐がある。
暫くは退屈しないで済みそうだ。

転勤になれば樹は此処から何事も無かった様に出て行くんだろうな…
僕はそれで構わない…

そんな日が来てもある日玄関を開けたら樹が…
『おかえり。真鍋』 って僕を迎えてくれる事はもう決まってる事だから…