1話:惇哉&瑛未 待ちに待った共演の巻
巷では今日はクリスマス・イヴと呼ばれていて皆浮かれてる。
そんな中あたしは午前中からCM撮影のお仕事…なんてツイてないんだろう…
なぁ〜んて事はコレッぽっちも思ってない!
微塵もっっ!!
だって!! 何て言ったって!!! 今日は…今日の撮影の相手は……
「楠 惇哉さん入りまーーーす!!」
『きゃ〜〜〜〜〜〜〜 ♪ ♪ 』
スタッフの声が掛かってスタジオの入口から惇哉さんが……
「おはようございます。」
『 !!! 』
なっ!!?? 何? 何アレだれ? なんなの? あのヒョロ男は???
あんなの惇哉さんじゃないっっ!!! ってかあんた誰っ!?
結構歳のいったおじさんの一歩手前らしき男の人が挨拶しながら入って来た!?
あたしの惇哉さんがアレなわけがない。
って…ああ! マネージャーさんか!!
全くぬか喜びさせてくれちゃって……なんでアンタが先に入って来るのよぉ〜あっ!!
「おはようございます。」
後からいつものニッコリスマイルで入って来たのは……
『きゃーーーーーっっ!! 惇哉さんっ!!! 今日もかっこよすぎるっ!!』
あたしは心の中でずっと叫び続けてる……
「あ!」
ああ!! 惇哉さんがあたしに気付いて…こっちに歩いてくる……
5メートル…3メートル…………ああ…目の前!!
どどどどうしようっ!!
「おはよう。瑛未ちゃん ♪ 」
「お…お…おは…おはようございますっ!!」
ガバッ!!!っと頭を下げてご挨拶!!
あたしはアホか。
「今日は宜しくね。」
「は…は…はい!!」
「それに終わった後はまたお楽しみがあるしね ♪ 」
「ひゃっ…」
わぁ〜〜〜〜みっ…耳元に囁かれた〜〜〜!!!
遼平には悪いけど…トキメイちゃったよっ!!!
ごめん遼平。惇哉さんだけは許して。
由貴さんにはあたしが惇哉さんに惚れまくっていること伝えてあるから大丈夫なの。
遼平は残念なことにまた別格だから許してね!
「だから早く終わる様に頑張ろうね ♪ 」
「はい! 頑張りますっ!! よろしくお願いしますっ!」
今日のこのCMの仕事のオファーが事務所に来た時本当はちょっと乗り気じゃなかった…
まだ自分1人なら気持ちも違ったけど…男の人が相手役でいるって聞いたから…
もう大分落ち着いて…
騒がれなくなったけどまたあの高野さんや浅山さんみたいな人が相手だったら嫌だなって思って…
でも…
「やっぱりエイミの気持ち考えて今回は止めとくか?」
「………でも…」
そう…仕事なんだから…チョッとの事は我慢しなきゃ…
どうせもうすぐ引退だし…。
「だってまだ辛いだろ? いくら仕事だって精神的に負担が掛かるんじゃ…。
その方が俺も心配なんだ…。エイミには最後まで楽しんで仕事してもらいたいし…」
何だかいつも以上にあたしの事を気遣ってくれてる社長のお言葉に甘えようかな……
「まあ…相手が「楠 惇哉」でも仕方ない…今回は断って…」
「社長っっ!!!!!」
いきなりソファから立ち上がって社長のデスクの前まで加速装置で移動した!
ガッシリ社長の手を握り締めて大真面目な顔で社長を見上げる。
「なっ…何!? どうした!? エイミ…だからもう無理に…」
「やりますっ!! やりたいですっ!! ぜひやらせて下さいっっ!!
って言うかこの仕事逃したら……」
「……逃したら?」
「社長の事一生恨んでやるっ!!!」
ガーーーーンッッ!!!
と言う心の響きが聞こえた気がしたけどこの際社長の事なんて構ってられない!
ウソ…ウソでしょ……夢まで見た惇哉さんとのお仕事!!!
絶対逃すもんですかっっ!!!
すぐに社長に受話器を握らせ、
その場でOKの電話を入れさせて確約を取った。
よっしゃーーーーーーっっ!!!!
俄然燃えて来たーーーーっっ!!
これはもう、遼平に自慢するしかない!
うわぁぁぁ♪ すんごい嬉しい!
夢じゃないよね!?
あたしは思わず社長の頬をぎゅぅぅぅっと抓った。
「いたたたたた!!! エイミ…何なの急に!?」
「ごめーん! 社長、大好き♪」
テンション上がりっぱなしのあたし。
社長をぎゅうぎゅう抱きしめて大喜びした。
それから直ぐにあたしの携帯に惇哉さんから電話が掛かって来た。
あたしから惇哉さんに電話を掛ける事は無いけど遼平から奪う様に
登録した惇哉さんの携帯の番号…
それが今…あたしの携帯のディスプレイに「惇哉さん」の文字が浮かんでる!!!
でででで出なきゃ……はははは早く出なきゃ…ああ手が震える……
「は…は…はい…!」
『あ! 瑛未ちゃん? オレわかるかな?』
「わわわわわかります…しゅ…惇哉さんですよね…?」
『そう♪ いきなり電話してごめんね。』
「いいいいえ…とんでもございません…」
って言うかいつでも電話して下さい。
『今度の携帯電話のCMの仕事引き受けてくれたんだってね。』
「はい! 即答でお返事させて頂きました!!」
『撮影がイヴの日なんだけど2人で早く終わらせてその後に準備しようね ♪ 』
「はい!!」
『じゃあ撮影でね。』
「はい!」
『あ! これでオレ携帯番号わかったでしょ? 登録しといてね ♪ 』
「はいっ!!」
もう既に登録してあるけど!!!
『じゃあ撮影楽しみにしてる。』
「はい!!」
そう言って電話が切れた……
ほとんど“はい”しか言えなかったけど。
なんなのこの感動は!!
あたしはしばらく放心状態……携帯を握り締めて震えていた…
「はっ!! しまった!
今の通話録音しとけば良かったよーーっ!! もったいない〜〜!!」
そんな日からこの日が来るまでどれだけ楽しみに…指折り数えて待っていたか!!
今回の設定は若い恋人同士の設定でオープンカフェでの撮影。
セットだって構わない! 惇哉さんと一緒なら何処だって薔薇色なんだから!!
「とにかく仲の良いカップルで携帯を弄って下さい。後はお1人ずつの撮影になります。」
コンテを見るとオープンカフェで仲睦まじくしてる2人…
その後1人ずつの部屋の中の撮影だけど携帯を掛けてる場面で
相手はお互いに掛け合ってるって設定。
とにかく「仲が良い!」を強調すればいいのね!
「セリフは録りませんから。でも何でも良いから会話はお願します。」
「はい。」
「とにかく仲良く楽しくで!」
「は〜い ♪ 」
言われなくても仲良くしますとも!
「じゃあ瑛未ちゃんここからは仕事だから…宜しくね。」
「はい!」
そう…浮かれてばっかりいられない…
惇哉さんにガッカリされない様に…いい演技だったねって言って貰える様に…
杉原瑛未! 気合入れて頑張りますっ!!!