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「惇哉さん…」
「由貴が許してくれないから…痛いまんま…」
「だから…初めから怒ってないって言ってるでしょ?」
「だからその証拠が欲しい…」
「…………」
2人で廊下に寝転んで何してるんだか…
「本当に怒ってないから…これで機嫌直してね。」
……やっと…由貴からオレに…キスしてくれる…
「うん…」
「ちゅっ…」
仰向けになってるオレに俯せの由貴がそっと触れるだけのキスをしてくれた…
「ンッ!!」
そのまま両腕で抱きしめて由貴を捕まえた。
「…ちょっと…ダメ…」
「やだ…」
「あ…」
そのまま反転して由貴を床の上に組み伏せる。
「由貴…」
「んっ……ンンっ…!!」
いつもの…3日ぶりの由貴とのキス…
「あ…ん…」
逃げる由貴を追いかけて口を塞ぐ。
「…やあ…」
由貴の首の後ろに廻してた手で由貴の左手を捕まえた。
もう片方の由貴の腕はオレの左の腋の下を抜けてオレの背中の服を掴んでる。
「ンー…んっ…んっ…」
空いてるオレの右手で由貴の顎を掴んで逃がさない。
だからオレの気の済むまで……由貴の唇を奪い続けた……
「…ハァ…ハァ…ん…」
どのくらいキスをしたんだろう…気が付くと由貴が浅い息でぐったりしてた…
バスタオル1枚で包まれてる由貴…
濡れてる髪の毛が悩ましくて…色っぽい…
浅い呼吸を繰り返す唇も…苦しそうにしてるその軽く閉じた瞼も…なにもかも…
「由貴…」
初めて…由貴の首筋に顔をうずめて耳たぶを舌先で舐めて優しく噛んだ。
「ンア…」
そう声を洩らして由貴の身体がピクンと跳ねた。
「由貴…」
「や…だ…め……あっ…」
そのまま首筋に啄むキスを繰り返して鎖骨まで下りた…
オレの背中に廻された由貴の手に力がこもってオレのシャツを握りしめる。
「ちょっ…惇哉さ………ンっ!」
惇哉さんがこんな事するなんて初めてで…私はどうしていいかわからなくて…
慌ててたら鎖骨の辺りがチクリと言うか熱いと言うか…何か感じて…
そこから力が抜けた…なに?
「?」
目が合った惇哉さんがニッコリ笑う。
「何したの?」
「え?」
「あ…」
ちょっと視線を落としたら視界に朱いアザ…
「これ…」
「由貴はオレの…大事な人だから…」
好きと言えない恋だから…でも…もう…言ってみても大丈夫……かな?
「由貴はオレのものだから ♪ 」
カ チ ン ! と…なんでだかムッときた。
「惇哉さんのエッチ!!」
「は?」
エッチって…?
「どいて!」
「イテッ!」
ド ン ! と片手で突き飛ばされた。
由貴は上半身だけ起き上がって赤い顔でオレを睨む。
「惇哉さんいやらしい!!」
「はあ?いやらしくなんかない!オレの正直な気持ち!」
大体このくらいどってこと無いだろ?
いつもあんなに密着して寝てるし…どれだけ今までキスしてると思ってる?
「まったく…」
由貴が怒りながら起き上がってた上半身を更に両腕に力を入れて起き上がった…その瞬間……
パ ラ リ ……
「え?」
「なっ…!!」
散々動いて緩んでたバスタオルが…パラリと開いて脇に落ちた。
「あ…」
思いきり目の前で由貴の裸の身体が見えた。
下半身はバスタオルが掛かってて見えなかったけど…胸はハッキリ!バッチリ!見えた!
即記憶のメモリーにインプットする。
「 い や あ あ あ あ あ ーーーーーー!!!! 」
バ ッ チ ――――― ン !!!
「…痛っ!!!」
初めて由貴にビンタされたっっ!!
「惇哉さんのバカっ!!」
「え?由貴!?」
由貴が猛ダッシュで寝室に駆け込む。
「由貴!」
またバタン!!と目の前でドアを閉められた!
「ちょっと…オレ悪くないだろ?」
「悪い!最初から最後まで惇哉さんが悪い!!」
「どこが?」
倒れた由貴を支えたのオレだぞ?
「もう恥ずかしくて部屋から出れないっ!!」
「気にする事無いだろ?どうせ2度目なんだし。」
「!!2度目って1度目はいつ見たのよっ!!」
「あ…」
ヤベ…あの時の事は由貴には内緒だった…
「み…見てないから!!だから気にしなくていいから!」
「見えてないはず無いでしょ!あんな目の前でだったんだから!!」
「オレが見えなかったって言ってるだろ!由貴!!」
「………」
そんなやり取りを寝室のドア1枚隔ててしてる…
強引にドアを開けてもよかったんだけどそれは今出来なくて…
「由貴!出て来いよ!」
「イヤ!!」
「由貴……出て来て……オレの為に…」
今…オレの傍に由貴にいて欲しいんだ…
「…………」
「由貴…」
「だって…」
「謝るから…裸見た事…」
キスマーク付けた事は謝るつもりは無いから謝らなかった。
「やっぱり見たんじゃない!」
「普通見えるだろ…目の前であんな事が起きれば…でも見なかった事にするから…」
「…………」
もう何が何だか…訳のわからないいい訳を必死にして…
とにかくひたすら謝って…おだてて…また謝って…
そんな事を30分近く続けて…やっと 『 天岩戸 』 の如く寝室のドアが開いて…
由貴が中から顔を出した。