Novel Page
Shiina&Gen&Mikage 02
「あ…あの…助けて下さい!この人達何度断っても納得してくれなくて…」
何でこの人にそんな事言ったのか…ただ他人が入ればこの人達も諦めてくれるかなって…
「なんで?オレには関係ないよ。それに君には彼氏いるじゃん?彼に助けてもらいなよ。
オレ急いでるし…今オレ超機嫌悪いからさ。」
「え?」
なんか…ちょっとビックリで…言葉が出なかった。
「オイオイ!何シカトこいて逃げ様としてんだよ!ダセェ事してんじゃねーぞ!」
あれ?どうやらこの人も絡まれちゃった??もしかして私他人巻き込んじゃったのかな?
そんな事を思って芫くんを見たらちょっと呆れた顔されちゃった……どうしよう…
「しかも愛してるだぁ?くだらねえ事言ってんじゃねーよ!けっ!胸くそ悪くなるっ!!」
「はぁ?なんで?愛してるから愛してるって言ったんだろ?
ああ〜〜こんなクリスマスに人の彼女を男3人でナンパなんてモテない奴には
愛してるの意味はわからないか??やだなぁ〜〜〜不幸が伝染りそう……最悪!!」
「 なっ!!!なんだとぉっっ!!! 」
一気に3人が怒り出した!!
この人一体なんのつもり??関係無いって言いながら相手怒らせて…
「だってタダのウサ晴らしで絡んでるんだろ?周りは幸せそうなカップルだらけなのに
何で俺達だけこんなムサイ顔突き合わせてんだろう…ってね。
そんなんだから女の子も近寄ってこないし金も無いから遊ぶ事も出来ない…
だから仲良さげな相手見てムカついたんだろ?まったく…これだからモテない野郎は…はぁ〜〜〜」
思いっきり呆れた態度と哀れんだ態度でものすごい溜息をついた…
「きっとこの子をナンパする前に何人も相手にされずにシカトされたんだろう?」
「…!!!ぐっ…!!」
あ…どうやら図星だったらしい…でもこの人ホントこんなに相手を挑発する様な事言って…
大丈夫なのかしら?
「ほらどけよ!オレは急いでるし機嫌悪いんだから。」
「機嫌が悪いからなんだよ?勘弁してくれってか?ばぁ〜か!見逃すわけ……ぎゃっ!!」
「 「 「 !!!! 」 」 」
ガキッと音がして…いきなり絡んでた男の人の左頬にこの人の左手の甲が叩き込まれた!!
ええっっ!!??問答無用で鉄拳の制裁!!??
「だから加減してやれないんだよ…それでも構わないなら相手してやってもいいぞ。」
さっきまでとはうって変わった彼の態度と雰囲気…思わず芫くんの洋服を掴んでる手に力が篭った。
気の短い奴…
相手の顔面に拳を叩き込んだ男を見ながらそんな事を思ってた。
まあみかげの前でオレが手を出さなくて済んだから助かったけど…
オレはそんな事より別の事が気になってる……
『 愛してる 』 か……
オレもあんな風に堂々と人前でみかげの事…愛してるなんて言えるのか?
「芫くん!!」
「え?あ…」
みかげに呼ばれて我に返るとあの男が言ってた通り半端無く相手の男共が
いい様に殴られまくってた…
「ちょっと…あんたやり過ぎだって…もういいだろ?」
そう言って飛び入り参加の男の腕を掴んで引っ張った。
「テメェがさっさと片付けないからだろ!!彼女が怪我してからじゃ遅いんだよ!クソガキ!!」
「 !! 」
「こらぁ〜〜そこ!一体何してる!!」
「ありゃ…」
誰が呼んだのか警察官が2人走って来た。
「一体何してる?喧嘩か?」
「こいつら全員公務執行妨害!」
「 「 「 「 はぁ? 」 」 」 」
「はい!オレ刑事で今殺人現場に向かう途中でこいつらが邪魔したから大人しくしてもらいました!」
そう言って警察手帳を見せながら…さっき見せた笑顔でにっこりと笑う…
この人…警察官だったの??うそ……
「あなた刑事さんだったんですね!ひどいじゃないですか!
見て見ない振りするつもりだったんですね!」
「だって急いでたのはホントだもん。」
「だもんって…」
ちょっと事情を聞かれて私達は直ぐに帰してもらえた。
「それに彼ならあんな連中簡単に倒せたと思ったし…何で手出さなかったの?」
「………」
刑事だった男に顔を覗き込まれて聞かれたけど…返事は出来なかった。
「…ま…気持ちわからなくもないけどね…どうやら彼は君に嫌われたくなかったらしい。」
「え?」
「くすっ…」
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
「お!げっ!やだなぁ〜〜ヤな予感がする…」
鳴り出した自分の携帯を見てぶつぶつ文句言ってる。
「ピッ!はい?」
『 ちょっと!!ここまで来るのに一体何時間掛かってんのよっっ!! 』
「うわっ!耳イテ…」
出た途端直ぐに耳から携帯を離した。
『みんな待ってんのよ!早く来なさいよ!椎凪!』
私達にも聞こえる程の声だ…この人『しいな』さんって言うんだ。
「何で待ってんの?オレが行かなくたって別に…」
『いいから早く来なさいよ!シバクわよ!』
「シバクっていつの言葉だよ…もう…わかったから怒鳴るなってルイさん…
もうすぐ着くからさ。じゃあね!」
まだ相手の人が何か言ってたみたいだけど強制的に携帯を切った。
「ごめんなさい…お仕事あったんですよね…私が巻き込んじゃったから…」
「クリスマスだって言うのに迷惑な話しだよ…もう…どいつもこいつも人の恋路を……ぶつぶつ…」
何だか真面目に悔しがってる?
「……はあ…?」
「………」
♪ ♪ ♪ ♪ ♪
「ん?」
また彼の携帯が鳴った。
「うわっ ♪ 耀くんからだっっ ♪ ♪ 」
「!!!」
何だか人が変わったみたいな喜び様…芫くんと2人ちょっとびっくり…
「もしもし?オレ ♪ ううん大丈夫。え?帰り?わかった慎二君の所ね…
うんホント1秒でも早く帰るから ♪ うん約束する…じゃあ待っててね…愛してるよ……」
「………」
また愛してるって言った…
「じあね!2人でイブの夜を楽しんでよ。」
「はい…お世話になりました……」
そうお礼を言って頭を下げた。
離れて行く刑事さんの後ろ姿を芫くんと2人でしばらく見送ってた…
「あの人…普通に『愛してる』って言ってたね…」
「ああ…」
「私…目の前で『愛してる』なんて初めて聞いちゃった…
それにあの『愛してる』はなんかとっても心がこもってて…私まであったかくなっちゃった…」
「なに?アイツに惹かれた?」
「違くて…私もいつか…」
「ん?」
「言ってもらえるのかなぁ〜って…」
「!!」
みかげが期待一杯の顔でオレを見る。
「…まあいずれ…」
「本当?」
「ああ…」
みかげの事は好きだ…大切に思ってるし大事にしたい…
でも…今は 『 愛してる 』 は言えない…
照れ臭いのもあったが…何故か今オレが言ってもアイツの 『 愛してる 』 とは違うと言うか…
負けてると言うか……そんな気がしたからで…
「芫くん行こう!大分時間経っちゃった。」
「そうだな…あんま遅くなるとまたみかげの兄貴が迎えに来るかもしれないからな。」
「あ!もしかして根に持ってるの?」
「別に根に持ってるわけじゃないけど…」
「けど?」
「今夜はもう誰にも邪魔されずにみかげと一緒にいたいなぁーってさ!」
「芫くん…」
「行こう。確かこの先のアーケードがイルミネーション飾られてて話題になったんだ。」
「ホント?」
「悠の受け売りだけど。」
「いいよ!それでも!行こう ♪ 」
「ああ…」
オレとみかげは手を繋いで2人の初めてのイブの夜の街を歩き出した。