06





「まあいいけどね…」

大体は予想通りだったから驚きはしなかったけど…彼らしいと言えば彼らしい…夜の遊園地。
確かにイルミネーションは綺麗だしムードもあるし初デートには申し分ない…けど……
何で彼が考えたと思うと幼いと思うんだろう…

「オレ夜の遊園地なんて初めて。深雪さんは?」
「んー何度か…?」

学生時代から数えればそうだけど…そういえば和裕も夜の遊園地好きだったな…
周りがあんなにきらびやかなのに和裕の周りだけが音がないみたいに…

あ…久しぶりに和裕の事思い出した…



「…で…」
「洸クン…」
「ン?」
「…したい…」
「…!?え?」

「洸クンに抱かれたい…」

「!!!」

遊園地内のファミレスで向かい合いって座ってたから一応小さな声で言った。

「そっ…そっ…それはっっ……!!」
「そんなに驚く事?」
「で…でも…」
面白い程に顔が真っ赤。
「別に今すぐなんて言ってないわよ。このデートが終わったらよ…」
「あ…はあ…うん…」
「いや?」
「え?いや…その…そう言うわけじゃ…ただ…」
「ただ?」

「もっと付き合いを深めてからでも……」

「はあ?一体いつの頃の話ししてんのよ?身体の相性深めるのが先でしょ!」

「え?そうなの?」
「そうよ。」
まあケースバイケースだけど。
彼にはそのくらいの言い方で調度いいくらい。
「……わかった……」
「………」

和裕の事を思い出したからかな……急に人肌恋しくなった……



「そんなに緊張しなくても…」
「いや……でも……」
「お互い初めてじゃ無いんだし。」
「………」
ホテルの入口で彼が止まったから…
「止める?」
仕方ないかと思って……
「いや…大丈夫。」
そう言って彼が一歩前に出た。



「一緒に浴びる?」

「!!!」

断られるのは分かってたけど反応が面白いから言ってみた。
案の定真っ赤な顔で首を振った。

「あ…後で1人で浴びるから…」
「そう?」



「どうしたの?」
2人共シャワーを浴びてベッドに並んで座ってた…
「……いや…上手く出来るか……急に自信が…」
「え?」
「いや…この前は酔ってたから…理性が外れてたかも……」
「でも他の人相手の時だってあったんでしょ?その時は?」
「どっちかと言うと相手がリードしてくれてたような……」
「確か全員年上だっけ?」
「はあ……」
「大丈夫よ。イザとなったらお酒飲めばいいじゃない。」
「え?そう言う問題?」
「飲み過ぎなきゃいいのよ。」
「………」
「洸クン…?」

「…はあーーじゃあ…深雪さん…がっかりしないでよ…」

彼があたしに向かってそう言うと…あたしの肩を掴んだ……




「んあ……んっ……」


何ががっかりしないでよ…よ…加減してってくらい激しいんですけど!!


「あっ!!あ…洸…クン!!」

「深雪…さん…ちゅっ…」

攻めながらのキスだってなかなか慣れてるじゃない……
もしかして慣れてないフリしてギャップで驚かそうとか?

「…あっ…あっ…」

しかも…1回が長い……
こっちが先にイキ…そう…絶対あたしの方が経験…あるはずなのに…何だか悔しい…

「…は…あっ…」

ぎゅっと彼の両足に自分の足を絡めた…彼の背中に腕も廻してしがみついた…
だから彼が激しく揺れる度に余計に激しく彼と一緒に揺れる。

「あっああっっ……もっ…ダメ…」
「…え?」

「あ…洸クン!!!」
「深雪さん!」

お互いが…お互いを……強く抱きしめ合ってた………



「あ……」

後ろから優しく胸を両手で揉み上げられて身体中が敏感に彼に反応する…

「ホントに…こう言う…事に…慣れてない…の…?」
「うん…今も心臓が…ドキドキ…」
「…大丈夫…すごく…いい…」
「…ホント……」

振り向いて…抱き着いて……唇を重ねた…

「…ンア…ア…ア……」
「深雪さん……」

彼の手が下から優しくあたしの胸を撫で上げる…今度はあたしが彼の上で彼を攻める…

「……手…繋いでて……あうっ…」

自分で彼を受け入れながらあんまりにも彼があたしの身体の奥で動くから…
手を繋いでてもらわないと後ろにのけ反りそう…

「深雪さん…こっち来て…オレの方に…」
「?」
彼があたしを呼んだから彼の頭の横に両手を着いて彼の上に覆いかぶさった。

「ひゃっ!!…んっ…」

「チュパ…」

っと彼が身体をずらしてあたしの胸の先を優しく口で含んだから…
胸の先から身体中に電気が走ったみたいに痺れた。

「ダメ…感じすぎちゃうから……あっ!…洸クン……ダメだって……ンッ…」

腹筋だけで彼が強引に起き上がった。
そのまま背中に腕を廻されて身体を抱え上げられる…
少し高くなったあたしの身体を洸クンが舌と空いてる片手で攻め始める…
下から押し上げる事も止めないからもうあたしの頭の中はだんだん何も考えられなくなる……


「…ああっっ!!!あっあっあっ!!!」


ホントに…顔とのギャップに…驚かせられた…




「……一体どんな相手としてたのよ…慣れてないなんてウソでしょ……」

しっかりと彼の腕枕で寝ながらのセリフ…2人でベッドの中で横になりながら話してる…
もちろんお互い裸のままだからお互いの肌の温もりが気持ちいい……

「どんなって…ホステスさんとバツイチの女の人に…あ!AVの女優さん!」
「なっ!!」
「オレバイト色々やってるからさ…そこで知り合って…」
「まさか洸クンから?」
「ま…まさか!!なぜだか相手から…」
「……やっぱり…」
母性本能擽られるのかしら…
「彼女は?」
「友達…ってくらいかな?オレは安全パイなんだって言われた事がある……」
「一緒にいても害が無いって事ね…」
「深雪さんは?」
「え?」
「誰かいたの?」
「………」
「話したくないなら…」

「別れたのは2年前…って言っても付き合ってたって言うかあたしが押しかけてたって言うか…
取引先の人だったんだけど…落ち着いてるって言うか物静かな人で…
でもあたしも好きとも付き合ってとも言わなかったし…」
「相手の人も何も?」
「だって…彼は他に好きな人がいたみたいだし…」
「え?それじゃそう言う相手がいるのに深雪さんと?」
「あたしはその事知ってて彼と付き合ってたの。
それでも良いからって…彼女と上手くいったらその時は言ってって……」
「じゃあ…別れたって事は…」
「何でも遠くに離ればなれになってたらしくて…彼女が戻って来たからって…」
「そんなの…」
「いいのよ。最初からそう言う約束だったんだから…
彼はあたしの気持ちには応えられないよって言ってたのを強引に付きまとってたから…」

「でも……その人…深雪さんと…」

「ああ…ホント何度かね…あたしがゴネにゴネて迫って半ば強引に…
後は逆に落ち込んでるフリして彼の優しさに付け込んだり…」

「深雪さん……」

「だって…仕方ないじゃない…そうでもしないと彼なぁんにもあたしに手を出さないんだもの!
でもそれが新鮮だったのかしらね…」

まさかその後あんなに和裕の事引きずるとは思わなかったけど…

「オレなら深雪さんとそんないい加減な付き合いなんてしない!」

「洸クン…」

「まだ…その彼の事思い出す……?」
「!?」
また母性本能くすぐる様な視線で…
「そうね…時々…」
「えっっ!?」

それは…洸クンに出会うまでの事で…
何でだか洸クンに出会って…1度抱かれただけで…
君の事しか想い出せなくなってた……

でもその事は君には内緒!

「……じゃあオレ頑張る。」
「頑張る?」
「いつも深雪さんに想い出してもらえる様に…」
「どう頑張るの?」
「………マメにメール?」
「やだウザイ!大体仕事中無理だし。」
「………」
「頑張って考えて。あたしのために…ね!」
「……うん…」

本当はね…きっともう君の事しか想い出さないと思うよ…
だって……身体が君の事覚えちゃったみたいだもの……

でもいつか君の事も…思い出だけになるのかな……




「ヘエー結構上手くいってるのね。」
「まあ今の所は…」
「年下彼氏かあーあの癒されるって子でしょ?」
「うん…」
「でもあんたにそんな相手が出来て良かったわよ。」
「え?」
「だってあの男と別れてから恋愛なんてどうでもいい様なトコあったし…投げやりだったもん。
あんな身体だけの男と付き合い始めるし…」
「別に付き合ってなかったわよ。お互い暇つぶしの相手だったもの。」
「それでも!昔はそんな事もする様な子じゃ無かったでしょ?」
「そんな事無いよ…きっとあたしってそう言う事が出来る女だったんだよ…」

だから酔った勢いの洸クンともあんな事になったんだもの…

「でもこれで結婚まで行っちゃえば?」
「は?」
「別に年は申し分ないしさ…まあフリーターって言うのがちょっと気になるけど…」
「そこまで行かないって!それにそこまで期待もしてないし…」
「ええ!?そうなの?」
「とりあえず続く所までは付き合うつもりだけど…」

「そんなにあの男が良かったの?」

「!!…別にそんな事無いけど…」

「じゃあいいじゃない!もっと先の事まで考えたって…」
「………」


和裕との恋はあたしの一方的な片思いだった…
結構強気なあたしにしては静かな恋だったと思う…
それに和裕がずっと誰かの事を好きだったから和裕の事が好きになったのか…
ただ…和裕と別れてから他の誰かなんて思わなくなったのは本当……
だから洸クンとこんな風になった自分に驚いてる…だけど……

ずっと続くかな…続けていけるのか……な…
いつか洸クンに『さよなら』って言われる日が来るのかな…
いつかあたしから『さよなら』って言う日が来るのかな……

そんな事を思いながら……また洸クンを想い出してるあたしがいた……