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「あっあっあっ…し…いな……!!」
「耀くん…」

椎凪の膝に抱きかかえられて押し上げられる…
縛られた両手も吊られた状態から少し余裕が出来て
椎凪の首に廻してしがみついてる…

「しい…な…しいな…あ…あ…ダメ…オレもう…だめ…んっ…」
椎凪に口を塞がれて…舌を絡ませられる…
「ンッ…んあ…」
もうオレは頭の中が真っ白で…
自分が何をしてるのか…何をされてるのかもわからない…
「んん…んっ…ンンっ!!」

がっしりと椎凪がオレを抱きかかえる…オレの身体の奥で椎凪が動いて…

オレは思いっきり仰け反ると…意識が無くなった…



「…ハァ…ハァ…」
椎凪に両手を縛られて抱かれ続けて…もうどのくらい時間が経ったんだろう…

椎凪も…オレも…しばらく動けなかった…
椎凪が珍しくオレに覆い被さったまま動かない…浅く早い呼吸を繰り返してる…
そんな事…珍しい…

「…耀くん…」
椎凪が未だに縛られたままのオレにすがり付く様に抱きついて来た…
「椎…凪…ハァ…ハァ…満足…できたの…?」
オレはボーっとする意識の中で椎凪にそう尋ねた。
「うん ♪ 耀くん最高!!」
椎凪がニッコリと笑ってる…
「そう…良かっ……」
「…??…耀くん??」

言ってる途中で耀くんの声が途切れた…見れば寝息を立てて眠ってる。
「……はぁ…はぁ…ありがとう…耀くん…」
オレは最後まで頑張って…無理してくれた寝顔の耀くんの頬に
ちゅっ!っと感謝のキスをした。


耀くんの両手を縛ってた紐を外してチャンとベッドに耀くんを寝かせると
オレはそんな耀くんに子供みたいに抱きついて眠った…
しばらくして目を覚ますと耀くんはまだ気持ち良さそうに眠ってた。

「…あふ…」
オレはベッドから起き上がってバスタブにお湯を張る間タバコに火を点けて一服した。
ベッドに腰掛けて眠ってる耀くんを眺める…
相変わらず両手を身体の両脇に置いてまるで赤ちゃんみたいだ…可愛いな…

こんなにヘトヘトになるまで女の子抱いた事なんて今まで無いよな…
耀くん…君って本当に不思議だね…こんな華奢な身体の何処に
そんな包容力があるんだろう…
どんなに抱いても飽きないし…どんなに抱いてもすぐ抱きたい気持ちになる…
ホント…不思議だよ…耀くん…

オレは自分でも信じられないくらい…
穏やかな気持ちで眠ってる耀くんを微笑みながら見つめてた…



「もう子供が出来ても大丈夫だね。」

お湯を張ったバスタブの中でオレが耀くんを後ろから抱きかかえる様に
2人で和んでる。
繋いでる2人の左手には同じデザインの指輪が光ってる。
何とも良い光景だ!!

「早く欲しいな ♪ ♪」
オレはニコニコで言った。
「椎凪…」
「何?耀くん…」
何だか元気の無い声だった。
「ごめんね…もしかしたらオレのせいで…赤ちゃん出来ないかもしれないよ…」
「え?何で??」
オレは後ろから耀くんを覗き込んだ。
「だって…今までだって無理だったし…オレ…身体…変かも…」
そう言ってオレの方に振り向いた耀くんの瞳にはうっすらと涙が浮かんでた…
「…うー……」
なんだ…そんな事気にしてたのか…耀くんってば…

「違うよ…耀くん…オレと耀くんの子供はとっても優しい子だから…
結婚する前に生まれたらオレが怒られるって分かっててちゃんと待っててくれてるんだよ。」

耀くんの顔をそっと両手で挟んでオレの方に向かせながらそう話してあげた。
「…本当?」
「うん。本当!だからいーっぱい愛し合おうね!すぐ出来るよ。」
「本当?」
「うん。オレウソつかないよ。それにもし子供が出来なくてもオレ耀くんがいてくれたら
それで十分だもん。そしたらいつまでも2人で一緒にいようね。約束だよ耀くん。」
そう言って耀くんのオデコにチュッってキスをしてあげた。

「うん…約束するよ…椎凪…ありがとう…」

こうやって最高な新婚旅行第1日目が終わろうとしていた。
次の日も殆んどがベッドの中で過ごした。
流石に3日目は耀くんが観光したいって言い張って…2人で出掛けた。
とにかく夜は外国のホテルと街と夜景と…最高のシチュエーションで
オレの気分は毎晩絶好調で…思いっきり耀くんと愛し合った。

4日目…オレは此処に来る前からのある不安が頭の片隅から消えないでいる…
今まで何事も無く過ごしてきたから流石にもう安心してもいいかな?なんて思ってた…
『婚約旅行』までオレ達の後をつけて来た右京君だ…
一瞬新婚旅行にもついて来んじゃなかと内心ビクビクしてたんだが…
流石にそこまで外道じゃないか…?だよな…?なぁ?いくらなんでも…

ホテルのロビーでオレを見上げるチビが1人…
「…んん??」
良く見ると…何だか見た事あるお子ちゃまで………

「…って琴乃っっ!!??」

叫んだ瞬間まだ歩くのも怪しい足取りでチョコチョコと走り出す。
「え?ちょっ…待ってて…琴乃だろ?おい!琴乃!!!待てって!!」
「椎凪??」
心配してる耀くんを後にオレは未だに早足で歩く琴乃らしき…
いや!アレは絶対琴乃だ!!…を追い駆ける。

「とうたま…」
そう言ってしがみ付いた脚の持ち主がオレの方を見もせずに
琴乃を抱き上げてスタスタと立ち去ろうとする。

「オラッ!!そこの挙動不審人物!!こっち向けっっ!!」

オレは一抹の不安を抱きながらそう声を掛けた。
まさか…まさか…な…そこまで外道じゃ無いだろ??違っててくれ!!頼むっ!!

「やあ…奇遇だね。君達も此処のホテルに泊まってたのかい。」

……ゲーーーーーっっ!!ウソ…だろ…マジか?マジなのか??
何でだ?何でそんな事が出来る????
図々しいにもほどがあんだろっ!!!草g右京っっ!!

「此処にって…来る前にちゃんと言ってあっただろ……?」
惚けてんじゃねーよっ!!

「そうだったかい?僕は覚えていないが…そんな事より君はさっき僕に命令しなかったかい?」

そう言ってオレを睨む。
「…………」
小さな事気にしてんじゃねーよ…
「椎凪?どうした…あ!あれ?右京さん??どうして??」

やっぱ本物の右京君か…
幻であって欲しかったよ…いや…そっくりさんでも良かったのに…

「元気だったかい?耀。たまには海外旅行もいいものだね。
琴乃にも海外を経験させてあげたくてね…なら早い方が良いと思って。
まさか耀達が泊まってるホテルだとは思わなかったよ…偶然だ!!」

偶然だと??おいおい…ニッコリと笑って言ってるが何も今この時期のオレ達と
同じホテルじゃなくてもいいだろうが…まったく見え見えのウソじゃねーかっ!!

「え?そうなんですか?オレビックリしちゃった。こんな偶然あるんですね!」

って!!えーーーーーっっ!!耀くん偶然で片付けるの??
どう見たって計画的だろ??ダメだよ耀くんっっ!!人が良すぎるってっ!!

「ん?どうしたの?椎凪??」
ホントに不思議そうな顔でオレを見ないで…耀くん…
「…そ…そうだね…はは…は…」
「慎二君達もあそこに…」
「えっ!!??」 「え?」

うげーーーーっっホ…ホントだぁ…祐輔達までいる…ウソだろ…

「もう十分2人の時間は満喫出来ただろう?」

右京君が意味ありげな眼差しでオレを見ながらそう言った。

「………はぁ…」

オレは深い溜息を吐きながらこんな皆で過ごす新婚旅行を送る奴なんて
きっといないんだろうな…なんて思いつつ…

段々そんな右京君のゲリラ的な訪問に慣れて来てる自分がいるのが嫌だ…
でも…こんな新婚旅行も記念になるかな…なんて思える自分がいて…

慣れって言うのは怖いとつくづく思い知らされた。