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Shiina&Misaki&Sayoko 01



【 弥咲&小夜子 】


「え?間違い??」

「そう通報者が倒れてるだけの相手を間違えて死んでると思ったって言うわけ!」

「言うわけって……だったら何でさっきの電話でその事言わないんだよっ!!
わざわざオレが此処に来る必要無いだろっ!!」

「嫌がらせに決まってるでしょ?」

「……ル…ルイさん!?」

嫌がらせって…言い切ったな……この女ぁ〜〜〜〜!!

「いいじゃないどうせあんた明日休みなんでしょ?たっぷり耀君と過ごす時間はあるじゃない。」
「そう言う問題じゃない!!!今夜から一緒にいたいんだよっ!!!」
「何言ってんの!これから刑事課のメンバーとクリスマスパーティーよっ!!!」
「やだよっ!!オレは帰る!!!」
「まあまあ…たまにはいいんじゃない?付き合いなよ椎凪君!」
珍しく内藤さんがルイさんに同意した。
「内藤さんまで…」
オレはちょっと眩暈に襲われた…うそ…
「慎二君に頼まれててさ…深田引き止めといてくれって。
今日『TAKERU』のクリスマスパーティーだろ?新城君か駆り出されてるからさ…念の為。」
「ああ…そう言う事?」

祐輔はこう言うパーティーの時ホスト役として駆り出される…
女の子達の相手しなきゃいけないから…深田さんには見せられないんだよね…
前もって深田さんは参加しない様に慎二君が上手く準備してるんだけど…
ここでもしっかり予防線張ってたのか…手回しがいいな……


「本当にスミマセンでした!!」

「え?」

そんな事を話してるオレ達の処に深々と頭を下げる女の子が1人。

「…頭から血を流してたから私てっきり……ごめんなさい!!」

ルイさんが言うにはこの方ここのアパートの住人さんで自分の部屋に帰る途中
2軒隣の部屋の玄関がちょっとだけ開いてるのが気になり中を覗くと玄関先で
そこの住人がうつ伏せで倒れてて頭から血が…
慌てまくったこの第一発見者は頭を殴られて殺されてると勘違いして警察に即通報!
駆けつけた警察官が調べるとそいつはただ入り口の段差でコケて床で顔面を強打。
額を切ったのと鼻血で出血…それが結構な量でそれを見たこの女の子が慌てて電話ってな事らしい。

「ホントすいません…悪気は無いんです……ただ真面目なだけで…」

そう言って女の子の横からオレと背が同じ位の男が同じ様に頭を下げた。
年はオレよりちょっと上か?

「先生…」
「誰?」
「あ…えっとこの人の彼氏。」
そう言って隣に立つ通報者の女の子を指さす。
「でも先生って?」
「オレ一応小説なんぞ書いてるモンで…この人オレの担当の編集者で…」
「自分の担当に手を出すなんて……あらあら…」
ルイさんが呆れた眼差しで2人を…特に彼氏の方を見ながらそんな言い方をする。

「いえ…彼女が高校の時からの付き合いで…決して『担当』に手を出したわけでは…」

何だか話が変な方向に進んでる……

「小説ってどんなジャンルなんですか?」
深田さんが横からそんな質問をする…何気にワクワクしてるような…
「こんなんですが…恋愛小説なんぞを…はは…」
「恋愛小説ですか?失礼ですけどお名前は?」
「え?…ああ…『舷斗』って名前で…ご存知無いでしょうけど…」

「えっ!?『舷斗』!?」

「うわっ!何よ椎凪びっくりするじゃない!!」

「あ…ごめ…でも『舷斗』って…」
オレは深田さんよりも食い付いた!
だって確か耀くんが良くその作者の小説読んでたから…
「珍しいですね…弥咲先生!いつもは聞かれても教えたりしないのに。」
担当者兼恋人が呆れ顔で覘き込む。
「え…あ…だって小夜子さんが迷惑掛けちゃったからさ…オレそこまで底意地悪くないんですけど…」
「あら私はてっきり美人な女刑事さんに聞かれたからだと思いました。」
「小夜子さん!!いい加減その思い込みどうにかして!!やっとお互いの気持ち確かめ合ったのに!」
「そう簡単に性癖は治りませんから!」
「小夜子さん!!」

「あの!!」

「!!!」

周りにいた誰もが驚いた!
それもそのはず…オレが彼の手を取って握りしめたからだ。

「へ?」

握られた彼がびっくりしてる。
「ちょっと椎凪!?」
「あ…あの…オレそう言う趣味は…あいにくと…」
スゲー顔が引き攣ってる。
そりゃオレだってこの男が気に入ったわけじゃないが…この際そんな事言ってられない!

「今色紙買って来るんでサインもらえます?」

更にギュッと手を握りしめて顔を近付けた。

「はあ…?」
「椎凪何言ってんの?」
ルイさんが訳が分からないと言った顔でオレを覗き込む。

「うるさいな!耀くんが彼のファンなんだよ!だからサイン欲しいの!
その為だったらオレ何でもしますからっっ!!」

最後は彼に向かって言ったセリフ。

「え?ああ…お安い御用で……」
「何?深田…そんな有名人?」
思いっきり本人目の前でそんな事を聞くルイさん…少しは気を使え!!
「はい。恋愛小説書いてらっしゃるんですけど書くもの書くものベストセラーで。
でもなかなか表立って読者の前には現れなくて…謎の方なんですよ。ね?」

「ただ単に顔がバレると女遊びに支障が出るからなんですよ…フフ」
彼女兼担当者が呆れた様に説明する。
「え?そうなんですか?」
深田さんが真面目に受け止めてる…深田さんもすぐ人の言う事信じちゃうからな…
「げっ!やだ!ただスケベな小説家?」

だから本人目の前にして思いっきり言うなっての!!ルイさんっっ!!機嫌損ねたらどうすんだっ!!

「ちっ違う!違います!!小夜子さん!誤解されるだろ!」

「この際スケベだろうがなんだろうがいいんだよっっ!サインにはそんなの表れないんだからっ!!」

「椎凪君それ失礼だよ…」
内藤さんがくすりと笑いながらそんな事を言った。
しまった…!!つい…本音がっっ!!!

「と言う訳で堂本君色紙買って来て…って?あれ?堂本君は?」
「ああ堂本なら病院に行かせたわよ。一応話し聞いとこうと思って。」
「えーったくイザッて言う時に居ないんだから…使えないな!仕方ない買ってこよっと…」
「椎凪みんなの分もね!」
ルイさんが行こうとするオレにそう声を掛けた。
「なに?ルイさんからのクリスマスプレゼント?サンキュー ♪ 」
「アンタのお金でね!」
「何でオレ?」
「ありがとう。サンタさん ♪ チュッ ♪ 」

投げキッスされた!!

「そんなんで誤魔化されるかっっ!ルイさん宛で領収書貰って来るからなっっ!!」