05

  椎凪 : とある資産家の御当主様。数ある会社を取りまとめてるグループの経営者の1人。右京の知り合い。
   耀 : 右京の腹違いの妹。草g家に狙われていてずっと逃げ回っている。椎凪に捕まって監禁!そして結婚しました!






「なあ椎凪…この子誰だよ?なあ?お前がこんなに真剣になるなんておかしいだろ?
なんだ?新しい女か?今度はこんな若い子なのか??なぁ〜〜椎凪!!」

連れ込まれたマンションのエレベーターの中でオレを助けに入って来てくれた
『芳樹』と言う人がずっと椎凪に話し掛けてる。
当の椎凪はと言うとオレを抱き寄せたまま無視を決め込んでる。

「ねぇ…君『耀』って言うの?椎凪とはどんな関係?ねえ教えてよ。」
「…………」
どうしよう…答えた方がいいのかな?
「それ以上近寄るな。話し掛けるな。」
「何だよ!俺に感謝して欲しいぜ!
俺が兄貴の事見つけなきゃ未だにこの子は見付かってないぞ!
あの兄貴の毒牙に掛かって恥ずかしい目に遭わされ…ゴンっ!!…いてっ!!」
「余計な事言うな!……じゃあな。今度ゆっくり礼はする。」
そう言ってエレベーターの扉が開くと足早にオレを連れ出して止めてあった車に乗り込んだ。

「絶対だぞ!椎凪!!ちゃんと説明しろよな!!」

そう叫ぶ彼を残して車は走り出した。

椎凪のお兄さんは昔から椎凪の事を良く思ってなくて…
その反動からか色々悪い事をしたらしい…
勘当同然で家を追い出されてお兄さんは事あるごとに椎凪の邪魔をして…
犯罪に近い事までしてたらしい…
それをお父さんが生きてる時はお父さんが…
今は椎凪が色々手を廻して穏便に済ませてたらしいけど…
それすらお兄さんには耐えられない事だったんだろうな…


「宣昭様には今週中にも海外の方へ出発なさって頂く事を承諾して頂きました。
耀様の事は慶彦様の行動を常に監視していたらしく最近出入りの多かった
あのマンションを見つけてマンションの管理人をお金で買収し中に入ったと言う事です。
耀様の事は婚姻届を出された日に耀様の写真を隠し撮りし…
ご自身のコネを使って調べ上げたようです…もの凄い行動力と執念ですね…
短期間でこの様な事を成し遂げるとは…」

「そのエネルギーを他に使えって言うんだ…バカな奴だ…
だが…宣昭にもバレたって事は…草gの方にもバレるのは時間の問題だな…」
「多分…」
「……仕方ないか…」
「慶彦様…」
「ん?」
「大丈夫でしょうか?」
「どうにかなるだろ…右京は最初から耀をどうこうしようと思ってたわけじゃないんだし…
問題は先代の時のジジイやババァ連中だろうけどな…
だが…耀はもう椎凪家の当主のオレの伴侶だからな…
耀に何かあればオレが受けて立つ。あいつ等も椎凪家相手にそう思い切った事は
してこないだろう。」

「だと宜しいのですが…」

「………そう願いたいもんだ……」




お昼頃…椎凪と一緒に椎凪のお屋敷に帰って来た。
ちょっと昔風だけど作りは頑丈で…とっても広い。
使用人の人も沢山いて驚いちゃった…椎凪ってば本当にここのお屋敷の当主なんだな…

用意されたオレの部屋は今までいた所よりは狭いけど部屋が3つほど付いてる。
リビングの様な部屋と寝室と予備の部屋なのか…浴室や洗面所まである。
相当なお金持ちなんだなぁ…って思った。

椎凪はオレをここに連れて来るとすぐにまた出掛けて行った。
夜には帰るって言ってたけど…オレはやる事が無くてぼーっと部屋の窓際から
外の庭を眺めてる…さっきメイドの人が紅茶を持って来てくれたけど
あまりにも豪華で高そうな食器だったもんだから味なんかわからなかった…


オレは窓枠に腕を乗せてウトウト……
今朝はビックリしたけど…椎凪が助けに来てくれたから…



もう時計の針が夜の10時を過ぎた頃椎凪が帰って来た。
オレは今朝の事と慣れない場所でちょっと疲れ気味だったらしい…

「今日は疲れたろ?ゆっくり休め。」

「……はい…」
俯きながら返事をしてた。
「……………一緒に…」
「え?」

「オレと一緒に寝るか?」

「……え?」



「……パタパタ…」
廊下にオレのスリッパの音が響いてる。
オレは椎凪に手を引かれながら歩いてる…椎凪の寝室に向かって…
一緒に寝ようと言う椎凪の申し出に素直に従ったんだけど…今頃になってちょっと焦り出してる。
だって…椎凪と…男の人と一緒に寝るなんて生まれて初めてで…

なんで素直に頷いちゃったんだろう??

きっと今日起こった出来事のせいだ…オレ少しおかしいんだ……
そう言えば昨夜からもおかしいし…もう自分でも何が何だか分からなかった。

「本当に?…本当に今日は何もしない?」

無言で見上げてたオレに椎凪は何もしないからと言った。

「ああ…しない。」
スタスタと椎凪はオレの前を歩きながらオレの方を振り向かずにそう言った。

連れて行かれた椎凪の寝室はオレの部屋よりもちょっと大きくてリビングらしき部屋には
大きな応接セットと寝室と浴室に洗面所と書斎と…
リビングからは12畳ほどの半円形のテラスまで付いていた。
ベッドもオレのベッドより大きくて…書斎の机の上には本や書類が乗っていて…
椎凪がここで生活してる事を物語ってた……
そんな光景を見てオレはちょっとホッとした。
椎凪も普通の生活してるんだと実感する事が出来たから……


「ちょっと待ってろ。」

そう言って椎凪が浴室に入って行った。
オレはベッドの上に座って待ってる…ちょっとドキリとしたけど…
でも今日は何もしないって約束してくれたから…
オレは少し安心してそのまま睡魔に負けてウトウトとしたらしい……



「んっ…あっ…あっ…あっ…ンア…やっ…も…う…うそつき…あっ!!」

オレはさっきからそんな声が出っ放しだ…
いつの間にか眠り込んだらしいオレを椎凪は簡単に裸にした。

オレの両手を一緒に頭の上に押さえ込んでオレが抵抗出来ない様にして…
思いっきりオレを抱いてる。

「あ…何も…しないって…言ったのに……あ!!…」

さっきから…ベッドがキシキシと小さな音をリズムカルに鳴らしてる…
オレも椎凪もその音に合わせる様に動き続けてる…


もう…やだ…身体が…どうにかなりそう…


「気が変わっただけだろ…無防備にベッドの上で眠ってるからだ。
抱いてくれって言ってるのかと思ったから抱いてやってるんだろ?」

「もう……ズル……イ……ハァ…ぁ…ぁ……」
「何で下着着けてる…」
「…ン……え…?」
「脱がせんの面倒いだろ……」
「え…?だって……寝巻きが…あっ…パジャマ…だから…」
「……明日からまた浴衣にしろ。下着なんか着けんなよ。」
「え…ええ???」


そんな事を約束させられて…いつもと同じ様に…

椎凪が満足するまで…オレはずっと…椎凪の腕の中で乱れ続けるんだ……



直ぐ横に…椎凪の眠ってる顔がある…
横顔だけど…とっても綺麗な顔だってわかる……
椎凪って……かっこいいんだよね……ちょっと気持ちに余裕が出てきた頃…
椎凪の顔をマジマジと見てそう思った。

あれからたっぷり2時間近く攻められて…もう身体はクタクタだったけど…
お陰で今日あったあんな出来事が頭の片隅に消えかかってる…

何故か目が覚めて…
多分今まで人の気配なんかしなかったのに…人の温もりを感じてるから…

「誰かと一緒に寝るなんて…何年ぶりだろう…」

オレは小さな声でそっと呟いた…
昨夜から…自分の中で今まで無かったモノがある…自分でも良くわからないけど…
それは椎凪の事を考えると…ジワジワと動き出す…

「……ちょっとだけ…いいよね…」

オレはそう呟くと…椎凪の右手の小指をぎゅっと握って…眠りについた…


「………ん!」

ベッドの中に他人の気配を感じて夜中に目が覚めた…
横を向くと安心した様な顔で眠ってる耀がいた。
そう言えば一緒に寝てたんだと気が付いた…

自分でも不思議だった…オレがこんなガキと一緒に寝るなんて…
不安そうな顔してたもんだから…つい『一緒に寝るか』なんて言葉が出た…

「……ん?」

右手に違和感を感じて布団をめくると…
「は?」
なんだ?オレの小指をしっかりと握り締めてる…

「なんで小指だけなんだ??ったく…わけわかんねー?」

そう思いながらも…オレは振り解きもせずそのまま眠りについた。



「ふぁあ……ン…あったかい……気持ちいい ♪ ♪」

自分の頬に当たる感触が心地良くてスリスリした……ん?……んん??
ゆっくりと目をあけると…目の前にパジャマが…ん?
しばらくぼーーっと見つめてしまった…あ!そうだ…オレ…

ちょっとだけ起き上がるとオレは椎凪の腕枕で眠ってた!
しかもその腕はしっかりとオレの身体にまわされてて…一晩中抱いててくれたんだ…

オレは何故か心臓がドキドキ…やっぱり…オレ変だ!!

「…………」

不思議な人だなぁ……
すごく強引で乱暴かと思うとオレの事気を使って優しくしてくれたり…

オレなんかとも結婚なんかして……

ふと思った……他に好きな人とかいなかったのかな?
きっと女の人放っておかないと思うんだよな…どうなんだろ…?



「はぁ?好きな奴?んなのいるわけないだろ。朝から何言ってんだ?」

寝起きの椎凪に思わず聞いてしまったオレにそんな返事が即答で帰って来た。

「だって…いても…不思議じゃないから…オレと結婚して良かったのかなぁ…って」
「何でオレが普通の女と結婚しなきゃいけないんだよ。」
ベッドから上半身を起こしながらそんな風に言う。
「え!?普通じゃ無い人が良いって事??え?男の…人…とか???」
オレは至って真面目に驚いちゃった。
「アホか…」
もの凄い呆れられちゃった………

「17の時お前の事を知った…その時からオレはお前としか結婚しないって決めてたんだよ。
まあ女との関係は無かったわけじゃないが…惚れた女もいなかったし…
みんな遊びだ…お前以外は…な…」

「…………!!」

オレはちょっとビックリしてピクリとなった。
「…………!!!…ハッ!!」
椎凪があっ!て顔した?
「お…お前が右京の妹だからだよ!!変な誤解するな。じゃなきゃお前と結婚なんかするか!!」
「………!!……そ…そうだよね…そうじゃなきゃ…オレなんかと……」
なんだろ…ちょっと…胸が苦しい……
「ごめんね…変な事聞いて……」
オレは俯いて…何も話せなくなっちゃった…
「…………理由は…まあ…何だが…」
「 !? 」
「今はオレ達結婚して夫婦なんだからな……」
「え?」
「オレがお前の旦那で…お前はオレの……奥さんなんだぞ…オレの…もんだからな…」
「…………」
「オレだけのもんだ…わかったか?ちゃんと憶えとけよ!!」
「………は…い…」
オレは…何だかビックリで……なんだろう…胸がドキドキ…

「こっちに来い……」

そう言って椎凪がオレに手を差し出した…

「は…い…」

オレは言われるまま…身体を椎凪の方に乗り出した。

「ちゅっ……」

椎凪がオレの顎を持ち上げて…優しいキスをしてくれた……




「ん…んあ…ちゅっ…」

優しいキスの後…椎凪がオレをベッドの上に仰向けに押し倒した…
そして今度は…激しくお互いの舌を絡めながらキスをしてる…
まだ…そんなキスに慣れて無いオレだけど…何とか出来る様になった……

椎凪が…オレの両膝を抱え上げて…激しくオレを求める…

オレは堪え切れなくて…椎凪の肩を力一杯掴んで耐えた……
それでも何度も何度も押し上げられるのに耐えられなくて…大きく仰け反っちゃう…

仰け反ったオレを更に押し上げるから…オレはもう…わけがわからなくなる……


形だけの夫婦でいいって…椎凪は言った…オレもそれでいいって…
でも…椎凪は…オレを自分の奥さんだって…言ってくれた……
子供も…出来ても構わないって……

オレは…オレには…この人が…椎凪が必要だ…
椎凪と……ずっと…一緒にいたい……
椎凪は道具としてオレが必要だとしても……

オレは…椎凪と……椎凪の傍に……

だから…オレは椎凪の望むままに……


それからオレにとって…今まで生きてきてとっても落ち着いた…安らかな日々が訪れた…

椎凪も優しくしてくれるし…毎日何不自由なく暮らしてる…
怯えて暮らすことも無くなったから…オレは今…幸せだ……



「どうした?」
「え?……うん…」

オレは椎凪の書斎で…椎凪が持って来てくれた雑誌を見ながら唸ってた。

「……オレ…ろくに勉強出来なかったから…なんか今頃色々知りたいなぁって思って…
生活するには不自由しない程度の知識はあるけど…」

「………勉強したいのか?」
「……出来たら…いいなって…でも…」
「…じゃあ考えてやるから…ちょっと待て。」
「え?」
「適任者見つけてやる。」
「え……本当に?」
「別に悪い事じゃないだろ?むしろ良い事なんじゃないのか?だったら叶えてやる。」
「…………!!」

この人は……オレの願いを…叶えてくれる…

連れ去られた時も助けに来て欲しいと願ったら助けに来てくれた…
1人では淋しくて…一緒にいてくれる人が欲しかったオレにこの人はオレをお嫁さんにしてくれて…
いつも一緒にいてくれる…
今だって…勉強したいというオレの願いを…簡単にこの人は叶えてくれる……


耀がオレの屋敷に暮らす様になってから10日目…右京から呼び出された。
とあるホテルの一室で右京と向かい合った。
宣昭の一件から右京にバレるのは時間の問題と思っていたが…ついに来たと言うところか…

「ある確かな筋の情報だけどね…」

オレでも息を呑むような瞳で見つめられた…

「君の所に耀がいるそうじゃないか?本当かい?」
真っ直ぐ見つめられてそう聞かれた。
「ああ…」
隠し通せるはずもないから素直に頷いた。
「なぜ僕に隠していた?君に耀を探せと命令したのは僕だ。その僕に何故報告しない?」
静かな物言いだが…威圧感は半端じゃない…まったくいつもいつも…
「……お前の所の話の分からない奴から守る為とオレの傍に置いておくためだ。」
「!!…守るのは分かるが…なぜ君の傍に置くためなんだ?」
「喜べ右京。お前の兄弟になってやる。」
「は?どう言う事だい?何故君と僕が……!?…まさか…君…」
「見つけたその日にオレのモノにした。」
右京の眉がピクリと動いた。
「すぐ婚姻届を出してオレ達は今もう夫婦だ。これからよろしくな…お兄様。」
「君は…初めからそのつもりで?」
「ああ…もうずっと昔からそう決めてた。」
「昔から?」
「耀の事は心配するな…オレが必ず守る。
それにオレの所にいればそう簡単に耀に手出し出来ないだろう?
お前の所のジジイやババアも…手を出したらこっちも考えがある。
でも…そんな馬鹿なことしないだろ?」
「…………」
「そんな顔するなよ…今に甥っ子か姪っ子でも出来たら相手させてやるから…可愛がれ。」
「!!……まったく…君って男は……」
そう言って薄く笑う…どうやらこのままもめる事無く済みそうだ。
「耀は…どうしている?」
「元気だ…まだまだガキだけどな…」
「……そうか……今度…会いに行くと伝えてくれ…何も心配するなと…」
「わかった…」


「お帰りなさい。椎凪!」

一番にアイツの笑顔がオレを出迎える。
「何もなかったか?」
「うん。あ…今日勉強教えてくれるって言う伊浬亜さんがオレに会いに来てくれた。」
「来たか…アイツは頭も良いし人当たりもいいから適任だ。」
「うん…すごく優しそうだった…それに綺麗な人だった…」

オレは彼女に会った時椎凪とはどんな関係なのかな…ってちょっと考えてしまった…
だって…本当に綺麗な人だったから……

「なんだ?なんでそんな顔をする?嫌なのか?」
「!!…ううん…そんな事無い…あ…」

優しく顎を持ち上げられて…ちゅっ!ってキスされた…皆が…見てるのに…
「ただいま…って言ってなかったからな…」

「………椎凪…」


耀が顔を真っ赤にてオレを見上げてる…
オレはそんな耀の頭を手でクシャクシャと撫でてやる。
最初に会った時とは比べ物にならないくらいの笑顔をオレに向ける。

だからオレはこの笑顔がずっと見ていられる様に……

   ずっと…見ることが出来るなら…オレはきっと…何でもする…