cat food Sweet whiteday 〜一緒に桜を愛でようか♪〜 01
Sweet whiteday 〜一緒に桜を愛でようか♪〜 01





世間がホワイトデーまであと僅か…なんて騒ぎまくっている頃…


「ねえハルキー!」

「ん?」

休日の部屋の中…
キッチンでコーヒーを飲んでたオレを真白がソファに座ったまま呼んだ。
真白はまたテレビを見てる…

真白の一般常識の収拾源はテレビの昼ドラが多い。
だから時々変な風に常識を覚えて困る。

他の情報番組やニュースで憶えればいいものを…なんでドラマなんだか…
会話形式で憶え易いのか…ああ…そう言えばニュースはまだ真白には難しすぎるのか…
半分以上言ってる事がわからないだろうな…

「もうすぐ 「ホワイトデー」 って本当?」

「え”っ!?」

何でいきなりそんな事…

「だってテレビで言ってるよ。それに前歩さんと一緒に「ばれんたいん」のチョコ作った時
『今度はホワイトデーって言うのがあってチョコをもらった相手がチョコをくれた女の子に
お返しするのよ ♪ 』 って言ってたもん。」

「………まあ…そうだな…」

そろそろ「ホワイトデー」のお返しも考えなきゃな…なんて思ってた所に真白からの催促か?
良くそんな前の事覚えてたな…


バレンタインには真白から手作りチョコを貰った。


いつの間に知り合ったのか同じコンビニを利用してる女性と知り合って仲良くなってた真白…

ちょっとずつ人の暮らしに慣れて欲しかったオレは心配しながらも
そんな真白の他人との交流にホッとしたの確かで…

しかもその歩さんと一緒にバレンタインには手作りでオレにチョコまで作ってくれた…

どんな風に作ったのか想像するのも怖いがまあ迷惑は掛けてなかったみたいで…
色々問題の多い真白だがどうやらいい人達と知り合うことが出来たらしい…


「ハルキはましろに 「ホワイトデー」 ってくれるの?」
「え?…ああ…ちゃんと考えてるよ。」
「え?なになに?ましろになにお返しくれるの?」
「そ…それはまだ内緒だよ。その日になってわかっるってのが良いんだからさ。」
「ふ〜ん…そっか!「ばれんたいん」も内緒だったもんね。わかった。」
「…そう内緒だ。」

そんな会話をしながらオレはちょっと焦ってる…

真白にどんなホワイトデーのお返しをしようか…

クッキーやアメじゃどうもな…
バレンタインには真白まで美味しく頂かせてもらったからな…
貰ったチョコの甘い香りが漂う中でしっかりと頂いたんだよな…う〜ん…

そんな事をしばらく考えてどうやっても思い浮かばないから諦めた。

「真白。」
「ん?」
「オレちょっと出掛けて来る。」
「ましろも行くー!」

そう言ってソファから駆け寄ってオレに抱きつく。
前は飛んで来てオレに抱きついたけど 「人」 になって飛べなくなった真白は
最近やっとその事を自覚してオレに飛びついて激突しなくなった。

前は何度言っても飛べた感覚でオレに飛びついて激突して…
良く2人で倒れてた……まったく…

「んー…真白は留守番してろ。」
「えーなんで?」
「会社に行かなきゃいけないから。真白は来ても仕方ないから。」
「会社?うーわかった……でも早く帰って来てね。ましろ1人はやだ。」
「なるべく早く帰って来る。バイクで行くからすぐに戻るよ。」
「うん…じゃあいってらっしゃいハルキ。チュッ ♪ 」
「いってきます。」

オレは真白のいってらっしゃいのキスで送り出された。

会社に行くなんて本当はウソだ。
あのまま家にいても良いアイデアが浮かびそうも無いから
気分転換にバイクで走ろうと思っただけで…

走りながら考えれば少しは良いアイデアも浮かぶかなと思ったんだが…

なぜかオレはバイクを走らせながら無意識のうちに
いつもの行きつけのバイク屋に向かってた。

いつもは自分で簡単に点検はしてるが最近忙しくて手が廻らなかったし…
定期的にお店に見てもらってるから丁度いいと思った。

それもあったし好きなバイクとバイクの部品でも眺めながらなら
良いアイデアも浮かぶかもしれないと思ったからかもしれない…



「やぁ、ハルキ君もメンテナンス?」

バイク屋に着いてバイクの点検をしてもらってる間店内をブラブラしてたら声を掛けられた。
振り向くと以前真白をバイクで送ってくれた…確か「れいさん」と言う人が立ってた。

真白が 『 あゆみさんとれいさんはとっても仲良しなんだよ ♪ 』 って言ってたもんな。


「あ、はい。…あ…先日は真白がお世話になりました」
「いや、俺は特になにってしてないし。気にしないで」

れいさんはそう言って笑うからオレもにこやかに微笑んだ。
そんなオレたちの様子を見て、髭オーナーが不思議そうに俺とハルキ君の顔を見比べた。

「なんだ?お前たち、知り合いか?」

髭を触りながら、首を傾げるオーナーに彼が

「ハルキ君のお嫁さんと、歩が知り合いなんだ」
「ほー、歩ちゃんとハルキの嫁さんがねー」

世間は狭いもんだ、とクツクツと笑いながらオーナーはオイルを抜いていく。

「ハルキ君も、オイル交換?」
「あ、はい。ちょっとここのところ忙しくてバイク弄ってなくて」
「俺も。ここからはバイク転がすにはベストシーズンだからな、今のうちのメンテしておかないとね」

そんなオレ達の会話を聞いていたオーナーが壁に飾られていた写真を指差した。

「伊豆高原の桜、めちゃくちゃ綺麗だぞ。去年のホワイトデー付近に走りに行ってみたんだが、
良かったんだよなぁー」

とバイク屋の髭オーナーが自慢げに呟く。
れいさんがその写真をじっと見つめていると、オーナーは手を止めて呟く。

「俺も走りに行きてぇーなぁー」

その写真には満開に咲き誇ってる桜の木が写っていた。

それがなんとも幻想的で…
オーナーが自慢したがるのもわかる気がする。

彼がぽつりと呟いた。

「凄いですね…オーナー」

そういうと、オーナーは嬉しそうに笑いながら、身を乗り出して言う。

「だろ?だろ?怜、お前も歩ちゃんケツに乗せていってみろよ」
「…いいかもね」

彼が賛同すると、だろだろ、とご満悦のオーナー。
そして今度はニヤリと笑って、オレの方を見たオーナー。

「お前も嫁さん連れて行って来い、いいぞぉー桜はいいっ!日本人の心だな!」

もう言う事が段々大きくなって来た事に気付かない様子のオーナー。
余程気分が良いのだろう。

「……桜か…確か真白は人になってからは見た事ないよな…」

オレはそんな事をボソリと呟いた。
初めて会った時はもう桜の季節は終わってたからな…
こんな綺麗な桜見たら喜ぶだろうな…って言うかはしゃぎまくるんじゃないだろうか?

『ハルキーーー!!すごいねーーー ♪ ♪ 』

なんて言ってクルクル廻って浮かれまくりそうだよな…

「くすっ…」

思わず想像出来て笑ってしまった。

「折角だから一緒にツーリングしにいかないかい?歩も真白ちゃんと一緒だと喜ぶと思うから」

突然怜さんがオレに向かって切り出した。
急に言われて驚いたけどオレはすぐに大きく頷いた。

「いいですね。真白も歩さんに会いたいって言ってたし。」
「それにホワイトデーも近い事だしこの機会にそれも返すって言うのはどうかな?」
「そうですね。モノで返すのも有りかも知れませんけど…そう言うのも喜ぶんじゃないかな。」

怜さんもオレと同じ様にホワイトデーのお返しの事を考えていたらしい。
そうだよな…彼もオレと同じ様に手作りチョコをもらったはずだから。
彼はフフッと笑うとオレに言う。

「じゃあ決定で!予定空けておいてもらって。」
「はい。わかりました。」


オレと怜さんはそう約束すると、壁に飾られた桜の写真を再び眺めた。