05





有無も言わさず強引にみかげを家に連れて行った。
みかげも抵抗したりしなかった…と言うかさせる暇を与えなかった。

直接自分の部屋に連れて行く。

「どうぞ。」
「あ…はい…失礼…します…」

遠慮しながらみかげが部屋に入る…
女を自分の家に…オレの部屋に連れて来るなんて小学校以来か?

部屋は8帖ほどで机にベッド…ワォークイン・クローゼットだから結構広く感じる。

「…意外と綺麗だね…」
「そう?」

「もしかして…怒っ…てる?」

やっと聞けた…何だかさっきからそんな態度だから…

「怒ってる?…うーん…そう…怒ってるかな…でもムカついて怒ってるわけじゃない…
何だろ…自分の思い通りになってないから?」

「自分の思い通りに…?」

「そう!自分の彼女が次の日存在しないってわかったらどう?」
「転校前に…学校見学しておこうと思って……そしたらあんな事に…」
「1週間も連絡も取れない連絡してもこない…オレ女の子にそんな事されたの初めてだよ。」

「……それは…その…」

どうしよう…言い訳…考えてなかった…
まさか素直に自然消滅狙ってたなんて言える筈もないし……

「まあ知り合ってすぐだったから仕方無いって納得するしかなかったけどね。」

まさか仲間内で幽霊疑惑まで持ち上がったなんて言えるはずも無く…

「そう?」

なんだよ…顔がホッとしてるじゃねーか……まったく。

「ホッとしない!確かに急に付き合う事になったけどちゃんとお互い納得して決めただろ?
オレはみかげの彼氏でみかげはオレの彼女なんだから。自覚しろ!」

「……あ…あの…その事なんだけど……」
勇気を出して切り出した。

「却下!!」

「ええっっ!?まだ何も言って…」
「言わなくても分かる。無かった事にしたいって言うんだろ?」
「え!?…あ…うん…だって…」
「だって?」
「だってあなたの事何にも知らないのに付き合うとかって…出来ないし…それに…」
「それに?」
「別に誰かと付き合うなんて…今まで考えた事無かったし…
男の人と付き合うなんて興味無いもん…あの時は勢いと言うか…
その場の雰囲気と言うか……」

モゴモゴと口篭る…
都合の良い事言ってるわかってる……でも…

「まったく……はぁー!!」

思いきり呆れられて溜息つかれた。

「やっぱ既成事実作った方が早いか?」

「え…?」

そう言って見つめられた瞳は…あの時と同じ…妖しく光ってる…
どんなスイッチが切り替わってるんだろう??

「何で…何でそんなに私と付き合いたいと思うの?私の事何も知らないでしょ?
それにつまんないよ…きっと…」
「そう言う問題じゃない。」
「じゃあ…どう言う問題…?」
「インスピレーション。」
「イ…インスピレーション…?」

「あの日あの時間あの場所じゃなきゃオレはみかげを受け止められなかったし
みかげだってあの時オレがいなかったら大怪我だったはずだろ?」

「うん…」

「どんだけの確率だと思う?」

「……………」

確かに…すごい確率…

「そんな出会いに意味が無いわけがない。」
「え?」
「直感!…びびっと来なかった?目が覚めてオレが目の前にいてさ。」
「びびっとって言うよりびっくりだった。だって…いきなり…キスしてるから……」

「オレはなかった事なんかにしない…って言うかしたくない。」

とっても真面目な顔と眼差しで見つめられてる…
あの時もこの顔に惹かれたのも確かで……

「あっ!!」
しまった!!!ぼんやり見つめてたら床の上に押し倒された…!!
両腕を押さえ付けられてびくともしない…

「今度は止めない。」

「え…ちょっと…ウソでしょ?」
「ウソじゃない…オレのモノにしとかないとまたいなくなると困る。」

そうもう二度とあんな失敗はしない。

「あ…やだ…もういなくなったりしないから…やめ……」
「却下!それに男の部屋に来たって事はそう言う事込みでOKって事。」
「そんな事ないっっ!!手繋いだまま部屋まで連れて来たのそっちでしょ!!」
「!!」

……確かに…帰る事を許さなかったんだよな…

「……オレの事……キライか?」

生まれて初めてそんな言葉が出た…
今までそんな言葉女相手に言った事無い。

「離してくれなかったらキライになる。私に合わせるって言ったじゃない…
あなたも付き合うの初めてだから2人で勉強しようって…」

また…都合のいいこと喋ってる…それを理由にするなら…それって…

見上げられた瞳で射貫かれた!!そう…この顔なんだよな…
確かにそう言った…あの時は普通に次に日から付き合えると思ってたからで…
でも1週間会えなくて…もう2度と会えないと思ったら…

やっぱどうしてもこいつ…今欲しい…でも…

「力づくで女の子を抱こうなんて男としてつまらんな…」

「 「 !!! 」 」

入り口に男の人が腕組んでくわえ煙草で立ってる!

「快…そんな所で何してんだ?」
「珍しくお前が女の子連れて来たから好奇心で。
しかも嫌がってるのを無理矢理なんて…兄として見過ごすわけにはいかん。」
「……どうせ話しのネタにでもしようと思ってんだろ?」
「流石弟!だがあまりにも刺激が無さ過ぎて創作意欲も湧かん。
もうちょっと修業して経験積んでこい。」
「高校生の弟に言う台詞か?」
「大丈夫彼女?ガサツな弟で悪いね。後で再教育しとくから…」
「…………」
「いいから出てけよ…邪魔すんな。」

「何?何??芫の奴がどうしたって?」

また1人増えた。
ちょっと髪が長めの…服装でいかにも見た目『ホスト』とわかる人…

「…お前まだ仕事に行ってなかったのかよ…」
彼がウンザリした顔で入り口を見つめてる。
「まだそんな時間じゃ無いよ。はぁ〜オレ教えただろ?もっとムード大事にしろって…」
「……うるせえ…はぁ…まったく…」

溜息をついてみかげの上からどいた…もうそんな雰囲気じゃない…
まったくウチの兄弟ときたら…気の利かない…

「あ…あの…」

みかげが顔を真っ赤にしてオレとドアの前に立つ2人を交互に見てる。

「…オレの上の兄貴…快と悠…」

「え?あ…あの…はっ初めまして…吉泉みかげです。」

挨拶はちゃんとしなさいってお兄ちゃんにきつく言われてるもんだから…
こんな状態なのに慌てて正座して挨拶をした。

「可愛いね。君…いくつ?」
ホストらしき男の人が私の前に屈んで聞いて来た。
「あ…16です…」
「高1?」
「はい…」

それから色々質問攻めに合って…
知らないうちに…彼の部屋でお茶会が始まってた……