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いきなりオレと真白の前に現れた黒猫娘のキララ…

強引にオレに迫って…ナゼか急に泣き出した…



「落ち着いた?」

彼女前にホッとミルクを置いてソファに座る。

彼女に服を着せてもう1度落ち着いて話す事にした。
彼女がこんな事をした本当の理由と彼女の泣いた理由を聞くために…

勝気そうな彼女が随分しおらしくなって…大人しい…
きっとこれが本当の彼女なんじゃないかと思う…

「さっきも言ったけど…あたしのこっちにいられる時間は明日までなの…
明日で半年になる……2ヶ月前この姿にやっとなれて…凄く嬉しかった…」

スラスラ話す彼女を見て何でだか感心してしまう…
要練習だな!真白!

「ん?」

気配に気付いて真白がオレの方を向いた。
真白は更に警戒してさっきからオレの膝の上に座ってる…
まあ嫌な思いさせたからオレは何も言わず真白のなすがまま…
それをいい事に真白はオレの首に腕を廻して密着だ。

「……仲…いいんだね…羨ましい…」

「え?……いや…」

って…これじゃそう見えるか……

「あたしがこの姿になったら寛…あたしの飼い主の名前なんだけど…寛は驚いちゃって…」

そりゃ驚くよ…オレだって驚いたし…

「でも何とか半年間はあたしを置いてくれるって約束はしてくれたの…
でも……それから寛はあたしに触れてくれなくなった…」

「…………」

「猫の時…あんなに可愛がってくれたのに…抱きしめて…キスもしてくれたにのに…
『お前が人間になったら彼女にしたいくらいだよ』 って言ってくれたのに……」

彼女がまたポロポロと涙を流す……

「昔…こっちで車に轢かれそうになったのを寛が助けてくれたの…その後も色々優しくしてくれて…
あたし寛の事が好きになって……だからここに来たの…人になるために…」

「…………」

向こうの猫ってのは情熱的なのか一途なのか……

「でも…もうだめ…寛はあたしを受け入れてはくれなかったもん…」
「キララ君…」
「あたしが近付くとよけるんだよ…触れようとしてもそう…」
「…………」
「でも…それでも良かったの…人の姿で寛と一緒にいれて…話も出来て…
猫のままじゃそれも出来なかったから…」

「でもそこまでしなくても「人」の姿にはしてもらえるんだろ?それで時々会えるだけじゃダメなの?」

そう…こんな手の込んだ事をしなくても時々こっちには来れるって…

「猫は…猫のままなのよ…ハルキさん。」
「え?」
「魔女があたし達を人の姿にしてくれるのは本当に最終手段で普段は猫のままこっちに来るの…」
「………そうなのか…」
「だからこんな面倒くさい手段をとってあたし達は「人」になりたいのよ…」

真剣な瞳で見つめられて…本気なんだと伝わってくる…

「「人」になれるチャンスは1度だけなの…」

「え?」

「猫のまま向こうに帰ればまたここに来る事は出来る…
新しい相手を見つければ何度でも飼われる事も出来る…
でも1度この「人」の姿にまでなったらもう二度とここには戻っては来れない……
そこまで1人の人を想ってしまったらもうお終いなの…」

「…………」

「向こうで猫の姿に戻されて…ここでの記憶も無くなって…
もう2度とこっちには来る事は出来ない…だから……
もうここに来れないなら…寛とも結ばれないなら…
他の男の人に抱かれれば諦めもつくと思って…」

「それでオレ?」

「うん…理由はさっき言った通り…色々と面倒だから…」
「はあ〜〜気持ちは…わかるけど…」
「でも……やっぱりイザとなったらダメだった…
さっきあなたが止めなくてもきっとあれ以上は無理だったもの…」
「……彼は明日君が帰るって知ってるの?」
「……多分…やっと開放されるって…言ってたし…」
「そんなに彼君に冷たいの?」
「え?……暴力を振るわれた事は1度も無かったわ…食事もちゃんと用意してくれたし…」
「いつも1人?」
「……ううん…寛のいない時の方が少なかったかしら…でもただ一緒の部屋にいるだけよ…
時々話はしたけど…」
「寝ると時は?」
「……どうせすぐいなくなるんだから布団買うの勿体ないって言って一緒の布団に寝てた…
でもいつもあたしには背中向けて寝てたわよ…一度も布団でもあたしに触れなかったし…」
「ふーん……」
「何?」
「いや……」

何気にオレと同じ事をしてるんだなって思った…

「明日になったらすぐに帰るの?」
「夜中の…日付が変わる前くらい…でもその前に寛の部屋は出るつもりだけど…」
「……ねえ」
「!」

「彼に連絡取りたいんだけど…携帯の番号とかわかる?」

「え?」




彼女から飼い主の携帯の番号を聞いて早速連絡をした。

2度のコールで出て…どうやら外にいるらしい…
最初は警戒してた彼だったが事情を説明して納得してもらった。

「今此処に来るって。」
「そう……でも来たって無駄よ…彼はあたしが明日帰るの期待してるんだから…」
「………」


さっきから真白はずっと黙ったまま…

真白はさっきの彼女の話を知っていたんだろうか?

でもきっと猫達は知ってるはず…それを承知でここに来てるんだろうから…

でも…何となく真白は……怪しいんだよな…