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「…はっ……はっ…ンッ…ンッ……椎凪…」
「……耀くん……」


真夜中のベッドの中…
つい30分前に日付が変わって…今日になった…
今日は……椎凪の…誕生日…
だからオレからの椎凪へのプレゼント……

オレが椎凪を抱いてあげるの……

オレにとってそれは凄く恥ずかしい事だけど
椎凪はすごい喜んでくれて…
去年の椎凪の誕生日に初挑戦した時は椎凪は驚いて…
でも感激してくれたから……

椎凪はオレにされるがまま…絶対抵抗なんかしない…
最初に椎凪の身体中にキスをした。
普段余裕のある椎凪だけどナゼか今はそうでもないみたい…
オレ相手ならあがらない椎凪の息が浅く速く聞える…

不思議だ……

オレは自分から椎凪にしてあげるなんて…慣れてないから下手だけど
どうにか頑張って…椎凪に満足してもらうんだ!!
これは朝と夜のセットだから…夜もオレは頑張る!!
ちょっと自信ないけど……

ただこのプレゼントの欠点は次の日に 『プレゼントのお返し』 と称して
椎凪が……いつも以上に激しく時間をかけてオレを抱くって事……
丁重にお断りするんだけど聞いてもらえず……
倍返し並に返されるからオレとしては良いのか悪いのか……難しい。


「……ん……」

耀くんが自分の身体全部でオレを抱いてくれる…
耀くんに抱いてもらうのはこれで何度目だろう?
数えるくらいしか無い事は確かで…こんなに本格的にしてくれるのは
オレの誕生日だけだ…

耀くんはこう言う事に慣れてないから…どこか遠慮がちにオレを抱く…
だから軽く触れる唇や加減を知らない愛撫もあってオレは時々大きく仰け反る…

本当は…オレは耀くんに弱い…
他の相手の時やオレが耀くんを抱く時は余裕があるけど耀くんはダメだ…
ワクワクしすぎるのか受け入れ態勢が万全なのかどうも耀くんがしてくれると思うだけで
過敏に身体が反応する…

初めての時…最初は輪子さんがオレを抱いてくれたけどこんな風にはならなかった…
別に緊張もしなかったし…


「…あっ…あっ…ふぁ…あ…」

耀くんがオレの上で乱れてる……
去年とは違う長い髪が揺れて…チラリチラリと垂れた髪の間から
耀くんの身体が見えて…ああ…なんていい眺め…

最近は身体も女の子らしくなったから…もともと整ってた身体が輪を掛けて良くなった。

オレの掌にぴったりな胸も腰も今オレの目の前で動いてる…
本当は手を伸ばして捕まえたいけど…今は我慢する事にする。

年に1度のオレの誕生日…
ガキの頃は誕生日なんてどうでも良かったけど今は誕生日万歳だ!!!

「耀くん……」
「…ハァ…!?…ハァ…ん?…」
「もう一度………おめでとうって言って……」

「……いいよ…はぁ…はぁ…おめでとう…椎凪…」

「…ありがとう…耀くん…」

耀くんがいてくれるだけで…オレは生まれてきた意味を知る…
オレは耀くんの為だけに生まれてきたんだ…耀くんとめぐり会うため…
耀くんの生きる理由になるために…オレはいる…

オレと耀くんは2人で1人……
2人が一緒にいて初めて生きていける…ねぇ耀くん…そうだよね…?

オレ達は…1人じゃ生きていけないから………



「ニヘヘヘヘ〜〜 ♪♪ 」
「ずいぶんご機嫌だね椎凪君?」
内藤さんが上機嫌のオレを見て言う。
「もう朝から良い事ずくめで…フフ ♪♪ 」

オレは今スコブル機嫌が良い!なんせ明け方まで耀くんと愛し合って
オレの充電はフルパワーだからだ。
しかも夜にはまた耀くんのプレゼントが待ってるし ♪♪ 嬉しいなぁ〜〜
その前に待ち合わせをして夕飯食べてデートして…愉しみは尽きない!
しかも明日オレは休みときてる ♪♪ なぁんてツイてるんだろう…オレってば。

「自分の誕生日がそんなに嬉しいの?いい大人の男がなんかバカみたい!!」

ルイさんがホントに呆れた眼差しと顔で絡んで来た。
「余計なお世話だよ!オレの誕生日のを心から祝ってくれるんだよ!
愛されてんの!!オレは!耀くんに!」
「ふぅ〜〜〜ん…ほら見なさいよ!堂本が呆れた顔で見てるわよ!」
「はぁ?」
思わず横目で睨んだ。
「なっ…そんな…いい加減な事言わないで下さいよぉ…呆れてなんていませんから…
仲が良くていいなぁ…って…はい…本当です!」
慌てまくってアタフタと手を動かしてる。
「説得力ないよ!堂本君!」
「ええ!!そ…そんなはず…」
なんだ?そんなはずって……まったく…

「童貞の彼女いない暦3年の男にわかるわきゃないけどね!!フンッ!!」

「あ!椎凪さん何言って……余計な事言わないで下さいよっ!!」
「え?何?あんた……」
ルイさんが乗って来た。

「わ〜〜〜っっ!!何でもないですっ!!何でもぉ!!!」
堂本君が面白いほど慌ててルイさんに更に追求されてた。


約束の時間と場所でオレは耀くんを待っていた。
いつもは耀くんの方が早いのに珍しい。

「ん?」

声がして振り向くとオレから少し離れた場所で女の子がナンパされてた。
慌てて身振り手振りで断ってるらしい…
後ろ姿だけど長い髪に軽くウェーブがかかっててなかなかのお身体…
相手は男2人組み…結構しぶといね…成功すんのかな?

「……椎凪ぁ!!」
「え?」

オレの方を振り向いてオレの名前を呼んだ。
何でオレの名前を呼ぶ?知り合い?ん?何だ?良く見ると耀くんの仕草に似てる?
でも…だって…うそだ…だって……スカート穿いてるもん…耀くんのはず……

「椎凪!!」

もう一度呼ばれてハッと我に帰る。
「耀くんっっ!?」
オレは駆け寄って耀くんの腕を掴んで引き寄せた。

「オレの連れだから諦めて!」


疑いの眼差しをオレと耀くんに向けながら2人の男は離れて行った。
なんだ?納得出来ないなら実力でわからせるぞ!!
ってオレは今それどころじゃない…

「…………耀…くん?」
「…………」

耀くんはオレを遠慮がちに見つめながらモジモジと立ってる。
髪は軽くウェーブが掛かってて薄く化粧してる…アクセサリーまでつけて…
脚はしっかりと隠れてるけど…やっぱり…何度見てもスカートだ…

「…どうしたの?」
「……あ…椎凪の…誕生日だからって…慎二さんが…」
「え?慎二君が?」

オレはそんな話も上の空で…もう視線は耀くんに釘付けだ。
だって…オレ…こんな姿の耀くん初めて見たし…
「やだ…そんなに見ないで…」
「え?あ…ちょっと耀くん?!」
そう呟くとオレの後ろに隠れちゃった。
「耀くん!?」

オレが身体を捻って背中の耀くんを見ようとするとオレと一緒に耀くんも動くから
結局見る事が出来なくて…しばらく2人でクルクルとその場で廻ってた…
ちょっと…ホント耀くんってば…

「耀くん!!ダメだよ!ちゃんと見せてよ…オレのためなんでしょ?」
「………う〜〜」
諦めたのかゆっくりと…渋々オレの後ろから出て来た。
「…………」
オレはしばし無言……じっくり上から視線を落としてつま先まで観察した。

「…似合わない……?」
はにかむ様に…耀くんがオレを遠慮がちに見ながらそう言った。
「まさか…いきなりでびっくりしただけ…」
「変じゃない?」
「変じゃないよ。綺麗だよ…」
「ホント…?」
「ホント!何にでも誓って言うよ…ホントだから。」
「嬉…しい?」
「うん!すっごく嬉しい ♪♪ 此処で押し倒して抱きたいくらい嬉しい!!」
「…椎凪ってば…」
耀くんがさらに真っ赤になって呆れた眼差しでオレを見上げた。
だからこのままホテルに行こうかとは言えなくなった。
勿体ないと言えば勿体ないし…

「今日は遅くまで外でデートしよう。」
「…何で?」
「その姿の耀くんと外を歩いてたい ♪ 」
「……うん…」

椎凪の伸ばした手を握って2人で夜の街を歩き出した。


「椎凪の手あったかい ♪♪ 」
「オレ体温高いから。」
「そうだよね…暑がりだし…」
「だから寒いの平気。」
「オレ寒いのダメだぁ…そのせいかな…なんか足元がスースーする!」
「スカートのせいじゃない?」
「そっか…それに落ち着かない…」
そう言えばさっきから無意識にスカートを触ってる…
「今に慣れるよ。」
「そうかな?………何?」
椎凪が優しく笑ってオレをじっと見てるから…

「ホント…綺麗だなぁって………」

椎凪の手がオレの頬に伸びる…
微かに触れるくらいの触れ方で…オレは思わず椎凪の手を掴んで頬擦りしちゃった…

「ホント…椎凪の手はあったかいなぁ……」
オレはそんな椎凪の手が大好き…
「本当は椎凪より先に来てたんだけど恥ずかしくって…
ちょっと隠れて様子見てたらあの人達に声掛けられちゃって……」
「もう気をつけてよ…耀くん!今は思いきり女の子なんだからさ!」
「…?…今は?……う…うん…」

何だか良くわからないけど…初挑戦のスカート…
椎凪は満足してくれたみたいだから…良かった…


「…チッ!やっぱり携帯の電源切ってるわね。でも…甘いわよ椎凪…フフ…」

椎凪達の後ろ…約20m…不気味に笑う瑠惟さんの影が…