03






「裏切り者!」

大学の近くの喫茶店…眞子と2人外に置かれてるテーブルに座って文句を言てった。

「悪い悪い。でもさアッサリした奴じゃん。気前もいいしさ。」

全然悪いと思ってない…まったく…

「男の人…嫌いだもん。」

不貞腐れた様に言う…不貞腐れてたんだけど…

「いい加減ソレ何とかしなって!
あんたの顔と身体 なら男の一人や二人手玉に取れるって…
そんで良い思いした方がいいよ。」
「だって…ダメなんだもん…長い時間一緒にいれないしさ…
息が詰まる。男の人と 一緒にいると。」
「だからって女が好きってわけじゃ無いしね…何か理由あんの?」
「わかんない…でも…昔から…強引で…
人の事考えないで迫られた事 多かったから…それでかな…」

私は何故か昔から男の人に絡まれる…
どんな巡り会わせかその手の男の人は皆強引で…自己中か自己陶酔の激しい人か…
勝手に私が自分の事を好きだと思ってるか思わせてやる!みたいに…
力尽くで押して来る人とかもいた…チカンにも良く遭うし…

挙句の果てはストーカーって…
とにかくそんな事ばかりで男の人にはあまり良い印象は無い。

そう言えば一度誰かに言われたっけ…
『君って無防備な仔ウサギちゃんみたいなんだ…』 って…
失礼な!そんな事無いと思うんだけど……

「なによ?軽い自慢?」
「違うけど…だって…私からなんて一度も色目とか使った記憶無いのに…
こっちが何でって聞きたいよ… ねぇ…一緒に来てよぉ…お願い!!」
「嫌だよ。バック買って貰えなくなちゃうもん。」

泣きついたのにあっさりと断られた!

「もー薄情者っ!!私よりも バック?ねえー」
「そ!…なんてのは冗談だけど…彼今までの男とはチョット違う気がすんのよね…」
「どこが?」
「んー…あの行動力?
それに普通ナンパ相手の友達に 何万もするバック買ってあげるなんて言わないよ。
あんたにじゃなくてあたしにだよ?そこまでしてあんたの事知りたがるなんてさ…
それにストーカー…捕まえて くれたのは事実なんだからさ。」
「それは…感謝…してるけど…さ」

確かに…あの行動力が…曲者なんだよね…
ああ…でも…あの人懐っこい笑顔も曲者……


「あ!こっち!」
突然眞子が席を立って手を 振った。
「 !!…なっ… 」
「お待たせ。」
「ちょ…眞子…あなた…また…」

片手に紙袋をもったアイツがお店の中を歩いてくる…

「ごめんね。 バック持って来てくれるって言うからさぁ〜」

ちょっと…眞子さん???

「はい。色々ありがと ♪ これ約束のバック。」

私の目の前で…お礼と称するバックの やり取りが行われてる…
私の価値は…バック一個分ですか?

「じゃあお邪魔虫は消えまーす。じゃあね。耀!少しは遊んだ方がいいよ。
コレは親友からの アドバイス。」
「……私に…親友なんていないもん…」
ソッポを向いていじけて言った。
「後であたしに感謝するって!あたしがこの人保障するから。
あたしの男を見る目!知ってるでしょ?男で泣かされた事なんてないんだから。
明日話聞くからさ。じゃあ耀の事ヨロシク!これどうも。」

そう言ってにこやかな笑顔で 眞子が人混みの中に消えて行った…

ホント薄情者ぉーー!!!

でも…分かってる…眞子はずっと前から私の事心配してくれてたから…
色んな経験した方がいいって…


でも…だからって…何でこの人なのよ……



「さて!どこ行く?」

なぜだか2人して喫茶店のテーブルに眞子が帰った後も向かい合って座ってる…

「電話…するって言ってたじゃないですか…」

睨んで文句を言った。

「え?待ってて くれてたの?」

パッと顔が明るくなって身を乗り出された。

「そんなわけあるはず無いでしょ。」

即否定した。

「でしょ?どうせ連絡したってシカトされるから 直接来たんだよ。
だから言ったでしょ?眞子ちゃんはオレに全面協力してくれるって。それに…」
「それに?」

「君は…もうオレのものだから。」

テーブルに片肘付いてニッコリと言われた。

「私…その言葉一番嫌い。私はあなたのモノなんかじゃ無い!私のものです。」

言われた言葉はイヤだったけど…
一緒に付いて来た彼の笑顔に思わずドキリとなってしまった…
ダメダメ…しっかりしなきゃ!

「でもすぐオレのものになる。その為に君は今誰とも付き合ってないの。 わかった?」

どんな理屈よ…

「分かりま…」
「もう行くよ。時間が勿体無い。」
「あ…ちょっと…」

『分りません!』って言ってやろうと思ったのに…また私の腕を掴んでサッサと歩き出す。
人の話は最後まで聞きなさいよっ!!

「強引なんだから…」
「何か言った?」
「別に…!今夜だけですからね!お礼ですから。」


その言葉に返事は無くて…変わりに満面の笑みが返って来た。



「うー…飲みすぎた…」

何だか…ムシャクシャして…調子に乗って…彼に乗せられて…お酒を飲みすぎた…

「お酒…強いんだね。」

そう言ってベンチに座って私に 向かっておいでおいでをする。
酔いを醒まそうって…公園に寄ったけど…
酔いが醒めるどころか余計廻ってフラつく…

「……多少…ね…」

諦めて…仕方なく隣に座る…立ってるのがキツイ。
もともとお酒は強い方なのに…
まずい…酔いが廻って眠い…早く帰らないと…

「 ん!? 」

俯いてた顔を…持ち上げられた…
酔ってるせいか…拒絶もせずに…彼をじっと見つめた…

飲んでる間もこの人は全然…私に触っても来なかった……
この人から下心が何も感じられなかったのよね…
ずっとニコニコ笑ってた……とっても嬉しそうに……

他の人と…違うの?この人…

あーダメダメ…お酒のせい…お酒の…思考回路がおかしくなってる…


「約束のキス…君からして…」

突然耳元で 囁かれた!!

「え!?私から?…え…無理…絶対無理!!!」

酔ってたけどその辺の思考回路は機能してて思いっきり断った。

「出来るよ。」

彼は優しく微笑みながら諦めない。

「いや…本当に絶対無理!」

だって…私…

「約束…だろ?」
「…うっ…」

なっ…なんで…こんな事に?…た…確かにお礼は…しなくちゃとは思うけど…
こ…こんな事…しなくちゃいけないの?何か… 騙されてない?私…

でも…酔いが更に廻ってきて…マズイ…このままじゃ…もたない…


「 ち ゅ っ ! 」

もう破れかぶれの開き直りで私は彼の唇に軽く触れるキスをした…
それだって…一大決心だったんだから…
さっさと済ませたかったし…酒の勢いってのは恐ろしい…

って…あれ?彼の反応が…無い…?
瞑っていた目を明けて 彼を見ると…キョトンとした顔をしてる…

「な…何か?…」

って聞くのも恥ずかしいけど…

「あの…今のが…キス?」
「そうだけど…何よ!」

何か文句でもあるの?
私がどれだけの勇気と諦めと開き直りでしたと思ってるのよっ!!

「んー…こんなさ 子供がするキスじゃなくって…
大人の…恋人同士がする様な…甘ーいキスがしたいなぁ…」

恋人同士がする様なって…恋人じゃ無いし!!
そんな事考えてる間に肩に腕を廻されて…引き寄せられて…彼の顔が近づいて…

「…え?」

顎を手でしっかり押さえられて…彼の唇がそっと私の唇に触れた…
彼はそれで止まらずに私の口の中に舌を滑り込ませてくる…
私は抵抗するのも忘れて…訳がわからないうちに舌を絡ませたキスをされた…

「ん…ちょっと…」

何とか抵抗しようとするけど…無駄な抵抗…
口を閉じようとしても1度進入を許した彼の舌は退く事をしない……

「んんっっ!!」

もっと腕に力を入れられて…抱きしめられた…
その間も…ずっと…彼の舌が…私の口に中で動いてる…
逃げようとする私の舌をあっさりと捕まえて絡めてくる…
…息が…出来ない…酔いも…廻ってクラクラする…

ちょっと…いきなりこんな激しいキスなんてしないでよ!!意識が…飛んじゃう…

「あ…」

それから大分経ってやっと唇を離してもらうと…ギュッと抱きしめられた…

「……くそ… すげー悔しい…」

彼が私を抱きしめながら何か言い出した。

「え…?」
「君のファースト・キスの相手…オレが一番になりたかった…」
「は?」

何言ってんの…この人…酔ってんのかしら?
酔いと激しいキスで私の頭の中はクラクラのぼんやり…
だから彼の言ってる事があんまり理解できてない…

「それに…今まで君とキスした相手…考えただけで…スゲームカつく…それに『H』も…」
「……『H』って…バ… バカみたい…変なの…」

そう言って彼を押して自分から離した…彼は思いの外すんなりと私から離れた。

「そう…オレ変なんだ…君に会ってから…オレわけわかんねー…」

彼が自分の額に手を 当ててそんな事を言ってる。

「……本当…バカみたい…自分にヤキモチ妬いたって仕方ないのに…」

酔ってて呟く様に言ったのに…でも彼には聞えてたみたい…

「え?オレに?オレにヤキモチって… どう言う事?え?」
「知らない!もー帰る!」

ホント知らないわよっ!!自分で考えなさいよっ!!

「え?」

彼女が思いっきり勢い良く立ち上がった…
…オレがオレに…?どーゆー…え!!!

「うそっ!オレの事??オレが初めて?今オレとしたのがファースト・キスだったの?」

そう叫んで彼女を見上げると…へ…?ヨロヨロと…オレの方に倒れてくる…

「うわっ!ちょっと…」

ドサッと背中からオレの腕に倒れ込んだ。

「大丈夫?」


彼の声が…遠くで…聞える…

あーまずい…男の人の前で…倒れるなんて…

これじゃあ…襲ってくれって…言ってる様な…もんじゃない…

そんな事を思いながらも私の意識は勝手に深い深い所に落ちて行った……