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Shiina&Eiji&Airi 01



【 珱尓&愛理 】


「くそぉ〜〜〜ルイさんめぇ…覚えてろよ…」

無理矢理参加させられた刑事課のメンバーのクリスマスの飲み会…
行ってみたら署の交通課と庶務課とその他もろもろの女の子達が先に盛り上がってた。

騙されたぁーーーーー!!!!

何人かの男共もいたけどオレと内藤さんが店に入った途端女の子達に揉みくちゃにされた。
内藤さんもそうそう署の女の子と一緒に飲むなんて事しないからここぞとばかりに絡まれてる…
結構人気があるんだよな…

オレとしてみたら今夜だけは 『 ザマアミロ!』 と言いたい。
人の恋路の邪魔するからだ!なぁんて思ってたら…

「今ザマアミロとか思ってるんだろ?椎凪君…」

「えっ!?いやぁ〜そんな事これっぽちも思ってないです…はい…」

鋭い突っ込みされた…流石内藤さん!

もうその後は訳が分からないほどの盛り上がりだった。
これがみんな警察官だなんてバレたらどんな非難中傷されるか
分かったもんじゃないくらいの騒ぎ様だ…みんな欲求不満なのか??

「椎凪さぁ〜ん飲んでます?」

「え?ああ…飲んでるよ。」

この娘は確か庶務課の娘だったかな?
普段はメガネを掛けてて…真面目そうに見えたのに…今はどう見ても酔っ払って…
メガネも掛けてないし…服は自分で乱したのか勝手に乱れたのか…
胸元が見えそうな見えなさそうなくらいボタンが外れてる。

「君こそ大丈夫?えっと…」
「早瀬ですっ!!!」
そう言って敬礼された…何で敬礼??
「ああ…早瀬さん…ちょっと休んだ方が…」
何だかオレの身の危険を感じてそう彼女に勧めた。
「大丈夫…れす…はい!」
「………そう?」

どう見ても大丈夫じゃないと思うけど…ここは早々に退散しようと決めた。
もともと参加する気なんて無かったし一応1時間近くはいたんだから義理は果たしただろう。

「え?椎凪さん帰るんれすか?」
帰ろうとしたのを気付かれたらしい。
「うん…ちょっと用事が…」
「ダメれすっ!!」
「 !!え?ちょっと…!!」
がばっと抱きつかれた!
「せっかく一緒にイブの夜を過ごしてるんれすよ!帰るなんてひろい!!」
思いっきり顔を近付ける…ちょっと…近いって……
「……で…でもオレにも約束が…」

別に女の子に抱きつかれても何とも思わないが…こんな状況じゃちょっと面倒な事が起こりそうな…

「ちょっと!あんた椎凪に何してんのよっ!!」

既に出来上がってるルイさんがオレに気付いてそう叫びながら近付いてくる。
来なくていいって…疫病神なんだから…

「な…何でも無いって…酔ってるだけだから…騒ぐなよ。」

「椎凪さんもう帰るって言うんれすよっっ!!だから引き止めてるんれすっ!!」
オレに抱きついたままそんな大きな声でチクるなっっ!!
「なにぃ〜〜〜帰るれすって!椎凪っ!!」
「もう十分だろ!!帰るよっ!!」

ルイさんには強気だ!何だかシャクに障ったから!!
しかも呂律廻ってないじゃないかっ!相当酔ってるな…だから絡まれる前に帰るんだよ!

「生意気っ!!!ぶちゅっ!!!!」

「 !!!! 」

「きゃぁ〜〜〜〜!!!」
「うおっ!!」

あちこちで歓声と奇声が上がる。
抱きつかれたから両手が塞がっててルイさんのキスを避けれなかった!!
がっしりと顔を掴まれて思いっきり口にキスされた!!!

「んーーーーーー ♪ ♪ ぷはぁ!!満足っ!!!」

しばらくしてからルイさんがオレから離れた。


「………こっ…のっ…疫病神の酔っ払い女っ!!!何すんだっ!!何が満足だっ!!!」


流石にオレは怒りが頂点だ!!!こんなに同僚が見てる目の前でなんて事すんだっ!!!
この酒癖悪い酒乱のキス魔めっ!!

「君もいい加減離れろっ!いつまで引っ付いてんだ!!」

オレも段々気を使ってられなくなっていつまでもオレに抱き付いてる娘にそう言い放つ。

「瑠惟さんだけズル〜〜〜イ!!わらしもっ!!」

「はあ?何言って…」

そう言ってオレの膝の上に座り直す始末…ふざけんなっ!!!

「あ!早瀬だけズル〜イ!!」
「は?!」

何だか周りからそんな声が聞えて来る…まさか…


「今夜はイブで特別らものっ!無礼講で椎凪に何してもあたしが許すわよぉ〜〜〜 ♪ ♪ 」


ルイさんが片手を高々と上げてそう宣言する。
勝手な事ほざいてんじゃねーーーーっっ!!

「ちょっ…ちょっと待て!ふざけんなっ!ルイさんっ!!!」

「これでしばらく合コンのお誘いゲットだわ ♪ ♪ フフ ♪ 」

そうルイさんが小さな声で囁いてニンマリ笑ったのを見逃さなかった!!

「ルイさん!!!またオレをダシに使って合コンの約束したんだろっ!!!この馬鹿女っ!!!」

「あっらぁ〜〜何の事かしらぁ〜〜〜 ♪ ♪ 」

ルイさんの勝ち誇った顔……一生忘れないぞっ!!!

「いいね…椎凪君モテモテで…」

笑い堪えて…内藤さんまでっ!!恨んでやるっ!!!


「……ちょっと…マジ…いい加減に……」

ワサワサと女の子達が纏わり付いて来る…

くっそぉ〜〜〜〜〜〜っっ!!!こいつら調子に乗り過ぎだろ!!
欲求不満もいい加減にしろっ!!他に相手探せっ!!!オレに触んなっ!!!

ルイさんめぇ〜〜〜〜〜絶対許さねぇ!!!!覚えてろっ!!!!


そんな事を思いつつ…流石にコレだけの人数を張り倒すわけにもいかず…
一応自分の身体を庇いながら揉みくちゃにされるのを耐えた!




「…まったく…散々な目に遭った……」

仕方なく女の子達が満足するまで大人しくしてた。
流石に唇は許さなかったが頬ぐらいは我慢した……この…オレがだ!!クソッ!
しかもせっかく手に入れた『舷斗』のサインまでも危うく奪われる所だった。
服もヨレヨレになるし何気に引っ掻き傷もある…耀くんに何て言えばいいんだ…
仕方ないから正直に話すしかないか…はぁ…気分が重い……

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

「ん?メール?」

モタモタと携帯を出すと…
「あっ!耀くんからだ!!」

メールには慎二君の所じゃなくて慎二君の家の近くのいつも立ち寄る本屋で待ち合わせだって ♪

「分かった〜直ぐ行くから ♪ ♪ 」
オレはそう返事を出して本屋に向かう。

ああ…あとちょっとで耀くんに会える!!オレは一気に気分上昇!!
耀くんに会えたら有無も言わさず耀くんを抱きしめて癒させてもらうんだ!!
ああ〜〜〜早く耀くんに会いたい…


「やっと見つけた!!」

「え?」

そう言われて腕を掴まれた。
見れば髪の長いオレより大分背の低いホントに女の子と言える子がオレの腕を掴んで
なおかつ腕を組んで来る…なんだ??

「あの人達しつこいのよ!あなたと待ち合わせしてるって言ってるのに信じてもらえなくて…」

「は?」

女の子の視線の先には酔っ払ったサラリーマンの男3人が戸惑った顔でこっちを見てた。
スーツにネクタイ……ご苦労さんだね…
ああ…そっか…そう言う事…まったくクリスマスだって言うのに……
どいつもこいつもオレに迷惑ばっか掛けやがって…

「オレの彼女に何か?」

面倒くさかったけどこの場から立ち去るのも面倒だった…
だから手っ取り早く 『 オレ 』 でそう言った。

「いや…ごめんごめん…なんだ…本当に彼氏待ってたんだ…」

そう言いながらアタフタと逃げる様に立ち去って行った。
まったく…大人の自覚無いのか?

「ありがとう。助かったわ…もうホントしつこくて!」
「じゃあ感謝の印にオレに付き合ってもらおうか。」
「え?…あ…」
真面目な顔で見下ろしてギュッと彼女の腕を掴んだ。
「じょ…冗談でしょ?」
「さて…どうかな?」
じっとお互い睨み合ってた。

「冗談だよ。オレ浮気なんてしないもん。それに君みたいなガキンチョ相手にしないし。」
「失礼ね!こっちだって浮気なんてしないんだから!!」
「じゃあこんな時間にフラフラしてんじゃ無いよ。お子ちゃまは家で大人しくしてる時間だ。」
「お子ちゃまって…さっきから失礼ね!」
そう言ってオレを見上げて睨んだ…結構気が強いのか?
「だって君未成年だろ?」
「あら…言い当てられたの久しぶりだわ。これでもギリギリハタチには見られるのに。」
「高校生?」
「違うけど…18よ。」
「ふ〜ん…とにかくもう帰りな。そんな遅い時間じゃないけどまた絡まれるよ。
今夜は酔っ払いも多いし…」
「あら今度は心配してくれるの?」
「さっきのは誰もが良い人なんかじゃないって教えてあげたの!」
「あらそれはどうも。でも帰る気なんかないわ。これから恋人のお迎えなんだもん。」
「こんな時間に?しかもこんな繁華街を女の子1人で歩かせるなんてなんて彼氏?
オレなら絶対こんな時間にこんな場所歩かせない。」

深夜とも言えないがもう10時を廻ってる…
耀くんは一唏と應祢君が本屋まで送り届けてくれるから安心だけど…

「彼には内緒なの。彼はこんな時間に迎えになんて来なくて良いってうるさい位に言うんだけど…
もの凄い心配性なんだ。保護者みたいに…」
「何で言う事聞かないの?」
何でオレこの娘とこんな話し込んでるんだ??
「だって…今夜はイブなのよ!!初めての2人のイブなのに…
珱尓さん仕事で…しかも今夜に限って遅番だし…だから帰りくらい一緒に帰りたいの!」
「………怒られないの?」
「う〜ん…ちょっと心配……だけどいつもの事だから!許してくれると思うわ。珱尓さん優しいから…」
「……ふ〜ん…」

何だか…オレこの娘と気が合いそうな気がした。

「あ!急がなくちゃ!珱尓さんお店出ちゃう。」
「仕方ないな…オレがその店まで送ってってやるよ。」
「え?なんで?」
「何でって…また絡まれない様にだよ。オレがそんな事するなんて珍しいんだぞ。」
「やだ…まさか本当にあたしに惚れたとか?」
「アホかっ!さっきも言っただろ!オレは浮気なんてしないの!オレだって待ち合わせてんだから。
だからほら!サッサと行く!!」
「え?じゃあ良いわよ…悪いもの…」
「いいから!ちょっとくらい遅れても怒る様な人じゃないの。耀くんは!」
「ようくん?あら…そっちのご趣味?」
「え?ああ…違くて…オレがそう呼んでるだけ…ちゃんと女の子だよ。
君なんかより数億倍も可愛いね。」
「んまぁ〜〜〜失礼ね!珱尓さんだってあなたより数億倍もかっこいいんだから!!!」
「じゃあそのオレよりも数億倍かっこいい彼氏の所に送り届けてあげるから…どこ?」

「……ここ真っ直ぐ行った所の本屋。」

「え?」

そこは…オレも待ち合わせしてる本屋だった。