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「あ…椎凪…まって…あっ…やっ…あっ…」

旅行から帰ったその日の夜…
予想はしてたけど椎凪がオレをずっと離さないで攻め続ける…
しかもまた椎凪は オレの事を縛った…
「……あっ……ンっ…」
ベッドはさっきからずっと軋み続けてる…


「……うー…」
やっと椎凪が満足してオレは縛られてた腕を 解いてもらった…
だけど…ずっとうつ伏せのまま息が乱れて動けなかった。

「大丈夫?耀くん…」
言いながら椎凪がオレの頬にキスをする。
「大丈夫じゃない…ひどい…椎凪…縛るのズルイよ…
それに無理矢理あんな格好させるし…オレ感じ過ぎてもたないよ…」
オレは目線だけ椎凪に向けて文句を言った。
「だってさ縛らないと耀くんすぐ抵抗して邪魔するんだもん。
抵抗しないって約束してくれれば縛ったりしないよ。ぺろっ♪」
「あっ…ちょっと…椎凪…」
椎凪がオレの背中をペロリと舐めた。
舐めながらオレの身体の下から両手を入れて胸を包む…
「あっ…だ…め…」
オレはそれだけでも敏感に反応して耐えられ ない…
「耀くん感じやすいから好きさ…可愛いね…クス…」
はみっ!
「あっっ…」
耳朶を甘噛みされた…噛みながら優しく胸を揉み始める…
ペロッ
「ンッ…あ!」
今度は耳朶を舐められた…
椎凪はオレを背中から抱きしめてる…そんな椎凪が体勢を変えた。
グッ…
「し…椎凪?何してるの?」
何だかこれって…もしかして…後ろから??
「クス…今度は縛って無いよ。」
背中から椎凪がオレを覗き込んで笑いながらそんな事を言う。
オレの胸を包み込んだ手はさっきからずっと動き続けてるから
オレはもう身体が感じ始めてる…


ギシッ! ギシッ!

「うっ…はっ…あっ……」
椎凪が動く度に声と息が漏れる…
椎凪は…こんなにオレを攻め続けてるのにいつも何処か余裕で
ちょっと汗ばんで息もちょっと乱れてるくらいだ……

……なんで??

あ…ダメだ…感じ過ぎておかしくなりそう…どうしよう…
何でオレこんなに感じちゃうんだろう…

…!!…椎凪のせいだ…
椎凪が…オレの身体…こんな風に変えちゃたんだ…きっと…
オレはずっと後ろから攻められながらそんな事を思ってた…
もーー…椎凪の…椎凪の…

「椎凪のばかぁっっl!!!!」

「 え!? 」

思わず叫んでた。


「う……ぐずっ…」
オレは枕を顔に当ててさっきからずっと泣いてる。
「耀くん…もう泣かないでよ…」
椎凪はずっとオレに優しく話しかけてくれるけどオレは
返事もしないで泣いてた。
「……うー…ひっく…うっく…」

耀くんが『オレのばか』って叫んだ後急に泣き出した。
ずっと枕で顔を隠したままオレがどんなに声を掛けても
腕を掴んでも枕を離そうとしない…
どうやらオレ が攻め過ぎたらしくて…耀くんが感じすぎて…
訳がわからなくなちゃったらしい…
久しぶりだったせいか?

「泣かなくてもいいんだよ…オレは耀くんが感じ てくれた方が
嬉しいんだから…」
くいっと枕を引っ張ると今度は少しどかす事が出来て
泣き顔の耀くんが見えた…こんなに泣いちゃって…
「ぐずっ…だ… って…は…恥ずかしいもん…」
泣きながらそんな事を言う…今更なのに…
「オレと耀くんしかいないから平気だよ。」
オレは優しくニッコリと笑って言って あげた。
「椎凪に…見られるのが…ひっく…恥ずかしい…」
「え?オレに?」
って言われても…それはどうしようも無い事で…
「オレの事…呆れちゃう… もん…」
顔を枕で半分隠しながら泣いた顔でそう言った。
「オレに…嫌われると思ってるの?」
枕を掴んでる耀くんの手を握って下げるとやっと耀くんの顔が 見れた。
泣いてる顔がこれまた可愛い…
「だって…オレ…変だもん…ぐずっ…」
「変じゃないよ…オレと耀くんの相性が良いって事だよ。」
言いながら そっと頬にキスをしてあげた。
「ほんと?」
やっと泣き止み始めた耀くんがホッとした様な声を出す。
「オレ…変じゃないの?」
「うん…変じゃないよ…」

やっと納得してくれて…オレの腕枕でスヤスヤ耀くんが眠ってる…

オレの手で耀くんの身体に触っていないところは無い…
オレの唇で耀くんの身体に触れなれ ないところは無い…
耀くんはいつも優しくてオレを拒んだりしない…
いつもオレに身体をあずけて…オレを満足させてくれる…
だからオレは…いつでも… 何度でも耀くんを抱きたくなる…

…耀くん…
オレは寝起きで目を瞑ったまま耀くんに手を伸ばした。
すぐ傍に耀くんは居るはずだからちょっと手を伸ばせ ば
いつだって耀くんに触れる事が出来……ん?あれ?

伸ばした手は耀くんに触れる事が出来ずにシーツの上に落ちた。
オレはすぐ目が覚めて起き上がった。
「おかしいな…オレより先に起きるなんて滅多に無いのに…」
オレはちょっと不安になりながら寝室を後にした。
「大学…今日は休みだしな…」
そんな事を 呟きながらリビングに向かう。
「……いない…」
どう見ても人のいる気配が無い…シン…っと静まり返ってる…
「携帯は置いてある…」
リビングのソファの 上に耀くんの携帯があるのに気が付いた。
「何処行っちゃったんだ?こんな朝早くから?」
オレはちょっと不安になり始めた…こんな事初めてだったから…

子供じゃ無いんだから帰って来るとは思うけど…
え?オレ…何かやらかした??
急に自分に自信が無くなった…

でも昨日はあんなに愛し合ったし… そりゃちょっとアクシデントは
あったけど…ちゃんと話し合って…
耀くんだってわかって…納得してくれたし…してたよな??

え?なに?まさか納得した フリしてたとか?
オレが眠ってる間にまたぶり返して…
オレに愛想つかして出て行っちゃったとか??
えーーーそんな事…それに出て行くならオレの方だし…
(ここ耀くんの為に右京君が用意した家だし…)
って…まさかオレよりも右京君と一緒の方が良くて…
右京君の所に行っちゃったとか????

もうオレは 1人パニックっっ!!!

─ いやぁぁぁぁぁーー何でいないの??耀くんっっ!!

アレがいやだった?これ?それともあの時????
色んな事が一気に オレの頭を駆け巡るっっ!!

「何やってんの?椎凪?」
「…えっ!?」

のた打ち回ってたオレの後ろから耀くんの声がした。
「耀くんっっ!!」
オレは思いっきりガバッと耀くんに抱きついた。
「??え?なに??」
耀くんは訳が分からないと言った顔をしてた。

「何処行ってたの?心配しちゃったよ。」
「あ…ごめんね。椎凪グッスリ眠ってたから声掛けなかったんだ。
右京さんと旅行した時に美味しいパン屋さんがあってさ…
ウチの近くにもお店出してるって言うから 買いに行ってたんだ。
人気のお店だからすぐ売り切れちゃうって言うから…はい。」
「……パン?…」
オレは力が抜けてマヌケな顔で耀くんからパンを受け取った。
「で…祐輔の所におすそ分けに行ったら今日和海さんが泊まってて
話し込んじゃってさ…?どうしたの?椎凪?」
「へ?…ああ…いや…今度はオレも一緒に行く。」
もうこんな心配は嫌だっっ!!
「!…うん。そうしよう。」
ニッコリと耀くんが笑ってくれた。

さっそくその日の朝ご飯は耀くんが買って来てくれたパンで
サンドイッチを作って2人で食べた。

「椎凪が作るともっと美味しくなるね。」
耀くんが嬉しい事を言ってくれる…
オレは寝起きの時の不安なんて もうどっかに行ってた。

「ありがとう。耀くん!」

オレもニッコリと笑い返して久しぶりの2人の朝を迎えた。