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「おめでとう。満知子さん ♪ 」

「……もう…惇哉クン…」

「いいじゃない。今まで頑張ってきたんだし自分へのご褒美で。新しい恋もいいもんだよ。」
「でも…」
「そんな事でオレ満知子さんの事嫌いになんてならなから。
満知子さんは大切なファンでもあるけど大切な友達でもあるんだから。」
「本当に?本当に私の事嫌いになったりしないでくれる?呆れたりしないでくれる?」
「大丈夫だってば!だから若林さんの事前向きに考えなよ。ね!」
「…わかった…考えてみる…ありがとう…惇哉クン…」

「……………」

次の日の夜…私の家のリビングのソファでお母さんと惇哉さんが
お互い向かい合って手まで握り合ってる…もう…2人共芝居かかっちゃって…
ってお母さんは真剣そのもの…

惇哉さんはお母さんには気付かれない様に何気に説得してる…

お母さんも若林さんの事満更でもないはずだから…


「でももし若林さんとお付き合いしたらここ引き払うの?」

「え?」
「!!」

あ…そうよね…若林さんはあっちにいるんだし…そう言う事になったら…

「まさか!ここは絶対引き払ったりなんかしないわよっ!」

「本当!」

「だって惇哉クンがお隣りさんなのよっっ!当然でしょ!
これからだって惇哉クンのお世話続けていくんだし!ね!由貴!!」

「…………」

やっぱり面倒見るのは私なのね…

「はいはい…」

ああ…『 はい 』 は1回だ…なんて自分で自分に突っ込んでしまった…


「やった!ありがとう!満知子さん ♪ 」



その日はずっと……お母さんは惇哉さんと話してた。



「今度惇哉クンにも若林さんに会ってもらってもいいかしら…」

「もちろん ♪ 是非会いたいよ!」

「ありがとう!」






「折角早く撮影が終わったのに…ごめんなさいね…お母さんったら…」

「いいよ…久しぶりだったしオレも話せて良かったから…」

「惇哉さん?」

惇哉さんを見送りに玄関まで来ると惇哉さんが何か言いたそうな顔で私を見てる。

「由貴…」
「ん?」

「オレの部屋までお見送りして欲しいな…」

「え?こんなに近いのに?お隣りじゃない…」

「あのね…今日は一緒に寝れないんだからさ。いいだろそのくらい!」
「そのくらいの意味がわからないわよ!」

お母さんがここにいる間は私は自分の部屋で寝起きするから…
今夜は惇哉さん1人きりになる…それをさっきからブツブツと…
お母さんにわからない様に私に文句を言ってる…


「ホント由貴は冷たいな!オレが今夜どれだけ寂しい思いで1人で寝るかわかってる?」
「もう…子供じゃあるまいし…」
「ほら!お見送りして。」
「あ…」

強引に手を繋いで由貴を外に連れ出した。

「ちょっと…」
「いいからいいから…」

オレの部屋の玄関の中にまで連れて込む…


「もう…どう言うつも……んっ…」

バタンと玄関のドアが閉まった途端ドアを背に由貴を追い詰めて…いきなりキスをした!

「ん……ンン……」

ドアに押し付けて…由貴の身体に腕を廻して抱きしめる。
逃げれない様に由貴の顔を手で押さえ付けて捕まえた…

舌をおもいっきり絡ませる……


「ハア…やっ…いや…息…出来ない…でしょ……」

由貴が何とか頑張ってオレのキスから逃れた…

「だってずっと由貴とキスしたかったんだから仕方ないだろ?由貴は全然察してくれないし。」
「お母さんいるんだから当たり前でしょ?もう…いやらしいんだから!」
「あのね!由貴!!」
「 !! 」

由貴の腰を抱いたままクイッと顎を持ち上げた。
もの凄い密着で由貴はさっきからオレの胸に両手を着いて踏ん張ってる。
何気にエビ反り状態…

「逃げるんじゃない!」
「逃げるでしょ!」
「なんで?」
「なんでって……惇哉さんが私にキスしようとするから…」
「キスしちゃいけないの?」
「い…いけない…でしょ?」
「何で?今まで散々したじゃん。」
「そうだけど……とにかくこんな事までしてしなくてもいいのよ!
じゃあまた明日ね。ちゃんと起こしに来るから…」

「…………由貴…」

「……何…よ…」

「おやすみ…」

「 !! 」


今度は優しい顔と瞳と仕草で由貴の唇にそっと触れる…

こんな優しいキス…オレにしては珍しい……

さっきの強引な乱暴なキスと違って…意識的にムードのあるキスをした……

由貴がホワンとなった様に見えた……

ああ…心臓がドキドキする…由貴もしてくれてるかな…


「何でこんなキスするの?」
「たまにはムードのあるキスもいいんじゃないかなぁ〜って。」
「それだけキスに慣れてるって事でしょ…遊び人!!」
「今はそうじゃないから安心していいよ…由貴…」
「何が安心なんだか…」
「ちょっとオレの方向いて上見て。」
「え?こ…こう?」

由貴がオレの言葉に釣られて言われた通りにする…

「 ちゅっ ♪ 」

「!!」

またキスしたら由貴が驚いた顔をした…いい加減慣れればいいのに…


「目を瞑って待っててくれたらオレもドキドキするんだけどな ♪ ファースト・キスの時みたいに…」
「ドキドキしたの?」
「んーどうだったかな?しなかったかも…由貴は?」
「え?」
「ドキドキし……」
「惇哉さん?」

急にムッと来た。

「今の無し!」
「は?」

「由貴はオレでドキドキすればいいから!」

「??」

「オレがドキドキするキスを由貴にたくさんするから…だから目瞑って ♪ 」

「どうしてそうなるのよ!もういいってば…大体何で惇哉さんに
こんなに唇を許さなくちゃいけないのよ…いつも勝手にするんだから…」

「何でって…宿題の答えが解ったんだろ?だったらわかるよな?」

「………わからない!!」

「ウソだ。」

「!!」

「わかってるくせに…」

「あ…」

「由貴は…わかってる……ね?」

「惇…」

「だからオレの首に腕を廻して…目を瞑って…」
「や…無理…」
「由貴…」

抱きしめて由貴の耳元に囁いた…

「ン…」

由貴の身体全部がピクンと跳ねて力が抜ける…

「ズル…イ…」
「どこが?」

言いながら耳に触れるたけのキスを繰り返す…

「由貴…オレ今夜1人なんだよ…」
「ん…ぁ…」

片手で由貴の頭を傾けさせて首筋にキスを繰り返した…

「由貴…」
「も…名…前呼ばない…で…」
「由〜貴〜 ♪ 」
「…………」

潤んだ瞳でふて腐れてる…可愛いなぁ〜 ♪

「目…瞑ったら離して…くれるの?」
「多分 ♪ 」
「………」

由貴が諦めた様に目を瞑る…いいなぁ〜この初々しい由貴 ♪


「由貴…」



大人しくオレを受け入れてくれた由貴…

何度しても由貴とのキスは嬉しい…








『……さ…ん…』

「ん…」

『惇……さん…』

「んー…」

由貴の声だ…

「惇哉さん!起きて!!」

「ハッ!!」

ガバッっと跳び起きたらベッドの中だった!

「え?…あれ?」
「大丈夫?変な夢でも見た?」
「え……夢?」

オレは1人慌てふためいてる…

「本当に大丈夫?」


「………うそ……なあああああーーーーっっ !!!」


「なっ!!」

オレがいきなり叫んでベッドに倒れ込んだから由貴がとんでもなく驚いた。


ウソだろ…一体どっからが夢だよ…

あんなリアルで楽しい事が夢…?


「昨夜由貴ここで一緒に寝たよな?」

オレは訴える様に由貴に問い掛ける。

「え?寝る訳無いでしょ!お母さんがいるのに。」
「満知子さんがいても関係無いって…オレを送って来た後一緒にベッドで眠ったじゃん!」
「だからそんな事してないってば!」
「ええ……ウソだ…」
「惇哉さん?」

「じゃあ…あんな事もこんな事も全部夢?」

「……一体どんなあんな事やこんな事なのか知りませんけど…
夢の中で人に変な事しないでっっ!!!」

「…………マジ…」


確かに由貴にしては随分大胆でサービスいいと思ったんだよな…

ああ……カムバック…オレの夢っっ!!!




「じゃあ由貴惇哉クンの事よろしくね!!」
「わかったわよ…」

昨夜からそればっかり…どっちが自分の子供なんだか…

私の心配はしないのね…


「惇哉クンまたね ♪ 」

「ああ…気を付けてね……」


次の日のお昼前…満知子さんはまた仕事の為に出掛けて行った…

いつまでもオレと由貴に手を振って……



って…昨夜は何処から夢だったんだ???

オレはもうガックリ……


「惇哉さん?」

由貴が不思議そうな声で凹んでるオレを見て声を掛けて来た……



………昨夜…

「由貴…」
「ん?」

「オレの部屋までにお見送りして欲しいな…」

「え?こんなに近いのに?お隣りじゃない…」

「あのね…今日は一緒に寝れないんだからさ。いいだろそのくらい!」

「そのくらいの意味がわからないわよ!おやすみなさいっっ!!!」


バ タ ン っ ! ! !   …と


オレの目の前で由貴の部屋の玄関のドアが……

無情にも閉まった……