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オレは今すこぶる機嫌が悪い!
なんせこの一週間…事件が重なり家に帰るのが遅いから…
何とか逃亡中の犯人の潜伏先を突き止めたのに…警官の一人がドジを踏み
後もう一歩の所で逃げられた…
この事件のメドが立たない事にはオレはこれから先も早く帰る事が出来ない…
オレはチョット荒っぽいやり方で犯人の居場所を突き 止めた…

もう使われていない工場跡地…寂びれて人気は無い…

「ここ荻野の父親が昔働いてた場所なんだよ…子供の頃らしいけどね…」
「良く調べまし たね…椎凪さん…」
雨宮君が感心した様に呟く。
「本当にここに居るんですか?
昨日逃げられた場所からあんまり離れてないですけど?」
不審そうに古山君 が話しかける。
「苦労したんだよ…荻野の奴友達なんていないしさ…
刑務所仲間探し回って…
腕一本の代償だからガセでは無いと思うけどね…」
「腕一本?って…」
「吐かないと腕一本へし折ろうと思ったの…
そしたらアッサリ喋ってくれたんだよね。いい人だったよ。」
「し…椎凪さん…それって ヤバイんじゃないんですか?やってたら…」
「えー?勝手に階段から落ちるって事もあるでしょ?ドジな人多いから ♪♪」
「…………」
2人が黙る…
「そんな事よりさ…」
「はい?」
「オレさ…いい加減早く帰りたいわけ。だからさ…」
オレは2人に『オレ』で話しかけた…

「 ここでドジったら… お前ら殺すよ… 」

初めにクギを刺しておいた。

工場の中で奴が隠れていそうな所を一箇所ずつ捜して回る…
どんどんその数は減って…あと少しと言う 所でオレは動きを止めた…
「…椎凪さん?」
古山君が声を掛ける…
「ここにいる…逃がすなよ…」
「え?」
何かがオレに伝わって来て…そう感じた…

バ ン !!

オレは思いっきり入り口のドアを蹴破った。
その音に驚いて荻野が立ち上がった。
やっぱりここにいた!

「キサマぁ…昨日は良くも 逃げやがったな……」

オレは脇目も振らず真っ直ぐに荻野を睨みつけて近づいて行った。
ここは3階…窓から逃げるわけにもいかず…
荻野は周りをキョロ キョロ見回して逃げ道を探してる…
ふざけんな…逃がすもんか!

「 キサマが逃げたせいで…オレが帰るの…遅くなったじゃねーかっっ!!! 」

オレは今までの恨みを込めて思いっきり荻野に廻し蹴りを叩き込んでやった!


「ただいまぁ ♪♪ 耀くん。」

オレは後の事は2人に任せて先に帰って 来た。
犯人の居場所も突き止めて逮捕までしたんだから当然でしょう。
「お帰り。椎凪」
「葵くんは?」
耀くんにただいまのキスをして聞いた。
「ちょっと前に寝た所だよ…」
「えーそうなの?」
見るとリビングに置いてあるベビーベッドにスヤスヤ眠る葵くんがいる…
「やっぱりあいつのせいだっ!!」
「 ? 先にシャワー浴びちゃえば? 」
「うん…ちぇ…」
オレはガッカリして舌打ち…せっかく楽しみに帰って来たのに…


椎凪がお風呂からあがって 夕飯の支度をしてる…
オレはそんな椎凪の後姿を眺めながら…考えていた…

「あー…」
「 ! 」
「あっ!葵くん起きた!!」
椎凪が嬉しそうに 葵を抱っこする…
「葵く〜んただいまぁ♪♪会いたかったよ〜〜
ごめんね今まで遅くなって…でも明日は早く帰ってくるからね。」
そう言って葵の頬にキスをする…


「はい。葵くん。あーん♪♪」
「葵く〜ん。オモチャで少し遊ぼうね♪♪」

椎凪ってば葵にベッタリなんだよな…



「 葵気持ちいい? 」
「 あー… 」
今夜はオレが葵をお風呂に入れてる…もう首もすわって大分しっかりしてきた。

「はい椎凪!後はよろしくね。」
そう言って椎凪に葵を渡す。
「おいで。葵くん。」
椎凪がバスタオルに葵を包んで抱きかかえたままオレに手を伸ばした。
「耀くんもおいで。」
「え…?」
そう言って…椎凪に抱き 寄せられて…
首筋から…胸元から…色々な所を舐め上げられた…

「葵が…見てる…椎凪…あっ…」
やだ…感じて…声が出ちゃう…
「大丈夫。ちゃんと隠し てるから…」
そう言ってオレの身体で椎凪はしばらく遊んでた…


「また葵くん寝ちゃったな…」
椎凪がソファに座って残念そうに呟く…
お風呂から出た 葵は飲み物を飲むと疲れたのかまた眠っちゃったんだ。
「ねえ…椎凪…」
「ん?」
椎凪の隣に座って話しかけた。
「あっちの椎凪になって…」
「 !?…え?なんで? 」
椎凪が不思議そうにオレに聞いてきた。
「いいから…」
オレはその問い掛けには答えずに椎凪に催促する。
「…わかった…」

椎凪がちょっと納得いかない顔でゆっくり目を閉じて…もう一度目を 開けた…

「なに?耀くん…」
そこには…もう一人の…椎凪がいた…

「あ…あのね…」
オレは自分でお願いしておきながら椎凪が『こっちの椎凪』に なると
急にドキマギしちゃうんだ…
「…椎凪…疲れてない?大丈夫?」
「え?」
「だってさ…仕事に料理だろ?それに葵の世話までしてさ…無理してない?
明るい椎凪だと絶対大丈夫って言って逃げるでしょ?
本当の事言って…オレ料理とか頑張るから…全部椎凪がする事ないんだからさ…」
「耀くん……ありがとう… 心配してくれて…大丈夫だよオレ無理してないから…」
「本当?」
「仕事は適当に手抜いてるし…」
…え?いいの?椎凪…それ…
「それに料理は耀くんが いつも美味しいって言ってくれるからオレ耀くんの為に作りたいし
葵くんの事はオレ葵くんの事愛してるから楽しいし嬉しいんだ…だから大丈夫だよ。」

「本当?本当に無理してない?」
「大丈夫。心配してくれてありがとう。耀くん。」
「椎凪…あ…」
椎凪が…オレにキスしながら…ソファにそっと押し倒す…
「それにオレは耀くんにいつも癒してもらってるから…平気だよ…
だって耀くんオレをいつも満たしてくれる…」
そう囁かれながらパジャマを…脱がされる…
「…あ…」
「このオレで耀くん抱くの…久しぶり…」

「あ…椎凪…愛してる…愛してるよ椎凪…好き…大好き…世界で一番好き!!」

椎凪の首に腕を廻して… ギュッと抱きしめた…
「オレもだよ…耀くん…愛してる…」
「うん…」

「あー…」
葵が…呼んだ…

がばっ!!
「 えっ?葵くん起きたの?やった!!! 遊べる♪♪ 」
「椎凪…?」

椎凪が…勢い良く起き上がるとコロッと…変わって…葵の所に駆け寄った。
オレはソファから起き上がるとパジャマを直して立ち上がった。

「オレもう寝る!!」
「え?どうしたの?何怒ってんの?耀くん?ねぇ…?」
椎凪が葵を抱っこしながら慌ててオレに聞く。
オレがムッとしてるのが分かった らしい…
「知らないよっ!椎凪のバカっ!!オレもう寝るからっっ!」
「えー?耀くん…??」

椎凪が呼んでたけどオレは聞えないフリでリビングを 後にした。
……だって…久しぶりの…あっちの椎凪だったのに…


ギシッ!っとベッドが軋んだ…
「耀くん…」
椎凪がオレの耳元でオレを呼ぶ…
「…ん…」
オレは半分眠ったままで返事をした…
「さっきはどうしたの?」
また耳元で椎凪が囁く…
「ん?…なに?」
パジャマのズボンを脱がされてる…?
みたいなんだけど…良くわかんない…眠い…
「だからさっき。」
「え?」
眠たい目を擦って椎凪を見た…椎凪はオレの脚の間に滑り込んでる…

ギ シ ッ !

「!!…ん…つっ…!あっ!!いっ…」

オレは思いっきりのけ反った…
だって…椎凪がいきなり…しかも強引に… オレを抱いたから…

「あっ!!…椎凪…ヒドイ…いきなりなんて…あっ…」
椎凪がオレを抱きながら…残ってるパジャマを脱がしていく…
あっと言う間に…裸にされた…

初めから…椎凪が激しく動くから…オレは無理矢理寝起きの頭がはっきりした…

「だって耀くん…オレとしたかったんだろ? こっちのオレと…」
そう囁きながら…両足は膝の所で椎凪の腕に持ち上げられて…オレを押し上げる。
どんどん椎凪の体重が掛けられて…押し上げられる…それが激しくて…
「あっ…あっ…」
だめ…オレ…
「あっ!あっ!椎凪っ!!ンアッ!!」
「耀くん…愛してるよ…」
そう囁く椎凪の声が 揺れてる…
「これからだよ……耀くん…『オレ』が耀くんを抱いてあげる…」
「…んっ…クチュ…ン…」
噛み付くようなキスを2人で繰り返した…

「ねぇ…はぁ… 椎凪……」
呼びながら椎凪の腰に手を廻して引き寄せた。
「なに?」
椎凪はそれに応えてくれて…オレに深く深く入ってくる…

「あ…今の…椎凪としたいって思うのって…浮気なの…?」
椎凪の瞳を真っ直ぐ見つめてそう聞いた…

「…!!…」
椎凪がちょっとビックリした様な顔をした… でもすぐに優しい顔になって…
「…そんな事ないよ耀くん…これが本当のオレだもの…耀くんは正しいんだ…」
椎凪がオレの身体を引き寄せてそう言ってくれた…
「本…当?」
「ああ…本当…」

久しぶりに…『あっちの椎凪』に抱かれた……いつもより…激しくて… 乱暴で…
いつもは椎凪がオレを抱きたいからオレを抱くんだけど…

でも…今日は…オレが椎凪に抱いて欲しかったから…
オレの為に……椎凪はオレの事を 抱いてくれたんだ…