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「………はぁ…」

今朝からため息しか出ない。
目が覚めた途端浴室に放り込まれた。
そこでも散々遊ばれて…オレはぐったり。

『耀は男を知らないくせに感じまくるのな。交わったらもっと感じるんだろうな。愉しみだ ♪ 』

余計なお世話だよ!!
大学まで車で送ってくれたのはいいけど逆に目立つし…
半獣だって言うだけでかなり目立つのにあの容姿だもん…ホントやめてほしい…


「へえ…堂々と送ってきたのか。自分のモノだと宣言しに来たのか。面白い…」



「どいだい?あの子は?」
「あの子?ああ…しいなですね?」

昼休みに真鍋教授に呼ばれて前と同じ黒のレザーのソファに座ってる。
この前よりちょっと深目に…

「大分お疲れの様だね。まあ半獣の相手は大変だが特にあの子は大変だからね。」
「真鍋教授しいなの事知ってるんですか?」

「ああ…僕はあの子の最初の飼い主だよ。」

「え?!…!?ええっっ!!」

「そんなに驚く事かな?僕は半獣の研究をしてるんだよ。飼ってみるのは当たり前だろ?」
「だって…」

「ああ…契約の事?半獣は相手なんて選べないんだよ。
望まれればどんな相手にも飼われる…それが半獣なんだ。」

「……………」

だからしいなは飼い主と言う立場にこだわるの…
なぜか…しいなの顔が浮かんで…辛い気持ちになる………

「でも何で半獣を飼う事の条件とか教えてくれなかったんですか?」

そのおかげで今オレはとんでもない目に遭ってるのに…

「最初に言ったら純粋なデータが採れないだろ?
先入観無しで採ったデータに意味があるんだから。」

それにそんな事を話したら君は絶対断っただろうしね。

「………」
なんか納得いかない…オレ…
「まあ飼育は始まったばかりだよ。もう少し気楽に構えてた方がいい。」

気楽に構えてたら一瞬でしいなの餌食です。

「はい…」
「それに今夜は2人にとって…」
「?」

「初めての新月だ…」

「え?」

「きっと面白いものが見れるよ。くすっ……」
「?」

真鍋教授の最後の言葉の意味がオレにはわからなかった……
全部の講義が終わって帰ろうと正門を出ると……
ずっとそこで待っていてくれたと思えるほど…

朝オレを送り届けた同じ場所で…しいなが朝と同じ様に待っていてくれた。



「?なんだよ?」
「いや…習ったの?」
「ああ?あー…叩き込まれた。」

あの変態サド野郎にっ!チッ!!

「プロ級……」

オレがなぜこんなに驚いているかと言うとテーブルに並べられた夕食がプロ並の料理だったから。

「今までの飼い主には作ったりしなかったけどな。耀は特別だ。」
「?何で作ってあげなかったの?」
「あいつらがオレに食べさせてやりたいって言うから作る必要が無かったし…
作る気も無かったから。」
「あ…そう。」

みんなしいなに参ってたんだもんな…尽くされてたんだ…

「だから耀もオレと契約したらオレに食べさせてやりたいって言ってオレが作る必要ないかもな。」

「死ぬ覚悟があるならね。」

「は?」

「オレ料理壊滅的に苦手なの…マトモに作れない。」
「………」

思わず無言で2人で見つめ合ってしまった…だって本当に料理苦手なんだもん。

「……使えねぇ…」

「!!!…仕方ないじゃん!誰にだって向き不向きあるだろ!フン!…ンッ!!」

ソッポ向いた顔に回り込まれてキスされた。

「じゃあオレが料理教えてやる。手取り足取り。覚えが悪ければお仕置き!ああ〜愉しみだな。」

どんなお仕置き想像してんのさ…もう…

でもそれからは食器を洗って片すのがオレの仕事でしいなはずっと
料理を作る羽目になるんだけどね。




「?どうしたの?」

しいなが何だか落ち着きが無い。
寝室に入ってからベッドに腰掛けたり立ち上がって部屋の中をウロウロ…

「 ? 」

一体どうしたんだろう?
寝室でもオレはパジャマを着てる。
しいなはオレに裸で寝ろって言うけどそんなのは無視してやった。
なのに今のしいなはそんな事にも気にかける気配が無い。

「しいな?」

び く ん っっ !!!

何でそんなにびっくりするんだ?

「…耀」
「な…何?」
こっちまで緊張する…

「もう寝ろ!」

「は?ん!!」

それだけ言っておやすみのキスされた…しいなはそのまま寝室を出て行った……



「 何なんだ??? 」