06






「あっあっあっ……あああっっ!!」

もうずっと長い時間ベッドが激しく軋み続けてる。

あの後……オレの言ったことを確かめる為にふたりで近くのホテルに入った。
最初は様子をうかがってた彼女だけどお互いの妖魔の血が騒ぐのか
ものの数分でベッドの中は盛りのついた獣みたいになりふり構わずお互いが相手を求め始めた。

彼女は今ロイスが主導権を握ってる。
オレはというとロストに代わろうとすると拒否された。
女を抱くことに興味がないそうだ。
“アッチ”好みかと聞き返したらもの凄い怒られた。

こんな時に今までの自分のしてたことが生かされるとは思わなかった。
抱き合うのに相手が男だろうが女だろうが関係ない。
だから経験値の差でオレが今主導権を握ってる。

「……あっあっ……やっ!んっ……はっ……ああっ……」

オレの下でオレと同じように真っ黒な刺青を身体に刻み込んでる19の女の子が
オレに激しく攻められて……押し上げられて……感じて乱れてる。

オレに抱え上げられた彼女の両足は糸の切れた操り人形のようにガクガクと激しく揺れる。
彼女の身体をあらゆる角度から攻めた。

ずっと閉じてる瞼から流れてる涙は宿主の女の子のモノなのか……
それとも妖魔のロイスのものなのか。

「ハァハァ……やっぱり……人間の……男とはちがっ……ンア……や……」

攻められてる間に零れる言葉はロイスのものだ。

噛みつくようなキスを繰り返しお互いの身体に人のモノの割には発達した犬歯でキズをつけ合った。

昨夜見つかった男は彼女に精気を吸い取られて瀕死の状態だった。
オレは半分人で半分は妖魔だ。
だからなのかロストがオレの中にいることで彼女と交わっても普通の女を抱いてるのと
何ひとつ変わらない。
さすがにここまで激しいのを何時間も続ければバテるだろうがそれは何度か経験済みの範囲で
異常とはオレには言えない。

「ハァ……ハァ……こんなの……初めて……身体が……全然違う……もの凄く……満たされる……」
「ハァ…ハァ…そう……じゃあオレの言ったことは実証されたんだ」
「そう……みたいね……ねえ……あなたの名前……もう一度教えて」

最初に会ったときはうって変わった甘ったるい声で言いながらオレの首に腕を回す。

「……椎凪」
「……し……いな?そう椎凪ね。もう離さないわよ……ずっと……傍にいる……」
「ずっと?……んっ……」

最後の力を振り絞るように腕に力を入れてオレに近付くと下を絡めるキスをされた。

「……はぁ……」

満足したように離れたロイスはトロンとした瞳でオレを見るとゆっくりと瞼を閉じた。

「そう……もうあなた以外の男とはしない……ほかの男じゃあたしを満たして……くれないから……」
「?……ロイス?」

オレの首に回されてたロイスの腕から力が抜けていく。

「……初めて……名前……呼んで……くれ………た」

ロイスの腕がベッドの上にパタリと落ちた。

「ハァーーーー妖魔の女ってこんな激しいのか?」

オレはロイスの身体を跨ぐように肘をついたまま頭をベッドに押し付けた。
力尽きた感じがしないでもない。
オレのそんな言葉も態度にもロストはずっと無言。
オレを遮断してるらしい。

「はぁ……」

久々に夢中になって抱きまくってた。
攻めれば攻めた分ロイスは乱れてオレに積極的に応えてくれた。
そう言えば水上の家を出てロストと同化してから女を抱いたのはロイスが初めてだったな。
そんなことを思いながらロイスを見ると気持ち良さそうに眠ってる。

「!」

オレの身体の下で眠ってるはずのロイスの身体がピクリと動いた。
そしてゆっくりと目をあけた。

「?」
「……あ……やだ……」

ん?なんだか今までと纏ってる雰囲気が違く感じる?

「……こんなこと初めて」
「え?もしかして?」
「自然に彼女と入れ替わるなんて初めて……」

その言葉で彼女が“ロイス”から“耀”に変わったのがわかった。
真っ赤な顔。
あ!そっか。彼女もロイスと一緒に体験してるんだっけ?

「ロイスは?」
「眠ってます。すごいぐっすりと……こんなこと初めて……私も何だかいつもと違くて……
何でだろ恥ずかしい」

そう言ってオレの下にいながら身体を捻ってそこから逃げようとする。

「逃げないで!」
「!!」

咄嗟に叫んだオレの言葉にビクンと身体を強張らせながらも横向きのまま止まってくれた。

「やってることは今までと変わらないから……きっと君にとっては辛ことだろうけど……
これからはオレ1人が相手だから。もうほかのどこの誰ともわからない奴の相手することはないから」

オレはできるだけ優しく話しかけた。
彼女は最初視線だけをオレに向けて話を聞いてたけど最後は仰向けになってちゃんとオレを見てくれた。

「……は……い」

小さく囁くような返事だ。

「次はもう少し優しく抱くから……」

さっきはつい自分でも抑えが利かなくて身体が求めるまま彼女……いやロイスを抱いたけど
この子にはそんなこと今は出来ないと思ったから。

「……はい」
「もうひとりじゃないから……悲しまなくていい」

そう言って彼女の頬を撫でた。
彼女は逃げもせず身体を強張らしたりもしないでオレの指先と手のひらを受け入れてくれた。
オレはそのまま彼女の目のふちに溜まってる涙を指先で拭ってやる。

「はい……ありがと……んっ!!」

初めて 『 耀 』 という女の子とキスをした。
理由はない。
身体が勝手に彼女を求めただけ。

啄ばむようなキスから舌を絡めた濃厚なキスをすると耀が苦しそうにするから仕方なく離れた。

「はぁ……私キスしたのあなたが初めてです……いつも私は彼女の中に隠れたから……」

そう言ってまた真っ赤になって目に涙を溜めてニッコリと笑う。
ああ……もう……

「今度は……君としたいな」

どうやらオレもいつもと少し違うらしい。
気持ちが高ぶって自分で自分が抑えられない感じだ。

目の前で恥ずかしがって真っ赤になってハニカム彼女が欲しくて欲しくてたまらない。

「え?でも……」

急にオレにそんなことを言われて焦ってる。

「優しく抱くから………」

返事を待たずに彼女の身体に腕を回して抱き寄せた。

「あ……あの……私……」

俺の動きを抑えるようにオレの肩に触れた手が震えてる。

「私?」

「あの……初めてで……だから……その……どうしたらいいか……」

「!!」

今まで数えきれないほどの男を相手にしてきてるはずなのにこの娘はオレが初めてだと言う。
何とも不思議な感覚で……

「オレに任せればいいよ」

オレはクスリと笑って彼女の……耀のピンク色の可愛い唇に触れるだけのキスをする。

さっきと同じ顔で同じ身体なのに……まるで違う女の子を抱いてるみたいだった。