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洸クンにさよならって言って夜の公園を走ってたら後ろからタックルされた。
洸クンだと思ったら…真っ黒な目出し帽を被った超怪しい男だった!!!

 「なっ!!…うぐっ!!」

いきなり口を手で塞がれた!!

「騒ぐな!!!」
そう脅し文句言われてさらに奥の茂みに引きずられた。

「!!!」

え?なに??チカン!?このタイミングで!?

「…ううっ!!」

そう言えばそんな看板が途中にあったような…って今そんな事考えてる場合じゃ…
そうよ!冗談じゃ……

「うーうーっっ!!」

とりあえず逃げようと暴れたけど身体の上に馬乗りされて動けなかった!!こうなったら…

「…っいてっっ!!!」

ガブッ!!と塞がれた手に思いきり噛み付いた!そしたら一瞬だけ手が離れた。

「……助け…洸クンっっ!!!」

傍にいてくれてるかわからなかった…
もうあたしの事なんて諦めちゃったかもしれないけど…洸クンの名前を叫んだ!!!

「洸ク…!!!…きゃっ!!」

胸倉を掴まれて引き寄せられた!男の腕が上がる……殴られる!!

「深雪さん!!」

茂みの陰から洸クンが飛び込んで来てくれた!!

「!!!」

「お前何してるっっ!!」

洸クンが飛び込んで来るとあたしに馬乗りになってた男が慌てて逃げ出した。

「大丈夫?深雪さん!?」
「だ…大丈夫…洸クンアイツ捕まえてっっ!!」
「え?あ…うん!!」

そうよ!冗談じゃないわよ!!
あたしは助かったからか洸クンが来てくれたからか…元からの気の強さか…
余裕が出来てあの男が許せない気持ちが湧き上がった!!


「待て!!」

やっぱり運動神経良いんだ…洸クン…
ぐんぐんと男に追い付いて今度は洸クンが男にタックルして2人で倒れ込んだ。

「洸クン!!」

何とか2人に追い付いたけど…でも…息が上がって…苦し…

「…わっ!!」

そう叫ぶと洸クンが後に跳び上がる。

「?」
「……ハアハア…」
「えっ!?ちょっと…」

男の手にナイフが握られてるじゃないのよーーーっ!!

「洸クン!!…あっ!!」

洸クンの右の頬から一筋の血が流れてた!

「あ…洸クン怪我したの?」
「これくらい大丈夫だから!深雪さんはそこにいて!!」
「…そこにいてって言われたって…」

このままじゃ洸クンが……
何か武器は無いかと辺りを見回すと…木の陰に放置自転車発見!
もう何も考えられなくて…だって洸クンが刺されでもしたら…
それに…チカンなんて絶対許せない!!敵よ!!女の敵!!!

「洸クンよけて!!」

「え?」

きっと火事場の馬鹿力だったんたと思う…

「 死 ね っっ!! 女 の 敵 っっっっ !!! 」

そう叫んで自転車をチカン目掛けて投げ付けてやった!!

まさか自転車が飛んで来るなんて思ってもいなかったんだと思う。
あたしだってまさかあんなに高く自転車が上がってドンピシャでチカンの上に
落ちるなんて思わなかった…

「!!ぎやっ!!」

っと叫び声をあげて自転車の下敷きになったチカンがピクリとも動かなくなった。
すかさず洸クンがチカンに近寄ってナイフを取り上げる。


「………はあ〜〜〜」

あたしはその場にヘタリ込んじゃった。

「大丈夫?深雪さん!」
洸クンが走って来てくれてあたしの前に屈み込んだ。
「う…ん…で…でも腰が抜けちゃった…」
「そりゃそうだよ。」
「あ…!け…警察!!」


それからチカンを引き渡してなんだかんだと開放されたのは更に1時間以上経ってからだった…
2人でさっきの公園のベンチに座ってた…

「はぁ……疲れた…」

あたしはぐったりとベンチに座って本心からそう思った。

「本当散々な目に遭ったね…あ!深雪さん膝から血が…」
「あ…最初アイツにタックルされて転んだから…」
「…でも何事も無くて良かったよ…」
「洸クンだって怪我したでしょ?大丈夫?」
「ああ…かすり傷だから…もう血も止まったし…」
「火事場の馬鹿力って本当に出るものなのね…」
「CGかと思ったよ…」
「やだ…必死だったの!!」

「………くすっ」
「………フフ…」

何だか2人で笑っちゃった…


「今日はありがとう…洸クン…」
「え…あ…いや…」
「それから今まで…ありがとう……」
「え…?」

「もう…会う事も無いと思うけど…元気でね…」

「!!何で?本当にそう思ってるの!!」
「だって…義理のお兄さんの元カノとなんて付き合えないでしょ……」
「何で?」
「だって!!……だって……あたしと和裕は……」
「そんなの大人の付き合いなんだから当たり前だろ!
オレだって付き合ってはいないけどそう言う相手いるし!」
「相手に問題があるんじゃない!あたしと和裕を見る度に思い知らされるのよ!」
「そんなの思い出さないよ!!もう終わった相手だろっっ!」
「そ…そうだけど…」
「たまたま昔付き合ってた相手が和裕義兄さんだっただけだろ!」
「だからその相手が問題なんじゃない…」
「それに浮気してたわけでも不倫してたわけでも無いんだし…
深雪さんは今でも義兄さんの事が好きなの?」
「そ…そんな事あるはずないでしょ!」

「じゃあ今は誰が好きなの…」

急に洸クンが優しい口調で聞いてくるから…それに優しい顔……

「え…?」
あたしは心臓がドキンって……
「誰?」
そんな優しい声と顔で覗き込まないでよ!!
「………クン…」
「聞こえないよ…」
「あ…洸クン!!」
もう…なんなのよ…随分強気じゃない……

「来て!」

そう言ってあたしに向かって手を差し出す。
「…………」
あたしは黙って手を差し出した…

「あ!」

グイッと引っ張られた。

「行くよ。」
「…ど…何処に…?」
「ホテル。」
「え?」

「深雪さんの身体が誰を想い出すか確かめる。」

言いながら既に洸クンが歩き始めてる…

「え?」

何?一体なんなのよ…