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Shiina&Gen&Mikage 01



巷ではクリスマス・イブなんぞと浮かれてる頃オレは超不機嫌で駅の構内を横切ってる。

イブの日に仕事なのは仕方ない…いくらオレだってその辺は我慢する。
その代わり明日のクリスマスは休みだからまあ良いだろう。

本当は仕事だったが先輩想いの後輩がオレを想って代わってくれた。
もちろん相手は堂本君。

彼女いない暦3年の…あれ?4年だったかな?
淋しい童貞の1人暮らしの男がクリスマスの日に休んでなんの意味がある!?

ここは超熱烈恋愛中のオレと代わった方が何億倍も世の中の役に立つ!

なので快く代わってくれたと言うわけだ。
…別に脅したりなんかしてない!普段のオレにどんだけ世話になってるか…それを考えたら当然だ。

なのになんでオレは不機嫌かと言うと…
仕事の終わりがけに事件が起きてそこの現場に向かってるからで…

この時間から事件って…一体帰りはいつになるんだ……くそっ!

本当なら数時間後にはオレの手作りクリスマスケーキを耀くんと2人で食べて…
オレの作ったクリスマス用の料理を耀くんが美味しそうに頬ばって沢山食べてくれて…

『 椎凪美味しい ♪ ♪ オレ幸せっっ!! 』

ってにっこりと笑ってくれるはずが……何が悲しくて殺人現場に向かわなきゃいけないんだ……

更にその数時間後には2人でベッドの中でイチャイチャとクリスマス・イブを
満喫してただろうに……はぁ……

考えれば考えるだけ落ち込む……


そうだ…耀くんに遅くなるって連絡しとかなきゃ…
多分オレが帰れないから 『 TAKERU 』 のクリスマスパーティーに出るんだろうな…
本当はオレがいないとつまらないって言ってたけど祐輔や慎二君もいるし
今回お子ちゃまコンビの一唏と應祢君もいるからまあどうにかなるだろう…

でも……耀くんに会いたいよ〜〜〜〜くすん!

足早に歩きながら携帯を取り出す。
結構な人混みなのにちょっと横に逸れると途端に人通りが少なくなった。
同じ駅の構内なのにメインの広場はツリーはあるはイルミネーションは綺麗だわ…雲低の差だな。

なんて思いながら耀くんに繋がってオレは一時だけ幸せの時間を過ごす。
いやぁ〜〜〜やっぱ和むよなぁ〜耀くんの声ってば ♪ ♪


【 芫&みかげ 】

どうしてこんな事になっちゃったんだろう…?
ただ芫くんと2人クリスマスの街をデートしようとしてただけなのに…

珍しく駅で待ち合わせなんてしたのがいけなかったのかな?
いつもみたいに私の駅で待ち合わせすれば良かったのかな??

芫くんがワザワザ戻る形になるからって私が乗り換えの駅で待ち合わせって
言ったのが間違いだったのかな???

芫くんよりちょっと早めに駅に着いたら若い男の人3人に声を掛けられた。
見た目は同じ高校生くらいか…大学生?社会人じゃないみたいだけど…
断っても断ってもしつこくて…もしかしてこれがナンパと言うもの??
生まれて初めてかも!?なんて納得してる場合じゃない!どうしようかと思ってたら
芫くんが現れて…無視して行こうとしても余計絡まれて人気のいない通路に連れて来られた…

こんな事今ままで無くって…
私は怖くて芫くんの洋服をギュッと掴んで震えてた…
芫くんはそんな私を庇ってくれて…ずっと自分の後ろに隠してくれてる…

何でこの人達はこんなにしつこく絡んでくるんだろう?
彼が来たって言うのに…なんで諦めて行ってくれないんだろう…

今にも殴り合いになりそうな雰囲気で緊張する…

「芫くん……」

私は芫くんを見上げてハッキリと分かるくらいな不安な声を出した。


みかげが超不安な声でオレの名前を呼ぶ。
声と同様にいつも明るい顔も今は不安な顔だ…

ったくしつこいったらありゃしねぇ…
お互い引かないから話はまとまらず平行線だ。

大体何でこいつらこんなにオレ達にかまうんだ?理由がわからない…
ただそろそろお互い限界だった。

あんま他人相手に喧嘩はした事は無いが…快や悠相手に実戦は嫌ってほど積んでるから…
あの馬鹿兄貴共…弟だからって…年下だからって手加減なんかしてくれなかったから…

特に快の奴は厳しくて…

『 自分の女くらい自分で守れっ!! 』

ってホント容赦無く教育してくれたよな…
オレはその時女なんて知らなかったし…付き合ってる女もいなかったのに…
どんな理由だ?って心の中で疑問に思ってたのを覚えてる…

まあ快にはまだ1度も勝った事は無いが…どうみてもこいつらが快よりも強いとは思えない…

ただ問題はみかげだ…
いくらこの状況でもオレが喧嘩するのを見て呆れないか?大丈夫か??

それが1番の心配だ……だから手を出す事も出来ずに迷ってる…

「可愛い声しちゃってぇ〜〜人数多い方が楽しめるからさ ♪
俺等と一緒に行こうぜ!こんな野郎と別れてさ!」

「あ…!」

そう言って1人がみかげに手を伸ばす。

「だからしつこいって言ってんだろうが!オレ達にかまうなよ!」

みかげの前に身体をズラして野郎の手をオレの身体で遮った。
さっきからこんなのの繰り返しだ……ったく疲れる…

初めてのみかげとのクリスマスだって言うのに…なんでこんな目に……

「テメェは邪魔なんだよ!女の前だからって粋がってんじゃねえぞ!ああ?」

ついに相手がオレの胸倉を掴んだ。
粋がってんのはどっちだ?人数多いからってナメんじゃねーぞ…

まさにもう限界でお互いの腕がピクリと動いた…


「 !!! 」

芫くんが相手の男の人に洋服を掴まれちゃった!!!やだ!どうしよう!!殴られちゃう!?
こ…ここは私が大声で叫んで……

そう思った時私達が立ってる路地の角を1人の男の人が曲がって来た…携帯を掛けながら…

一瞬でそこにいた全員がその人に視線を向ける。
全員がその人と目が合った!その人も全員と視線が合ったはず。


「…え?……ううん…何でもないよ…じゃあなるべく早く帰るから…うん…愛してるよ…じゃあね…」

私たちの事なんて全く気にする気配も無く…そう言って私達の目の前で携帯を閉じた。

え?今この人『愛してる』って言った?しーんと静まり返ってる通路で
その人の声だけが聞えてたからここにいる全員がそれを聞いた。


にこっ ♪ ♪

しかもにっこりと笑顔まで私達に振り撒いて…何なの?この人…
そして誰もいないのかと思える歩き方で堂々と私達と男の人達の間を通って行く。

「あ…!ちょ…ちょっと待って下さい!!」

とっさにその人の腕を掴んでしまった!
何でだか…自分でもわからない…この状態の救世主かと思ったのか…

それともあの人懐っこい笑顔に惹かれたのか…とにかくこの人しかいないなんて思って…

「なに?」
「え?」

なのに返って来た返事は素っ気なかった。