cat food sweet valentineday 〜どうぞ私を召し上がれ♪〜 02
sweet valentineday 〜 どうぞ私を召し上がれ ♪ 〜 02





「さあ、チャキチャキやっちゃいましょー!おばさん、よろしくお願いします ♪」
「お願いしまーす ♪」

あゆみさんとましろはお邪魔したお家で待っててくれた「おばさん」に頭を下げた。
あゆみさんが「おばさん」って呼んでるからましろも最初「おばさん?」って呼んだら
それで良いわよって言ってくれたからそう呼んでる。

ホワホワしててやさしく笑う人…だからましろもにこにこ笑うの。

「ばれんたいん」と言う日の前の日…
コンビニであゆみさんと待ち合わせして連れて来てもらった。
ここはあゆみさんの知り合いのお家なんだって…あ!おばさんのお家。

あゆみさんもましろもチョコを作るなんて初めてで…
だからおばさんが言う事もなかなか上手く出来なくて…でも頑張ってる。

それよりも…さっきからチョコの甘いいい匂いがキッチン中に漂ってて…
ましろはもうそっちも気になって…

細かく刻んだチョコを丸い入れ物の中に入れてお湯を使って溶かした。
チョコをそんな風に溶かすのって初めてで丸い入れ物の中にはトロトロになったチョコがあった。

もう…ましろ我慢できないよ〜〜 ♪
丸いチョコの入ってる入れ物に指を入れてチョコを指に絡ませた。
そのまま口に…

「はむ…美味しい ♪ 」
「あ!真白ちゃんつまみ食いはダメだよ!まずはちゃんと作ってから!」
「そっか…」
「自分は横に立ってるだけなのにまあ偉そうな事言うな…歩。」

さきからテーブルに肘をついてましろ達のことを見て笑ってた男の人がそんな事を言う。
たしか名前は「れいさん」。

ハルキよりも大きいのかな?どうだろう?同じくらい?
でもやさしそうで…あゆみさんと仲がいいみたい。

それなのにあゆみさんキリッとれいさんを睨み付けた。
でもれいさんは全然気にしてなくてちょっと肩を持ち上げただけ。

「ちょっと怜くん!邪魔するなら、あっちいってて」
「邪魔する気なんてないけど?」
「そういうこと言うことが邪魔なの!それに気が散るー!!」

あゆみさん怒ってるのかな?さっきからちょっと変。
おばさんはニコニコとあゆみさんとれいさんを見てうれしそう。

だからきっとあれは2人でじゃれてるだけなんだよね。
今のあゆみさんはハルキみたい。

怒ってるみたいな言い方だけど本当は怒ってなんかいないんだよね ♪
ましろ知ってるよ ♪

「あゆみさんとれいさん。なかよしぃー」

ましろもおばさんと一緒にニコニコしながら言ってあげた。
そしたらあゆみさんが真っ赤になっちゃって…どうしたんだろ??

そんな真っ赤になって固まっているあゆみさんを見て
れいさんがクスクスと笑いながら席を立った。

「ど、どこか行くの?」
「ん?自分の部屋に戻る。」
「へ?」
「ここで悪戦苦闘して俺のためのチョコ作る歩を見ているのもいいけど、
俺が見ていると歩が気が散って怪我しそうだから。上で待ってる。」
「怜くんっ!」
「期待しているぞ、歩。愛情たっぷりチョコ。」

そういってヒラヒラと手を振ってダイニングから出て行こうとするれいさんに
あゆみさんが真っ赤になって叫んぶ。

「怜くんになんてあげないんだからねー!!」

そんな事を叫んであゆみさんがれいさんが出て行った扉を睨みつけてる。
そんなあゆみさんの肩をポンと叩いておばさんが笑ってる。
 
「じゃ、型にいれましょうかぁ〜」
「うん♪」
「はい。」

あゆみさんとましろはそんな声かけに元気良く返事をした。

おばさんが大きいハートの型の入れ物とそれよりちょっと小さめのハート型お入れ物を
ましろ達の目の前に置く。
そこにさっきつまみ食いしたトロトロのチョコをゆっくりと入れる。
ちょっとむずかしかったけどなんとか入れ物に入れることが出来て
あと今度は別のクリームを入れ物に入れた。

失敗しない様に一生懸命頑張った。
そしたら横でクスクスと笑い声がしてあゆみさんが笑ってたからどうしてかと思って
あゆみさんの顔を覗き込んじゃった。

「にゃ?あゆみさんどしたの?ましろ何かした?」
「ううん、なんでもないよ?ほら、チョコいっぱいついてるよ?」
「へ?」

言われてすぐに腕でゴシゴシこすったらあゆみさんがタオルを持ってて…
ましろは気付かなくて…

「ありゃりゃ、真白ちゃん。すごい顔だよ?」
「ふぇ?」

あゆみさんが言うにはましろの顔がチョコだらけらしい。
そういえば顔がちょっとゴワゴワしてるかも…

「ほら、拭いてあげるから」
「ありがとう、あゆみさん」

お礼を言うとあゆみさんが笑ってましろの顔についたチョコレートを
水で濡らしたタオルで拭いてくれた。

黙ってあゆみさんに拭いてもらってたらおばさんはクスクスと笑った。



「さ、これで出来上がり。冷凍庫で冷やして出来上がりよ。
出来上がったらラッピング可愛いくしちゃいましょうね?」
「はいっ!」
「楽しみー♪おばさん、本当にありがとう!」

あゆみさんがおばさんにそうお礼を言うと、おばさんはクスクスと笑って
あゆみさんとましろにクッキーを取り出して笑った。

「さぁ、チョコレートが固まるまで、3人でお茶しましょ?」
「うわぁーーい ♪ 」
「賛成っ!」

ハルキの所ではあんまり飲んだ事の無い紅茶を飲みながらあゆみさんとおばさんとましろで
話してたらいつの間にか外がもう暗くなっていた。

全然気が付かなくて…だって2人と話してたら楽しくて時間がたつのを忘れちゃってた。


「うわぁ、まずい!早くラッピングして終わらせなくちゃ。真白ちゃん、帰れなくなっちゃうよ」
「ハルキ…待ってるかな?早く帰らなくちゃ…」

あゆみさんがバタバタと慌ててキッチンに行って、冷蔵庫からチョコレートを取り出した。
ちゃんと出来てたみたいであゆみさんがホッとしたのがわかった。

その後はまたおばさんの言う通り作ったチョコレートが入った箱をきれいな紙で包んで…
出来上がり!

わぁ〜なんだか売ってるチョコみたい……
ちょっとリボンが曲がってるかもしれないけど…ま!いいよね?ふふ…

「うわ、もう7時だよ。真白ちゃん、早く帰らないとまずいよね」

あゆみさんに言われてハッと気付いた。
ハルキにあんまり遅くなるなって…言われてたんだ…どうしよう…

「うー」
「コンビニから、真白ちゃんのお家遠い?うーん、どうしようか」

そんな事をあゆみさんと話してたらそこにれいさんが階段を降りてきた。
そしてれいさんがズボンのポケットから何かのカギを取り出した。

「歩、俺が真白ちゃんバイクで送ってやる」
「え?本当?怜くん」
「ああ、さすがにこの時間に彼女ひとりで帰るのは危険だからな」
「助かるー怜くん。真白ちゃん、怜くんに送ってもらいなよ?」
「え?バイク?」
「乗った事あるかい?」
「うん。ハルキもバイク乗るからましろ乗った事があるよ。」
「じゃあ大丈夫だな。支度出来たら行こうか。」
「うん。」

れいさんのバイクの後ろに乗ってたくさんあゆみさんとおばさんにさよならをした。

「ちゃんと掴まってて」
「は〜い ♪」

そう返事をするとバイクが走り出したからぎゅっとれいさんの身体にしがみついた。
ハルキじゃない人にバイクに乗せてもらったのも…ハルキじゃない男の人に掴まったのも初めて…
ハルキと違うバイクと…背中と……

あ…またハルキとバイクに乗りたくなっちゃった…帰ったらハルキにお願いいてみよ〜っと♪


「真白ちゃんこっちでいいのかな?」

聞こえる様に大きな声で叫ぶ。

「うん!こっちーーー!!」

負けずと真白ちゃんも叫ぶ…何だか迷子を家に送ってるみたいだな…
思わず笑いがこみ上げてくる。
しばらく走ると視界にマンションが入った。

「あそこ?」
「うん!あ!」
「ん?」

見ればマンションの道路に面した入口に誰か立ってた。
明らかにこっちを気にして…オレのバイクに気づいた。

「ハルキ〜〜〜〜♪」
「真白!?」
「真白ちゃん、ちゃんと停まるから待って!」
「うん!」

そう言わなければ今直ぐにでもバイクから飛び降りそうな勢いだ。
きっと…それだけ彼の傍に行きたいんだろうな…

ちゃんとバイクを停めてもう大丈夫と真白ちゃんに合図を送ると
ぴょん!と飛び降りてヘルメットを被ったまま彼に飛び付いた。

「いてっ!」

ドカッ!っと彼の胸にヘルメットが当たる…真白ちゃんお構い無しか?

新婚だからか?
新婚ならこんな風にオレが帰って来たら歩はオレに飛びつ…かねぇよな…
俺は思わず、仲良し夫婦を目の前にして肩を落す。


「真白ヘルメット取れ。ぶつかる。」
「あ…ごめん。へへ…」
「あの…どなたですか?」
「え?」

旦那がちょっと怪訝な顔でオレを見てる…
そうだよな…自分の可愛い嫁さんがこんな見ず知らずの男のバイクの
後ろに乗ってご帰宅じゃ気分も悪いだろう。

「初めまして。歩の知り合いの者です。
遅くまで真白ちゃん引き止めてしまいましてすみませんでした。
1人で帰すには心配だったので送って来ました。ご心配お掛けしました。」
「あ…いえ…逆にお手数お掛けしてしまって…
オレが迎えに行けば良かったですね…すみません。」
「いえ…」

って確か旦那にはチョコ作るの内緒だったよな…と思い出して、それ以上は口を閉ざすことに決める。

「ほら真白からもちゃんとお礼言って。」
「にゃ?」
「ああ…そんな良いですよ…じゃあ真白ちゃんまた歩と遊んでやって」
「は〜い♪また遊びに行きます〜♪おばさんともまた会いたいです。また一緒に…」
「一緒に?一緒にって何かしたのか?」
「へ?んーーあのね…」
「ゲッ…ゲームです…ゲーム!皆でTVゲームに嵌っちゃって…」

真白ちゃ〜〜〜ん!自分でバラしてどうする……焦った…

「そうですか…良かったな真白楽しめて。」
「うん!楽しかったよ ♪」

にっこりと微笑む真白ちゃんを見ながら、俺は内心ヒヤヒヤとしながら、引き攣った笑みを浮かべた。

「じゃあオレはこれで…」
「ありがとうございました。」

そう言って2人で頭を下げられた。
真白ちゃんは旦那がクイッと頭を押さえてたけど…

まあ歳はオレとそんなに変わらないくらいか?
クセも無くて…でも真白ちゃんが心配で可愛くて仕方ないってとこかな?

大きく手を振ってくれる真白ちゃんに見送られてオレはバイクを家に向かって走らせた。