cat food Sweet whiteday 〜一緒に桜を愛でようか♪〜 02
Sweet whiteday 〜一緒に桜を愛でようか♪〜 02





まだ夜が明けて数時間といった早朝…
いつも真白が利用してるコンビニの駐車場で怜さんと待ち合わせをしてた。

やって来た怜さんと挨拶を交わす。

「おはよう。」
「おはようございます。」

一緒にいた女の人がヘルメットを取ってオレに軽く会釈する。
彼女が歩さんか…気さくな感じの人で…オレも軽く彼女に微笑んで頭を下げた。

「初めまして風間春悸です。お噂は真白から伺ってます。いつも真白がお世話になって…」

そう挨拶したら彼女がとんでもなく驚いて慌てて頭を下げた。
どうしてそんなに驚かれたんだろう?

「あ…いえ…そんなこちらこそ…初めまして…片瀬 歩です。
えーっと、いつも真白ちゃんには癒させて頂いてます。で?真白ちゃんは?」

そう言ってキョロキョロと辺りを見渡してる…
オレはそんな彼女の行動を見て少しだけ苦笑い…オレは自分のバイクを指差した。

「あそこに…」
「え?」
 
真白は停まってるオレのバイクの後ろに乗ったまま前のめりにうっつぷしてる…
そんな真白を彼女は心配そうに見つめて真白を指差してオレに問い掛ける。

「ど…どうしたんですか?気分でも?」
「いや…ただ目が覚めてないだけです…寝起き悪くて…」
「あら…まあ確かに朝早かったですもんね…」
「真白!起きろ!歩さん来たぞ!」

真白に向かってちょっと大きな声で真白を呼んだ。
このくらいで呼ばないと真白は起きない。

「にゃ!?」

オレの声に反応して真白の身体がピクン!と跳ねてむっくりと起き上がった。
そんなオレを歩さんがちょっとビックリした顔で見てた…あれ…オレ変な事したかな?

何だかとっても眠くて停まってたバイクで思わずウトウトしてたら突然ハルキがましろを呼んだ。
あゆみさんが来たって…うそ…そう思って寝ぼけた頭で声の方に振り向いたら
本当にあゆみさんがいてクスクス笑ってた。

「あゆみ……さん?」
「おはよう真白ちゃん」
「あ!本当にあゆみさんだ!!」

バイクの後ろから飛び降りてあゆみさん達の方に走った。

「れいさんもいる〜〜 ♪ ハルキの言った事本当だった ♪ 」
「当たり前だろ。ウソついてどうするんだよ。」
「だって皆でお出掛けなんてウソみたいだから。」

ウソみたいってなんだ…内緒にしてただけだって言うの。
そんなオレ達の会話を歩さんがじっと見つめてる…何か変かな?
どうも真白との会話を他人に見られると気にすると言うか…大丈夫なのかと思う時がある。
今度は怜さんがクスクスと笑って真白に声をかけた。

「楽しみにしててくれたんだ真白ちゃん。」
「うん。でもどこに行くかハルキ教えてくれないの。意地悪なんだよ。」
「誰が意地悪だ。サプライズって言うんだよ。それに真白に話すとあっという間に
歩さんに話しちゃうだろ。」

だから真白には昨日の夜に今日出掛けることを話したんだ。
2人と一緒だって事はここに着いた時に話した。

「「さぷらいず」?」

そう言えば 「ばれんたいん」 の時もあゆみさんが 「さぷらいず」 って言ってた。
たしか…驚かすことなんだよね?

真白のそんな言葉の後怜さんが、彼女と真白に向って言う。

「まあ行き先は着いてからのお楽しみって言う事で。ちょっと時間掛かるから2人とも頑張れよ。」
「男性陣の方がでしょ!こっちは2人に命預けるんですからね。
特に風間家は新婚さんなんだから。ね?真白ちゃん。」

彼女がそう言って真白にウィンクをすると、真白は見るからに上機嫌になった。

「しんこん ♪ しんこん ♪ 」
「お前わかってて言ってんの?」
「んーよくわかんないけどましろ時々言われるよ。よねざわさんに」
「そう」
「「しんこん」ってよその人の前でもハルキとキスしたり寝る時に…ふがっ!」

いきなり変な事を言い出す真白の口を手で押さえて閉じる。

「ばっ…何わけのわからないこと!!米澤の言う事真に受けるな!」
「??」

当の真白は全く気にする感じは無くて…そんな真白の言葉に2人は苦笑いだ。

「まあ…やっぱ新婚は初々しいな」
「そ…そうね…」

2人共引き攣り笑い…ったく真白の奴…
真白をちょっと睨んだけど全然気付かない……はぁ…
オレは2人に頭を下げた。

「すいません…朝から…」
「いや…さてそろそろ出発するか」
「そうですね」
「じゃあ安全運転で行きますか。春樹君!」
「はい。宜しくお願いします」

怜さんとオレはそう声を掛け合って、二人同時にバイクのエンジンをかけた。
歩さんと真白は、しっかりと後ろに座ってオレ達の背中に手を回した。



それから約3時間近く…途中休憩を入れながらバイクを走らせた。
日が昇って周りの感じも徐々に変わり始める…
日が照りだして肌に感じる寒さもあまり感じなくなってきた。
結局2人には最後まで行き先は告げずに行く事にした。
2人共驚いてくれるといいんだけどな。


「何ここ〜 ♪ 」
「わあ〜〜 ♪ 」

2人が驚きの声を上げる。
目的の場所に近付くにつれて街並みも…街中の雰囲気も徐々に華やかになる。

やって来たの伊豆にある有名な桜並木だ。
駅前から3kmに渡って約3000本の桜のトンネルが続く…

そんな中をバイクから降りてずっと上を向きながら4人で歩いてる。
淡いピンク色がずっと続く。

「真白桜って見た事無いだろ?」

思った通り真白はここに着いてから落ち着き無く動き回ってる。

「さくら?」
「そう桜…淡いピンク色の小さい花が沢山咲いてて綺麗だろ。」
「うん ♪ ましろさくらって見たこと無かったから初めて見た。きれいだね〜♪」

真白は落ちてくる桜の花の花びらに手を差し出して自分の手の平に乗せる。

「ああ…綺麗だな…」

あのバイク屋で見た写真も綺麗だったけど…
やっぱり本物はもっと綺麗だ…男のオレでも思わず溜息が漏れて見つめてしまう…

横を向くと怜さん達も桜の木を見上げて2人で何か話してる。

そんな穏やかな…そして幸せな時間にオレ達はしばらく身をゆだねてた…


「あ!」

「え?」

ポツリと雫が落ちた。

「なんだ…やっぱもたなかったか?」

怜さんが自分の頬に落ちて来た雨の雫を指先で拭うと空を仰いだ。
隣で歩さんも一緒に空を見上げてた。

「一応天気は曇りだったんですけどね…」

オレも同じ様に空を仰ぐ。

「ハルキ…雨?」
「ああ…残念だけどな…」

ハルキもれいさんもあゆみさんも…皆ガッカリしてる…ましろだってそう…

「こりゃ本降りになるかな?」
「そうなるとちょっと面倒ですね。帰れないかも…」
「少し、雨宿りをして待ってみるか」
「はい」

怜さんの提案で東屋に4人で身を寄せたけど…雨はやむ気配がしない。
それどころか雨脚は強まってる気がする。
これじゃバイクで帰れそうもないな…

そんな事を思ってたら怜さんがオレに声を掛けた来た。。

「春悸くん。やっぱり今日は帰れそうもないな」
「…ですね…どうしましょう?どこか宿とれるかな?」
「俺の知り合いがこの近くでペンションをしているんだ。
人気があるところだから部屋が空いているかどうか微妙だけど…ちょっと連絡してみるよ」

オレにそう言うと怜さんは携帯を取り出して電話を掛けた。
しばらくして相手に繋がったらしいけど…怜さんがエライぶっきらぼうに話し始めた。
そんな強気で大丈夫なんだろうかとちょっと不安を抱く。

「よぉ、孝。久しぶり。突然だけど、二部屋空いてない?」

結構な物言いで話し始めた怜さん…
歩さんを見るとそんな怜さんをちょっと笑いを堪えてる感じで見てる。
まあ相手は知り合いと言ってたからそれなりに知った仲だろうし…

二言三言話のやり取りの後…怜さんがニヤリと笑った様に見えた。

「春悸くん。知り合いのペンション、空き部屋あったから、そこに行こう」
「了解です」

オレが頷くと、怜さんは歩さんと真白に微笑んだ。

「ちょっと濡れちゃうけど、スリップすると危ないから、ゆっくり行くから」
「了解!」
「うんっ!」

降りしきる雨の中バイクまで全速力で走って、
ヘルメットを被って怜さんの知り合いのペンションへとバイクを走らせた。
数分バイクを走らせると看板が見えてきた。

『オーベルジュ高木』

後で聞いたけどそこは怜さんの友達でもあり、歩さんのことを妹のように可愛がってくれた
ご夫婦が経営しているペンションだそうだ。
バイクで乗り付けると、ペンションの入り口から女の人が勢いよく飛び出してきた。

彼女はこのペンションの奥さんで美奈さんと言うらしい。

「うわ、びしょぬれだね。とりあえずタオルね」

そういって彼女は歩さんと真白に一枚ずつバスタオルを手渡してくれた。
そして彼女は何でだかにんまりと笑って怜さんに鍵を渡す。

「本当にアンタは昔から運がいいわよね。
なかなか予約がとれない離れ2つが今日に限ってキャンセルでたのよね」
「サンキュ」
「前にアンタたちは使ったから場所は知っているわよね?」
「ああ」
「あの少し離れたところに、もうひとつ離れを作ったばかりなのよ」

本当運がいいわよね、と彼女は苦笑交じりで言った後、ニンマリとオレ達4人を見て笑う。

「コテージの中にお風呂あるから、そこで体温めてきて。夕食は7時だからね」
「…了解」

そっけなくいう怜さんに、彼女は怜さんの胸元をグイッと掴んで不敵に笑った。

「今回は絶対に孝輔のフランス料理、食べてもらうからね。なにがなんでも7時には来る様に」
「……」
「歩に襲い掛かるんじゃないわよ、藤沢。
もし7時になっても来なかったら、今度こそは乗り込むからね、覚悟なさいよ」
「…了解」

何故か怜さんは胸倉掴まれて息混じりに頷いた。。
話の内容は良く分からないがきっと以前来た時に何かあったのかもしれない。
じゃなきゃ歩さんが怜さんの後ろに隠れるのはおかしい。

一体何があったのか聞きはしないけど…
そんなやり取りの後彼女は、オレと真白にニッコリと微笑むと、オレに鍵を渡した。

「これコテージの鍵ね。どうぞゆっくりしていってくださいね」
「…すいません、突然お邪魔して…」
「なーに、藤沢と歩の友達ならいつだって歓迎だからね。遠慮しないでリラックスしていってね。
うちのオーナーシェフの料理、格別だから!楽しみにしていてね♪」
「わーい ♪ 楽しみっ!」

真白がそう言って喜んでるのを彼女は嬉しそうに見つめていたが、思い出したように手をポンと叩いた。
 
「ま、とにかく体温めてきて。風邪ひいちゃうとまずいし。
適当な着替え、コテージに置いておいたから、とりあえずそれを着てね。
濡れた服は、あとでこちらに持ってきて。乾燥機で乾かしておくからさ」
「悪いな、美奈」
「なーに、これぐらいなんてことないわよ。さ、早くお風呂にはいっていらっしゃいな」

彼女にに見送られて、オレ達は借りた傘を差して離れコテージまで急いだ。
彼女が言った通り1つ目のコテージから50メートル先ぐらいにもう1つコテージがあるのが見えた。

「ここのコテージが俺たちが使う部屋みたいだな、あっちのは春悸くん達みたいだな」
「あ、はい」
「じゃ、7時に下のペンションで落ち合おうか」
「わかりました」

そう約束してオレは真白の手を引いて用意してくれたコテージに急いだ。