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 * R15のイラストあり。要注意! *

椎凪 過去編。 04



ベッドの中…耀くんと2人うつ伏せになって肘を立てて話してる…最高に楽しい時間だ。

「椎凪刑事になったの?」
「うん。耀くんと約束したからね。」

オレは今ハタチでちゃんと耀くんとの約束通り刑事にもなった。

「じゃあお祝いにいっぱいしよう。」
耀くんがニッコリ笑う。
「そのつもりだよ。たまーにしか 耀くんに会えないから。」
軽いキスを交わしてオレは耀くんを引き寄せた。

もう…何度目だろう…こうやって耀くんに会って…耀くんと愛し合ったのは…

オレと椎凪は会うと昨日別れたばっかりみたいに感じるのに…
椎凪の時間だけがどんどん進んでるみたい…
次に会う時…椎凪はいくつなんだろう…


ピンポーン ♪ ピンポーン ♪ 
夜も11時を少し廻った頃…誰かがオレの部屋のチャイムを鳴らした…
まあ…大体見当はついてるけど…

「ガチャ」
「こんばんわ。」
「またお前か…」
玄関のドアを開けてうんざりした…隣の部屋のOL…早乙女由衣子…
確かハタチって言ってたか?オレの2コ下…
「もう寝るんでしょ?」
「はぁ?」
「来てよ。」
勝手にオレの部屋に上がりこんでオレの腕を引っ張った。
ベッドの前にオレを連れて来るとさっさと着ていたシャツを脱ぎ始める…
最初っからシャツだけしか着てこない…しかも中は下着も着けてない…
いくら隣だからって…もう少し考えろっての…
「一緒に寝てあげる。」
オレの首に腕を 回してそう言った。

「 断る!! 」

オレは即答した。いつもの事だ。
「そんな…即答しなくたって… 」
ワザとらしくベッドに崩れ落ちて落ち 込んでる…
「………ったく…何度言えばわかんだよ。オレはお前とは寝ない!」
「もー何でよっ!どーしてなの?こんなに私が積極的に迫ってんのにっ!!
ハダカだよっ?オールヌードだよっ?手を出さないなんて信じらんないっ!!」
半べそでわめき散らす…更にウルサイっ!!!
「だから言ってんだろ…隣に住んでる奴と そう言う事はしないっ!それに…」
「それに?ぐずっ…」
「お前みたいなタイプは一度抱くと恋人気取りでオレに干渉してくるから!!」
これも何度も何度も 言ってるセリフだ…いい加減理解しろっ!!
「しないよ…恋人きどりなんて…」
「うそつくなっ!束縛しすぎて前の男に振られたんだろーがっ!オレにそう 愚痴ってただろ?」
「そ…それは…あいつが…浮気性で…」
ブツブツと口ごもる…


「もー椎凪ぁ!!」

「 ! 」

いきなり抱きついて来た…

ハダカの胸がもろ上半身裸の
オレの身体に当たる…

だからってオレは欲情しないけど…




「…………」
「好きなんだもん…こんなに好きなのに…何で?何でダメなの?」
「お前がガキだから。」
「ガキじゃないよっ!もー何人も付き合ってるし…『H』 だっていっぱいしてるよっ!」
「そう言う事言ってんじゃない…とにかくオレとは無理!」
「やだっやだっ!!椎凪…私…椎凪の事…」
いいかけて由衣子が ハッとして止まる。
『オレ』だからだ…

「こっちのオレは女でも容赦しねーぞ…いい加減にしとけよ由衣子!
テメェしつけーんだよっ!オレしつこい女 大嫌いなんだよ!!」

由衣子が怯えて後ずさった。
「うっ…」
「 ? 」
「わあああああっっ!! 椎凪のいじわるぅ!! 」
今度は泣き喚く…
「こいつ…」
もうウンザリだ…
「ほらもういいから着ろ!そんで自分の部屋に帰れ!オレはもう寝るんだから。」
由衣子の脱いだシャツを頭の上に投げて やると由衣子は渋々自分の部屋に帰って行った。


ったく…疲れる…
オレはウトウトしながら考えていた…オレが…抱きたいのは…そう…
オレはいつの間にか眠りに 落ちていた…

「ギシッ」
オレが眠りに落ちてしばらくしてベッドの軋む音で目が覚めた…
誰か…いる…ベッドの上を…オレに沿って上がって来るのが 分かる…
そっと伸ばしたそいつの手を…オレは掴んで引き寄せた。

「あっ!起こしちゃった?」

パジャマ姿の耀くんだ。
「起きなかったら… どうするつもりだったの?」
更に引き寄せてオレの上に乗せる…そして顔を近付けてキスをした。
「んー…朝まで一緒に寝てたかな?」
真面目な顔で言ってる…
「やだな…そう言う時は起こしてよ…一晩中耀くんの事…抱いてるから…」
「あ…」
耀くんをオレの下に組み伏して覆いかぶさる。
パジャマを脱がせて… 深くて…甘い…キスをいっぱいして…耀くんとの再会を喜んだ。

夢の中の椎凪はどんどん大人になっていく…


 耀くんは変わらないね…
椎凪はいくつに なったの?
 22だよ…
初めて会った時から5年も経ったんだね…オレより年上になった…もう少しだよ…椎凪…
 ん?
オレ達が出会えるまで… もう少しだ…

  オレこうやって会えるのも楽しいけどね…

 でもね…椎凪…
 オレ達愛し合って一緒に 暮すんだよ…

  一緒に?

 うん…毎日一緒にいられる…
 オレ幸せなんだ…

  そうなんだ…
  やっぱり早く耀くんに会いたいな…



また…耀くんと唇を重ねて…お互いを確かめ合う…オレ…幸せだ…
耀くんはオレの手をずっと握りしめたまま…オレに抱かれてた…

「耀くん…好きだよ… 愛してる…」

感じて…オレの言葉を聞く余裕の無い耀くんに囁いた…
唇を…耀くんの唇につけたまま…
「オレも…愛してるよ…椎凪…あっ…」
頑張って…オレの言葉に答えてくれた…

「愛してる…」

早く…時が経って…オレと出会って…椎凪…


朝になって…目が覚めた…
右腕が…まるで誰かに腕枕をしていた様に…重い…
「…………」
じっと…自分の右腕を見つめてた…
誰かと…一緒だった様な気がするんだけどな…夢…か?
時々感じる…不思議な感覚…身体が…誰かを抱いたって憶えてる…何だろう…
オレは…右手を強く握りしめた…

数日後…非番で休んでたオレの所に由衣子が 泣きながらやって来た。


 「…………」
 「ぐずっ…今日の夕方の飛行機で…
 実家に戻るの…ひっく」
 どうやら田舎の父親が倒れたらしく
 呼び戻されたらしい。
 このアパートも引き払うそうだ。
 だから最後にオレに抱いて欲しいんだと…まったく…
 「椎凪…お願い…うー…」
 「はー…じゃあ…約束守れ!」
 「うん!守るっ!! 」

 ったく…




「お前と寝るのはこれ一度だけ。 二度は無い!
それから寝たからってオレの女にはならないからな!」
「うん。」
「それからキスはしない。守れるか?」
「うん。守るっ!!」


由衣子の部屋のベッド…
オレの部屋は止めた…そのまま居座られても困るから。
やりそうだし…コイツ…終わったらオレが帰れば済む事だから。

「ギシッ」
「ああっ…んっ…」
「ギシッ」
「あっ…ああっ…」

オレが動く度に…由衣子が叫ぶ…

「あっ…椎凪…やっぱり…私が…思ってた通り…だ…ハァハァ…んっ」
どうやらコイツはしてる最中ずっと喋ってるらしい…
「んっ!あっ!すごく…いい…椎凪…あっ…本当…いい…んあっ…」
「少し黙れ…」
オレは呆れてそう言った… はっきり言ってオレはあんまり乗り気じゃ無いから…
軽く抱いてるんだぞ…それなのに…反応し過ぎだろ?気持ちだけ先走ってねーか?


 「だって…本当…今までで…
 一番…いいんだもんっ…
 ああっ…椎凪…椎凪ぁ…」

 オレの名前を呼びながら…

 オレの首に腕を回して
 思いっきり 由衣子が抱きついてきた…




私は…動けなくって…
横になったまま…タバコを吸う椎凪をぼんやり眺めてた…
やっと起き上がって椎凪の背中に抱きついた…

「ありがとう。椎凪。最高の思い出が出来たよ。」
椎凪が振り向いてお互い向き合う。
「あ…そ…」
もー素っ気ないんだから。でもチャンス!抱きついて…
「椎凪!」
「おっと…」
タバコが付きそうになって気を取られた…
そのドサクサに紛れて由衣子が オレに顔を近づける…
「しないって言っただろうが…ったく…」
もうちょっとの所で椎凪に口を押さえられた…
「ちぇ…!」
でも私はとっても満足だった。


あれから2週間後…
「椎凪ビックリするかな?くすくす…」
ちょっとだけって事で上京を許してもらった。
椎凪の所に今夜くらい泊めてくれるかな…なんて 思いながら来たんだけど…

「…なんで?うそ…」
椎凪の部屋の玄関のドアノブに引っ越した後の紙がぶら下がってる…
私は急いで管理人室に走った。
「あ…あの…305号室の椎凪さんは?」
「あれ?あんた…椎凪さん?ああ…一週間前に引っ越したよ。」
「え?ど…何処に行ったか分かりますか?」
「さあ…仕事で転勤って言ってたけどね…行き先までは…」
「そんな…」

…なんだよ…椎凪の…ばか…
そりゃあ迷惑がられてたのは分かってたけど…
もうちょっと優しくしてくれたっていいじゃんか…


新しい街…オレは夜勤から帰って部屋の前で立ち止まった。
お隣さんがちょうど出掛ける所だった。
タイミングが合わずに今日初めて会った。

「隣に引っ越して来た椎凪です。よろしく。」
オレは作った笑顔で挨拶した。
コレがバレた事は無い。だから オレは何処でもいい人なんだ。
「あ…時田です…。よろしく…」
見ればなかなかの美人さん…
「なんだ…お隣さんで残念。」
オレはボソッと呟いた。
「は?」
「いえいえ…独り言です。」
そう言って誤魔化した。

なんだ…夜のお相手…お願いしたかったな…でもお隣さんはダメだから…仕方ないね…
オレはもう一度お隣さんに人懐っこい笑顔をニッコリ向けて自分の部屋に入っていった。