04
「………ん…」
顎の辺りを…何だか生暖かいものが触れる…
「……なん…だ?……ん?」
眠たい目を擦って片目で見てみれば……真っ白な猫がぺろぺろと舐めてる…
「ああ……お前か……ん〜〜〜今何時だ?」
枕元の時計を見ると目覚ましの鳴る10分ほど前だ…
「ふあぁ〜〜眠っ…お前のせいで寝不足だ…」
結局寝返りなんてうって猫を潰すんじゃないかと思ってオチオチ寝てられなかった…
当の猫はスヤスヤ気持ち良さそうに安心しきって眠ってた…
「ミャ〜」
「おはよ……さて…ちょっと早いけど起きるか…」
ピンポン!ピンポン!ピンポン!
「は?」
こんな朝ぱらからチャイムが鳴るなんて…一体誰だ?
昨夜の苦情か?こいつがニャアニャア鳴いたから…?
「はい?」
思わず猫をロフトに置いたまま玄関に向かった。
「荷物のお届けです。」
「は?荷物?こんな朝早く?」
疑心暗鬼でドアを開けると本当に業者の格好をした2人の男が
ドサドサとダンボールを置いて印鑑を要求してさっさと帰って行った。
「………何だ?こりゃ?」
ダンボールに貼ってある伝票にはオレの住所しか書いてない…
中身は不明…こんなの怪しすぎで…開ける事も出来ず…受け取らなきゃ良かった…
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
こんな時間に携帯に電話?今日は朝から何なんだ??
「はい!」
『あ!風間君?荷物届いた?』
「は?何…米澤が?これ何?」
『何よ?開けてないの?』
「開けられるかよ!こんな朝っぱらから届いた怪しい荷物!!」
『受け取ったくせに!まあいいわ開けてみて。』
「…………」
携帯を床に置いてダンボールの蓋を開ける…中から出て来たのは…
「キャットフード?」
他にも猫の用品がダンボール一杯に入っていた。
「何だこれ?」
『何って猫を飼う為の必要なもの!』
「はあ?何で?」
『だって猫飼うんでしょ?』
「誰が?」
『風間君が!』
「オレが?飼わないよ。」
『だってもう飼ってるじゃない?』
「え?ああ…昨夜の?あの猫は今日昨日の場所に連れて行く…」
『へえ〜〜』
「何だよ…」
『無責任で薄情なのね〜風間君ってば!』
「なっ…何でだよ…」
『まあいいけど…でも今日1日は部屋に置いておくんでしょ?』
「ああ…オレ仕事だし…」
『じゃあご飯とかトイレなんてどうするのよ?1日我慢させておくの?可哀想じゃない!』
「………」
確かに…と思ってしまった…
1日部屋の中で飯ナシトイレ無しなんて無理だもんな…
『私の知り合いに猫専門のお店やってる人がいて昨夜のうちに連絡して
朝一に届けて貰う様に話しておいてあげたのよ!感謝してよね。』
「感謝って…これってどう見ても1日分じゃないよな?」
キャットフードに猫用トイレに猫砂…山盛りなんだけど?
『とにかくそれ使って ♪ お金は後で請求するから ♪ 』
「は?何勝手に…」
『急がないと遅刻するわよ!今日は朝一で会議入ってたでしょ!』
「あ!」
『猫ちゃんの支度もあるんだから急ぎなさいよ!じゃあね ♪ 』
「おい!」
アッサリと電話を切られた。
とにかく自分の支度をサッサと済ませ初めての猫のトイレなるものを準備した。
その間猫は今朝届いた高そうな缶入りのキャットフードを美味しそうに食べてる。
「おい!猫!」
「………」
食べるのを止めてオレを見る。
「こっち来い。」
「………ナァ…」
「お前のトイレだってさ。わかるか?」
「…………」
クンクンと匂いを嗅いで確かめる…
「ナァ…」
どうやら理解したらしい…全くもって良く分からない猫だ。
「あれ?」
洗面所から歯磨きをして戻るとテレビが点いてた…
点けた覚え無いんだけど…?
「ん?」
テレビの前のソファにあの猫がチョコンと座ってた。
そしてじっと一点を見つめて微動だにしない…
「見てわかるのか?ってお前が点けたのか?まさか…な…」
オレはソファの前のテーブルに乗ってるリモコンのスイッチでテレビを消す。
「………」
「な…何だよ…」
下からチラ見された!
しばらくじっと見てたら猫がソファから目の前のテーブルに飛び乗って
前足で器用にテレビのスイッチを入れた。
「お前…」
またジッとテレビを見てる…
「はあ〜〜〜…ホントお前何様?とにかく行って来るから。大人しく待ってろよ。」
「ナァ〜〜」
「ん?おっ!」
テーブルからジャンプしてオレに飛び付く。
「何だよ…オレ仕事なんだよ…猫…」
「ナァ〜〜〜」
「………わかったわかった…行ってきます。チュッ ♪ 」
何だか…ネダられてる気がして…思わず猫の頬にキスをしてしまった……
彼女とも行ってきますのキスなんてした事無いのに……何なんだ…
「ホント…変な猫だな…お前…」
玄関のドアが閉まるまで…
猫はちゃんと座って…オレを見送ってくれてた……