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 * 最初の方でちょこっとBL要素あり。ご注意を! *



「え?おはようのキス…した事無いの?」

あいつが呆れた顔でオレに言った。
椎凪さん(やっとこう呼べる様になった。)の所に泊まりに来る様になって
何度目 かの夜耀さん(やっとこう呼べる様になった。)が
先に寝てしまって俺の彼女との事を聞かれ今に至ってる…

「だって付き合って随分経つんじゃなの?」
「そうだけど…照れくさいだろーが…それにあいつのおふくろさんも一緒に暮らしてんだぞ…
俺らがそーゆー関係までいってるって内緒だし…とにかく出来るかっっ! そんな事。」
俺は照れながらソッポを向いて答えた。
「もしかして…キス…下手とか…?」
「……!!!…」
「へーそうなんだ…」
返事を聞くまでも無い… 大きく見開いた目でオレに文句を言いたいのに図星だったから
何も言えない悔しそうな顔を見ればね…
ちょっとからかってやろうと悪戯心が顔を出した。

「キスって言うのはねぇ…」
「……!!」
一唏の顎を人差し指でクイッと持ち上げたらキョトンした顔された。
「まず優しく顔を上げて…それから慌てないで… そっと口を近付けて…」
「…ああ…」
真面目に返事をしてる…あれ?素直に聞いてるよ?コイツ…オレが逆に首を傾げた。
「自分の口で相手の口を優しく包んで…」
「…ああ…」
ギリギリの所で止めて話続ける…
「相手が自分を受け入れてくれたら舌を絡ませて…」
「…ああ…」
「充分にお互いの舌を絡ませたら… あともう少しってタイミングで離れるの…」
「おう。わかった。」
おいおい…スゲー納得してるよ…マジ?
「…ってオレとする気?くすっ。」
からかう様に 笑いながら聞いてしまった。
「なっ……バカ言ってんじゃねーよっっ!!」
確かにいつ唇がくっ付いてもおかしくない位近づいている…
あーホントからかい甲斐があるねー
堂本君といい一唏といい…こう見えても真面目なんだな…

更に悪戯心が芽生える…

「してみる?オレと… 」
ワザと挑むように『オレ』で見つめてやった…“うん”とは言わないだろうと思っていた…
「…あんたのキスって…幸せになれんのか?」
「は?」
一唏が急に真面目な顔でオレに聞く。
「…だって…2人がキスしてるの見てると…すげー幸せそうだし…2人共…嬉しそうだろ…」
「それはオレと耀くんが愛し合っ てるから…一唏も彼女と相思相愛になれば
キスだけでも幸せなんだよ。」
「そ…相思相愛だっつーの…多分…」
俺は俯いて呟いた。

未だに央(あきら)に聞けないでいる俺…
確かに 央が日常的に『俺を好き』だと言ったのを聞いた事が無い…
気持ちを確かめ合う前に俺が強引に央を自分のものにしたから…
そう言えば初めての時…央…泣いたんだった…
椎凪さんが不思議そうに俺を見てる…
そうなんだよ…この人といると俺と央の関係を考えさせられるんだ…いつも…

「どんなキスか…してみてくれよ…俺… 同じキスを央にするから…」
俺は至って真面目だった。
「へ?…いやぁ…そんな…どんなキスだって構わないんじゃない?気持ちの問題だよ…」
急にそんな事を言い出した…こいつマジに言ってんのか?
「いやだっ!!下手なキスなんか央にしたくねーっっ!!」
あれ?なんか顔がマジなんですけど…?
もしかして何かどっかのスイッチに触れちゃったかな?オレ…
「いやー…ホントにすんの?」
念の為にもう一度聞いた。
「頼む!教えてくれっ!!」

「……………」
本気らしい…まさかこんな事になるなんてね…まぁ必死なの顔見れば分かるけど…
そんなに彼女と…気持ち…通じてないの?一唏…
毎日一緒に いるのに…バカだな…ホンのチョット素直になればいいのに…

「オレに惚れんなよ…」
そう言ってオレは耀くんにするのと同じ様に一唏にキスをした。
一唏の身体が緊張して固まる…
「力…抜け」
「う……」
オレから離れようとする…
「逃げんな…」
「………ふっ…」
片手で一唏の顔を押さえつけて 逃げない様に追い詰めてキスをしてやった…
「なんか今の一唏って…昔の耀くんみたい…」
唇を軽くつけたまま話す…
「耀くんも最初は緊張して…ぎこちなくて 慣れてなくてさ…今の一唏みたいだった…」
ああ…思い出した…
「でも今は上手だよ…オレでもうっとりしちゃうくらい…
いい?一唏…キスはねお互いの愛を わけ合えるんだ…
だから…恥ずかしがってないで毎日彼女としてごらん?
毎日…キスして…お互いの気持ち確かめ合ってごらんよ…」
この間も椎凪さんは俺に キスを止めなかった…
ずっと舌を入れられて…息が出来なくて…立ってられなくなりそうだった…
これが…大人のキス……

「感じてくれた?」
椎凪さんが俺の顔を離さず話しかける…
「オレと耀くんは毎日こーゆーキスしてんの…愛し合う前も途中も終わってからも…
燃えるだろ?こーゆーキスって。」
軽く唇に触れられビクッとなる…椎凪さんは俺から離れてタバコに火を点けた。
俺は力が抜けてその場に座り込んでしまった…何なんだ??
その俺に椎凪さんがまた顔を近付けてくる…
何だよ…まだするつもりかよ…なんでそんな悪戯っぽい顔してんだよ…
思わず警戒して壁に擦り寄ってしまった。
「ねぇ…一唏…一唏を信用してお願いがあるんだ けど…聞いてくれる?」
俺の顔を通り越して耳元に囁く…
「な…んだよ…」
心臓がドキドキだよ…
「明日学校終わったら大学に耀くん迎えに行ってくれ ないかなぁ…
その後慎二君の所に連れて行って欲しいんだけど…頼める?」
うわっ…耳たぶ噛みやがった…生まれて初めてそんな事されたっ!!
「わっ…わかった…分かったからっっ!!俺から離れろっ!!」
これ以上俺に触んなっ!!
「よかったぁ。オレ明日どうしてもその時間に迎えに行けなかったからさぁ…」
言いながら立ち上がった…やっと俺から離れたよ…俺はホッとした…心臓に悪い…
「でもね…一唏…もし耀くんに何かあったら………お仕置きだからね…」
またいつもと違う瞳で言われた…
この瞳は嫌な感じでどうにも抵抗出来なくなる…

一唏がジッとオレを見てる…『オレ』だからか?
まぁ…こんだけ躾けとけばオレに逆らおうなんて思わないだろ…
耀くんにも手を出す様な事しないだろうし…
喧嘩は強いし丁度良かったんだよな…ふふ…

腹黒い椎凪でした。


「俺は3日が限度だったよ…」
2人の事を知っている世良が言った。
世良も以前椎凪さんの家に泊まった事が有ると聞いて学校帰りに捕まえて
話を聞いてるって訳。
俺の学校を聞かれた時『あれ?』って感じで世良の事を教えてもらった。
クラスは違うが学年は同じで顔だけはお互いに知ってた。
「あの2人…って言うか椎凪さんがさ…耀さんの傍離なれないんだよな…
朝から晩までイチャイチャしてる し…だって朝から全開にしてるんだぜ…声聞えちゃうしさ…」
確かに…今だってそうだ…俺は笑いが引き攣ってたと思う…
「耀さんは恥ずかしそうにしてたけど椎凪さんはお構い無し…どっちかっつーと
ワザと俺に見せてたっつーかさ…とにかくあの人…耀さんに関しては異常だよ…
わかんだろ?お前もさ…」
やっぱ前からああなのか…
「でもさ…椎凪さんとこってさ…なんか暖ったかくて…優しい感じがして…
癒されるって言うか…あの2人 のラブラブモードがなきゃいつまでもいたかったな…
椎凪さんは耀さんとの愛が溢れてるから…なんて言ってたけどな…クスッ」

そうなんだ…椎凪さんの所って… 落ち着くんだよな…
俺は一度家に戻り着替えて椎凪さんとの約束通り耀さんを大学に迎えに行った。


「えっ!?」
一体どうなってんだよっ…この人はっ!!

夕べ椎凪さんと約束した通り耀さんを大学まで迎えに行った。
正門で待ち合わせして慎二さんの所に向かってる。
途中必要なものがあって買い物に寄った。
その間耀さんは外に一人で待っていた。
ホンの数分の事だったのに買い物を終えて戻ってくると
耀さんが2人組みの男にナンパされてる真っ最中だった!!
速攻その2人を追い払い胸を撫で下ろす…
耀さんに何かあったら俺は椎凪さんにお仕置きされるから…それは避けたい…
耀さんは少し怯えてるみたいだった…
赤の他人…特に男は苦手だって言ってたんだよな…
だから俺が2人の所に泊まるのは耀さんにとって迷惑な事なんだと思うけど…

『椎凪が決めた事だから… 大丈夫だよ…気にしなくても。』

って言ってくれた…

「何か飲んでいきます?」
「え?あ…うん。」
オレ達は店に入らず外に何個か席を設けてある ドリンクショップに寄る事にした。
俺が買いに行き耀さんは席で待っている…
そう言えば央ともこんな風に外でデートなんてした事あったかな…
コレはデート じゃないけど…俺がジュース買って来るなんて…央とじゃ有り得ねー…
って!!おいっ!!何で耀さんの傍に男が3人群がってんだーーっっ!!!
品物を注文する前に 振り向くとそんな光景が飛び込んで来た!!
「テメェらっ!!耀さんに何してるっ!!どけっ!!」
飲み物なんかお構いなしに耀さんの手を引っ張ってその場から離れる。
耀さんがいるから喧嘩する訳にもいかないし…
しかし…この人一体何なんだ…?
俺に引っ張られながら走る耀さんをマジマジと見つめてそう思った。
ホント… チョットの間だったのに…2回もナンパされるか?普通?
男だぞ…確かに…見た目女の人だけどさ…
「耀さん何か相手にオーラ出してるんですか?」
思わず そんな言葉が零れる。
「そんな事…無いと思うけど…」
だよな…耀さんが男に色目使うとも思えないし…
「昔から…こうなんだよね… 何か声かけられるんだ…
いつもは祐輔が一緒だからあんまり声なんてかけられ無いけど…今日休みで…
ゴメンネ…なんか一唏君に迷惑かけちゃって…」
済まなそうに見つめられてしまった…
「え?あ…いや…そーゆー訳じゃ…」
ホントそう言う意味じゃ無かったんだが…
「もー椎凪心配性なんだから…オレ一人 でも平気なのに…」
いやっ!平気じゃ無いと思う…
「でも…ありがとう…一唏君」
ニッコリと優しい笑顔で言われてしまった…

「 !! 」
わかった…この人…男とか女とか…そんなの関係なく…すげー可愛いんだ…
顔とかじゃない…なんて言うか存在自体が可愛いオーラ出てるんだ…
いるだけで目引いて…なんか…こう…構いたくなるって言うか…
どうにかしたくなる気分…起こさせる…
椎凪さんが惚れ込むのわかる…誰にも触らせないのも…
この人…普通と違うんだ…うまく…言えないけど…

俺は何だか妙にくすぐったい胸のドキドキが止まらなかった…

とにかくその後は何処にも寄らず一直線に 慎二さんの所に向かった。
こんなに緊張して人と歩いたの初めてだった…
すげー精神的に疲れた…
慎二さんはまだ仕事で手が離せないからと俺達に飲み物を置いて席を外した。
広いリビングに耀さんと2人っきりだ…
飲み物を飲む 耀さんを横目で見てた…椎凪さんの言葉が頭に浮かぶ…

『耀くんもキス上手だよ…オレでもうっとりしちゃうほど…』

あの椎凪さんがうっとりするキスって… どんなんだろ…
自分でも気付かずに耀さんの口元をジッと見ていたらしい…
そんな俺に耀さんが気付いて…
「どうしたの?一唏君?オレンジジュースの方が 良かった?」
「えっ…!?」

ヤバイ…俺…なんか…変だぞ…?

耀さんを慎二さんの所に送っていってからしばらく2人に会う事は無かった。
って言うか… 会えなかった…
きっと会ったら…様子が変な事に気付かれてしまう…
央とも変わらない…でも…央の事も最近抱いてない…
央は不思議に思ってるみたいだった… 俺が椎凪さんの所に泊まるようになってから
自分に対する俺の接し方が今までと違ってるから…
前みたいに…央の気持ちを考えずに…無理矢理抱けなくなったから…
でも…やっぱり2人に会いたくて…部屋を訪ねた…
もちろん椎凪さんに連絡を取って椎凪さんが部屋にいる時に…

「久しぶりだね。一唏。元気だった?」
いつもの椎凪さんだ…リビングには耀さんがソファでコーヒーを飲んでる…
あーいつもの2人…いつもの風景だ…
シャワーを浴びてリビングに戻る…さっそく2人の 仲の良い話し声が聞える…
俺は邪魔をしない様にリビングの入り口で立ち止まった…
まあ俺が入っていってもさほど問題は無いんだろうけど…耀さんは気にする だろうから…
「耀くん…キスして。」
「いいよ。…ン……」
舌の絡み合う音が聞える…楽しそうなのがわかる…
「耀くん…オレの事好き?」
まるで 小さな子供が聞いてるみたいだった…
「好きだよ。」
「愛してる?」
「愛してるよ。」
その間も短いキスの音が聞える…
「耀くんは…オレのもの?」
「そうだよ…オレは椎凪のもの…だから…好きにしていいんだよ…」
「うん…ずっとオレの傍にいてくれる?」
「大丈夫…ずっと傍にいるから…」
「ごめんね…耀くん…オレいっつも確かめて…ごめん…」
「いいんだよ椎凪…椎凪が確かめてる時オレも一緒に確かめてるから…
椎凪が確かめたい事はオレも確かめ たい事…
そしてオレの答えは椎凪の答え…そうだろ?椎凪…」
「うん…」

廊下で2人の話を聞いてふと思った…
ああ…違うんだ…椎凪さんが耀さんの事 守ってるかと思ったけど…
違う…耀さんが…椎凪さんの事守ってる…支えてるんだ…
そうか…だから椎凪さんあんなに自信持っていられるのか…
耀さんに愛されて んの知ってるから…支えられてんのわかってるんだ…
耀さんって…凄いんだ…今…2人の事が理解できた気がした…

きっと俺はぎこちなかったんだろうと思う…
無意識に耀さんと目を合わせない様にしていたみたいだし…

それからしばらくして椎凪さんからメールが来た。
『一唏が持ってるウチの鍵返してくれる?悪いけど 今夜9時に持って来て。』
そう言えば念の為にと鍵渡されてたんだっけ…1度も使ってないけど…

言われた時間に部屋を訪ねた。
鍵は開いていたから勝手に入った。
ここに来るとリビングに入る前に一旦止まって聞き耳を立てる癖がついた。
静かだった…でも一応気遣ってゆっくりとリビングを覗く…
……え?…
ソファに2人は座ってた… 座っていると言うより…
2人はお互い向き合って…耀さんは椎凪さんの膝の上に抱きかかえられてる…
「…あ……」
既に息が荒い…

椎凪さんが俺に気が 付いた…目が合ったんだ…
その時椎凪さんが俺に向かって声は出さずにニッコリと口元だけ動かして笑った…

次の瞬間…耀さんの身体がビクッと動いて 声が 漏れる…
椎凪さんが耀さんの胸元から首筋にかけて舐め上げたからだ…
「ああっ……やっ…椎凪…」
ドサッとそのままソファに押し倒された…
「あっ…あっ…ん…」
俺はリビングから出てすぐの廊下で壁に寄りかかった…
リビングから耀さんの声が漏れる…
「んっ…!ああっ…あっ…あっ…」
声の間にソファの軋む音がする…
「し…いな…ああっ…あああっ…だめっ…ハァ…ハァ…」
「耀くん…好きだよ…」
キスの音がする…耀さん…目隠しされて…後ろ手に縛られてた…すげーエロイ…
な…なんだよ…こ…この位…でも心臓がバクバクいってる…
「あああ…やぁ… ハァ…もう…ハァ……ダメ…椎凪っ…」
ド ッ キ ー ン !!
うわぁ…耀さんのこっ…声が…
「あっあっあっ……し…い…な…ハァ… ああああああっっ!!!」
ソファの軋む音が耀さんがどれだけ激しく攻められてるかわかる…

あの人はぁ…オレをワザとこの時間に呼び出したな…くそっ…

ニヤリと笑う椎凪さんの顔が頭に浮かんだ…
一体何のつもりで俺に見せつけんだよ…

それから一時間位経っただろうか…
最後は耀さんが『もう…やめて…』 とかすれる声でお願いをしていた…
それでも…それからしばらくソファの激しく軋む音と
耀さんの荒い呼吸だけが聞えてた…
もう声も出せないくらい… 体力を消耗してるんだ…

「ごめんね一唏。そんな所で待たせちゃって。」
タバコを吸いながら何事も無かった様に椎凪さんが歩いて来た…
「…………」
「どっかで時間潰してくれば良かったのに…」
「別に……はい…鍵…」
俺は俯いたまま鍵を椎凪さんに渡した。
「ん…また遊びにおいでよ。オレがいる時にね…」
「う…ん」
まともに顔が見れない…

「オレの耀くんだから。」

「 !? 」
片手をオレの肩に乗せながら耳元で椎凪さんがはっきりとそう言った…
「オレのもんだから…手ぇ出したらお前でも容赦しないよ…一唏」
「椎凪…さん…?」
殺気の篭った声に心臓がドキドキしている…
「わ…わかってるよ…そんな 事…」
なんだ?何でそんな事言うんだ…俺は訳がわかんなくって焦った。
「そ?わかってるならいいんだ…これ以上言う事は無いよ…良かったわかってくれて。
オレ一唏の事好きだからさ…お互い嫌な思いしたくないからね…」
言葉に感情がこもってない…

「おやすみ…気をつけて帰ってね…」
そう言った椎凪さんの瞳は 笑っていなかった…

家までの帰り道…気分が重い…
椎凪さん…あれって怒ってた…
見透かされてる…だからクギ刺されたんだ…
どうかしてる…俺…央がいるのに…どうかしてる…
しかも…男の人なのに…でも…俺…

ずっと歩きながら考えてた…
2人は俺にっとて何なのか…なんであの2人の事が気になったのか…


仕事帰りの 椎凪さんを待ち伏せた…
「何か用?」
相変わらずそっけない…
「俺…あれからずっと考えたんだ…俺にとって2人って一体何なのか…」
「そう…」

「俺……耀さんの事を好きな椎凪さんが好きだ。
椎凪さんに愛されてる耀さんが好き…
俺の周りに2人みたいな人誰もいなかった…俺のお袋も央のお袋も
ダンナいなかったし…」
なんかスゲー照れる…こんな話人にするなんてはじめてだ…
「だから2人の事が羨ましくて…でも見てるだけで…俺まで…幸せな気分になれて…
椎凪さんの事は兄貴みたいに思えたし耀さんの事は憧れちゃったって言うか…その…」
段々訳がわからなくなってくる…
「…俺2人の事が好きだっ!!だめか? 俺2人の事好きって思っちゃだめなのか?」
もー訳わかんねー…これでわかってくれっかな??
「……一唏…」
俺の名前を呼んだ椎凪さんはいつもの優しい顔の 椎凪さんだった。

「…!!…」
椎凪さんが優しく笑ってくれた…
「オレも…一唏の事…弟みたいに思ってるよ…」
「本当か?じゃあいいんだよな?2人の事好きでも?」
椎凪さんは何も言わなかったけど笑顔で答えてくれた…

君が耀くんの事気に入るのは分かってたよ…
でもそれは一時の気の迷い…彼女に対する気持ちの整理がついてないから…
だから自分で考えてもらう時間あげたんだ…ちゃんと解ってくれて嬉しいよ…一唏。
これで少しは彼女に素直になれるかな?
なれたら…いいのにね…一唏…

でも…耀くんに本気になったら…許さなかったけどね…
ホント良かったよ…そうならなくて… ねぇ…一唏

オレは嬉しそうに笑う一唏を見ながらそんな事を思っていた…