侠哉 高校生編 03





「………」
「どうぞ。」
「はあ〜〜凄いお家だね…」
「まあ親父がああだし親父の実家が病院やってるから…
若い頃は少し援助してもらってたらしいけど。」
「え?病院?」
「そこ座って…」
「あ…うん…」
「ちょっと待ってて。」

白根にソファを勧めて真由を下ろす。

「きょうちゃアイチュ ♪ 」
「お利口だったな真由 ♪ 」

真由を子供用のイスに座らせて買ってきたアイスをスプーンと一緒に渡す。

「きまちゅ!」

そう言って真由がアイスを食べ始める。

一応今のは 「いただきます。」 と言ったつもり。

「どうぞ。」

オレもその言葉にちゃんと返事をしてあげる。


その後薬箱を持って白根の前に座る。

「あ…いいよ…貸してくれれば自分でやるから…」
「いいよ…誘っといてやらせるなんて…」
「ありがとう…」
「痛いか?」

何となく見上げた顔が耐えてる感じがしたから…

「んー消毒がしみた…」
「そんなに傷は深く無いからバンドエイドで大丈夫だと思うけど…」

ちょっと大きめのを貼ってやって完了。

「ありがとう…ごめんね…迷惑掛けちゃって…」
「別に…」
「家の人いないの?」
「母さんはちょっと出掛けてる。妹は友達の所。」

薬箱の蓋をパタリと閉めて立ち上がって薬箱をしまった。
その後アイスで凄い事になってる真由の口を拭いてやる。

「面倒見いいんだね…」
「可愛くて仕方ないから。」
「そ…そうなんだ…」
「何か飲む?」
「え?あ…いいの?」
「ああ…でも飲んだら帰って。」
「あ…うん…」
「それとさ…」
「ん?」
「オレん家の事誰にも話さないでくれる?」
「も…もちろん!」
「良かった。また騒がれんの勘弁だからさ…」
「うん…ねえ…」
「ん?」
「まだ騒がれるの?」
「まあ…流石に2学期になると静かになるけど1学期は新入生が入って来るから…
そうなるとしばらく周りがウルサイかな…まあもう慣れてるけど…」
「慣れてるんだ…すごいね…」
「嫌でも慣れるよ…」
「…………あのさ…」
「ん?」
「もしかしてあの事気に障ったの?」
「え?」

オレはちょっと心臓がドキリとなった…白根には気づかれてないはず…

「何が?」

だから惚けて聞きなおす。

「あたしの親が楠君のお父さんのサイン欲しがってるから欲しいって言った事…」

「…………」

なんで…

「別に…そんな事…」
「それしか…覚えが無いんだよね…楠君に避けられる理由。」
「………」

「だって嫌いなんだもんね…自分を通してお父さん見られるの…」

「……そんな事…無いよ…もう慣れてるし…そう…もうずっと前からだし…」
「そうかな?」
「?」

「慣れてたらそんなに気にする事じゃないじゃん。」

「!!」

「慣れてないから気にしてるんでしょ?」

「気になんてしてないっっ!!!」

「 !! 」
「 ! 」

白根と…真由がビクンとなった。

「ふわぁぁぁぁぁ…ん…」

「あ…ごめん真由…ビックリさせちゃったな。ごめんごめん…」

そう言って真由を抱き上げた。

「言った後で後悔したんだ…そう言うの楠君が嫌いだって知ってたし…
でも親がうるさくて…ごめんね…」

「だから別に気にしてないって…」

それに今更謝られても困るし…

「本当に気にして無い?」
「ああ…」

「じゃあ握手。」

「は?」

目の前に白根の手が差し出された。

「これからまた友達として付き合っていく記念。」
「何それ?」

オレはちょっと心臓がドキンとなってる…
いくら強制的に諦めたとはいえ…好きだった相手だ…

「本当は仲直りの握手かな。」
「え?何で?」
「やっぱり悪い事したなって思ってたから…」
「………」
「それにさ…ちょっと…ううん…大分辛いんだよね…楠君にそう言う態度されるの…」
「?」
「前みたいに普通に楠君と話したいから…」
「白根…」

「楠君には気分悪くなる話かもしれないけどうちの母親ホント楠君のお父さんの長年のファンでね…
もう崇拝してるみたいなんだよ。だから家の中も凄い事になっててさ…
直接楠君にも会いに行きそうな勢いだったから…それを止めるのもサインがあればと思って…」

「そんなにスゴイの?」
「スゴイよ〜もうありとあらゆる記事とかスクラップブックに何冊も溜めてるし…
ポスターも雑誌も山のようにあるんだ…こっちが呆れちゃうくらい…」

「何だか似た様な話知ってる…」

「え?」


オレにはその時ある場所が頭の中に浮かんでたんだ…