09





新しいマンションのリビングでソファに2人で座ってる。
左右の端と端に……

「…………」

何だか緊張して息が詰まって心臓がドキドキする。
痛いくらいに………

「あ!荷物片さなきゃ…!!」

そう言ってそそくさとリビングを出て行った。
1つ部屋を貰った…それでも12畳ある。
ここで生活しようかな…ベッドだってあるし……

「言っとくけどここは耀の部屋じゃないからな!」

「え?」

いつの間にか彼がドアを開けて立ってた。

「この部屋は耀の荷物を入れておく物置だからな。
ベッドがあるからってここで寝ようなんて思うなよ。」

「物置なんてヒドイ!みんなオレの大事なモノなのに!!」

「だから全部持って来てやっただろ?ここで寝るなって言ってるだけだ?
寝るのはあの寝室のベッドでオレと寝るんだからな。わかったな!」

また命令口調だ……

「フン!」

「!!!…もしここのベッドで寝たら即壊して捨てる!!」

「なっ……横暴!!」
「使わなきゃ済む事だ。」
「……君ってなんでいつもそうなの?もう少し優しく出来ないの?」
「……優しく…してるだろ…」
「どこが?」

「ちゃ…ちゃんと耀を迎えに行ったし新しいマンションも用意したし耀の荷物だって
全部持って来てやっただろ?」

「それって全部オレを此処に連れて来る為でそれは全部君の為じゃないか!
オレの為じゃない!君はオレの気持ちなんて何にも考えて無いんだ!!」

「!!ちょっと待て!!さっきからお前オレの事君!君!って言ってないか?」
「?当たり前だろ!オレ君の名前知らないもん!」
「なっ!!昨夜教えてやっただろ?」
「ええ?!いつ?」

「昨夜ベッドで感じまくってる時!記憶しとけって言っただろ。」

「!!し…知らないよ!!そんな時言われたってわかるはず無いだろっっ!!バカじゃないの?」

「!!!はあ?何言って…!!…」
「?どうしたの?」
「…何でもない。」

そう言うとさっさと部屋から出て行った。

「 ? 」


気になってリビングに行くと…いない…
「いた…」
寝室のベッドに寝転んでる…でも近寄るのは止める。危ないから。

「どうしたの?」
「……耀はオレの名前がわからなくても知りたいとも思わないんだな…」
「それは…そんな事…ないよ…」
「ウソだ。聞いて来なかった。」
「………だって…色んな事がありすぎて…聞く暇無かった…」
ちょっとは本当の事だ。
「……はぁ…」
ムックリと起き上がってベッドの真ん中で胡座をかいて座る。
「なら今聞いて。」
「………」
もう…何イジケてるんだか…

「君の名前は?」
でも聞いてあげた。

「しいな…」

「しいな…?」
「ああ…それがオレの名前。」
「良い…名前だね。」
「そう?……耀…此処に来い。」
「……やだ。」
「なんで?」
「いやらしい事するから。」

「それが半獣飼う為の契約方法なんだから仕方無いだろ。」

「飼い主…オレが初めてじゃないんだろ?」

「ああ…」
「じゃあ…他の飼い主とも?」
「ああ…」
「………」

「半獣は…見た目人間と変わらないだろ?この耳としっぽがなきゃ人間なのに…
言葉もわかるし話せるし半獣によっちゃ人間より遥かに頭の良い奴だっている。
なのに…人間には認めてもらえない…人間と同じ事をするには人間の許しがないと何も出来ない。
待遇が良いのはわかってる…でも…それは珍しい生き物で…ペットだからだ。」

真っ直ぐオレを見つめてそんな事を言う…あのエメラルドグリーンの瞳で…

でも…今彼の瞳は…とっても悲しい……


「耀…来て…」
手を伸ばされた…戸惑いながらベッドに膝を着いてしいなにスリスリと近付いた。
伸ばされた手に自分の手を置いた。

暖かい…オレと同じ手なのに…人間じゃ無い手……

「あ…」
ぎゅっと腰に腕を廻されて抱きしめられた。

「耀…」
「なに?」

何だか弱々しい声で…泣いてるのかな…ちょっと可哀相かな…
なんて思ったからオレの身体にうずめてる頭をそっと撫でてあげた…

「捕まえた!」
「え?」

オレを見上げた顔は悪戯が上手くいった悪戯っ子の顔のしいなだった!!

「ちょっと!オレの事騙したの!?」
「耀からオレの所に来たんだからな。拒むなよ。」

「………こ…このおバカァ!!君ってサイテイだっっ!!!」

しいなの肩を掴んで引き離したけどビクともしない!!
「悪いけど時間が無いんでね。」
「時間?」

「契約…させてもらう。」

「え…?それって…しいなに抱かれるって事…?」

そうだよね…そう言う事だよね?
「そうだよ。」
あっさり言われちゃった!!
「や…そんな事しなくてもしいなの事飼うから……」
「ダメ!口約束は認められない。」
「だって…やだ…」

「オレの事が……嫌いだからか?」

「そうじゃない…ただ…そんな事したくないだけ…
しいなの事はちゃんと最後まで責任持って面倒みるよ…飼い主として…
でもだからって…交わるのは…いや……」

「ちゃんとオレの飼い主になる?」

「なる…」

「………」

今までこんな事一度も無かった。
契約を拒むなんて…今までの飼い主はオレと会って目が合った途端から
オレ無しじゃいられなくなってたから…

「耀……」

耀の身体に腕を廻したまま身体を伸ばして耀の顔にオレの顔を近付ける…
頼むから…オレを拒むなよ……

「…ン……ふ…ぁ…」

ちょっと拒む耀の口を優しく舌で愛撫してお互いの舌を絡ませていった。

オレの能力が効かない耀……このオレを拒み続ける耀…
もし…このまま力づくで耀と交わったら…
耀は今までの飼い主みたいに…オレの言いなりになるのか?
今までと同じ様に操り人形みたいに…

初めはそれで良いと思ってた…オレの言いなりでオレと一緒に…オレの傍にいれば…
でも今は…このままの耀と一緒いたい…

交わったらこのままの耀でいてくれるんだろうか……



「ちょっと…もう…やだ…あ……!」
「交わらないんだからこのくらいさせるのが飼い主の義務!」
「絶対違うと思う!!…ン…」

多少オレの能力が効くせいか…キスに慣れてないからか…
抵抗しなくなった耀を簡単に押し倒して裸に剥いた。

「…ン!いたっ!!」

チクリとした感じがしたからチラリと身体を見るとしいなが八重歯の先でオレの身体に傷を付けてる。
これが擦り傷の正体だ!

「ちょっと…それ痛い…」
「あん?……これはマーキングだから…我慢しろ。」
「マーキングって…オレはしいなの所有物じゃないよ!
どっちかって言えばしいなの方がオレの所有物なんじゃないの?オレが飼い主なんだし…」

「…ヘエ〜」

しいながニヤリと笑った…

「なに?」
「オレを所有したいの?」
「…!!そう言う意味じゃ…勘違いしないでよ…」

「…フフ…まあいいけど…最初に言っただろ?世間的に耀が飼い主だって。
でも主導権はオレ!だから耀はオレの所有物!わかったか?」

「全然わかんない!」
「今にわかる。ああ!寝る時は裸な。これ命令!!」
「却下!!!誰が…」
「オレも却下!」
「じゃあ一緒に寝ない!」
「一緒に寝る気はあったのか?ふーん…」
「……」

もう…!!


それからはベッドの上で2人…
と言うかオレだけが暴れて喚いて逃げ回って…
でもあんな怪力に敵うはずも無く…あっさり捕まって
表も裏も頭の先から爪先まで思いきり遊ばれて弄られて嬲られて……




       もうこんな生活…いやだあああーーーーーっっ!!!!