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「吉泉も久しぶりに皆と会ったんだな。」

「うん…何だか懐かしいかな…そんなに時間経って無いのにね。」

転校する前に通ってた高校の友達と久しぶり会った。
食事してカラオケに行って…門限のある私を大野君が送ってくれた。

時間はもうすぐ夜の10時になる所…

「あの時さ…」

大野君が色々話てるけど私にはほとんど入って来ない…
だってもう少し歩けばお兄ちゃんも通ってるけど…芫くんが通ってる…予備校が見えるはず…

私はドキドキしてる…

だっていくら送ってもらうだけだって言っても男の子と2人きりなんて…
芫くんが知ったらきっと気分悪くすると思うから…


「大野君…もうここでいいよ。駅も近いし大丈夫だから…」

予備校が見える2つ手前の曲がり角で大野君にそう声を掛けた。
一応…気を使って気分を害さない様に気を付けた。

「そう?駅まで送るけど?」
「本当…大丈夫だから…ありがとう。今日は皆に会えて楽しかった。」
「ああ…そうだな…あいつらも吉泉に会えて喜んでたみたいだし…」
「うん…あ…じゃあ…ね…ありがとう…」
「吉泉!」
「ん?」
歩き出した私を大野君が呼び止めた。
「あの…さ……また…電話してもいい…かな?」
「え?」
「いや…その…迷惑じゃなければ…だけど…」
「あ……」

何となく…そんな事を言われるかなって…思ってた…
今までの大野君の態度と…会話の感じで…

「ごめん…なさい…」
「やっぱダメか…付き合ってる人いるんだ?」
「うん……」
「望み繋げたくて今まで聞かなかったんだけど…意味無かったな…」
「ごめんなさい…」
私はもう謝るばかりで…
「そんな謝るなよ…いない方がおかしいんだよ…前の学校でいなかったから…
ちょっとは期待してたんだけど…」
「…………」
「あ!気にすんなって!きっといるだろうなって思ってたし…」
「え?」
「だって吉泉…前よりも可愛くなったぞ…」
「…………」
「あ!下心とかじゃなくて…ホント…何て言うのか…女らしいって言うか…」
「あ…ありがとう…」
何だか男の子にそんな事言われるの…恥ずかしい……
「……じゃ…元気でな…」
「大野君も…」
「携帯の番号悪用しないし…もしかしてまた集まれたら連絡するからもう少し登録させといて…」
「…うん…」
「ホント気を付けて帰れよ!」
「うん…ありがとう…」

私と大野君は…お互い軽く手を振って別れた…

大野君に 『 可愛い 』 とか… 『 女らしい 』 って言われても…
恥ずかしくて…そんな事無いって思うけど…

もし…同じ言葉を芫くんが言ってくれたら…
きっと私は嬉しくて…冗談だとしても信じちゃうかもしれない…

なんて思った…だから…今夜は芫くんに会いたい…
お兄ちゃんに怒られても構わない…

だって…じゃないと次に会えるのはずっと先だもん…
今日会えなかったらこの後1週間近く会えない…
今だってもう4日も会ってないし声も聞いてない…

2つ目の角を曲がってちょっと先の大きなビルの前に沢山の自転車が置いてある。
そこが2人が通ってる予備校…来るのはこれで2度目…
1度目は芫くんが通う前に2人で見に来たから…
芫くんは乗り気じゃなかったけど私がどうしても見たいって言って連れて来てもらった…
『 暇人だな… 』 なんて芫くんは言ってたけど…来てて良かった。

「驚くかな…って言うか芫くんいるのかな?まだ帰ってないよね…」

このおびただしい自転車の数だからまだ中には沢山人がいるとは思うけど…

芫くんが自転車だったら自転車探すのに…って…
「芫くんが自転車?……………ぷっ!!似合わない〜〜〜!!」
勝手に想像して1人で笑ってた。

ちょっと中を覗き込ませてもらった…
流石に中に入るほど図々しくは無いから…

「あ!」

なんてタイミング!芫くんがこっちにやって来る!!
良かった!帰る所らしいから一緒に帰れる ♪ 芫くん驚くかな?

そんな事を考えながら少し戻って入り口からちょっと離れた所で待ってた。

私が立ってたらビックリするよね…ふふ ♪ 彼女からのサプライスだよ〜

「あれ?何で出て来ないの?」

あれから5分くらい経ってるのに…一向に芫くんが出て来る気配が無い!

「気付かれた?……まさか…ね…」

あの距離でしょ?そんな亀の様な足のはず無いし…どうしたんだろ…?

「あ……!」

やっと出て来た芫くんは女の子と一緒だった。
何となく親しそうで…女の子の方が芫くんに積極的に話し掛けてるみたいな…

「 !! 」

芫くんが腕を掴まれた!何?痴話喧嘩???
って痴話喧嘩って…私と芫くんの間の事じゃ?って…ああ…もう訳がわからない!!

でも掴まれた芫くんはその手を振り解こうとしない……

とにかく見ちゃいけないものを見た気がして…
本当なら芫クンの傍に言って声を掛ければ良かったのに…
私は何故か来た道を駆け戻って駅に向かってた……


ひと目顔を見ようなんて……思わなければ良かったのかな……