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* 途中軽〜いR15表現あります。





「はあ………」

ここは撮影所の女子トイレ…亜優がさっきから鏡の前で溜息をついている。

「…………はあ…」
「もうさっきから何?なかなか戻って来ないから見に来れば溜息ばっかりついて…
廊下にまで聞こえてるわよ。やっぱり無理しないで今日は休んだ方が良かったんじゃないの?」

様子を見に来たマネージャーが心配そうに亜優を覗き込んで尋ねる。

「……仕事してた方が気が紛れるから…」
「そう?大事に至らなくて良かったけど結局事故だったかはっきりしなかったし…
楠さんは今日は大事をとって休むそうよ…マネージャーさんも大変よね…」

ビ ク ン !! マネージャー……

「ああ〜〜〜もう…」
「ど…どうしたの?亜優ちゃん?」

いきなりそう叫んで目の前の洗面台に平伏した亜優を見てマネージャーまでもが驚いた。

「私ってどうしょうも無い馬鹿だわーー!!」
「え?何?いきなり」

「だってまさかあの2人が恋人同士なんて思わなかったんだものーー!!」

「恋人同士?」
「恋人じゃなきゃ抱き合ったりしないでしょ?」
「は?」
「キスなんてしないでしょ?」
「ちょっと一体 何の話し?」

「楠さん!昨日見ちゃったのよ!
病室で2人が抱き合ってこうチュウ〜〜ってキスしてる所!」

「2人って…楠さんとマネージャー?」
「そう!はあーーー…」

ガ ク ッ ! っとその場で項垂れた。

「ちょっと!!」

マネージャーが慌てて抱き留める。

「気持ちはわかるけど…何もそんなに…」
「だって私…そんな事知らないから楠さんに何気に接近しちゃってたし…」
「まあ…気持ちはわかるけど…ね…あなた彼のファンだったし…
今回の事凄く喜んでたし…あんなラブシーンまであったんだもの…」
「そうよね…舞い上がっても仕方ないよね…はぁ…」
「亜優ちゃん…」

「でもねぇ…私知らなかったからマネージャーさんに楠さんの事…
色々話しちゃったのよねーーー!!!ああっっ!!もう最悪!!」

「話したって何を?」
「え?それを言わせるの?」
「言いたくなければいけど…」

「………どれだけ楠さんの事が気になるかって…
恋する乙女的な態度でノロケまくったのよぉーーー!!もう…どうしよーーー!!」

「……知らなかったんだから…仕方ないわよ…」
「そうだけどさー…ううっ…もうどんな顔して2人に会えばいいのよ…」
「もう…気持ち切り替えなさいよ。これから撮影があるんだから泣きはらした顔なんてNGよ!」
「……うん…」
「それに誰かにこの話聞かれたら大変よ。だからあなたも辛いだろうけど胸の中に収めときなさい!」
「……そうね……はぁ〜〜」


「…………」

そんな2人の話をあのセクハラ男…
「大幡」が廊下で聞いていた事など亜優達が知るはずも無く……

その頃退院して自宅に帰っていた惇哉と由貴は…


「由貴……」
「あ……も…ダメだってば……」

部屋に帰って髪を洗いたいと由貴を浴室に連れ込んで
髪を洗った後隙をついて抱きしめて嫌がる由貴の口を塞いだ。

「ちょっ…惇哉さ…無理しないで…傷に…障る…」
「なら抵抗しないで大人しくして…由貴…」
「や…やめ…」
「暴れると傷が痛い。」

どう聞いてもオレの方がわがままな事を言ってるのに由貴がその一言で大人しくなった。

「ありがとう。由貴 ♪ 」

いつまでも不安顔の由貴が愛おしくて…
そんな顔を無くしてあげたくて…我慢出来ずに由貴に触れた…

自分でも無理をしてるのはわかってた…
でも…もう普通に限界で一体何日オアズケ状態だったか……

だから…由貴のためと…自分のために……由貴を抱いた……


惇哉さんに求められて…絶対無理って…ダメって…思ってたのに…
昨夜からの心細さを無くしたくて…惇哉さんに言われるまま大人しくした…

「あ……ん……」

浴室の壁に寄りかかる様に立つ私の身体を…
惇哉さんの手の平が優しく滑っていく……

だから…惇哉さんの怪我に…
負担が掛からない様に惇哉さんの身体に腕を廻して抱きついた……
ところどころに小さな痣と…擦り傷と……
本当にこんな事していいのかな……
なんて思いながらもお互いに相手を離せなくて……

やだ…何でこんな風になっちゃうんだろう……
こんな行為が好きかと聞かれたら…今はまだ恥ずかしさが先で…楽しむなんて無いけど…

でも…今日は……今は……こうしてたい……

「惇…哉…さん……」
「由貴…」
「ンア!……あっ…」

浴室の中で服を着たまま必要最低限脱がされて…怪我してるくせに本当に慣れてる……

「……ねえ……」
「ん?」
「本当に私なんかで…いい…の?」
「由貴…」

まだそんな顔をする…

「私で惇哉さんは…満足…出来る…の?」
「………出来るよ……由貴…」
「本当?」
「本当…いつも言ってるだろ…オレだけを信じてって……」
「………」

「由貴だけが好き……」

片手で由貴を抱きしめて…お互いが満足するまでお互いを求めあった…



「……ああ!甲斐さん?私大幡だけど…良いネタがあるんだけど買わない?
え?話し聞いてから?わかった…今から会おう…ああ…じゃあ後で。」

写真週刊誌の知り合いに電話をして会う約束を取り付けた。
昨日はちょっと脅かしてやろうと思った事があんな大騒ぎになるとは計算外だったが…
どうやら事故として処理されたらしい…あの若造も明日には仕事に復帰するらしいし…

しかし良いネタを手に入れた。

「思い知らせてやる…」

携帯をポケットにしまいながらそう呟くと大幡は撮影所を後にした。



あの 事故から4日経って止まっていた撮影も順調に進み予定通りに進んでる…
私はしばらく緊張しながら撮影を見守ってたけど4日も経つとそんな緊張も薄れてくる。
惇哉さんは見た目平静を装ってるけど最初の2日間は
痛み止めの注射を打ちながら撮影に挑んでた…
今は薬で何とかなってる。

そんな状況なのに退院した日…あんな事するなんて…

でもあの時は全然痛がってなかったから不思議…

「………」

あの事故以来高瀬さんの様子がちょっと変?
仕事は今までと変わらずなのに私と目が合うと慌てた様に視線を外す……

何で?私何かしたかしら?


順調に…そして確実に撮影は終わりに向かってる…
私のマネージャーの仕事も後少し…



次の日…朝ご飯の支度が終わった頃いきなり携帯が鳴った。

「こんな朝早くから誰?」

携帯に表示された名前は同じ事務所の寺本さん。

「はい…」
『柊木さんっっ!?』
「!!…ど…どうしたんですか?」
あんまりにも大きな声と慌てぶりでビックリ!
『たたたた大変っ!!』
「大変?何が大変なんですか?」
朝っぱらから私に電話を掛けて来るくらいの大変って…
何?事務所が潰れた??
『近くにコンビにある?』
「ありますけど………え?ええ!!??ウソっ!!!」

寺本さんからの電話を切るとお財布だけ引っ掴んで近所のコンビニに駆け込んだ。
一直線に目的の売り場に直行して他の物には目もくれず 「 ソレ 」 だけを買って
そのままマンションに飛び込んだ。
鍵を開ける手が定まらなくて何度も鍵穴から外れた…
やっとの思いで鍵を開けて財布をソファに投げると
寺本さんが教えてくれた写真週刊誌を開いていく……

「ちょっ……ウソでしょ……」

丁度雑誌の真ん中辺り……
見出しに私の目は釘付けになる…

『 スクープ!! 楠 惇哉 今度はマネージャーと熱愛!! 』


私は頭真っ白で……

その大きく書かれたタイトルと…

惇哉さんとのツーショットの自分の写真から目が離せなかった…