04





「………あれ?此処?」

気持ち良く目覚めたらまったく知らない部屋だった。

「あれ?オレ夕べ……?」

トントンと階段を下りる音がした。
起きたんだ…部屋の中から聞き耳を立ててた。
ここが私の家だなんてバレる訳にはいかないから…
朝から私は下にも下りず自分の部屋に篭ってた。

「早く帰って…」

昨夜からずっと願ってる言葉。
下で話し声が聞えて…時々笑い声まで聞える…何ウチの親と馴染んでんの?
ああ…そっかお母さんアイツの顔にほだされちゃったの?
顔だけは…黙って微笑んでれば女の人は悪き気持ちはしないだろう…
顔・だ・け・は…ね…

「 !!! 」

しばらくしてまたトントンと階段を上がる音がした。

「!!!…え?何…誰が上がって来たの??」

私は心臓がドキドキ…お母さん?

コンコンと私の部屋のドアがノックされた。

「……あの…」

げっ!!彼だっっ!!どうして??

「起きてるだろうって言われて…あの…昨夜は遅くにお騒がせしました。」
「…………」

なっ…え…どうしよう…
私は意味も無く部屋の中をキョロキョロ見回してる…
今喋ったら…彼にわかっちゃう…?でも…返事しないのも失礼???
いや…この際無言を決め込んでも平気なんじゃ……

「あの…怒ってます……?」
「………!!」

聞く?普通怒ってるかなんて聞くかな??
ますます返事しないとヤな奴って思われるじゃない!!
ああ…でも別に今はそう思われたってかまう事は無いのかな?
って…私…彼にヤな奴って思われるのイヤなの???え?わかんない……
そ…そうよ…小さな声で返事すれば私だってわかるはずないし…
ここが私の家だってわかってるはず無いし…そうよ…サッサと話せば……

「怒ってなかったらココ開けて欲しいな………小夜子さん。」
彼が優しい声で私の名前を呼んだ。

「 ………!!!!! 」

バ レ て る っっ !!!!!!

バ ン ッ !!

思いっきり勢い良く部屋のドアを開けると彼が…弥咲さんがニッコリと立っていた。
昨夜あんなにぐでんぐでんだったくせに何事も無かったかの様だわ……

「なんでわかったの?」
「お父さんが教えてくれた。娘がいて名前は 『堀川小夜子』 で大淀高校2年生って
そこまで言われたら小夜子さんの事だってわかるよ。」
「……………」

お父さんめぇ〜〜〜余計な事を……

「おはよう。」
「……おはよう…ございます…」
「入っていい?ちょっと話がしたいんだけど…」
「…………」

もうこうなると拒否するのも面倒臭い…
無言で身体を避けて 『 どうぞ 』 と合図した。

「わお!ありがとう。」

喜びすぎたってば……もう……


「私のお父さんだって知ってたの?」
「全然!お店で話してた時は 『パン屋のおじさん』 と 『あんちゃん』 で話してたから。
今下で娘がいるって聞いて…名前聞いて…初めて知った。」

彼が私机のイスに座って私はちょっと離れた場所に立ってる。
ベッドには座る気は無かったから……

「頻繁に飲み屋さんに通ってるらしいですね…お店の女の人にもモテてるそうで…」

いきなり核心を突いてあげた。

「え〜?そんな大袈裟な……はは…」

あ!笑顔が引き攣りだした………

「だって昨夜本当ならホステスさんの家に泊めてもらうはずだったんでしょ?
ウチのお父さんがそれに嫉妬して貴方を連れて来ちゃったから……ごめんなさいね。
余計な事しちゃったみたいで…次は余計な事するなって言っときますから…」

冷ややかな視線と微笑を一緒に送ってあげた。
だって呆れてたのは事実だったし…

「……親切は受けなきゃね…自分ち帰るのも面倒だったし…
彼女達って優しく介抱もしてくれるから…」

語るに落ちたなっ!!このエロ男っっ!!!ニヤケてんじゃないっ!!

「その言い方だともう何度もそのお店の女の人に泊めてもらってるみたいですね。
しかも複数の方にっ!!」

「…え?ありゃ…小夜子さん上手いな…誘導尋問だ…」
「何が誘導尋問ですかっ!!得意気に自分から話したんでしょ?
はい!もう話はお終いっ!!出てって出てって下さい!!」

シッシッ…と言う手の動きで意思表示をしてイスに座ってた彼の肩を押した。

「……あ…朝ご飯だって…お母さんが…」

顔だけ私の方に捻って慌てて言う。

「はいはい…あなたが帰ったら食べますから…そう言っといて下さい。」
「え?何で?一緒に食べようよ。」
「結構です!!貴方と一緒じゃ食べた気しませんから。ではさようなら!」

「……小夜子さん…怒ってるの?」

「………!!……」

思わず彼の背中を押してた動きが止まる……怒ってる?私が?
「見当違いもはなはだしいです。自分が誰にでも好かれると思ったら大間違い!
あなたの事なんて何とも思ってないので怒る理由も無いですから…」

「……いや…女の人の事じゃなくて…夜中にうるさくして泊めてもらっちゃった事。」

「………!!!!」

私は一気に顔が真っ赤っ!!
この男にそんな事言われた事が屈辱っっ!!

「怒ってますよっ!!もう2度とウチに迷惑掛けないで下さいっ!!」

力一杯彼を階段の踊り場に押し出して乱暴にドアを閉めた。
しばらくそのまま扉を背にドアに凭れ掛かってた…

「女の人に……怒ってた???」

何でだか…ボソリと自分に問い掛けていた…