6話:4人 楽しいクリスマスパーティーの巻











「 ピンポーン♪ 」


ガチャ。


「メリークリスマス♪ 由貴〜♪」
「メリークリスマス♪ 遼平♪」


玄関を開けたら男女のサンタが2人…
大きなプレゼントが入っているであろう袋を担いで上機嫌で立ってた。


バタン!! 


即玄関のドアを閉めた。


「なっ!!! ちょっ!! 由貴!! 何で閉めるんだよ!!」
「由貴さん!! 強盗じゃないですよ〜〜〜!!」


ドア越しに何か聞える…そっと数センチドアを開けた。

何かあったら後には遼平くんが控えてるし…大丈夫よね…
ってその遼平くんも呆れて何も言えないでいるけど…
こう言うのを呆けるって言うんでしょうね…


「まさか外もその格好で歩いて来たんじゃないでしょうね? 惇哉さん……」
「うっ…ええ?? まっ…まさか…」

まさか外でサンタの練習してたなんて言えねぇ〜〜〜


「そ…そうですよ…そんな恥ずかしいこと…」

まさか通行人相手にサンタになりきってたなんて言えないわ〜〜


「そう? その割には挙動不審だけど…?」
「か…考えすぎだって…由貴…」
「瑛未ちゃんも惇哉さんの言うこと真に受けちゃだめよ! 恥ずかしい目に遭うんだから!」
「は…はぁ……」

2人で盛り上がってたなんて言えない……
 

「……おまえさぁ…惇哉さんまでソレ、巻き込むなよ…」
「う…だってさー? やっぱりクリスマスって言ったらコレでしょう。ねね、似合う?」


あたしはさっき惇哉さんの前でやったみたいにエヘンと胸を張って遼平を見上げた。
……この顔は……。


「…正真正銘のアホだな。」


ガーン!!! 
やっぱりあたしの想像通りのコメント!? 
なんで〜??? 
ガックリ項垂れて、コソコソと惇哉さんの傍に移動し、腕を引っ張る。
ん? って言いながら惇哉さんが少し屈んでくれた。


『おかしいですね…もっと喜んでくれると思ってたんですけど…』
『ごめんね瑛未ちゃん…由貴ってこう言うテンションだったよ〜忘れてた…』
『そうなんですか?』
『真面目だから……』
『怒ってます?』
『いや…怒ってはいないと思うけど…』
『だったら良いんですけど…』
『遼平ももうちょっとノッてくれればいいのにさー…きっと由貴に影響されたんだよ…
今日のたった1日で…』

恐るべし由貴の教育か?

『いえ。残念ながら遼平はこういうつまんないヤツなんです。すみません…』


そんな会話をリビングに向かう廊下で瑛未ちゃんとヒソヒソ話してた…

でも…そんな事もリビングに入った途端掻き消えた…
テーブル一杯の豪華な料理…


感動している惇哉さんを見てちょっと笑うと由貴さんが苦笑いで俺を見上げた。


「ごめんなさいね? 惇哉さんったら瑛未ちゃんまでこんなことに巻き込んじゃって…」
「いえ。むしろ巻き込んだのは瑛未ですから…。でも惇哉さんもまぁ…ノリノリっぽいですね」
「ええ…残念だけどすごく楽しそうよね…」
「ね? 言ったでしょ? 瑛未ってああいう衣装、素で好きなんです」
「…でも…似合ってるじゃない。可愛いって言ってあげたの?」
「まさかっ!!!」


言えるわけがねぇ。
あのアホ女、一度でもそんなことを言おうもんなら、来年の俺は今そこにいる惇哉さんの立ち位置になる。
……あれだけは…どんなに頼まれても泣かれても、絶対に無理。
俺には着れない…。

そんな俺の心の声が聞こえたのか、由貴さんは苦く笑った。
俺…惇哉さんのこと今まで以上に尊敬した。
瑛未に付き合ってあそこまで乗れる人は、きっと惇哉さんだけだ…。

「で? 惇哉さんクリスマスケーキは?」
「は?」
「は? じゃないでしょ…頼んだじゃない!! 帰って来る時に買って来てねって!!」
「………あっ!!」
「あ! じゃないでしょ! あ! じゃ!!」
「瑛未お前も忘れてたのか?」
「へ? あ……ご…ごめん…」
「アホなだけじゃなく脳も足りないんじゃねぇの!?」
「むー…だってさぁ…」


瑛未は頬を膨らませて惇哉さんをちらりと見上げた。


「ちょっと2人共…まさかその格好をする為に時間費やしてたんじゃないでしょうね?」
「えっ!? いや…そんな事は…」
「惇哉さん!!」
「は…はい!!」
「年上のあなたがしっかりしなくちゃダメじゃない!!」
「はあ…」
「早く行って買って来て! お店閉まっちゃうわよ!」
「は…はい。」
「あ…あたしも一緒に行きます。」


由貴さん怒るとこんな風になるんだ…ちょっと怖いかも…
ごめんなさい…惇哉さ〜〜ん…あたしも同罪だよ〜〜〜
慌てて廊下に向かって踵を返した。


「2人共! その格好で行くつもり?」
「え? あ…そっか…って…あれ? 服どうしたっけ? 瑛未ちゃん?」
「ふく…? 服…服…ってああーーーーーっっ!!!
撮影所の衣裳室に置きっぱなし!!!」
「あっ! そうだ!!」
「…マジで?」

遼平くんのこめかみがピクリと痙攣した。

「………2人共…撮影所からその格好だったのね……」
「ハッ!!! いや…その…」
「由貴さん…落ち着いて…」

流石にあたしも焦る。

「早く着替えてケーキ買って来て!!!」

「はい! わかったから由貴! 怒るとお腹に良くないから!! 瑛未ちゃん行こう!」
「はい! って…あ…服…」
「いいよ…オレが代わりに取りに行ってやるから。」


遼平がそう言ってくれたけど…今由貴さんと2人っきりは…

なんて言ってる間に惇哉さんはサッサと着替えて遼平と一緒に出て行っちゃったし…

この薄情もーーーーーんっっ!!!

「はあ〜〜〜もう…しょうがないわね…」
「由貴さん?」
「ごめんなさいね…私口煩くって…」
「ううん…ごめんなさい…。あたしが惇哉さんにお願いしたの。一緒にサンタになろうって…」


シュンとするあたしの頭を由貴さんが撫でてくれる。
おずおずと顔を上げるといつもの優しい顔。
ホッとしてぎゅうっと由貴さんに抱きついた。
おなかには触れないように…。


「あのね、由貴さん。今日あたし、惇哉さんにも頭撫でてもらったよ」
「え? そうなの? 実は私も今日…遼平くんの頭を撫でちゃったのよね…
無意識にだったんだけど…つい…でもあの歳の男の子にする事じゃなかったわよね…」
「えぇっ!? あいつ、殴られることはあっても撫でてやるようなことしないですよね!?」
「え…えぇ、まぁ…そうなんだけど…色々と…」
「ずーるーいー!! じゃああたしももう一回撫でてください!」


駄々をこねるあたしに、由貴さんはしょうがないわね…って笑って、よしよしと撫でてくれた。

あたし、由貴さんみたいなお姉ちゃんがいたらきっと毎日こうやってイチャイチャしていただろうなー。ふふっ。


「由貴さん、大好きー♪」


生まれてくる赤ちゃん、きっと惇哉さんと由貴さんにソックリの優しい子だろうな。
そんなことを思いながら、たっぷり由貴さんに甘えさせてもらった。


「さ! 惇哉さんと遼平くんが帰ってくるまでにお料理、完成させちゃいましょう!」
「ラジャー♪」


あたしは由貴さんに絡みついたままウキウキしながらキッチンに向かった。


今日は最高の日だ♪