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Shiina&Eiji&Airi 02



「椎凪もう来るかな…」

オレは椎凪を待ちきれなくてお店の外で歩道を行きかう人を眺めてる…
一唏と應祢君は先に帰ってもらった。
だって『TAKERU』のパーティーでも何だか色んな人に話し掛けられて…大変そうだったし…
疲れてたみたいだから…椎凪が来るって言ってやっと納得してもらった。
もう普段椎凪が2人を当てにし過ぎてるんだよ…少し椎凪に言っておかなくっちゃ!

今日は2人でイブをゆっくり過ごすのは諦めてたんだ…
だから椎凪と一緒にこのイルミネーションで飾られた街を一緒に歩けるだけでもオレは満足で…

「あれ?あなた…」
「はい?」

横から声を掛けられた…誰??ちょっとオレの心臓はドキドキ!!

「いつもウチのお店に来てくれてる方ですよね?」
「え?」
良く見ると…お店のエプロンはしてないけど…見覚えのある男の人…

「あ…あなたこのお店の…」
「はい。何度かお店でお話した事もありますよね?一緒に本を探した事もあったかな?」
「はい。その時はお世話になりました…」

何人かいる店員の中でとっても優しい感じの人で…本当に優しいんだけど…
何度か話した事がある店員さんだった。

「何かお困り事でも?」
「いえ…あの…待ち合わせしてて…なので大丈夫ですから…お気遣い無く…」

そう言ってオレはペコリと頭を下げた。

「そうですか…でもまだ迎えに来て無いんですよね?」
「はぁ…でももう此処に向かってるってさっきメールがあったから…」
「そうですか…じゃあその方が見えるまで一緒に待ってます。」
「え?あ…そ…そんな大丈夫ですから!!」
オレはブンブンと手を振って大丈夫と言うのをアピールしたんだけど…
「すいません…性格なんです。僕すごい心配性で…こんな遅くにいくら店の前と言っても
女性が1人で立ってるなんて心配で…」
「あ…ならオレ店の中で待ってるんで…」
「…!?あの…」
「はい?」
「何で自分の事 『 オレ 』 なんて言うんですか?…ってハッ!!ごめんなさい!僕失礼な事…?」
そう言って慌てて自分の口を塞いでた。
「ううん…そんな事無いです…ちょっと色々あって…それで…癖で直らないんです。」
「いや…その…責めてるわけじゃ…ただ…可愛い方なのでオレなんて言うの勿体無いかなぁ…って」
「え?」
「あ!!ごめんなさい!!別にそのいやらしい気持ちで言ったんじゃなくて…」
「……ありがとうございます…」
「……はぁ…そう言って頂けると……本…好きなんですか?」
「え?」
急に話題が変わってオレはビックリで…
「いえ…いつも長い時間じっくり選んで…必ず何冊か買っていかれるでしょ?」
「…ああ…そっか…見られてたんだ…何だか恥ずかしいな…」
「だから本が好きなのかなって…」
「はい。本読むの好きなんです…家のソファでゆっくり寛いで…椎凪がいつも傍にいてくれるし。」
「しいな…さんですか?」
「え?…!!!!あ…やだ…オレ…」
つい口が滑って…この人に椎凪の事言っても仕方ないのに…恥ずかしい!!!

「恋人…ですか?」

……コクン!

「そうですか…僕の家にもソファがあるんですけど…愛理さんが…
あ…一緒に暮らしてる人なんですけど…愛理さんがそのソファいたく気に入ってまして…
良く2人で座って紅茶を飲みながら色んな話をするんですよ。」

そう言ってこの人もにっこりと笑った…
この人も…その 『 あいりさん 』 って言う人の事がとっても好きなんだ…

「でも…この人が中々僕の言う事聞いてくれなくて……あなたのお付き合いで待ってるなんて
言いましたけど…今夜はイブでしょ?何だか愛理さんが僕の事迎えに来そうで…
本当はそれで帰れないんです…すれ違ったら嫌ですし…」

「連絡取ってみれば?」
「返事が来ないんです。だから余計怪しいんです…
あの人なら僕の言う事聞かずにこんな遅い時間でも僕を迎えに平気で外に出るから…
女の人の1人歩きなんて危ないじゃないですか!そう思うでしょ?」
「…はぁ…」
「あ!すいません…ついムキになってしまって…」

そんな話をしてたら…

「耀くん!!」
「珱尓さん!!」

「わっ!」
「うわっ!」

椎凪がオレを抱きしめて頬擦りする。

愛理さんが僕に抱きついて僕の胸に頬擦りする。

「会いたかったよぉ〜〜〜耀くんって誰?こいつ?」

そう言って隣に立ってるここの店員さんを見るなり椎凪が脅す。

「珱尓さん言う事聞かなくてごめんなさい。って誰?この人?」

「ん?」
「え?」

椎凪と一緒に来た女の子がお互いを見てオレ達を見た。

「この人が?」
「そう!珱尓さん。あたしの彼!!」
すんごく嬉しそうだけど…どんだけ年離れてるんだ?
「あの…本当にこの娘と?」
「え?あ…はい…」
「失礼ですがお幾つ?」
「はぁ…あ〜…36です。」
「………………」
頭の中でパチパチと計算した。

「えっ!?まさか援交っっ!!!」

「ちっ…違いますっっ!!」
「し…椎凪!失礼だろっ!!!」
「え…?いや…だってあんまりにも年が離れるもからさ…キッカケがそうなのかと…」
「いいんです…良く言われますから…」
「言っときますけど珱尓さんからじゃなくてあたしから猛烈に迫ってお付き合いする様になったんだから!」
「へえ…君から…ファザコンとか?」
「違うわよっ!!」
「もう…椎凪が来るまで一緒に待っててくれたんだよ。」
「そうなの?すいません…気を使って頂いて。」
「…いえ…」

珱尓さんがそうお礼を言われてるのに…何だか上の空。
だって相手の男の人はここに来て恋人に会ってからずっとベッタリと
彼女の事を後ろから抱きかかえてるんだもん…

彼女も嫌がらずに…でも…人前って思わないのかな?
珱尓さんはそう言うのはうるさいから…それにすごく照れるし…

「仲が…よろしいんですね…」
「え?」
「は?」

珱尓さんが遠まわしにそんな事を言う…気になるんだろうな…

「ああ…オレ今日ずっと耀くんに会いたかったから…癒して欲しくて…引っ付いてます。はは…」

「はあ…?」
あ!珱尓さんを黙らせた。

「本当に…ずっと会いたかったから……」

そう言って彼女の頭に自分の頬を乗せて気持ち良さそうに目を瞑ってる…

「じゃあホントお世話になりました。お互いよいクリスマス・イブを…じゃあね。」

「…さよなら…」

そうお互いに手を振って…
彼は彼女と手を繋いで歩いて行く…ちょっと歩くと彼の方から彼女にそっとキスをしてた…

「……いいな…」
「はい?」
「羨ましいって言ったの。男の人の方からあんなにイチャイチャしてくれるんだもの。」
「僕も…家ではそうしてるつもりなんですけど…ね…」
「家じゃなくて外で!」
「………それは…無理ですね。今の所そう言う予定は無いです。」
「だからあたしからするしかないのよね……はぁ…」

「そんなにガッカリしなくてもいいじゃないですか。
それに…危ないじゃないですか!こんな時間に出歩いたら!!
いつも言ってるでしょ?僕の事は迎えに来なくていいって…
これで愛理さんに何かあったらと思うと…もう…」

「ごめんなさい…でもね!」
「でも?」
「今日はクリスマス・イブなのよ!2人の…初めての!!!
1人で部屋で待ってるなんて嫌だったの!それでもダメ?
珱尓さんと一緒にこの街を歩きたいって思ったらダメなの?」

「……愛理さん…」

「………約束破ったのは…悪いと思ってる…」
「じゃあ…今夜は特別に無かった事にしましょう。」
「え?」
「何だか…つまらない思いをさせていまったみたいで…ごめんなさい。」
「…あ…そんな…あたし珱尓さんを責めるつもり……」
「そんな事思ってませんよ…でも確かに1年に1度ですもんね…こんな夜は…」

「あたしね…クリスマス嫌いだった…」

「え?」

「クリスマスだけじゃない…誕生日も…嫌いだった…早く大きくなりたいとは思ったけど…
お祝いする様な特別な日は嫌いだった…だってあたしには関係無い事だったし…
周りだけが浮かれてるの見るのすごく嫌だったし…自分がミジメだったから…
親もいなくて…親戚には厄介者扱いだったし……」

「愛理さん…」

「でもこれからは珱尓さんと一緒だから…全部好き!ふふ…」

「…そうですね…これからは2人でどんな日でもお祝いしましょう。」

「じゃああたしの誕生日はお祝いに外で皆が見てる前であたしにキスね!」

「は??何言ってるんですか??意味が分からないんですけど??」
「お祝いだもの。当然でしょ?」
「………考えておきます…さ!帰りましょう。何処から寄って行きましょうか?」
「まずは2人でしばらく歩きたい…手を繋いで…」
「いいですよ。」

「 あっ!! 」
「何ですか?」
「そう言えばあの男の人に酔っ払いに絡まれてたの助けてもらったんだった!」
「え?酔っ払いに…絡まれたんですか?」
「うん……って…あっ!!!」
「……やっぱり…危ない目に遭ったんじゃないですか!」
「ごめんなさい…」
「…なんだ…じゃあお礼…言いそびれちゃいましたね。」
「…うん…」
「あ!でも彼女の方が時々お店の方に来てる方なので今度お会いしたらお礼を言っておきます。」
「そうなんだ…」
「じゃあ行きましょうか…」
「はい。」

そう返事をして差し出された珱尓さんの手を握った…

大きくて…暖かくて…あたしに安心をくれる手……手を繋ぎながらそのまま腕にもしがみつく。

見上げると珱尓さんがにっこりと笑ってくれてて…

あたしにとって…最高に楽しくてうれしいイブの夜が今……始まった……