7話:4人 楽しいクリスマスパーティーの巻(2)











なんとかギリギリ閉店時間前にクリスマスケーキを手中に収めた。
惇哉さんはホッとした顔でケーキを大事そうに抱えている。


「何かすみませんでした。瑛未のやつの悪ふざけに付き合わせちゃって…」
「え…そんなことないよ? 実はすっごい楽しかったんだよね〜」
「楽しそうでしたけどね、確かに」
「遼平も着てみる? 意外に楽しいよ?」
「いえ…俺は遠慮しておきます…」
「そう? もったいないなぁ。今日しかチャンスはないのにさ」

非常に残念そうに呟く惇哉さんだったが、アレがクリスマス限定じゃないことを知れば
惇哉さんだってさすがに引き攣るだろう。


無事ケーキを持って惇哉さんの家に戻ると、さっきまでは途中だった料理がほぼ完成していた。


「おかえりなさい」

由貴さんの機嫌も直っていてホッとしたが、瑛未が由貴さんにベッタリ張り付いている。
あんなのが引っ付いていても料理できるんだからすごいよな…。

「揚げ物するときは危ないから瑛未ちゃんはお皿運んでくれる?」
「はーい♪」

いいお返事だ。
誰だアレ。

「遼平も手伝う!」
「…………」
「早く手洗ってきてよ! ただでさえ図体も態度もデカイんだから邪魔なんだよ!?」
「てめぇ…この場で口塞がれたいのか?」
「由貴さーーーん!!!」


この馬鹿女……ふざけた真似をしやがって…。
グッと堪えてため息をつくと惇哉さんがくすくす笑った。


「前にも言ったけど、お互い彼女の方がしっかりしてるよね」
「……瑛未の場合、しっかりってよりちゃっかりですよ…。
聞きました? あのナマイキな言葉に態度!!」
「うん。可愛いよねー瑛未ちゃん。由貴のことが大好きーって顔にも態度にも出てて ♪」
「あれくらいしかいい所ないんですって…」


結局言いなりになって最後まで手伝いをする俺。
まぁ…あれだけ元気になったんならいいか。

テーブルに完成した料理を並べ、席につく。
一応俺らは未成年だからノンアルコールで、と思っていたが、
由貴さんが妊娠中だからと惇哉さんもノンアルコールらしい。

乾杯して豪勢な料理を突く。

途中でプレゼント交換をして盛り上がり、
惇哉さんと瑛未が用意した大量のプレゼントに大笑いした。


「こんなに買ってどうするの?」
「え? まあお遊び感覚な物もあるけどこれなんて子供生まれたら使えるし。」

惇哉さんが赤ちゃんのオモチャを自慢げに見せる。

「だって…もうオモチャたくさんあるじゃない。」
「あ! で…でもさ新商品だよ!」
「あのね惇哉さん…新しいのが出る度に買ってくるの止めてね。」
「いや〜ついつい手が出ちゃうんだよね…」
「子供が生まれる前にオモチャで部屋が一杯になっちゃうわよ。」

「 「 !! 」 」

瑛未を見たら瑛未もオレを見てた。
2人で顔を見合わせて2人して気まずい。

なんせ惇哉さんと由貴さんの結婚祝いに大量の子供のオモチャを
プレゼントしたのはオレ達だから…

『なんで惇哉さんがあのオモチャ買おうとした時止めないんだよ!』

コソッと瑛未に耳打ちした。

『いや〜だって…新商品だったし…』
『はあ?』

何でだかピン! と来た。

『まさかお前が勧めたんじゃねぇだろうな…』
『え? ……あ…えっと…』
『………』

この挙動不審…当たりか!!

『アホ!』
『ごめん…』
『責任取って何とかしろ!』
『ええ〜』

もう遼平め〜でもまたあたしのせいで惇哉さんが怒られるのは申し訳ないからな……
もうこうなったら……

「杉原瑛未1曲歌わせて頂きます!!!」

「 「 !! 」 」

元気良く片手を上げて勢い良く立ち上がった。
惇哉さんと由貴さんはあたしのいきなりの行動に驚いてる。

でもでもでも…こんなこと位でしか惇哉さんをお助けする手段があたしにはっっ!!!

「………」

遼平の眉間の皺が更に深く深くなった。
しかも気のせいだとは決して思えないほどの呆れ顔……。

覚えてなさいよ! 遼平〜〜!!



たくさんあった料理もほとんど無くなり、惇哉さんと二人で食器を洗った。
後片付けもあらかた終わったところでリビングに戻るとサンタ瑛未がご就寝…。
なんで……。
ガックリ項垂れる俺を見て由貴さんが可笑しそうに笑った。
肩を揺すっても全く起きる気配のない姿にため息しか出ない。


「大騒ぎして最後はこれかよ…」
「お仕事もしてサンタさんにもなって、きっと今日は疲れたのよ。泊まっていく?」
「いえ…。惇哉さんも明日仕事だし。今日は帰ります」
「じゃあタクシー呼んでおくわね」
「すみません」


由貴さんがタクシーを呼んでくれている間に荷物をまとめ、ぐっすり眠っている瑛未を抱き上げた。


「じゃあ…今日はご馳走様でした。
また瑛未が迷惑かけると思いますけど…ちゃんと怒ってやってくださいね」

「そんな迷惑だなんて…それに瑛未ちゃんを怒るなんてほとんど無いわよ。
遼平くんのことはどんどん怒りなさいって言ってはいるけど…ふふ…」

「……え!?」

「由貴は男心がわかんないんだから怒ってばっかりだと男はイジケちゃうんだよ。な? 遼平。」

「……は…あ…そうです…ね…」

ここは惇哉さんの手前同意しておいた方がいいのか?
レンジさんに惇哉さんは由貴さん絡みだと結構ヘタれるって聞いてるからな…

瑛未を抱えたまま下に降りるとすぐにタクシーが来て乗り込む。
幸せそうに口の端を上げて眠る瑛未はガキそのものだ。
サンタ衣装も似合いすぎてコメントできなかったけどな。

でもまぁ…来年、どうしてもコレを着るって言い張ったら…
付き合ってやるか。
……家の中限定だけどな!! 



「賑やかだったわね…」
「ああ…」
「同時に弟と妹が出来たみたいだったわ。」
「由貴は弟2人か?」
「そうね…惇哉さんだって杏華ちゃんと瑛未ちゃんで両手に華じゃない。」
「妬ける?」
「まさか…」

そう言って由貴がソファに座る。

「疲れた?」
「ちょっとね。でも平気…」

「チュッ♪」

由貴の唇に触れるだけのキスをした。
由貴はにっこりと微笑む…

「来年は3人ね。」
「そうだな…まさか遼平の所もなんて事ないよな?」
「それは無いんじゃない。ちゃんと2人とも将来のこと考えてるみたいだし…」
「そう?」
「しっかりしてるのよ。2人共…」
「そっか…ああでも…やっとオモチャが役に立つ。」
「本当にもう買わなくていいから。」
「はいはい…」
「むっ!」
「あ! ……はい。」


そんなオレに由貴がまた優しく笑う…そっか…来年は3人か…

一体どんなクリスマスになるんだろうな…


「また来年のクリスマスも遼平達とできるかな?」
「スケジュールが合えば出来るんじゃない?」
「そうだな……くすっ…」
「ん?」
「いや…なんかさ…遼平と瑛未ちゃんオレ達の子供の言うこと無条件で
受け入れそうだなぁってさ…甘そう…」
「そうなのよ! 今日遼平くんと買い物に行ったでしょ。そしたら遼平くんったらね…」


そう言って由貴が今日の出来事を話し出す…

お互い色々ハプニングがあったらしいけどでも最後は皆で楽しく過ごせたからいいか……

今年のクリスマスは最高のクリスマスだった……

来年のクリスマスもこうやって過ごせるといいな……


そんな事を思いながら楽しく話す由貴を見て…


オレは笑って頷いた……