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「…ん?!」

ポタポタと眠ってたオレの顔に何か冷たいモノが落ちて目が覚めた。
「!!…椎凪!?」
目を明けた途端目の前に椎凪の頭があって髪の毛が顔にかかるほど近い。
しかも濡れててそこから雫が落ちてる。
どうやらシャワーを浴びて良く拭かずにベッドに来たらしい。

「ちょっと…椎凪ビショビショじゃないか…ちゃんと拭いて…」

言ってる間に椎凪が濡れた身体でオレを抱きかかえた。

「…耀くん…愛してるよ…ン…」
「…ウ…!?」
強引に椎凪がオレの口を自分の舌でこじ開けて舌を絡める…
「…んっ…お酒くさい……」
椎凪からお酒の匂いがオレの口の中に広がった。
「もう…仕事で遅くなるんじゃ…ン…無かった…の?…アン…」
椎凪がオレの問い掛けには答えずにあんまりにも乱暴にオレとキスをするから
オレは息苦しくて椎凪の身体に腕を廻した……
!!!ハダカの椎凪の身体は髪の毛と同じほとんど拭かずに来たのかビショビショ……

「椎凪…ホント…ちょっと待っ……」
「ン…耀くん……」
譫言の様に耳元でオレの名前を呼ぶ…
呼びながらスルリとパジャマのズボンを下着と一緒に脱がされた。
「…え?…ちょっと…椎凪…」
「……好きだよ…好き…」
「ちょっ…」
椎凪が体勢を変えてオレの脚の間に滑り込むと膝の後ろに腕を入れて抱え上げられた!

「グッ!!!」

「!!…ンッ…あっ!ああ!」

あんまりにも強引で…乱暴で…自分勝手な攻め方で…身体がのけ反る…

「は…アッ…ンッ!!」
「…………」
うっすらと明けた目で椎凪を見ると椎凪は無言オレを攻め続けてる…
椎凪…ヒドイ…オレの事なんて…考えてな……
「…あっ!あっ!あっ!」
酔ってるなんて思えないほど椎凪が激しく動く…
ギシギシとベッドが軋んで…あっという間に頭の中が真っ白になって
椎凪の首にしがみついて掴んだ肩に思いきり爪を立てた!



「…ハァ…ハァ…あ…」
身体に力が入らなくて…でもピクンピクンと小さく身体が跳ねる……
ぐったりとしながら椎凪の重みを受け止めて喘いでた。

「……くぅ…」

「…!?…椎凪?え?」
椎凪の様子が…オレの首筋に埋もれてる椎凪の頭を起こした。

「椎凪!!!寝てる!?」
見れば気持ち良さそうに椎凪が寝息をたてて眠ってる!!!

「もー信じらんない…」
こんな事珍しいけど……
それよりなにより…椎凪…オレに入ったままなのに………どう見ても…熟睡!!!

「…よっと…」
気を使ってオレの上で眠ってる椎凪をちょっとずつずらして下ろした。
「…ンッ…あっ…ひゃん!!」
椎凪がオレから離れる瞬間…思わず感じて声が出ちゃった…だって……

「…………」

オレは起き上がって気持ち良さそうに眠ってる椎凪を見てた。

…オレは…すぐ感じて訳わかんなくなっちゃうのに椎凪って…全然平気なんだよな…
今だって酔ってるのに乱れてるって感じでもなかったし…
オレって…やっぱりちょっと変…なのかな……感じすぎ?

オレは棚からタオルを出しながらそんな事を考える。
「もう椎凪は…」
持って来たタオルでビチョビチョの椎凪の身体を拭くと椎凪がくすぐったいのか
はにゃはにゃ言ってる。子供みたい…

「……ハフ…」
仰向けでそんなため息を椎凪が寝ながら漏らした。
顔は濃いピンク色…どんだけ飲んだんだろう…きっとルイさん達だと思うけど……

オレは椎凪しか知らない……でも椎凪はたくさんの女の人を相手にしてきたから…
やっぱり経験の差…なのかな?
…あ…なんかちょっとムカッとしてきた……
いっつもオレの事攻めて…愉しんでるんだ…椎凪は……



「……ン?」

目が覚めて…しばらくボーっとなっていた。
オレ…夕べ課のみんなと飲んで…帰れたのか?……ヤベーまた記憶がねー
…時々飲むと記憶が飛ぶ…
自分ではそんなに飲んだつもりは無いんだが知らないうちに結構な量を飲んでるらしい…
多分ルイさんがいなかったから安心してついつい酒が進んだらしい…
俯せになってた身体を起こそうとして異変に気付く…

「!?ん…?」

腕が…動かない?なんで?
「!!ええっっ?!ウソ!なんで?」
身体を捻って確かめると…両腕が後ろ手に縛られてた!!!
「…これは…一体…!?」

いくら考えても訳がわからんっっ!!
やった相手はこの家にはオレとあともう一人しかいないから犯人はすぐわかる…
しかもすでにベッドにはいなくて……逃げたか?
簡単に解けると思っていたタオルの手錠は結構な硬さで結んであって
自力では解けなかった。

「…オレ…何かしたのかな?」

自分としてはまったく覚えが無いんだけど…ちょっと心臓がドキドキしだした!


「…耀くん?」
顔だけ出してリビングを覗いた。
「…!!」
いつもの様に耀くんはソファに座ってコーヒーを飲んでる。
ただオレの声にピクリと反応したみたいだ。
「おはよう…耀くん…えっと…」
「……おはよう…」
「あ…あのさ…これ解いてくれるかな?」
後ろを向いて縛られた両腕を見せた。
「…あ…うん…」
よかった…怒ってはいないみたいだ…
「あ…あのさ…」
「ん?」
無言でタオルを解く耀くんに恐る恐る話し掛けた。
「オレ…何かした?」
思わず上目使いで耀くんを見つめる。
「何も…」
「えっと…じゃ…なんで?」
「ああ…べつに…ちょっとしたイタズラ。」
そう言ってニッコリと笑った。
「…そう…?」
「うん…」

ニッコリと笑った耀くんだったけど…
何だろう…ちょっと元気が無かった様な気がしたのは気のせいか?



「どうしたんだい?何だか元気が無い様だけど?」
「…え!?」

右京さんが優しくオレに問い掛ける。
「あ…いえ…」
しまった…つい…
右京さんに心配かけちゃう…今日は右京さんさんの屋敷に遊びに来てる。
椎凪はいつも一緒に来ない…

『 右京君は耀くんと2人っきりで会いたいんだ…オレはお邪魔虫なの。 』

って言って絶対に来ないんだ…
右京さんは優しい…
オレと一緒にいれるこのちょっとの時間を愉しみにしてくれてて…
大事にしてくれてる…

「僕に言えない事かい?」
そう言ってオレをじっと見つめる。
「いえ…そんな…たいした事じゃないですから…」
言えないよ…そんな…恥ずかしいもん…オレは視線を逸らして俯いた。

「耀…僕を見なさい。」

「………」
右京さんにそう言われると逆らえない…黙って顔を上げた。
右京さんと視線が合う…あの深くて…吸い込まれそうな瞳に見つめられる…
「話してごらん…耀…」
「……はい…」

オレは右京さんに見つめられると頭の中がボーっとして…時々意識が無くなる…
でも右京さんに呼ばれて目が覚めるとなんとも言いようの無い安心感があって
ホッとするんだ。

「………ほう…そう言う事かい……」

右京が納得した様に自分の肩にもたれ掛かる耀の頭を撫でながら呟いた。



「……………」

オレは何故…何の為に此処にいる??
さっきからこの疑問が頭の中を駆け巡ってる。
珍しく右京君に呼ばれて屋敷にやって来た。
普段右京君からオレに直接連絡が入るなんて滅多に無い!
だからなんで何だか理解できず……不安だ…
多分オレを呼んだと言う事は耀くん絡みなんだろうと予測は出来るが…

まさか…別れろでも言うんじゃないんだろうな…
右京君の中でオレは耀くんの相手としてあんまり良い相手とは思われてないらしい…
事在るごとにイヤミを言われる…だからあんまり右京君には会いたくないんだけど…

オレ…何にもしてないよな……??


「君は耀に何を求める?」

「は?」
ずっとだんまりだったくせに開口一番その質問かい!?
「聞かれてる意味がわかんないだけど??」
「……僕がここまで口出すことでは無いのは重々承知だ………が!!」
「…??」

「君は耀に何を求めてるんだい?」

また聞かれた。

「何って…耀くんには…癒しを求めてるよ…オレの傍にいてくれればそれで十分だけど
オレを癒してくれて…愛してくれれば……って何言わすんだよっ!!
何?一体なんなの??オレは何で右京君に呼ばれたの?耀くんの事?
だったらいつも言ってるだろ?耀くんはオレのモノで他の誰にも渡さないし
右京君に何言われたって何されたって離れるつもりも離すつもりもないから!!」

「…何をそんなに力説してるんだい?」

もの凄い呆れた眼差しだっ!!

「………ぐっ!!!」

誰が言わせてんだ…この野郎……
もう少しで殴りかかるのを必死で押さえた…大人気ないし…何より遠い…
どんだけオレと距離とってんだよ………

「耀に癒しを求めていると言うなら…
もうこの女性達の様に耀に君の相手を求める事は必要ないだろう?」

「は?」

オレは益々訳がわかんねー…?
「 『この女性達』 って何だよ?」
「君がかつて相手にしてきた女性達だよ。
まあ人数は確かでは無いが目を覆いたくなる様な数だね…」

そう言いながらテーブルに乗った黒いファイルに目を落とす。

「はぁ??何?調べたの?」
「娘の結婚相手だよ?トコトン調べるのは常識だろ?
僕の…草gの方の情報網を使って徹底的に調べた。
君の生まれてから耀を僕の娘として向かえる前までの君の事をね…」

「…!!ふざけんなっ!何様だ!!
人の過去探ってそれを突っついて面白いのかよっっ!!」

思わず 『 オレ 』 が出た。
頭来たっ!!怒鳴りながらソファから立ち上がって右京君の傍に歩いて行く。

「何様?僕は草g家55代当主草g右京だよ!
そして耀の父親でもある!何か文句でもあるのかい?」

右京君の瞳が 『 キュン!! 』 と言う感じで…
一瞬で妖しく禍々しい瞳になった。
『 邪眼 』 だ!!ヤベっ…まともに視線が合った。
「…!!」
オレはその瞳に射すくめられて動きが止まる。

「耀にその女性達と同じ事を求めるな!僕が許さない!わかったかい?」

「…………」

自分では必死に右京君の瞳から視線を逸らそうとしてるけど…
頭ではわかっていても…身体は反応しない…
オレは見つめたらダメだと知っていながら……

いつまでも右京君の妖しく光る禍々しい瞳をじっと見つめていた。



「……どうしたの?椎凪?」

「え?何が?」


寝室のベッドの中…
オレは椎凪の腕枕で寝る体勢だったけど…何か椎凪の様子がおかしくて…
「だって…キスもしないじゃん…」
「え?おやすみのキスならちゃんとしたよ?」
「違くて…その…あの…オレの事好きってキス…」

椎凪はほとんど毎日の様にベッドに入った後は寝る前に
深い深いキスをオレにしてくれる…オレはそのキスでその気になって…
椎凪と愛し合うんだ…だってキスだけでオレはホワンってなっちゃうから……

なのに今日は普通に…本当に普通に腕枕で寝ようとしてる……

「なんで?身体の具合でも悪いの?」
「え?…ううん…別に…」
「じゃあオレの事何か怒ってるの?」
この前酔った椎凪の事タオルで縛っちゃったから…
「?…怒ってなんかないよ。」
「じゃあ何?何か悩み事??」
「ううん…何にも悩んでなんかないよ?」
「じゃあどうしたの?」
「……って言われても…ホントに別に何も無いから…」

何かを隠してる訳でも無さそうだ…でも…

「今日はもう寝よう…耀くん。おやすみ…愛してるよ。ちゅっ!」
そう言ってオデコにキスしてくれたけど…
「…おやすみ…椎凪…」

オレは不安な気持ちが消える事が無くて…椎凪の首に腕を廻して…

ぴったりと椎凪にくっ付いて眠った……



もう椎凪がオレを抱かなくなって4日が過ぎた…
ホントどうしちゃたんだろう??あの椎凪がなんの理由も無くオレを抱かないなんて…
いくら聞いても 『 別に何でも無いよ… 』 って返事が返って来るだけ…

だから…今日は…

「椎凪……ん…ちゅっ…」
オレから椎凪を誘ってみた!!
ちょっと恥ずかしくて…勇気が必要だったけどそんな事言ってられなかったから…
「……耀くん…」
「椎凪……ンア……」

椎凪がオレを自分の下に組み伏せて…覆い被さってくる。
やっと…いつもの椎凪に戻ってくれた………



…と思ったのはオレの勘違いだった。
確かに椎凪はオレを抱いてくれた…でも…いつもの激しさなんて無くて…
オレに気を使って…遠慮しながら抱いてるって感じだ…

なんで?本当にどうしたの?椎凪……

「……椎凪…」
「ん?」
「オレの事…飽きちゃったの?」
「ええっっ!!??え?何で??」
「だって…オレの事抱こうとしないじゃん…
それに今だってすごくオレに遠慮してるみたいだし…」
「そんな事無いって!!普通だよ?普通!!」

………うそだ!!

オレは心の中でそう叫んでた。

………もしかして…ううん…そんな事有り得ないけど…まさか…まさか…

椎凪が…浮気っっ!!!!



誰にも…椎凪にも言えず1人悶々と毎日を送っていた…
そうだ…右京さん……右京さんに相談してみよう!!
オレは早速右京さんに連絡を取った。


「耀…よく来たね。」

右京さんがオレを見るなり両手を広げてオレを向かい入れてくれた。
「右京さんっっ!!」
オレは真っ直ぐ右京さんの胸に飛び込むといきなり泣き出した。
だって…涙が込み上げて…我慢出来なかったから……

「どうしたんだい?耀…ちゃんと話してごらん?」
ソファに座ってオレの涙を優しく拭ってくれる…

「う……右京さん…椎凪が…椎凪が…」
「!?…彼が?どうしたんだい?」

まさかまた耀に激しく迫ったんじゃないだろうな…

「椎凪が浮気してるかも……うっ…ひっく…」
「なっ!?…う…浮気?」
「…はい…」
「なぜだい?何か証拠でもあるのかい?相手の女性を見たとか?」
「いいえ…そんな事はないんですけど…」
「じゃあ…どうしてそう思うんだい?」
「……ひっく…ぐずっ…だって…」
「だって?」
「……椎凪が…オレの事…全然相手してくれないんです!!」
「は?」
「…う…右京さんに…こんな事言うの…恥ずかしいんですけど…その…あの…」
「な…何だい?いいから話してごらん…大丈夫他の誰にも話したりはしないから。」
「あの…オレ達…その…毎晩の様に愛し合ってたんですけど…」

わぁ…顔が…真っ赤だ…こんな事…右京さんに………恥ずかしいっっ!!

「その…ここ2週間くらい…椎凪全然オレを求めて来なくって…それに…
それでも椎凪が平気なんて…有り得なくて……
だから…他に好きな相手がいるんじゃないかって……」

「……ほう…2週間…ね…」

椎凪が右京に呼び出された頃と合致する……

「…浮気では無いんじゃないかな?きっと今まで耀に無理をさせてた
事を反省して…それで…気を使っているんじゃないのかい?」

右京さんが何故かちょっとぎこちない笑顔でオレに話し掛ける。

「それはおかしいんです…椎凪…オレの事が好きって言う表現が…
オレの事……いつも…思いっきり抱くって…事だから…
だから…それをしないって事は…
オレの事もう好きじゃなくなっちゃったんじゃないのかなって……
オレの事なんかどうでも良くなっちゃったんじゃないかな…って!!
…オレ…不安で……うっ……」

「…………」

右京さんが黙ってオレの肩を抱いてくれてる…
右京さんにこんな事相談するなんて…初めてで…
して…良かったのかオレにはわからなかった…
でも…自分じゃこの気持ち…どうしようもなくて……
「…耀…ちょっと聞きたいんだけれど……」
「…ぐずっ…は…い…?」

「耀は…彼が…昔どんな生活を送っていたか…知ってるのかい?」
「…?…はい…知ってます…椎凪も時々口が滑ってオレに話した事もあるし…
椎凪の事…昔から知ってる同僚の人にも聞いた事あります…
椎凪って昔すっごく遊んでたって…だから…女の人にも…すごく慣れてるって…」
「耀は…それでもいいのかい?」
「?…はい…だって今はオレの事だけ好きって言ってくれてるし…
きっとそれは本当の事だから…」
「……女性経験が多くても…構わないのかい?耀にその女性と同じ事を
求めてるかもしれないよ?ただ…欲望を満たす為に…自分が満足する為だけに…
耀に無理をさせてるのかもしれない…」
右京さんが心配そうにオレの顔を覗き込む。

「……椎凪は…オレと他の人を比べたりしないって…言ってくれたから…
オレの事が好きで…オレを求めすぎて…強引な所もあるんですけど…
それは…オレの事が好きって事だから…だから…椎凪が何の理由も無くオレを
求めて来ないって事は……オレの事……もう…飽きちゃったのかなって…」

「……耀は…彼に求められる事が苦では無いと言うことかい?」

「……コクリ…」
オレは無言で頷いた。
「……そうかい…耀は…わかって…理解して…受け入れてると言う事か…」
「…?…右京さん?」
「彼が…女性に慣れてて…嫌だったんじゃなかったのかい?」
今度はちょっと苦笑いみたいな顔でオレに話し掛ける。
「……え?あ…その…そう言うわけじゃなくて…いつも…椎凪に…
攻められて…勝てなくて…それが…その…ちょっと…悔しいなぁ……って…」

オレはそんな事を説明してる自分が恥ずかしくって恥ずかしくって…

「……?…あ…オレ右京さんにそんな話…しましたっけ?」
いつしたんだろ?記憶に無いような…??
「いいんだよ…耀は何も心配しなくても……」
「…?…はい…」


どうやら…僕の…取り越し苦労だったのか?
…………はぁ……どうも耀の事となると僕は周りが見えなくなる…
子供を育てると言う事は…女の子を育てると言う事は…

なかなか奥が深くて…興味深いものだ……ふふ……



「耀く〜〜〜〜〜んっ!!愛してるよーーーっっ!!」

「ちょっと…椎凪…まっ…あっ!あっ!」

椎凪が昨日までとは打って変わってオレに迫る。
「あっあっ!!そこ…ダメッ……ああっっ!!椎凪!!やめっ……」
「やめないっていっつも言ってるでしょ?ふふっっ ♪ ♪ 」
「…椎…凪……急に…どうしたの?昨日まで…全然…ンアっ…!!あ…」
乱暴に胸を舐め上げられて喋れない…!!もう…椎凪ってば…
「何だろう?なんか今まで頭の何処かがホワンてなってて…
心此処に非ずって感じでさ…でも今はバッチリのスッキリで!!
だから今までの分たっくさん!!愛してあげるっ ♪ ♪ 」
「……ハァ…ハァ…椎凪……」
「何?耀くん?」
「オレの事…好き?」
「!?…好きだよ!誰よりも…世界中の誰よりも…耀くんの事が好きだよ。」
「……ありがとう…椎凪…オレ嬉しい…来て…椎凪……」
オレは椎凪に向かって両手を広げた。
「!!……うんっ!!」
椎凪がオレに向かって飛び込んで来た。

「…フフ」
「…くすっ」
2人で…見つめ合ってほほ笑み合った。

夕方椎凪は右京さんの所に呼ばれて寄ったらしい…
右京さんは誰にも…椎凪にも何も言わないって約束してくれたから…
一体どんな話しをして椎凪がどうやっていつもの椎凪に戻ったのか…
オレにはわからないけど…右京さんに相談してよかった ♪♪

「椎凪…オレの事好きって言って…」
椎凪の首にしがみついてオネダリした。
「……好きだよ…好き…」
「じゃあ愛してるって言って…
オレの事世界中でたった一人だけ愛してるって…言って…椎凪…」
「愛してるよ…世界中で一番愛してる…耀くんただ一人だけ…愛してる…」
「…ありがとう…椎凪…オレも愛してるよ……愛してる……」

オレはさっきよりも強く椎凪を抱きしめる。
だって…この2週間…淋しくて…淋しくて…不安で…堪えられなかったから…
だから椎凪の温もりを身体全部で感じて…確かめて…
オレの中に閉じ込めるんだ…

「椎凪はオレのモノ?」

耀くんが何度も何度もオレに念を押す。
ここ最近オレは記憶が曖昧だ…ちゃんと生活してた記憶はある…
でもそれがどこか不安定で耀くんに対しても何か特別なモノに触れるような感じて…
耀くんに触れるのが怖かった…そんな感じ…何でそんな風に思ったのか…
右京君に会ったのも会った記憶はあるけどどんな話しをしたかあんまり覚えて無い…
そう言う事なのか?
あの人間離れ男め…オレに何かしたのか?
今度…チャンスがあったら…問い詰めてやる!

でも…今は…
耀くんをしっかりと抱きしめて愛し合うことにしよう…
耀くんは今…オレを求めてる…オレを必要としてくれて…オレを感じてくれてる…

だから…オレは耀くんの望む通りにしてあげる…



「右京様?どうかされました?何か気にかかることでも?」

雪乃が右京に紅茶を運びながら窓際から外を眺める右京に声を掛けた。
「……いや…少し反省を…ね…」
「!!…右京様がですか??」
「!?…そんなに驚かなくてもいいだろう…雪乃。」
「あ!申し訳ありません…」
「……『 女心 』 と言う物はなかなか僕には理解しかねる…
僕と言うより男には…と言う事なのか……」
「はい?」
ブツブツとひとり言の様に呟く右京を雪乃は不思議な顔で見つめている。

「 …愛情を確かめ合うのには色々あるが……あの2人の確かめ合い方は…
娘の父親としては複雑な心境だ……ふう……」

「右京様?」
「娘を持つと言う事は…忍耐だね…雪乃。」
「…??」


自分で蒔いた種は自分で刈り取った右京でした。