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「やっぱり休日だと混んでるね…」

「………ホント…すげぇな…」


約束どおり今日は芫くんと初デートの日。
学校のお休みの土曜日だけど元々人気のあるテーマパークだから覚悟はして来たけど…

その予想を上回る人混みぶり!
天気も良いから余計なのかな…私晴れ女だし!!

「芫くんも晴れ男?」
「はぁ?…どうかな?まあ小学校の遠足は雨降った事無かったからそうなのかな?
それか誰か晴れ男か女がいたんじゃないの?みかげは晴れ女なんだ。」
「そうだよ〜〜〜 ♪ ♪ 嬉しい?」
「そうだな…初デートが雨じゃ何だか良い気分じゃ無いかな…」
「良かったぁ ♪ ♪」
「ほら!行くぞ。今日は根性入れて歩かないと…多分乗り物乗るだけでも一苦労だろ?」
「うん。」

そう言っていつもの様に芫くんと手を繋いで歩き出した。

昨夜からとっても緊張して…だって初めての2人のお出掛けで…
喧嘩しないで……それに…芫くんがつまらないなぁ……って思わなければいいな…
ってずっと思ってた…


初めての2人のデートはみかげの行きたい所でいいって思ってた。
しかし…本当に恋人が行く定番のテーマパークに来るとは思わなかった…

このオレが……ちょっと眩暈がしそうだが…
さっきから喜んではしゃいでるみかげを見てるとそんな気持ちも何処へやら…だ。



「みかげ?」

「………え?…あ…ごめん…ボーっとしてた…」

もう少しでお昼と言う時間…
広い園内を行ったり来たり…しかも1つの乗り物に乗るのに最低1時間は待つから…

「疲れたか?」
「ううん…ちょっとお腹空いたみたい…へへ…」
「じゃあこれ乗ったらお昼にしよう…あともう少しだから。」
「うん。……あっ!」
芫くんが私の肩に腕を回して引き寄せるから…よろけて…抱きついちゃった。
「ちょっ…」
「あのね…こんなの序の口だよ。もっとイチャイチャしてる奴ら沢山いるんだから!」
「…………」

確かに…こっちが赤面するほどのアツアツぶりを見せられたのも何組もいた…
でも…確かに寄りかかってると楽かも……

さっきからちょっと変…
昨夜緊張して寝れなかったせいかな…それとも昨夜からあんまり食べてないから?

「…………」
みかげの様子が何だか変だ…
調子悪いのか?それとも………

オレとのデートがつまんねぇ……とか?マジか??


でも聞けない……
でも…言えない……




「あれ?」
「お!東雲じゃん。何だよお前らもデートか?」

やっと席を取ったレストランの隣の席に同じクラスのいつもつるんでる滝口が彼女と座ってた。

「芫くんのお友達?」
「ああ…同じクラスの滝口。」
「どうも!滝口です。こっちが彼女のさゆりちゃん。同じ学校の2年生。」
「お前彼女いたんだ?なんだこれでつるんでるメンバー半分くらい彼女いるんだな。」
「だな…でも他の奴らうるせぇからちょっと黙ってたんだ…いない奴に申し訳なくて!」
「別に平気じゃん?なんなら彼女の友達紹介してやればいいのに。」
「あんな奴らと付き合いたいなんて思う女子いるのかよ?」
「……そうだな…ちょっとあっちのオーラ出まくってるからな…女は引くか…くすっ。」

そんな話をしながら…何だか芫くん…楽しそう…

「そうだ!今からダブルデートしません?」
「え?」

「 !! 」

みかげがそんな事を言い出した…

「だってこんな広い所で知ってる人に会えるなんてすごい偶然だし私ダブルデートなんて
したこと無かったし!ね!芫くんもいいでしょ?あ…そちらの彼女さんも……」

「俺達は構わんけど…東雲はいいのか?」

「………別に構わないけど…」

「じゃあちょっと一緒に回るか?さゆりちゃん。」
「さゆりも構わないよ ♪ 」

よかった…これなら芫くん…つまらなくないよね…
やっぱり男友達が一緒だと楽しそうだし…それに…私…



それからどのくらい経ったかな…
待ってる間も皆が話してるの聞いて楽しくて時間が経つのが早かった。
芫くんも…楽しんでるみたいで良かった。



「じゃあ俺達行くわ。今度はお互い2人で楽しもうぜ。」
「ああ…じゃあまたな。」
「おう!学校でな。じゃあねみかげちゃん。」
「はい。また…」
滝口さんとさゆりさんが手を振って違うエリアの方に2人仲良く歩いて行った。

「行っちゃったね…」
「ああ……」
「芫くん?」
「…………」

どうしたんだろ?何だか様子が変?
やっぱり2人だとつまらないと思ってるのかな?さっきまであんなに友達と話しも弾んでたし……

「あの……」
「どうする?」
「え?」
「まだ廻る?」
「……え…なに?何で?」
「別に……まだ廻りたいのかなって思ったから。」

「………」
なんで?急にどうしてそんな事言うの?あ…胸がドキドキ…

「!?みかげ?みか………」

「……芫…くん…あれ?」


はれ?景色が…廻る………芫くんの声も…聞こえないよ………




「ん!?」

パチリと目を開けたら綺麗で真っ白な天井が見えた。
「ここ…何処?」
まったく見た事の無い部屋…ってそうだ!!

「大丈夫か?みかげ…」
「芫くん……」
芫くんが心配そうな顔で私の事をのぞき込んでる。
「私……」
「貧血だって…調子悪いならちゃんと言えよ。」
「ごめんなさい…」

やだ…私倒れちゃったんだ…最悪……ドジだな……

「もう少し休んだら帰るぞ。」

「え!?やだ…大丈夫だから…もっと芫くんと此処にいたい…」

「………!!」
「?どうしたの?」
芫くんが何だかびっくりした顔してる…

「オレと2人じゃつまらないんじゃないのか?」
「え?…やだ…なんで?」
「なんでって…だから滝口達と合流したんじゃないの?オレはそう思ってたよ。」
「ち…違うよ!私はその方が芫くんが楽しいかと思って……」
「そりゃ話しくらいはするけどこっちは初デートなんだぜ?何でダブルデートなんだよ。」

「だって……」
「だって?」

「だって私緊張しちゃって……ずっと心臓ドキドキなんだもん!!」

みかげが真っ赤な顔を布団で隠しながら言う。
「は?」
オレは理解不能??
「だから…それが紛れるならって…」
「緊張って…今まで散々2人きりになった事なんてあるだろ?」

「だってそれは学校帰りじゃない…デートとは違うもん!しかも初デートだよ!」

なんだ…わかってんのか…一応は…

「私付き合ったのって芫くんが初めてだから…いつも一緒にいるだけでドキドキしてるんだ…
手を繋ぐのもドキドキしてるしキスなんて心臓止まっちゃいそうな位ドキドキする……」

「みかげ…」
「だから今日も嬉しかったけど…この場所選んだの私だし…芫くんがつまらないなぁ…
って思ったらどうしようって気になって…昨夜からご飯喉通らないし…眠れないし………」
「バカだな…それで倒れてたら世話ないじゃないか………」
「……うん…ごめん…」
「オレがみかげの行きたい所で良いって言ったんだから気にしなくて良かったのに。」

「……だって…芫くんにどう思われるか気になっちゃうんだもん……」

「みかげ…」
何とも可愛い事言ってくれるよなぁ………

「身体は平気なのか?」
「…うん…ちょっと眠ったから…」
「そう…また身体変ならすぐ言えよ。」
「うん……じゃあ…まだ帰らない?」
「ああ…でももう少し休め。」
「うん…あ…最後のパレード見たいな……」
「いいよ。見て帰ろう。」
「本当?ありがとう!」

「クスッ…もう心配かけさせんなよ…焦っただろ。」
そう言ってみかげの前髪をクシャリとした。
ホントだよ…いろんな意味で焦ったんだぞ…

「うん…ごめんなさい……」

そんなバツの悪そうなみかげの顔を見て思わずキスしたくなったけど
すぐ近くにここのスタッフがいたから仕方なく諦めた。

いつもと同じだと思ってたみかげがそんなに緊張してたなんてまったく気付かず…
しかもいつもオレといてドキドキしてたなんて……ホント気付かなかった…
女の子ってそう言うものなのか?何だかオレからみると不思議だ。
オレも多少気にはしてたけど飯が食えないとか眠れないとかは無かった…

…ホント不思議だな。



いつまで経っても相変わらず人は多くて減る気配は無い。
ほとんどが待つ時間に費やされたけどまあ隣にいつもみかげがいるし
知り合ってからこんなに長い時間一緒にいてこんなに長い時間手を繋いでたのも
初めてだったと気付いた。
ちょっと前からイルミネーションが際だって来て男のオレが見ても目を引く光景だ。

「綺麗だよね……キラキラ…」
「ああ……もう緊張してない?」
「…!!え!あ…うん…ご心配おかけしました……やだ…恥ずかしい……」

「クスッ…これってオレ喜んで良い事なんだよな?」

「?」
「だってオレの事が好きって事だろ?」
「!!!…知らない……」
「そっか……そう言う事か。」
「……だから知らないってば!」

ちょっとふて腐れて尖んがった淡いピンクの唇に触れるだけのキスを素早くした。

「!!…芫くんっ!!」
いきなりだったから思いの外みかげが驚いて焦ってる…ちょっと笑える。
「大丈夫…誰にも見られてないよ。」
「ウソ!見られたもん!!」
「暗いし皆周りの方が気になってるって。」
「……もう…」
「みかげ…」
「なに?」
警戒するなって……

「好きだよ。」

「!!!!」

ホント素直…繋いでた手がすぐ強く握られた。

「だから緊張なんてしなくていいんだぞ。」
「……うん……分かってるけど……」
「そんなにオレっていい男?」
「うわっ!なに?自意識過剰?」
「みかげ限定なら自意識過剰でもOKだろ?」
「…………」
「ん?」
「……うん……」

「しかし初デートで彼女が倒れてテーマパークの医務室に運び込まれたなんて
早々いないんじゃない?すごい記念な初デートだ。」
「だからそれは言わないでってば……あ!パレード始まるよ。芫くん!」

そう言って人ごみの最後尾で背伸びしてる。
こう言う時背が低いみかげは大変だな…だからって抱き上げるわけにもいかないし…

「へーしかしホントすごい人だな…迷子になんなよ。みかげ!」
「もう大丈夫だもん。子供じゃあるまいし……」

「離さないでいてやるから…」

「え?」

「この手……ずっと離さないから……だからみかげもしっかりと握っとけよ…わかったか?」

「……うん…わかった…離さないよ……」

それがどんな意味か私はわかってる…
だから繋いでた芫くんの手を強く握り返して…腕にぎゅうっとしがみついた。

「お!」
「え?」

芫くんがそんな声出すから見上げたらニッコリ笑ってる芫くんと目が合った。

「え?なに?」

「やっぱみかげって胸大きいのな。」

「!!!!」

見る見るみかげの顔が赤くなったのが暗かったのにわかった。


「げ…芫くんのエッチ!!やらしい!!せっかくのムード台なしっ!!」



そうみかげが叫んで…繋いでた手を離すとオレの背中をバシン!と叩いた。